2017年12月9日土曜日

判例裁決紹介(平成28年8月25日裁決、復興法人税の納税義務者、賠償金と非課税措置)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今季は平
成28年8月25日裁決で、東日本大震災における福島原子力発電所自己に伴う受領した賠償金と復興法人税の課税対象を巡って争われた事案です。

具体的には、福島県に所在し東日本大震災に伴う原子力発電所自己による賠償金を東京電力から受け取った請求人(法人)が、当該金員を収益として計上しつつも申告段階において、当該金額を減算措置を行い申告をなしたところ、課税庁がその余な減算措置は行うことはできないとして、更正処分を行ったところ、上記に加えて自社は被災地域にある法人であり、復興法人税の課税対象として復興財源確保法に定める法人に該当するとして納税義務があると解することは、法令の趣旨に反すると主張して当該処分の取消を求めたものである。

本件は、被災地域にある請求人の自己の主張・見解(正式には、弁護士会の主張の引用をなしているとのことではあるが)に基づき、課税を非難するものであり、本来ならば立法によるべきものを自己の独自の見解に基づき不服を申し立てているものである。平成29年度税制改正による災害対応税制の制定など、東日本大震災及び福島原子力発電所事故は未曾有の災害であり、我が国の租税制度に投げかけた課題は多数存在するものの、本件もこの類型に属するものであり、法人として受領した賠償金、金員の租税上の取扱や復興に伴う財源確保のあり方など、議論対象として立法によるべきものを自己の課税処分の取消を求めた事例であり、些か政治的・政策的な主張を含むものとも評価して対応すべきものとも評価すべきものであるのかもしれないが(実際、判断においては、大部分が請求人の独自の見解に基づくものとして、合理性を否定する際に多用される表現であるが、否定されている)、法人という文言に対する趣旨解釈としても法令解釈の観点や、また先行事例として非課税措置に対する公平性を検討する際にも参考となるべきものと考えられる事案である。

第一点の賠償金の損金としての取扱あるいは益金減算措置に関しては、口蹄疫に伴う手当金の同額を損金として取扱、実質的に課税対象から除外する措置が行われている。本件の主張もこの規定の類推適用を図ったものとして主張が請求人から行われている。

3  内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
  1. 一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
  2. 二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
  3. 三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
そもそも法人税法において課税対象から除外、損金として計上することに関しては、厳しい制限が加えられており、その範囲をみだりに変更することは、租税法律主義・公平負担の要請の双方から許容されるべきものとは解されない。かかる点からは本件のような主張は基本的に立法の範囲に属するべきものと捉えられ、口蹄疫対策の法令の類推適用は認められる余地はないものと考えるべきであろう。
しかしながらこのような災害等による見舞金や賠償金の受領は多様な事例において想定されるべきものであり、実際、東日本大震災においても見舞金等の支出先としての措置が特別措置法において定められている(交際費・寄附金等の例外)。本件はこのような先行事例との対比において非課税措置を求めるものであり、そのような非課税措置の性格を評価することが必要であろう。類推適用は租税法規の基本的な要請としてその適用の判断は困難であろうが、このような非課税措置が一旦導入されると立法論としても先行事例として本件のように先例として主張の根拠となり、立法対応を求められるものとなろう。実際、立法論としても先行事例の存在は反証が困難であるようなあがらい難い存在ともいえる(そもそも、より一般論としても先行事例の存在は重要な要因となるものでありかかる点において租税制度における歴史的な背景を検討することの重要性は存在しているものと考えられる)。一旦導入が決定されることとなろうが災害対応としてのフェアの観点からは同種対応がもとめられることになろうが、議論対象として歴史が証明することであろうが安易な非課税措置を導入することは総合的なフェアの観点からはリスクとなるものといえる。災害に伴う損失は情緒として寄り添うべきものであることは言うまでもないが、災害時における異常点を起点として、非課税措置を規定することは、そもそも何をもって非課税とするべきであるのか、その基準が議論されるべきであるが(もちろん類型化は困難でもあるが、かかる点は租税法の検討課題でもあるだろう)、総合的に・慎重に判断されるべきものであり、早急な対応が求められる災害対応としては相性が悪く本質的には困難を伴うものと認識されるべきであろう。私見ながら租税の基本的な、本質的な機能として本来は一般的な経費の調達をその基礎とするものであり、非課税措置の拡張はこのような財源調達機能を損なう可能性を発生させることになろう。急事に対応することが求められる災害としては給付等の他の諸制度とのバランスが取られるべきものであり、非課税措置のフェアの観点からの危険性は改めて認識され対応における機能分担の必要性が認識されるべきものとも考えられる。
また、第二の論点である「法人』の意義をめぐるものである。請求人が復興財源確保法に復興法人税法の対象となる法人に該当するのかという点が課題となっている。請求人の主張としては被災地域の復興に伴う財源の調達を担うべきものとされる法令の趣旨に基づき、その適用。課税対象となることはそもそも不適切であるとしている。処分対応として適切な主張であるのかという点はさておき(純粋に見れば、更正処分の理由となった点とは直接的な関連性は薄いと評価される)、確かに復興対象としての政策論として立法論としてかかる点が措置対象となりうるべきものと考えられることは(もちろん実質的に災害損失の存在により課税負担を行うべき対象となりえない可能性も高い)、必ずしも否定されるべきものとは捉えられないものと考えられようが、法令解釈として検討対象となりうるものであるのかという点は別の議論として捉えるべきであろう。
本件判断においても、独自の見解に基づくものであり、検討対象となりうるものではないとして特段の検討もなく、否定している(上記処分との関連性の観点からも係る対応の合理性は否定し難いが)。但し法令解釈として以下のように復興財源確保法の定める納税義務者としての意義を検討する価値はあろう。特段の定義規定をおいていないが、下記の定めにある法人とは如何なる意義であるのか、如何にして解すべきものであるのかという点は課題となろう。
(納税義務者)
第四十二条 法人は、基準法人税額につき、この法律により、復興特別法人税を納める義務がある。

請求人の主張としては、上記法人は、復興財源確保法の被災地域の復興財源確保の趣旨の観点から、被災地域に該当するものはその対象から除外されるべきものであるとして限定的・縮小的に解釈するべきものとしている。法令の趣旨に基づき(請求人の主張としてはこのような理解は弁護士会の主張が背景にあるものとして根拠としているが、あくまでもこれは単なる職能団体の一意見であり、立法や解釈において根拠としての有権性を有しているものではないことは言うまでもない、そもそもこのような趣旨を有しているものであるのかという点は厳格に検討されるべきものとも考えられる)、限定的な解釈を行うことは法令解釈としての一般論として必ずしも否定されるべきものではない。一般感覚としても課税対象を限定的に考えることに違和感を主張することに対して違和感を覚える可能性は低いともいえよう。しかるに見解として合理性が必然的に欠けるものとして理解することは必ずしも適当ではないともいえる。

但し、私見としては、租税法規において趣旨に基づく限定的な解釈を許容されるべきものとはいえないものと考えられる、租税法規における文理解釈の原則は揺るがすべきものとはひょうすべきものとは言えないだろう。特に非課税となるような限定的な解釈は上記のように先例的にも重要な判断であり、フェアの要請、要件など多様な点を考慮されるべきものである。本件も復興政策としての観点から議論されるべきものであり本質的には立法の範囲に属するものと評価されるべきものであろう。法人税法その他法令における法人の意義とのバランスも法的な安定性を担保すべき基本的な要請も鑑みるべきものとも考えられる。しかるに法令の趣旨を反映させ文言の解釈を限定的に行うことは、特に非課税を伴う場合に限らず厳格に捉えられるべきものと考えられる(不動産取得税の非課税対象を判断する事例においても趣旨の反映を図った高裁判断を否定した最判の事例も存在している)。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

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