2018年1月2日火曜日

判例裁決紹介(平成28年7月25日裁決、調査不協力と帳簿記載事項の不備)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。
今回は平成28年7月25日裁決で調査不協力と帳簿記載事項の不備が問題となったものです。

具体的には本件は、玩具販売等を営む請求人が課税庁による調査に対して、立入拒否、第三者の立会い(非税理士)、非協力(留置の拒否、第三者監視による資料書き取りなど)であったとして、取引先への調査及び、仕入税額控除を否認する消費税更正処分を行ったことに対して調査手続に対して、特に取引先調査に関しては違法性があるとして当該処分の取消を求めたものである。より具体的には調査段階における打算者の立会いを認めなかったことや請求人に対して通知なく取引先への調査を行ったことによる不備があったとしており、また、帳簿記載事項及び請求書等に対して記載の不備があることが調査段階での保存の要件を満たしていないとして、その保存の適格性を否認し、もって仕入れ税額控除の適用を否定したものである。

特殊な団体が関与するものと想定される事案であり(事実関係の経過によれば、再三の立会い要請や、調査協力拒否、書取等納税者と課税庁の対立関係がみて取れる)、税務調査、質問検査の実施、実地の調査の不備・違法性の主張によって課税処分の取消を求めたものであり、基本的に特段の法令解釈に於いて特殊な要因は見受けられるものではないが、また事実関係においても一般性を有するものとは認識し難いところではあるが、租税手続において特に仕入税額控除の適用の要件としての帳簿への記載事項の不備があるような場合は、一般に想定されうるものであり、その評価を如何に捉えるべきであるのかという点が中心的な争点となったものとして理解される。基本亭には事実関係が中心的な争点となったものであり、租税法における調査段階、質問検査の状況を垣間見る事案として参考となる可能性があろう。


 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。
【令】第四十九条
 前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。
一 課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
ニ 第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額
 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類をいう。
一 事業者に対し課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この号において同じ。)を行う他の事業者(当該課税資産の譲渡等が卸売市場においてせり売又は入札の方法により行われるものその他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われるものである場合には、当該媒介又は取次ぎに係る業務を行う者)が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項(当該課税資産の譲渡等が小売業その他の政令で定める事業に係るものである場合には、イからニまでに掲げる事項)が記載されているもの
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
ハ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
ニ 課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。)
ホ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

以上のように本件の中心的な課題の一つは、仕入税額控除の適用要件として、帳簿及び請求書等の保存要件を充足しているか否かという点が課題となっている。消費税法は上記30条において、適用要件として帳簿及び請求書等の保存を求めている。この保存の意義については、議論があるものの、最高裁としては、単なる保存を求めるものではなく、提示も含め、より拡張的に解する見解が取られている。以下のように本件判断も、それを踏襲して摘示の提示も可能な状況を求めているものとして理解され事実上その仕入税額控除に関する状況の発生に関しては立証責任を納税者に求めている。

事業者が、消費税法施行令第50条第1項に規定するとおり、消費税法第30条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿(法定帳簿)及び請求書等(法定請求書等)を整理し、これらを所定の期間及び場所において、通則法第74条の2第1項第3号に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、消費税法第30条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合に当たるものと解するのが相当である。

本件においては最終的に記載事項において不備があったものとして、保存の前段階として保存対象である帳簿が適正な状況、法が求める要請を充足していなかったことを起点として判断を行っているが、単に領収書などを袋にいれて、提示し、本件の事実関係においては、その記録として書き取りを求めている。ここで疑問に考えられるのが質問検査において帳簿等を提示はしているものの、この記録や留置を否認している点である。これは提示を一義的に捉え、無造作に資料を提示し、もって保存の要件を充足していると考えられ、保存の意義として最高裁が判断として上記のように拡張的な解釈を取っていることによるものであると推察されるが、調査段階において、保存されていることを提示により確認できることまでで足りるのか否かという疑問が残る。法が具体的な記載事項を定め、一定の状況を把握すべく帳簿等にその適格性を求めている以上、保存においてもその適切な状況にあることが求められていることがあるものと理解すべきであり、立証を納税者に、その基礎的な資料の開示をもって求めていることにも適合するものといえよう。保存の目的がその提示により、仕入税額控除の事実関係を確認することにあると解するならば、その、検証において、充分な時間(そもそもこれが如何なる点を意味するものであるのかという点は議論の余地があるが)や留置を求めることは保存の要件を満たしていないと、判断しうるものであるのかという点が議論されるべきであり、さらに拡張的な解釈を含有するものであるのかという点はさらに検討が必要であろう。

以上です。

毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年12月16日土曜日

判例裁決紹介(平成28年11月18日裁決、除却予定の建物の取得価額)

さて、また興が乗ったので判例採決紹介を作成しました。今回は平成281118日裁決で建物と土地を一括に取得し、その建物の除却損の計上が否認された事例です。

具体的には、本件は建物付の土地を購入した請求人が、土地の利用のため当該建物の除却費用(取り壊し)を損金計上した是非が争われたものである。当該購入時点において、当該建物は土地の活用を目的とした購入であって建物は取り壊しによる除却予定であったものであり、契約書金額において売買価格は、建物部分に関しては、零円と記載されていたものである。請求人はその確定申告において上記建物の除却損を計上して申告を行ったものであるが、上記契約金額の記載事項をもって、課税庁は当該建物の取得価額は零円であり、当該損金の計上を否認した更正処分を行ったところ、請求人が自己の経理処理として不動産取得税に基づく按分処理により当該建物の取得価額を算定し、除却費用を計上したことは構成処理基準に合致するものであるとして不服を申し出たものである。

すなわち、本件の中心的な争点は、除却予定にある建物の取得価額が如何なるものであるのかという点であり、その具体的な算定が問題とされたものであると捉えられる。実務上このような取り壊し予定がある場合の取得価額としては、下記の通達にあるように、土地の取得価額として算定することが一般的であろうが、その除却資産の損金計上を図ったものであり、請求人自らが結んでいる契約書の金額をオーバーライドして自己の判断による按分金額を取得価額としているものである。

一般に購入した資産、減価償却資産の取得価額に関しては、購入時点において、契約や支払いの事実が存在することにより、その算定が困難となるような場合は想定しがたいが、本件は他の資産との共同購入であり、さらには実質的に土地の取得を目的としたものであり(この点は事実関係からうら付けられている)、という状況に依拠したものであるが、かかるような取得価額が如何なるものであるのかという点(契約による譲渡代価の区分が不明瞭であり、按分等によって取得した資産の取得価額を法的にはいかなるものとして捉えるべきであるのかという点は)、単に本件のような除却損の金額を算定するのみならず、その具体的な金額の確定によって減価償却等においても重要な計算要因となるものであり、その具体的な意義、金額の確定に際しては、法が予定する取得価額とはいかなる意義を有するものであるのかという点を前提とするべきものであり、その具体的な意義、特に購入時点における代価が問題となるべきものと考えられる、通常、取得価額の算定においては、下記のように代価というよりはむしろ、直接要した費用(いわゆる付随費用)の存在がいかにして認定されうるものであるのかという点が課題とされることが多いものであるが、本件はいささか趣を異にするものであり、かかる点からも財産の取得価額を明らかにする上で、実務上も参考となるべき事案であると考えられる。

(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)
第三十一条 内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として第二十二条第三項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする。
6 第一項の選定をすることができる償却の方法の特例、償却の方法の選定の手続、償却費の計算の基礎となる減価償却資産の取得価額、減価償却資産について支出する金額のうち使用可能期間を延長させる部分等に対応する金額を減価償却資産の取得価額とする特例その他減価償却資産の償却に関し必要な事項は、政令で定める。
(減価償却資産の取得価額)

第五四条 減価償却資産の第四十八条から第五十条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得価額は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ各号に定める金額とする。

一 購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額

(土地とともに取得した建物等の取壊費等)

736 法人が建物等の存する土地(借地権を含む。以下736において同じ。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。

上記のように本件における中心的な争点は、同時購入した土地およびその上に存していた建物の取得価額がいかなるものであるのかという点である。上記のようにその取得価額は法人税法本法の委任を受け、施行令において具体的に一定の類型のもとでそれぞれの取得価額の算定方法が法定されている。本件においては上記通達が示すような状況、すなわち建物の利用を企図したものではなく、あくまでも取り壊し等除却を行い、土地の利用を行うことが明らかである場合である場合において、建物における取得価額の存在を基礎とした除却損の計上が認められうるものであるのかということが問題となっている。実務上はこの取扱が基本となっていることであろうが、必ずしも根拠があるものではない。この点につき、本件においての中心的な法令解釈としては、この取得価額がいかなるものであるのか等意義をいかに解するものであるのかという点がその背景にあるものと認識される。

本件は土地の利用を前提とした取得を前提としたものであり、その取得した資産(建物)が除却対象であったという特殊な要因が起点となっているものであるが、契約書における購入の代価として記載されている金額がゼロ円である点が特徴的なものである。しかしながら、かかる点に限らず、同時購入あるいは請求人の主張にあるように、複数の資産の一括譲渡した場合における代価の区分等の状況においても、区別が明瞭ではない複数資産に関して問題となるような状況であり、かかる点は比較的上記のような事情に左右されることなく、重要な点であろう。

そもそも法が取得価額を上記のように法定していることは、他の一般的な会計処理とは異なるものであり、この点が取得価額の意義を解するうえで重要な点であろう。

  法人税法施行令第54条第1項第1号は、購入した減価償却資産の「取得価額」について、「当該資産の購入の代価」と「当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額」の合計額とする旨規定している。同号は、一般に公正妥当な会計処理の基準を要約したものと認められる企業会計原則第3の5を具体化した規定であるから、非減価償却資産である土地の取得についても類推 適用することができるところ、購入の代価とは、文理上、売買契約の当事者が合意し、購入者が実際にその資産の対価として支払うことになった金額をいうことが明らかである。そして、売買契約の当事者が契約書において合意した売買価額を明示した場合には、それとは異なる金額が実際には合意された金額であったなど特段の事情のない限り、そこに記載された金額をもって、購入の代価するのが合理的である。
  本件判断においては、上記のように一般に公正妥当な会計処理の基準の具現化と解している。このような点において減価償却に代表される固定資産の取引に関しての法定化の意義をとらえている点には疑問を覚える。そもそもこのような法定処理はその起点を所得計算における減価償却の特殊性に依拠していると理解すべきであろう。すなわち、減価償却は、通常の購入や役務提供とは異なり、多年度にわたり費用配分を行うことをその基礎としている点から、第三者の介在がなく、内部取引となる。つまり恣意的な活用によりその形状をコントロールして費用計上などを行うことが可能となるような恐れを有している。かかる点を考慮して、法、特に法人税法は執行の便宜や煩雑さを回避するべく、224項において公正処理基準を基礎とした計算規則を定めているものの、その例外として耐用年数、計算方法、損金経理の要請等を付与しているものであり、本件の中心的な争点である取得価額においても、この計算の基礎となるものであり、同様の趣旨をその背景においているものと解するべきであり、ゆえに上記のように一定の類型のもとで法定しているものと考えられる。ここに取得価額の意義の重要性が見いだされることになる。

本件で問題となっている建物の取得価額に関しては購入を行ったものであり、その具体的な意義としては購入の代価であることになっており、通常、民事法の概念も借用しつつ決定されるべきものである。すなわち代価という概念は購入契約における契約同意、もしくは実際の支払額に該当することはその文理からも特段、異論は存在しないであろう。上記取得価額においても基本的にこの点につき変更はないものと理解され、上記のような取得価額や減価償却において求められている趣旨に反するような状況にない限りにおいて、契約書の金額を否定して、別の金額を付与することは非常に困難であるものと考えられる。しかるに本件の結論には賛意を示すが、上記のようにその判断プロセスにおいて検討すべき点があるように考えらえる。

上記のように本件判断では、土地の存在を基礎としてその取得価額の判定を行っており、上記取得価額の規定を公正処理基準であることを基礎として類推適用を行うことができる旨をその前提としている。本来ならば、土地の取得価額がいかなるものであるのかという点からアプローチせずとも除却予定の建物の取得価額が除却損の前提となるものであり、この価額を具体的に判定すれば足りるものであろう。土地はその価値を時の経過に伴って減少するものではなく(私見としては価額の変動が存在しており、また、需要面の影響を受ける土地が非減価償却資産であるとの仮定は、現況において妥当であるのかという疑問はあるがこれは別の問題でもある)、非減価償却資産であり、その性格は法人税法においては減価償却資産と同様のものとは捉えることは困難である。もちろん複数の土地の一括売買においては別のアプローチが必要(立法論としては検討課題となろう)となろうが、少なくとも本件においては、必ずしも土地の取得価額に関してはその類推適用を行う観点から議論する必要性は如何なるところにあったのであろうか。私見としては上記のように、減価償却資産であることを前提とした規定であることを鑑みるならば、かかる判断は議論の余地があるものと考える。租税法規一般においてもその規定の本来のものとは異なるものに対して類推適用を行うことは租税法規の基本的な要請からみて、妥当であるのかという点は、消極に解するべきであろう。
また、そもそも上記規定が公正処理基準の具体化であるという判断には疑問を覚える。上記のように本規定は減価償却資産の性格に起因するものであり、その性格としては法人税法の独自の計算への考え方を反映させているものと理解するべきであろう。減価償却に関する会計基準も租税法の影響を受けているものであり、順序が異なるものである。
但し、このように基本的には、契約書の金額による購入代価の判定は一定の客観性が確保され、租税法規の基本的な要請に合致するものであると評価される。しかしながら、このような取得価額の判定は必ずしも支配的なものではなく、土地等や譲渡時における合理的な按分方法(例えば本件のような不動産取得税等に基づくもの)による取得価額を否定するものではないだろう。何をもって合理性を判断するものであるのかという点は、問題であるが、実務においては固定資産税等一定の客観性を確保しており、この点において一定の妥当性、合理性を有していることは否定しがたいもののあくまでも、このような算定方法は拡張的に適用されるべきものではなく、法規による購入代価という文言からは、原則的には契約書等の代価の判定が一義的であることは留意されるべきものであろう。租税法としては、この例外となる場合がいかなる状況であるのかという点を検討課題となるだろう。また、本件の利用用途のように、一定の例外的な状況を判断し、取得価額を算定する際には、この利用目的の把握が必要とされることとなり、取得価額の算定は、損金計上に於いて影響を与えるものであろうからより合理的な判断においては、取得意図の把握が必要となるものであり、その判断によって租税負担の差異が発生することは中立性という観点からは取得との関連性を如何に捉えるべきであるのかという点は検討の必要があるものと考える。


以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年12月9日土曜日

判例裁決紹介(平成28年8月25日裁決、復興法人税の納税義務者、賠償金と非課税措置)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今季は平
成28年8月25日裁決で、東日本大震災における福島原子力発電所自己に伴う受領した賠償金と復興法人税の課税対象を巡って争われた事案です。

具体的には、福島県に所在し東日本大震災に伴う原子力発電所自己による賠償金を東京電力から受け取った請求人(法人)が、当該金員を収益として計上しつつも申告段階において、当該金額を減算措置を行い申告をなしたところ、課税庁がその余な減算措置は行うことはできないとして、更正処分を行ったところ、上記に加えて自社は被災地域にある法人であり、復興法人税の課税対象として復興財源確保法に定める法人に該当するとして納税義務があると解することは、法令の趣旨に反すると主張して当該処分の取消を求めたものである。

本件は、被災地域にある請求人の自己の主張・見解(正式には、弁護士会の主張の引用をなしているとのことではあるが)に基づき、課税を非難するものであり、本来ならば立法によるべきものを自己の独自の見解に基づき不服を申し立てているものである。平成29年度税制改正による災害対応税制の制定など、東日本大震災及び福島原子力発電所事故は未曾有の災害であり、我が国の租税制度に投げかけた課題は多数存在するものの、本件もこの類型に属するものであり、法人として受領した賠償金、金員の租税上の取扱や復興に伴う財源確保のあり方など、議論対象として立法によるべきものを自己の課税処分の取消を求めた事例であり、些か政治的・政策的な主張を含むものとも評価して対応すべきものとも評価すべきものであるのかもしれないが(実際、判断においては、大部分が請求人の独自の見解に基づくものとして、合理性を否定する際に多用される表現であるが、否定されている)、法人という文言に対する趣旨解釈としても法令解釈の観点や、また先行事例として非課税措置に対する公平性を検討する際にも参考となるべきものと考えられる事案である。

第一点の賠償金の損金としての取扱あるいは益金減算措置に関しては、口蹄疫に伴う手当金の同額を損金として取扱、実質的に課税対象から除外する措置が行われている。本件の主張もこの規定の類推適用を図ったものとして主張が請求人から行われている。

3  内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
  1. 一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
  2. 二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
  3. 三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
そもそも法人税法において課税対象から除外、損金として計上することに関しては、厳しい制限が加えられており、その範囲をみだりに変更することは、租税法律主義・公平負担の要請の双方から許容されるべきものとは解されない。かかる点からは本件のような主張は基本的に立法の範囲に属するべきものと捉えられ、口蹄疫対策の法令の類推適用は認められる余地はないものと考えるべきであろう。
しかしながらこのような災害等による見舞金や賠償金の受領は多様な事例において想定されるべきものであり、実際、東日本大震災においても見舞金等の支出先としての措置が特別措置法において定められている(交際費・寄附金等の例外)。本件はこのような先行事例との対比において非課税措置を求めるものであり、そのような非課税措置の性格を評価することが必要であろう。類推適用は租税法規の基本的な要請としてその適用の判断は困難であろうが、このような非課税措置が一旦導入されると立法論としても先行事例として本件のように先例として主張の根拠となり、立法対応を求められるものとなろう。実際、立法論としても先行事例の存在は反証が困難であるようなあがらい難い存在ともいえる(そもそも、より一般論としても先行事例の存在は重要な要因となるものでありかかる点において租税制度における歴史的な背景を検討することの重要性は存在しているものと考えられる)。一旦導入が決定されることとなろうが災害対応としてのフェアの観点からは同種対応がもとめられることになろうが、議論対象として歴史が証明することであろうが安易な非課税措置を導入することは総合的なフェアの観点からはリスクとなるものといえる。災害に伴う損失は情緒として寄り添うべきものであることは言うまでもないが、災害時における異常点を起点として、非課税措置を規定することは、そもそも何をもって非課税とするべきであるのか、その基準が議論されるべきであるが(もちろん類型化は困難でもあるが、かかる点は租税法の検討課題でもあるだろう)、総合的に・慎重に判断されるべきものであり、早急な対応が求められる災害対応としては相性が悪く本質的には困難を伴うものと認識されるべきであろう。私見ながら租税の基本的な、本質的な機能として本来は一般的な経費の調達をその基礎とするものであり、非課税措置の拡張はこのような財源調達機能を損なう可能性を発生させることになろう。急事に対応することが求められる災害としては給付等の他の諸制度とのバランスが取られるべきものであり、非課税措置のフェアの観点からの危険性は改めて認識され対応における機能分担の必要性が認識されるべきものとも考えられる。
また、第二の論点である「法人』の意義をめぐるものである。請求人が復興財源確保法に復興法人税法の対象となる法人に該当するのかという点が課題となっている。請求人の主張としては被災地域の復興に伴う財源の調達を担うべきものとされる法令の趣旨に基づき、その適用。課税対象となることはそもそも不適切であるとしている。処分対応として適切な主張であるのかという点はさておき(純粋に見れば、更正処分の理由となった点とは直接的な関連性は薄いと評価される)、確かに復興対象としての政策論として立法論としてかかる点が措置対象となりうるべきものと考えられることは(もちろん実質的に災害損失の存在により課税負担を行うべき対象となりえない可能性も高い)、必ずしも否定されるべきものとは捉えられないものと考えられようが、法令解釈として検討対象となりうるものであるのかという点は別の議論として捉えるべきであろう。
本件判断においても、独自の見解に基づくものであり、検討対象となりうるものではないとして特段の検討もなく、否定している(上記処分との関連性の観点からも係る対応の合理性は否定し難いが)。但し法令解釈として以下のように復興財源確保法の定める納税義務者としての意義を検討する価値はあろう。特段の定義規定をおいていないが、下記の定めにある法人とは如何なる意義であるのか、如何にして解すべきものであるのかという点は課題となろう。
(納税義務者)
第四十二条 法人は、基準法人税額につき、この法律により、復興特別法人税を納める義務がある。

請求人の主張としては、上記法人は、復興財源確保法の被災地域の復興財源確保の趣旨の観点から、被災地域に該当するものはその対象から除外されるべきものであるとして限定的・縮小的に解釈するべきものとしている。法令の趣旨に基づき(請求人の主張としてはこのような理解は弁護士会の主張が背景にあるものとして根拠としているが、あくまでもこれは単なる職能団体の一意見であり、立法や解釈において根拠としての有権性を有しているものではないことは言うまでもない、そもそもこのような趣旨を有しているものであるのかという点は厳格に検討されるべきものとも考えられる)、限定的な解釈を行うことは法令解釈としての一般論として必ずしも否定されるべきものではない。一般感覚としても課税対象を限定的に考えることに違和感を主張することに対して違和感を覚える可能性は低いともいえよう。しかるに見解として合理性が必然的に欠けるものとして理解することは必ずしも適当ではないともいえる。

但し、私見としては、租税法規において趣旨に基づく限定的な解釈を許容されるべきものとはいえないものと考えられる、租税法規における文理解釈の原則は揺るがすべきものとはひょうすべきものとは言えないだろう。特に非課税となるような限定的な解釈は上記のように先例的にも重要な判断であり、フェアの要請、要件など多様な点を考慮されるべきものである。本件も復興政策としての観点から議論されるべきものであり本質的には立法の範囲に属するものと評価されるべきものであろう。法人税法その他法令における法人の意義とのバランスも法的な安定性を担保すべき基本的な要請も鑑みるべきものとも考えられる。しかるに法令の趣旨を反映させ文言の解釈を限定的に行うことは、特に非課税を伴う場合に限らず厳格に捉えられるべきものと考えられる(不動産取得税の非課税対象を判断する事例においても趣旨の反映を図った高裁判断を否定した最判の事例も存在している)。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2017年12月2日土曜日

判例裁決紹介(平成28年12月5日、不動産鑑定評価の合理性)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年12月5日裁決で相続税の確定申告において不動産鑑定評価の利用につきその評価の妥当性が問題となった事例です。具体的には、請求人が相続により取得した相続財産の申告につき、当該評価額が問題となったものであり、中心的な争点としては当該取得した不動産(土地・借地権等)に対して不動産鑑定評価を用いたところ、当該評価額は相続税法の時価によるものとは合致するものとは考えられず、財産評価基本通達による評価額によるべきであり、当該鑑定評価額は、その財産評価基本通達による評価額に対して合理性を否定するものとしては、評価することは困難であるとして、更正処分を行ったものであり、この処分に対して不服を申し出たものである。

相続税法による時価、すなわち、相続財産の価額をいかに捉えるべきであるのかという点は、相続により取得した財産的価値を課税対象とするものとして捉えるならば、相続税法において非常に重要な概念であり、また重要な課税要件となるものである。しかるにその価額時価の算定は相続税法において重大な争点となっており、多様な争点事例が存在している。本件もその累計に属するものであり、特に財産評価を行う上で、不動産鑑定評価を利用することが最も想定されるところであるが、その利用した評価額を否定したものであり、財産評価を学ぶ上で重要な事例と考えられる。通常は、財産評価基本通達による評価、すなわちその適用が合理的であるのかという点が中心的な争点となるものであり、これにより算定された価額が相続税法が求める時価として高額であるのか否かという点が争点となることが多いものと考えられるのが相続税における財産評価の課題であるが、本件は多少趣が異なり、納税者が用いた不動産鑑定評価の妥当性が中心的な争点となっている。実際相続税申告においていかなる状況で不動産鑑定評価が用いられているのか、その位置付けは如何に捉えられているのかという点は定かではないが(この点については実務家にヒアリングしてみたいところではある)、不動産評価の申告における活用を問う上で参考となるものであり、如何なる点で相続税法に定める時価に合致するものではないのか、すなわち、以下のように相続税法22条に定める時価の解釈との関連においていかにして判断されるものであるのかという点を検討する上実務上も参考となるものであろう。
(評価の原則)
第二十二条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

特に本件における鑑定における収益還元価格の評価は特殊関係者間における取引を前提としたものであり、かかるような場合における収益還元価格評価の活用は困難ともいえる。このような点もより具体的には課題と言えよう。

最終的な判断として、本件で問題となった不動産鑑定評価や収益還元評価による評価額が相続税法において一般的に必ずしも否定されるものではないものと考えられるが、相続税法における時価の算定において、単なる価値の測定、価額自身のみならず、如何なるプロセスで、評価がされたものであるのか、その評価プロセスが合理的なものであるのかという点が問題となったものと考えられ(かかる点で本件で用いられた評価は非合理的であったものであろう、詳細な中身においては主観的な評価であると認定されうる)、この評価プロセスに対する評価もまた、評価額自身と同様に重要なものであると考えられることが指摘される。かかる点からは鑑定評価においてこのような評価プロセスの明記が重要なものとなり、鑑定評価が、評価基準に則り検証可能であるのか要求されているものともいうべきであろう。この点は鑑定評価の合理性を追求する上で重要な考慮要素となるものと考えられる。さらにどの程度具体的に検証可能であるのかという点が課題となるものだろうが、かかる点についても判断過程の検証を基礎とする更正処分における理由附記を参照として検討されるものと考えられる。

判断においては、以下のように、まず、相続税法における時価として
「 相続税法第22条は、相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨を規定しており、ここにいう時価とは相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解するのが相当である。しかし、客観的な交換価値というものが必ずしも一義的に確定されるものではないことから、相続税等に係る課税実務上は、従来から、国税庁において、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減等の観点から、評価通達を定め、各税務署長が、評価通達に定められた評価方法に従って統一的に相続財産の評価を行ってきたところであり、このような評価通達に基づく相続財産の評価の方法は、相続税法第22条が規定する財産の時価すなわち客観的交換価値を評価・算定する方法として一定の合理性を有するものと一般に認められ、その結果、評価通達は、単に課税庁の内部における課税処分に係る行為 準則であるというにとどまらず、一般の納税者にとっても、相続税等の納税申告における財産評価について準拠すべき指針として通用してきているところである。」

相続税法における時価の意義、そしての具体的な算定方法において、財産評価基本通達の位置付けを検証している。そしてさらに、以下のように、

「 そして、評価通達に基づく相続財産の評価の方法は、相続税法第22条が規定する財産の時価すなわち客観的交換価値を評価・算定する方法として一定の合理性を有するものと一般に認められていることなどからすれば、相続税に係る課税処分の審査請求において、原処分庁が、当該課税処分における課税価格ないし税額の算定が評価通達の定めに従って相続財産の価額を評価して行われたものであることを、評価通達の定めに即して主張・立証した場合には、その課税処分における相続財産の価額は「時価」すなわち客観的交換価値を適正に評価したものと事実上推認することができるというべきである。
 したがって、このような場合には、請求人らにおいて、評価通達の定めに従って評価したという原処分庁の財産評価の基礎となる事実関係に認定の誤りがある等、その評価方法に基づく相続財産の価額の算定過程自体に不合理な点があることを具体的に指摘して、上記推認を妨げ、あるいは、不動産鑑定士による合理性を有する不動産鑑定評価等の証拠資料に基づいて、評価通達の定めに従った評価が、当該事案の具体的な事情の下における当該相続財産の「時価」を適切に反映したものではなく、客観的交換価値を上回るものであることを主張立証するなどして上記推認を覆すことなどがない限り、当該課税処分は適法であると認められることになる。」
 
相続税法における時価と評価通達による評価額の関係性を認定して、広く合理性を有する旨の推定の作用、そしてその評価額における争い方として、算定プロセスの合理性若しくは、不動産鑑定評価などの資料によって評価額が時価を上回るものであると主張立証しなければならないと、判断プロセスを限定的に判断している。この点は従来と基本的に同様であり、このプロセスにおいて、不動産鑑定評価における評価額の合理性が争われ、鑑定評価を用いることの是非が判断されるものと判断している。

このように、本件における中心的な争点は請求人が用いた不動産鑑定評価が相続税法における時価として妥当であるのか否かという点がである。但し、最終的には財産評価基本通達による評価に基づくものであるとしており、この対比によって如何なる時価が相続税法において要求されているものであるのか、という点が課題となっている。22条は上記のようにその時価をもって相続財産の価額として折、時価とは取引等の行為で決定されるものであって本来ならば、その概念として多様な金額を含むものと考えられる。しかしながら、学説判例ともに、かかるような本来的に幅のある概念である時価に対して、客観的な交換価値をいうものと解しており、この点において本件も整合的である。すなわち第三者が関与するような市場取引を通じて客観性が認定されることを要請しているものであり、租税法規における基本的な要請においても合致しているものと考えられる。かかる点は異論がないところであり、財産評価の各種方法においてもこの要請と合致しているのか否かという点が求められるものと考えられる。

しかるにこの枠組にて本件における不動産鑑定評価の合理性が問われるものといえるが、単なる交換価値となるような金額を測定する・認定すれば足りるものではなく、客観性が重要であり、この検証が行えるかどうか、すなわち評価鑑定プロセスにおいて検証可能であるのかという点が重要な点であり、この点における評価が本件判断を左右している。

具体的には、本件においては収益還元価格法の採用が行われている。この評価方法の相続税法における活用の是非については従来多様な議論が行われているものであるが、本件もその類型に属するものである。まず実際に行われているものが、割合法評価との対比において、価格差を支える理由付の不備である。他にも割引率(約3.5%)の選定理由の明示がない、というように鑑定評価におけるプロセスの記載がなく、検証可能性に欠けていることが問題視されている。つまり、市場が形成されず、鑑定によって評価を行う以上、一定の見積もりが介在することは避けようがないものであるが、恣意的な評価を行うことは上記のほうが求める要請として客観的な時価としての要件を充足するものではなく、公平性を担保しているものであるとは、評価し得ないとしている。また、借地権評価においても、鑑定基準に従ったものではない、加味すべきではない要件を付与している等、その客観性を失わせる状況が、客観性を判断する上での不適格な要因が存在したことが本件判断における不動産鑑定評価の劣位を決定づけたものといえよう。

しかしながら、このように考えると、原則的な評価としての推定を受ける財産評価基本通達及びそれに基づく評価が如何に位置付けられるのかという点が課題となる。すなわち財産評価基本通達は単に通達であり、法源性を有していない。かかる点からは現状において通達による評価が原則的な位置付けを受け、実務における基準として認定されていることは租税法規の基本的な要精に照らして担保し得ない。しかるに、この位置付けを如何に捉えているのかという点が問題となる。私見としては、上記のように相続税法が、客観性に裏打ちされた交換価値を対象として要請しているという点から(及び判例も)課税庁において、統一的に一律に評価を行うことは執行の公平性や客観性を確保する上で、上記相続税法が客観性を要請することで租税負担の公平性と恣意的な課税を防止する趣旨であると解するならば、この評価通達における一律の評価は、二重の意味で合理性を有していることとなる。しかるに、上記のように、一定のプロセスの評価において客観性の確保が保証された場合においてのみ(このような限定された状況下に於いてのみ)当該評価額が財産評価通達評価額を上回っていることが明らかな状況下であることを捉えて初めて、当該評価通達の時価としての推定を覆しうるものと考えられる。このように厳格な推定を覆す要請が働いているものと解すべきであろう。しかるに評価金額の高低のみが問題となるものではなく、このような判断枠組みは租税法規において不適切として捉えられていることは留意すべきであり、ここに財産評価基本通達の法に根拠規定を置くべきであるのか、あるいは、例外的な状況を如何に判断すべきであるのかという点を検討する必要性が発生することになろう。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2017年11月21日火曜日

判例裁決紹介(平成28年12月12日裁決、保証債務に履行に伴う資産譲渡における譲渡所得の特例の適用要件)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年12月12日裁決で、保証債務に伴う所有財産の譲渡に伴う譲渡所得の特例に関する適用要件が争われた事例です。

具体的には、本件はかつて法人の代表取締役であった請求人が主たる債務者たる法人に対して連帯保証契約を締約していたことに対して、当該保証債務に対して主たる債務者の履行が不能となり、請求人の所有する財産を譲渡した事により連帯保証人としての対応を行った場合において、当該履行に伴う資産譲渡につき、下記所得税法64条2項にさだめある保証債務履行のための所得計算の特例の適用対象となるものであるのかという点が争いになったものであり、特例適用を求めた更正の請求の主張に対して、その適用がないとした通知処分に対して不服として提起したものである。すなわち、請求人の求める当該適用の要件たる求償権の行使不能の状況が発生したとしての更正の請求が認められるか否か、つまり、求償権の行使が全部若しくは一部が不能となっているのかという状況が、主張のタイミングにおいて達成されているのかという事実関係に該当すると事実認定が可能であるのかという点が中心的な争点となっているものである。請求人としては当該連帯保証契約の履行の目的となる資産の譲渡に伴う所得は、求償権の行使不能が確定した段階で所得に対する権利が確定したものとして所得を認定し、本特例の適用によって所得がなかったものとみなされると主張したのに対して、課税庁としては、資産の譲渡として所有権の移転、登記に基づく事実関係によって権利確定主義による判断になるものとして主張が争われている。結果、最終的には判断として、かかる点の解釈の範囲拡大、事前段階での保証契約の有効性等も争点とされているが、求償権の行使可能性が否定されるべきとした対照が主たる債務者のみならず、他の連帯保証人に対する求償権も含むという解釈ににおいて、本件の事実関係のもとでは、行使可能性が否定的に捉えられる状況にはないということで請求を棄却する判断が行われている。実務上、本件のように連帯保証契約の目的のため資産を譲渡し、かかる部分に該当する所得の発生をなかったものとする規定を適用するケースは多用されるものであるのかという点は興味深いものであるが、かかる点以外にも債権回収・貸倒れ、保証債務における求償権の行使可能性の租税法規における判断を行う上での留意、特に単なる履行のための譲渡であるのみでは足りないという点を留意点として把握するべきことなどを認識する上では、実務上も有益性を有するものではないだろうか。また、今後の民法改正による保証契約、特に連帯保証契約の変更は主要なトピックの一つであり、かかる点においても租税法規における保証債務の履行における取扱を検討する上で有益の一つであるのはないだろうか。

所得税法における所得のタイミングとしては権利の確定をもって行うとする権利確定主義は、ほぼ我が国の所得税法としては確立した原則であり、本件のような特殊な要因に基づく譲渡において例外的に適用が可能であるのか否か、当該特例の適用も考慮され、求償権の行使不能が確定したタイミングまで、譲渡による所得を留保し、もって特例の適用が可能であるのかということで争いがあるものとも本件は評価できようが基本的にかかる時点まで拡張的に解することが可能であるとする理由付けが明示的ではない。確かに下記法文上は、資産の譲渡と保証債務の履行若しくは求償権の行使不能が明らかになったタイミングは、特段の関連性を必要としていないものと解することは困難ではない。しかしながら本件特例は、包括的に所得を構成し、幅広くその所得を認識する所得税法の基本原則の例外規定として存在しており、社会通年に基づき、実質的な所得対象となる金員等が譲渡人の支配関係にない状況から形式的に所得の発生を反映させるべきではないとの判断に基づくものであり、譲渡の場合に限定して、所得をなかったものとみなす規定であり、資産の譲渡と関連性が要求されているものと解することが妥当であろう。確かに実務上は特に、連帯保証契約において催告の順位付けにおいて特段の要請をなし得ない状況にある以上、求償権の行使可能性が否定されるべき状況であることが判断されるタイミングは必ずしも譲渡と同時期であるようなことは必ずしも限定されているものではない事例が多数存在することは想定されうるものである。かかる点において、この譲渡のタイミングと所得の発生を限定的に捉え、かかる部分の所得の納付を留保するような処理は、立法論としては考慮には値するものともいえよう。

(資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例)
第六十四条 その年分の各種所得の金額(事業所得の金額を除く。以下この項において同じ。)の計算の基礎となる収入金額若しくは総収入金額(不動産所得又は山林所得を生ずべき事業から生じたものを除く。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部を回収することができないこととなつた場合又は政令で定める事由により当該収入金額若しくは総収入金額の全部若しくは一部を返還すべきこととなつた場合には、政令で定めるところにより、当該各種所得の金額の合計額のうち、その回収することができないこととなつた金額又は返還すべきこととなつた金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。
2 保証債務を履行するため資産(第三十三条第二項第一号(譲渡所得に含まれない所得)の規定に該当するものを除く。)の譲渡(同条第一項に規定する政令で定める行為を含む。)があつた場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたときはその行使することができないこととなつた金額(不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を除く。)を前項に規定する回収することができないこととなつた金額とみなして、同項の規定を適用する。
3 前項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に同項の規定の適用を受ける旨の記載があり、かつ、同項の譲渡をした資産の種類その他財務省令で定める事項を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。

また、本件特例の適用にあたっては、保証債務の履行のための資産の譲渡であることと(そもそもこの目的を如何にして認定評価していくことは目的が主観的な要因であることからも議論は余地がある、譲渡においてはその旨を明らかにする事が必要であるだろう)並び、上記のように履行に伴う求償権の行使可能性がその具体的な要件になっている。かかる点につき、本件は特例の適用要件を以下のように、具体的に判断している。

所得税法第64条第2項は、保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったときは、その行使することができないこととなった金額を、同条第1項と同様に、譲渡所得の金額の計算上、なかったものとみなすこととしている。本件特例を適用するためには、納税者が、①債権者に対して債務者の債務を保証したこと、②この保証債務を履行するために資産を譲渡し、保証債務を履行したこと及び③この保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなくなったことが必要であるが、「求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったとき」とは、求償権を行使すべき相手方の資産状況及び支払能力などから客観的にみて、債権回収の見込みのないことが明らかになった場合をいうと解される。
主たる債務者に資力がないため求償権の行使がそもそも不可能であることを知りながらあえて保証をした場合には、最初から主たる債務者に対する求償権を前提としていないものであり、むしろ保証人において主たる債務者の債務を引き受けたか、又は主たる債務者に対し贈与をした場合と実質的に同視できるのであるから、同条第2項にいう「求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったとき」との要件を欠くものと解するのが相当である。

本件における主要な論点もこの点にあり、上記のような資産の譲渡との関連、タイミングの問題のみならず、行使可能性が判断されるべき対象が如何なるものを含むものであり、また、如何にしてその行使可能性が否定されるべき状況にあるのかという点を明らかにすることができるのかという点が、本件特例の適用要件として重要な点となるものである。上記のように本件はこの対象範囲において主たる債務者への求償権のみならず、他の連帯保証人の存在も含む、求償権の行使可能性が、法令の意図するところであり、かかる点において、行使可能性が未だ否定されるべき状況にないタイミングでの所得の発生を否定する状況としている請求原因を排している。かかる点につき、以下のように、そもそも履行対象となる保証契約の範囲を民事法の規定に基づき、通達において捉えていることからも、租税法規の基本的な要請として民事法との整合性は原則的な判断であり、法において明示的な判断を行う旨の規定が存在せず、趣旨目的からもかかる点は否定されるものと考えられ、かかる点においては合理性を有するものといえよう。

保証債務の履行の範囲)

64-4 法第64条第2項に規定する保証債務の履行があった場合とは、民法第446条《保証人の責任等》に規定する保証人の債務又は第454条《連帯保証の場合の特則》に規定する連帯保証人の債務の履行があった場合のほか、次に掲げる場合も、その債務の履行等に伴う求償権を生ずることとなるときは、これに該当するものとする。(昭56直資3-2、直所3-3、平17課資3-7、課個2-25、課審6-13改正)
  1. (1) 不可分債務の債務者の債務の履行があった場合
  2. (2) 連帯債務者の債務の履行があった場合
  3. (3) 合名会社又は合資会社の無限責任社員による会社の債務の履行があった場合
  4. (4) 身元保証人の債務の履行があった場合
  5. (5) 他人の債務を担保するため質権若しくは抵当権を設定した者がその債務を弁済し又は質権若しくは抵当権を実行された場合
  6. (6) 法律の規定により連帯して損害賠償の責任がある場合において、その損害賠償金の支払があったとき。

しかしながら、上記判断の後半部分に関しては、議論の余地がある。すなわち、上記のように求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったとき」の解釈として、保証契約の締約段階から既にその行使可能性が否定されることを知りながら保証契約を行った場合も実質的な贈与であるとして、その適用対象と捉えることを行うべきではないとの解釈を行っている。かかる判断の根拠が如何なるものであるのかという点は定かではなく、実質的な贈与に該当するものであるとの点にその根拠を求めているものと推察される。この点につき最終的な判断としては、かかる点において、確かに契約段階では赤字であり資産状況は債務超過の段階であったものの代表取締役として改善の可能性を考慮したものであり、その該当性を否定しており、実質的には本件の判断においては影響がないものと捉えられるところではある。しかしながら、実質的な譲渡として経済的な効果を持つことは否認されるものではないものの、かかるような経済的な供与は贈与税等の法文において議論されるべきものであろう。また所得の発生を否定するものとして特例として本件特例は理解されるが、あくまでも明示的に求償権の行使可能性が喪失したことを要請しているものであって、契約の段階から事後的な状況に応じて適用を判断する構成となっていることは明らかである。本件特例において保証により譲渡による所得発生の実質的な代替を回避すべきとする趣旨を含むものと解し、上記のように求償権の行使可能性によるものを契約の事前段階の状況まで含むものと解することが可能とすることも指摘としてはありえようが(軽減措置であり、厳格な解釈を要求するべき法規定であるとの認識が背景にあるものとも考えられる)、求償権と明示的に規定し、保証契約の事後的な状況をもって適用要件としている法文であり、また、上記のように資産譲渡時における状況を反映させる規定ぶりに依拠するならば、かかるように事前の実質的な贈与と認定し、適用範囲を実質的に限定するような解釈は、民事法における契約の評価はともかくも、租税法律主義を大原則とする租税法規の基本的な要請に反するものではないだろうか。以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

2017年11月18日土曜日

判例裁決紹介(平成29年3月3日裁決、使用貸借と不動産所得)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成をしました。今回は平成2933日裁決で、不動産所得として非常に低廉な金員を受け取っていたことに対して不動産所得として該当するか否かということが争われたものです。

具体的には、不動産貸付を行う請求人が息子が経営する法人【法的な所有関係がないものであり、親族関係による一定の関係性が通常の第三者との関係とは異なる状況にあり、同族会社の行為計算否認の法理は適用できないものと想定される】、との間で隣接地の一般貸し付けとは異なる賃料で不動産を貸付ける契約を締約し、当該不動産の固定資産税相当額の2割程度の金員を受領していた事実関係において、当該金員を不動産所得であるとして確定申告を行ったことに対して当該金員は非常に低額であり、関連会社への正確には、その経営する息子に対しての経営支援の目的をもった貸付けとして使用貸借であって当該貸付けは不動産所得を生ずべき事業ではないとして更正処分を行った事例であり、申告により必要経費を計上し超過した損失を損益通算を行ったことを否定したことが中心的な争点となっているものである。より具体的には本件の事実関係における使用貸借、経営支援目的の貸付が不動産所得を生ずべき貸付けに該当するのか否かという点が課題となっており、かかる判断の前提として、所得税法26条に定める不動産所得の貸付に該当するものであるのか、如何なる意義を有するものであるのかという点が本件の起因となっているものである。

本件における貸付は特殊な関係性を前提としたものであり、試験としては租税負担の回避のような目的意識を有しているものと判断するよりも経営支援の目的に基盤がおかれるものであるとの判断が行われるようにとらえられるが、そもそも不動産所得に関してはかかるような特殊な関係性を前提とせずとも不動産所得としての該当性が事業的規模を要するものであるものとして議論される。その代表例は下記の様に事業的規模を争う事例としても代表される。そもそも私見としては、課税要件として如何なる要素をもって事業的規模を導いているのか、如何にして事業をとらえ、その判断基準を解するべきであるのかという点が課題であり、租税法規の基本的な要請たるものから考えて妥当であるのかという点が課題であると考えられる。本件も使用貸借という特殊な事実関係の認定が争われている事例ではあるが、如何なるものが不動産所得であるのかという点が租税法規の解釈上議論されるべきものであり、本件もこの類型に属するものとして有益性を有するものと考えられる。

(不動産所得)
第二十六条 不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
2 不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)

269 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。

1 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。

2 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

(使用貸借)
第五九三条 使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

上記のように本件の中止的な争点は、本件不動産の貸借における金銭の受領が事業としての不動産所得に該当するのか否かという点について上記民法による使用貸借に該当するのか否かという観点から議論されているものと考えられる。下記のように判断では解釈として不動産所得は事業として貸付けであることを求めており、その意義としては対価を得る、目的としているものであるとして、不動産所得としての貸付に対して使用貸借は該当しないとの判断を導いている。かかるような事業としての要件、方向性を求めるものである、対価を目的とする点は従前の判断と整合的であるように考えられる。そもそも対価とは如何なるものであるのかという点は疑問を持つところではあるが、本件は固定資産税額との対比ににおいて非常に僅少であり、実際の金額としては500万円を超過するものであるが、合理性に欠けるものであるとして特殊な関係を前提とした経営支援などを目的とする使用貸借であるとして判断していることが問題となっている。そもそも僅少ながら対価を受け取っている本件を使用貸借として判断することの是非、民事法の関係性が無償を基礎とする使用貸借として、単なる必要経費を負担しているに過ぎないとして否定的にとらえることに違和感を覚えるが、不動産所得としての貸付の意義として使用収益が含まれえないものであるという点はそもそも不動産所得が事業的、営利性、対価を求めるものであるという点を基礎とする以上、その合理性は否定しようがないものといえよう。

「所得税法第26条は、不動産所得とは、不動産等の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいうと定めている。したがって、不動産等の賃料が不動産所得の総収入金額に算入されるためには、当該賃料が不動産等の貸付けによる所得に該当することが必要である。そして、不動産等の貸付けによる所得とは、当事者の一方が相手方に不動産等を使用収益させて、その対価を得ることを目的とする行為から生ずる所得をいうものと解されるから、不動産等の賃貸借から生ずる賃料はこれに該当するが、対価を伴わない使用貸借については、借主から貸主に対して金員の交付等があっても、それは当該不動産等の経費の一部の支払にすぎず、不動産等の貸付けによる所得には該当しないと解すべきである。」
 

しかしながら、上記判断の後半である部分に関しては議論の余地がある。金額的には僅少であるものの対価を当事者間において移転しており、通常の用法としては対価を得ているものとして捉えることは必ずしも否定できない。本件では経費の一部負担に過ぎず、使用貸借としての該当性を否認するものではないとしている。かかる点は如何なる法令上の根拠に基づくものであろうか。使用貸借という点において多少の金員の支払いに関して(通常の経費負担)までも含むものであるとの解釈が民事法において成立しているものであるとの点に基づいているのか、それとも不動産所得の解釈としてその基本的な性格から営利性等を要請するものであり、対価において通常の取引における金銭の支払いを想定しているものであるのかという点は判断が分かれよう。

上記のように対価という用語の解釈に依拠するものであるのかもしれないが、租税法規において契約上の支払いの効力を否定する以上、何らかの根拠を要請するものと解することが必要であろう。対価を目的としている不動産所得としての法令解釈としては対価以外の目的の存在を否定するものではなく、何らかの事業目的の存在を排除しているものではないものと考えられる。本件においては経営支援という一定の対応、目的を達成していくためにかかるような対価関係の契約が選定されているものであると捉えられるが、最終的な判断は請求人の主張立証がその意図について主観的であるがゆえに変化はないものともいえるが(かかる点で本件の最終的な判断の結果は変わりないものといえるが)、法人税法における役員給与の相当性を否認する規定の存在のように、如何なる基準においてその租税法規における根拠を否定する以上明示的な対応が必要であるように考えらえる。民事法において使用貸借において一定の対価関係においても成立し得ることは否定しようがないのかもしれないが、租税法規において無償であるものと異なり、一定の対価関係の支払い関係が想定される以上、使用貸借であり貸付けに該当しないといって不動産所得としての該当性を否認することは飛躍があるのではないだろうか。そもそも事業における如何なる目的を有するものであるのかという点は、たとえ低廉であっても広告効果などの一定の目的意識との対応において合理性を有するようなケースは想定されるものであり、単にたとえ、金額的なものとして無償、低廉であるからといって営利性を有していない、対価を得ていないとして判断することは妥当ではない。単に営利性を金銭的な判断のみをもって判断することは困難である。勿論客観性を重視する租税法規の基本的な要請からはかかる判断を許容することは困難であるとも指摘できる。しかしながら本件の経営支援目的の存在等の他の存在をもって営利性や対価性を否定することは困難であり、かかるような判断を行うことは租税法がその租税法規における効果否認をもって民事法における影響を及ぼし、民事上の契約にまで踏み込むことが懸念され、事業目的の実質的な審査、判断の検討を行うことになり、結果として事業主の判断や経営上の判断に介入することになるのではないだろうか。租税の基本的な原則として中立性に反するものとも考えられれる。対価を如何に考えるべきであるのかという点でもあるが、法人税法とは異なり、法文にない対価を営利性を目的としていることをもって正常な対価によるべきであると対価関係を引き直す規定であると判断することは困難でもあろう。

かかる点は不動産所得にに限らず、如何なる目的意識をもって所得を得るのかあるいは如何なる目的をもって経費支出を行うのかという点は、事業自身が多様であり多様な行為が想定される。この点につき、如何なる状況が租税法規において許容されるのかという点につき単に金銭的な状況【あるいは短期的な損益状況】が営利性の源泉であるとの判断は、一面的な検討であるようにも考えられる。客観性を如何に担保すべきであるのかという点も課題ではあろうが、そもそも租税法規一般において如何にして営利性をとらえているのかという点はより具体的に検討すべきではないだろうか。

以上です。毎度の如く論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年11月10日金曜日

判例裁決紹介(平成28年12月5日裁決、無申告加算税の正当な理由)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成28年12月5日裁決であり、期限後申告に伴う無申告加算税の賦課決定処分に対して、請求人の事業や妻の介護等を理由として、当該処分に対して不服を申し立てた事例です。

具体的に本件は、請求人がなした贈与税の期限後申告につき無申告加算税が付加されたことが妥当であるのか否かが争点となったものであり、無申告加算税の賦課に対して宥恕する正当な理由が存在しているのか否か、すなわち、請求人が主張する妻の介護や持病等の事情が国税通則法に定める無申告加算税の宥恕対象となりうるものであるのか、正当性を有するものであるのか否かという点が中心的な争点となっているものである。

附帯税における主たる論点としては、特に無申告加算税においては、下記の条文にあるようにその賦課を行わない、要件としての正当な理由の有無、また、調査による予知があったか否かという点が従来議論対象となっているが、本件もその類型に属するものであり、正当な理由が如何なる意義を有し、その具体的な対象となる事情は如何なるものであるのかという点を明らかとする上で、有益な事例であるように考えられる。無申告加算税が加算される事例は、専門家が関与する事例においては、限定的であるように考えられるが、現状において未だ租税法規や租税制度、納税義務につき、その理解が必ずしも十分でない状況においては、かかる賦課及びその宥恕は重要であり、具体的な範囲を確定させる上で実務上も重要なものであろう。法令解釈としては、本件が採用してる判断は、最判や学説とも一致しており、新たな法令解釈として新規性を持つような特徴的な事例ではないものの、かかる解釈の淵源やその具体的な当てはめを検討する上では参考となるものと捉えられる。


(無申告加算税)
第六十六条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該納税者に対し、当該各号に規定する申告、更正又は決定に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十五の割合(期限後申告書又は第二号の修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の十の割合)を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。ただし、期限内申告書の提出がなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。

以上のように本件の中心的な争点は無申告加算税に関する判断である。しかしながら、附帯税一般において同様の文言が採用され、正当な理由による賦課の宥恕が行われている。かかる意義の一般性が如何なるものであるのかという点は、課題ではあり、私見としては、無申告加算税と他の附帯税は、その賦課が納税者間の公平負担を基礎とするものとしていることは共通しているものの、その衡平を図る上での基礎的な要件、具体的な趣旨目的が相違する部分も存在しており、正当な理由として同様の文言を採用しているものの、必ずしも同様の意義を有し、事実関係の当てはめにおいても同一のものとして評価することは要請されていないものと考えられる。従って、本件もあくまでも無申告加算税における判断であり、より広く附帯税一般において共通するものとして捉えることは、避けるべきであろう。

本件判断では、最終的に代理人等の利用や郵送による申告が可能であること等から納税者の責任を認定し、正当な理由としての該当性を否定している。感情論として、介護等の事情は本件のような事実関係において無申告加算税を課すことは、酷であるとの点から正当な理由該当性を肯定しうるものであるとの主張もあり得ようが、下記のように無申告加算税の性格やさらに前提となっている申告納税制度を基礎として考えるならば、極めて限定的に正当な理由を解釈することが一般的となっており、本件もその判断によっている。立法論としては上記のような主張は存在しうるものであるともいえようが、まずは現行制度の法令解釈がその前提とされるべきものであり係る基準となる意義に対して事実関係が当てはまるものであるのか否かという点から判断されるべきものとであることはいうまでもなく、本件判断は従前と整合的であると評価されよう。上記のような酷であるとの主張は立法の範囲に属するものであるといえよう。その必要性があるのか否かという点は、必ずしもサポートされているものとは言えないが、政策論としては検討する価値はあるかもしれない。最終的に本件は請求人による、介護等の事実関係の主張のみが行われたものであり、如何なる理由で正当性を持つものであるのかという点について根拠を指し示すことができなかった請求人の姿勢が原因となって最終的に棄却との判断を導いているが、正当な理由としてはの該当性は、単なる事実関係の主張のみでは不充分であり、正当性を如何に有しているのかという点を明らかにする立証責任が納税者に課せられていることが理解されるべきものともいえよう。

以上のように本件の中心的な争点は請求人が主張する妻の介護や自身の持病等の事情が上記国税通則法66条の正当な理由に該当するのか否かという点である。その具体的な正当な理由としては以下のように判断している。従前の判例等と整合的である。

 通則法第66条に規定する無申告加算税は、申告納税方式による国税に関して、申告納税制度の秩序を維持し適正な申告の実現を確保することを目的として、適正に法定申告期限までに申告した者とこれを怠った者との間に生じる不公平を是正するとともに、納税申告書を提出しないことによる申告義務違反の発生を防止する行政上の措置であり、法定申告期限までに申告しなかったという客観的事実があれば、期限内申告書の提出がなかったことについて「正当な理由」があると認められる場合を除いて一律に課されるものである。
 そして、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があると認められる場合とは、災害、交通・通信の途絶など、期限内に申告ができなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。

上記のように、その意義としては納税者の責めに帰すことができない事情及び無申告加算税の趣旨との対比という二要件をもって判断している。すなわち納税者に対する無申告への帰責性の有無と趣旨の観点から不当性を認定しうるか否かという点が判断の起点となるものであり、信義則等と同様に極めて限定的な状況を想定しているものとしている。つまり、かかる判断は行為自身への因果・責任と当該事情が適正な申告を行ったものと間での公平性を犠牲にしてもなお、賦課を行わないことに対して合理性を有するの否かという事実関係への評価によるものとしていると考えられる。
かかる限定的な判断は、租税法の基本的な要請としての租税法律主義の厳格な適用を旨とする現行法制度においては、合理的であり、その起点として納税者自身の計算による自主的な申告納税制度を採用していることに起因しているものと考えられ、私見としても限定的な解釈の合理性はゆるぎ難いものと考えられる。より一般的には憲法が定める納税義務は、国民としての義務を定めるものであり、単に納税するのみならず、適正な申告等の義務を追っているものとして理解されるべきものといえよう。

また第一に納税者への帰責性の有無に関しては、そもそもどの程度の物を指すものであるのかという点は、必ずしも定かではない。本件においては、代替手段との関係性の主張が不存在であることを問題視しており、かかる点が主張として必要とされる点は、帰責性の有無の具体的な判断においては重要となるものと考えられる。私見としてはかかるよう厳格な判断は上記信義則等と同様に租税法規に基本的な要請としての租税法律主義から容易に適用が認められるべきものとは考え難い点に依拠しており、厳格に係る要件の充足が客観的に確保されることをもって正当な理由としての該当性を認めるべきであり、事実上客観性の確保も要請されていることも加味すると(主観的な事由を該当すると認めることは結果として要件を緩和するものとなりうるところであり、かえって趣旨を埋没する可能性や裁量的な措置を伴うものとなることであろう。)正当な理由としての判断としては3要件を課しているものとも考えられる。帰責性そのものの意義としては、法的な意義での責任の有無が問題になるのかという点(無過失、重過失等の認定を伴うものであるのか)は定かとはなっていない。無申告に関しては納税義務への無知等、多様な因果関係が、法的にも事実上もありうるところであり、代替手段の可能性など納税者の怠惰等ではない、事情を示す程度で良いのかという点は立証責任が上記のように納税者にあるとされる場合においては、如何なる主張を求められるかという点を明らかにする上で、重要な検討課題となるものといえよう。そもそも過去と異なり、国税庁HPでの広報の充実や郵送手段、税理士代理、e-Taxの整備等代替手段は整備充実されてきている現状にあることは明らかであり、かかる点においては納税者の帰責性の有無を立証するハードルは上がっているものとも捉えられるが。私見としては租税法規が法的な関係として、租税法律関係の存立を前提としている以上は、原則的に法的な責任の有無が帰責性の判断を行う基礎となるものと理解されるべきものといえると考えられるが、第二要件としての趣旨との対応に関しても必ずしも明示的なものとはいえず、適正な申告を行ったものとの公平性及び申告義務の履行を促すものとして無申告加算税は存立しているが、かかる判断との対比においても広範囲においての責任を要請しているものと考えるべきであり、その根拠として申告納税制度を前提としているものと理解されるべきである。つまり、納税者自身による申告をその背景としている申告納税制度を基盤とする以上、無申告を許容することは極めて困難であり、かかる判断を覆すことは非常に厳しいと判断せざるを得ないものというべきであると考えられる。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。