2023年4月15日土曜日

判例裁決紹介(令和3年8月3日裁決、青色事業専従者給与の適正額)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和3年8月3日裁決で、青色事業専従者給与の適正額が問題となった事例です。 具体的に本件は、医師として医院を営む請求人が妻で看護師である者に対して給付した金員を青色事業専従者給与として自身の事業所得の確定申告において必要経費算入したことにつき、調査により、適正な金額ではないとして必要経費算入を否認した事例である。 下記のように、57条の青色事業専従者給与は所得税法56条の例外として、現代の租税法務の分野では非常に重要な役割を担っている制度であるがこの適正額が争われるケースは珍しく、本件の特徴的な点であろう。所得分割を否定している56条の例外として親族への給与支給を認めているものであるが、比較的零細な個人事業主が多く、あまり適正額が争われることは少ないが、役員給与と同様の枠組みであり、本件は、課税庁が認定した従業員との対比による方法が、採決により近隣の同業者における専従者給与による比順によるべきとして判断がくだされている論理は有益なものであろう。 (事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等) 第五十七条 青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢十五歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする。 基本的に本件の中心は、妻が看護師として勤務していたのか、他の業務(管理等)も行なっていたのかという点が論拠の一つとなっている。これにより従業員としての給与であるのか、他の業務も含むものであるのか相違しており、報酬の妥当性が異なることになり、この事実認定は実務家としても参考となろう。近年は専門家としてこのような事実関係のエビデンスの整備が求められるのが基本となりつつあるようであるが、個人の内情に踏み込む個人所得税の中でもよりヒアリングの強化などが必要な時代になりつつあるのであろう。給与であるという安易な認定ではなく、業務内容という報酬の基礎に着目した論理展開は妥当なものであろう。 私見ではあるが、個人事業主が増加傾向にあり、安易な専従者給与(そもそもとして青色特典を見直すべき時期にあると考えるが)のような事案も発生しているようであり、専従という意味も含め制度的な見直しが必要な時期になってきているのかもしれない。 以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであるので完成度は低いですが参考までに。

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