具体的には本件は、玩具販売等を営む請求人が課税庁による調査に対して、立入拒否、第三者の立会い(非税理士)、非協力(留置の拒否、第三者監視による資料書き取りなど)であったとして、取引先への調査及び、仕入税額控除を否認する消費税更正処分を行ったことに対して調査手続に対して、特に取引先調査に関しては違法性があるとして当該処分の取消を求めたものである。より具体的には調査段階における打算者の立会いを認めなかったことや請求人に対して通知なく取引先への調査を行ったことによる不備があったとしており、また、帳簿記載事項及び請求書等に対して記載の不備があることが調査段階での保存の要件を満たしていないとして、その保存の適格性を否認し、もって仕入れ税額控除の適用を否定したものである。
特殊な団体が関与するものと想定される事案であり(事実関係の経過によれば、再三の立会い要請や、調査協力拒否、書取等納税者と課税庁の対立関係がみて取れる)、税務調査、質問検査の実施、実地の調査の不備・違法性の主張によって課税処分の取消を求めたものであり、基本的に特段の法令解釈に於いて特殊な要因は見受けられるものではないが、また事実関係においても一般性を有するものとは認識し難いところではあるが、租税手続において特に仕入税額控除の適用の要件としての帳簿への記載事項の不備があるような場合は、一般に想定されうるものであり、その評価を如何に捉えるべきであるのかという点が中心的な争点となったものとして理解される。基本亭には事実関係が中心的な争点となったものであり、租税法における調査段階、質問検査の状況を垣間見る事案として参考となる可能性があろう。
7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。
【令】第四十九条
8 前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。
一 課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
ニ 第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額
9 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類をいう。
一 事業者に対し課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この号において同じ。)を行う他の事業者(当該課税資産の譲渡等が卸売市場においてせり売又は入札の方法により行われるものその他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われるものである場合には、当該媒介又は取次ぎに係る業務を行う者)が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項(当該課税資産の譲渡等が小売業その他の政令で定める事業に係るものである場合には、イからニまでに掲げる事項)が記載されているもの
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
ハ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
ニ 課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。)
ホ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
以上のように本件の中心的な課題の一つは、仕入税額控除の適用要件として、帳簿及び請求書等の保存要件を充足しているか否かという点が課題となっている。消費税法は上記30条において、適用要件として帳簿及び請求書等の保存を求めている。この保存の意義については、議論があるものの、最高裁としては、単なる保存を求めるものではなく、提示も含め、より拡張的に解する見解が取られている。以下のように本件判断も、それを踏襲して摘示の提示も可能な状況を求めているものとして理解され事実上その仕入税額控除に関する状況の発生に関しては立証責任を納税者に求めている。
事業者が、消費税法施行令第50条第1項に規定するとおり、消費税法第30条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿(法定帳簿)及び請求書等(法定請求書等)を整理し、これらを所定の期間及び場所において、通則法第74条の2第1項第3号に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、消費税法第30条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合に当たるものと解するのが相当である。
本件においては最終的に記載事項において不備があったものとして、保存の前段階として保存対象である帳簿が適正な状況、法が求める要請を充足していなかったことを起点として判断を行っているが、単に領収書などを袋にいれて、提示し、本件の事実関係においては、その記録として書き取りを求めている。ここで疑問に考えられるのが質問検査において帳簿等を提示はしているものの、この記録や留置を否認している点である。これは提示を一義的に捉え、無造作に資料を提示し、もって保存の要件を充足していると考えられ、保存の意義として最高裁が判断として上記のように拡張的な解釈を取っていることによるものであると推察されるが、調査段階において、保存されていることを提示により確認できることまでで足りるのか否かという疑問が残る。法が具体的な記載事項を定め、一定の状況を把握すべく帳簿等にその適格性を求めている以上、保存においてもその適切な状況にあることが求められていることがあるものと理解すべきであり、立証を納税者に、その基礎的な資料の開示をもって求めていることにも適合するものといえよう。保存の目的がその提示により、仕入税額控除の事実関係を確認することにあると解するならば、その、検証において、充分な時間(そもそもこれが如何なる点を意味するものであるのかという点は議論の余地があるが)や留置を求めることは保存の要件を満たしていないと、判断しうるものであるのかという点が議論されるべきであり、さらに拡張的な解釈を含有するものであるのかという点はさらに検討が必要であろう。
以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
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