2023年4月15日土曜日
判例裁決紹介(令和2年5月11日、粉飾決算に基づく株式の評価)
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和2年5月11日裁決で、相続税株式評価においてもととなった会社決算が粉飾を行っているものであり、もって株式評価額を争点とした事例です。
具体的には本件は、相続により同族会社の株式を取引相場のない株式であるとして評価し、相続税の申告を行った相続人たる請求人が、かかる株式の評価において基礎とした株式会社の財務諸表が金融機関の融資を受けるため粉飾されたものであるとして(利益の水増し、大幅な売掛金など資産性のない資産の計上、存在しない架空の資産の計上等)、適正な株式による評価額の修正を求め(主張する評価額の相違は一株あたり6倍に及ぶ)提起された事例である。対象となった株式会社は最終的には、結局再建協議会によって再建される事になっている。
このような融資継続を目的とした粉飾決算は、実務ではレベルの相違はあろうが、特段珍しいものではないと想定される。本件はそのような状況下において最終的に影響する相続税に対する、株式の評価において6倍に及ぶような評価額の相違を生じせしめたという点で、教訓的な意味合いも強いが、実務家にとって認識しておくべき事案であろう。相続時点以後最終的に破綻という結果に至ったことが主張の実態的な裏付けとなっているものである(おそらく請求人の思いも過度の負担をしているとの認識の原因となっているだろう)が、相続時点における基礎材料となるべき決算書の粉飾があるという会計専門家としては本来あるべきことではない状態での結果の重大性は留意される必要があろうと考えられる。
本件判断としては、請求人の主張を認めず、評価額の修正に至ることはなかった。その判断の根拠は基本的に、納税者による立証責任という点で、結論がくだされている。すなわち、納税者が裏付けとして提出した書類(その中には公認会計士による調査報告も存在しているが、基本的に推測、被相続人の指示によるした経理担当者の証言に基づく推測にとどまるものであり、客観的な裏付けに乏しいものであるとしている)、客観性のない、記述、証言に基づくものであり、更正の請求における納税者が果たすべき立証責任が明瞭に果たされていないという点が根拠となっている。
近年は、立証責任に関する考え方が租税において、課税処分においても変化してきている。本件もそのような現れという印象もあるのであるが、更正の請求という局面ではより納税者にとって主張を裏付ける局面が今後求められることであろう。本来粉飾決算はあってはならないことではあるが、本件に限らず日常的に経理や顧問を行う税務の専門家としては、日々の活動において、いかなる理由があるのか、各種エビデンスの存在を意識しておくことは調査の有無に関わらず、専門家責任の一つとなってくることは認識しておくべきということが今後は意識されるべきであろう。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであるので完成度は低いですが参考までに。
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