2019年3月29日金曜日

判例裁決紹介(平成30年5月14日裁決、実質所得者課税の原則の適用)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成30年5月14日裁決で、所得税法における実質所得者課税の原則の適用が問題となった事例です。

具体的には本件は請求人が代表者となっている医療法人が、請求人の家族(妻及び息子)に対して支払った金員(給与や、業務委託、賃料等)につき、支払われた金員の受領先である口座の管理状況等から所得税法12条に定める実質所得者課税の原則の適用により、請求人の所得として課税されるべきものであるのか否かという点が課題となった事例です。起点となった事実関係として、請求人の離婚訴訟(和解も含む)において、かかる家族名義の支払につき、名義同様に、当該口座の管理等の状況を移転し、もって実質と名義を整合させるような状況が、各種金員の支払後に発生しており、かかるような事実関係の反映も含め請求人は実質的な所得としての課税関係は有していないものとして主張しているものである。

下記のように、所得税法は、法的な帰属・名義にかかわらず、実際の収益の享受の状況をもって課税対象として所得税法を適用することを明文をもって定めている。この実質所得者課税の原則(これが実質課税の原則として適用根拠とされていた時代もあるものであるが、法文において明確なようにあくまでもその適用対象は名義関係と実質的な収益の帰属関係との整合性を図るべき規定である)、その適用において、法律上の名義と実質的な収益の享受している者との整合性を図るべく、法的な名義を超えて、かかる所得税法の適用を図るものであり、所得者という所得税の基礎的な対象を確定する趣旨であり、所得税負担を大幅に、特に負担者を確定する規定であり、如何なる者がその適用対象となって当該租税負担を行うべきであるのかを決定するものとして、非常に影響が大きい規定として、評価されるべきであり、如何なる適用要件をもってその帰属関係を画するものであるのかという点は重要な点である。しかるにその適用枠組みを如何にして解するべきであるのかという点が従前課題とされてきているものである。

(実質所得者課税の原則)
第十二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

以上のように、法は、所得者として所得者を決定するにおいて、収益の享受というという事実関係に基づいている。また、下記のように、資産から享受する者に対してもまずは資産の名義人を基礎として推定するとしている。各種の資産類型等もあり、如何なるものをその収益の享受とするものであるのか、という点は、多様な状況が想定されうるものであるが、また名義を否定し、実質的な状況を課税関係に反映させることがその基本的な目的である以上、当該規定の適用においては、個々の事実関係に左右されることも多く、その適用において高い予見可能性が確保されているとは評価しがたいものであろう。そもそも、収益の享受とはいかなる状況を意味するものであるのかという点も必ずしも定かではなく、個々の事実関係に左右されている現況にあるものであり、法令解釈上も、かかるような一般的な所得帰属関係を律する規定の適用が安定的であるとは評価しがたいものと考えられる。従って、本件のように、複数の財産(給与に限らず、賃料等が対象)がその適用対象となっており、従前のように圧倒的に給与等の支払における所得者課税の原則からより多様な対象を適用対象として争っており、また最終的な判断においても、給与支給の状況においては、その実質的な所得者としての位置づけを認める判断を下しながらも、賃料等の適用において課税庁の主張を排斥している点においても、家族間の所得の分散が図られている事例は、数多く存しているであろうし、その具体的な判断枠組みを検討する上で、本件は参考となる事例であるように捉えられる。

資産から生ずる収益を享受する者の判定)

12-1 法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する。

以上のように、本件の中心的な争点は、本件における事実関係において、実質的な所得者課税の原則の適用により、請求人に対して家族名義で支払われた金員の帰属関係を法的な名義をこえ、課税対象として理解されることになるのかという点が問題となっている。まずは法令の解釈としては文言として、その収益の享受としており、実際に受け取った収益の消費や活用を含んでいるものとして理解することができるのか否かという点も課題となるだろう。上記通達においても、享受と言う文言から収益の起因となる権利者を基礎とした判断を行っており、依拠すべき対象を収益の受け取りに基礎をおいているように解されるべきであろう。

しかしながら、判断においては、事実関係を実質的に評価するにあたって、資金の管理状況を基礎としている。通帳の管理状況のみならず、出金状況を判定している。また、金員の支払の根拠となった、雇用契約の存在(役員としての契約も含む)、賃料支払や委託業務の存在しているのか否か、不存在を、判断の基礎においていることがその特徴として指摘されよう。いわば、法的な支払根拠の有無から判断して、かかる点が欠けるような場合において、資金の管理状況が問題として、請求人に対する所得であるのか否かを判断している。但し、判断では、当該金員の請求人に対する帰属をすべて認めているのではなく、名義が異なっており、その金員の起因となった不動産の賃料の支払い(家族名義不動産)に関しては、不動産の初有名義(登記等)を覆す状況にはなく、課税庁の主張が退けられている(同様に年金保険の契約支給も含む)。このように判断の基礎となる財産類型においてもその対応が分かれるものであり、その事実関係の評価が異なっていることは留意されるべきであろう。法的な名義を覆し、実質的な所得の帰属関係を確定させることは、実質的な所得者課税の原則として法文をもって明記されているとしても、相応の根拠が要求されるべきものであり、支払われた当該金員の管理状況のみの観点からのみでは、判断が困難であることもすなわち、資産の所有経緯等のその他資産類型に応じた状況もまた考慮されるべきものであるという点は参考とされるべきであろう。しかるに収益の享受という文言はの解釈として、収益の起点や管理なども考慮した総合的な判断を要求するべきものとして理解されるものと考えられる。

以上です。
毎度のごとく、論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年3月23日土曜日

判例裁決紹介(平成30年1月30日裁決、相続税申告における財産一覧表からの記載漏れと仮想隠蔽)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年1月30日裁決で、納税者が税理士に交付した財産一覧表に記載漏れがあり、かかる行為に基づく相続税申告において仮想隠蔽の成立による重加算税の賦課が課題となった事例です。

具体的には本件は相続人たる請求人が相続税の申告において、税理士に依頼して申告を行った(期限後申告であるが)ところ、その申告の基礎資料となった財産一覧表において(一部預金残高証明書との不整合があり、税理士において修正)、保険契約に伴う受領金の記載漏れがあり、係る資料に基づく、相続税申告において未申告があることが調査によって判明し、かかる納税者の行為が仮想隠蔽に該当するとして下記のように国税通則法に定めのある重加算税の賦課決定処分が行われたことを不服として、その取消を求めた事案である。すなわち請求人たる納税者の行為が重加算税の賦課決定要件を充足する仮想隠蔽に該当すると評価されうるのか否かという点が問題になっているものである。

相続税の申告においては、その起点として最も重要な相続財産の把握であるが、実務においても多様な工夫が取られているものであろう。不相続人と相続人において事前に調整されていることや意思疎通があること、財産内容の開示、保証や各種年金、保険等の契約に関する情報が網羅的に把握されていることは基本的に稀であるだろうし、専門知識を有していないことから財産の把握に支障が発生することは言うまでもないことであろう。この点は実務家のみなさんが租税の専門家として、依頼を受けるにあたり、どのように工夫されているのか、興味深い点である。最近は相続税専門の事務所も出てきているが(個人的には租税の専門家としては長期間に渡り、家族等に関与して信用を基礎として相続税や財産関係の整理に関与すべきものと考えており、スポット的に関与する節税思考が基礎に来るような取扱は困難であるような気もしますが)本件のような、財産の一覧表を作ってくるようなケースはどのように扱うことになるのであろうか。長期間に渡る関係性を基礎としているわけではないような状況下では、網羅的な財産の把握は困難であり、納税者において意図的であるのか否かを問わず、財産の漏れは発生しうるものであり(保険などは通常は民事法においては相続対象の資産ではないが)、かかる点に対してどのように対処するのか、あるいはその漏れにおいてどのような不利益が発生することになるのかという点を検討する上で本件は参考となるべき事例と評価されよう。最終的に本件は、課税庁が主張している仮想隠蔽の成立が認められず、納税者が行った財産一覧表における保険契約等の財産漏れが仮想隠蔽には該当しないという判断が行われており、いかなる点がかかる判断の基礎になっているのかという点を理解する上でも有益な事例であるように考えられる。

国税通則法68条2項
2 第六十六条第一項(無申告加算税)の規定に該当する場合(同項ただし書若しくは同条第七項の規定の適用がある場合又は納税申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

以上のように、本件の中心的な争点は上記国税通則法に定める重加算税の要件たる仮想隠蔽の成立につき、納税者たる請求人が行った行為、依頼した税理士に交付した財産一覧表における相続財産の漏れが、該当するのか否かという点であり、本件では最終的に納税者の主張を認め、課税庁が主張する仮想隠蔽の判断を否定しているものである。

通則法第68条第2項に規定する「隠ぺいし」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠匿しあるいは故意に脱漏することをいい、「仮装し」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかもそれが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうものと解される。

上記のように、判断では仮想隠蔽の法令解釈として、故意による課税標準等に対する行為であることを要するものとして理解している。本件ではかかる故意の成立の立証が行われるか否かという点が、中心的な立証の課題となっている。国税庁が公表する事務運営指針においては、より具体的に下記のように、納税者の行為が評価しうるものであるのかという点が基礎とされているが、本件ではかかる点はあまり強調されていない。財産の一覧表において、記載漏れがあったことは、納税者自身も認めており、作成段階におけるミス等によるものとして、故意によるものであることを事実上否定しており、下記のように、事務運営指針における事実関係の問題というよりは、上記のように行為の起点となるべき納税者の行為として内心に関する故意の成立が課題となっているものとして本件は判断の枠組みが形成されている点が本件の特徴と言えよう。


事務運営指針
1 相続税関係
(1) 相続人(受遺者を含む。)又は相続人から遺産(債務及び葬式費用を含む。)の調査、申告等を任せられた者(以下「相続人等」という。)が、帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書その他財産に関する書類(以下「帳簿書類」という。)について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿をしていること。
(2) 相続人等が、課税財産を隠匿し、架空の債務をつくり、又は事実をねつ造して課税財産の価額を圧縮していること。
(3) 相続人等が、取引先その他の関係者と通謀してそれらの者の帳簿書類について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿を行わせていること。
(4) 相続人等が、自ら虚偽の答弁を行い又は取引先その他の関係者をして虚偽の答弁を行わせていること及びその他の事実関係を総合的に判断して、相続人等が課税財産の存在を知りながらそれを申告していないことなどが合理的に推認し得ること。
(5) 相続人等が、その取得した課税財産について、例えば、被相続人の名義以外の名義、架空名義、無記名等であったこと若しくは遠隔地にあったこと又は架空の債務がつくられてあったこと等を認識し、その状態を利用して、これを課税財産として申告していないこと又は債務として申告していること。
具体的な財産の漏れは、保険契約に基づく受領金の漏れ(一部)であり、かかる保険契約は請求人自らが請求して請求人本人の日常的な口座に対して入金されているものであり、一部は計上してあったものの、一部保険契約に関する部分につき、漏れが存している状況であり、すべての保険契約が漏れているのではなく、一部の契約の漏れがどのように評価されるのかという点が本件の課題となっているものと考えられる。

判断の検討においては、まずは、当該保険契約による受領金が、日常的な口座への入金であり失念しやすい相続財産ではないとの評価を行っている。いささか感覚的な表現であり、如何なるものと比して失念しがたいものであるのかという点は定かとはいい難いが、このような失念しがたいものであルトの評価を起点とした上で、いかなる理由で、故意の成立を認めないものであるのかという理由付けが問題となろう。

次なる検討においては、この漏れに関する金員を受領した口座は上記のように納税者たる請求人の日常的に利用している口座であり、他の保険金の受領とともに、通常、相続税の調査において調査されることが明らかな口座であり、かかる点によって、調査によって容易にこの漏れが把握されうる状況にあることが評価されている。かかる点が本件における故意の成立として評価し難いとされて基礎的な部分であり、いわば、漏れることとなった財産の性質及び仮想隠蔽等による財産の漏れが仮に発生したとしても、調査対象として把握されうるものであるのか否かという点(把握の容易さ)が比較衡量されることにより、故意の成立が評価されている点が本件における枠組みとして特徴点であると指摘できよう。もちろん、調査が入った段階での納税者の協力的な態度が加味されている(調査において、持参した資料を特にためらうことなく提示するなど)ことは言うまでもないことであるかもしれないが(この協力的な態度が処分行政庁と審判所において評価が異なっている点は興味深い点であるが)、このような判断の対比が本件において、課税庁の主張を排し、納税者の主張を受け入れた理由となろう。故意の成立という点において、いささか定性的な判断であり、内心に対する判断、評価であるゆえに、当然であるかもしれないが、従ってかかる点において重加算税という非常に厳しいサンクションとしての機能を鑑みるに如何にしてその適用の判断枠組みにつき一般性をいかなる部分から導出することになるのかという点は課題であろう。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年3月11日月曜日

判例裁決紹介(平成29年10月11日裁決、住宅の個人売買と住宅借入金等特別控除における特定取得)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は確定申告の時期でもあり、住宅借入金等特別控除の事例です。平成29年10月11日裁決で、消費税負担のない住宅の個人間売買における住宅借入金等特別控除における特定取得の該当性が問題となった事例です。住宅借入金等特別控除における負担した消費税の項目はどのように理解しているのかという点が背景にある事例です。

具体的には、個人たる請求人が居住用財産を購入し、住宅を取得したとして、住宅借入金等特別控除を適用を行った確定申告を行い、係る申告にいて、当該取得を租税特別措置法41条における特定取得に該当するとして、申告したところ、課税庁が当該取得は特定取得に該当するものではないとして、住宅借入金等特別控除における借入金の適用上限金額を否認したことから、その取消を求めたものである。判断としては課税庁の主張を認容し、請求人の主張を退け特定取得該当性を否定している。

確定申告の時期でもあり、かかる作業の中心的な存在でもある、住宅借入金等特別控除であるが、意外とその適用をめぐり事例は少なく、法令解釈上の論点が少ない条文とされているものであるが(租税特別措置であり公平性等の問題はあろうが)、本件はその例外的な事例であり、特定取得ということで、耳慣れない表現であるかもしれないが、最近は殆どがこの特定取得に該当するものになっているはずであり、その具体的な意義を検討する上で参考となるものと言えよう。租税特別措置法における規定でもあり、一般性があるものとは言い難いとの評価もあろうが、当該制度は利用頻度が高いものであり、かかる点からも参考となるべき事例と考えられる。また、本件の起点となっている特定取得は、その制度趣旨(最終的な法令解釈もかかる点に依拠している)である、消費税の税率上昇を機とした景気への悪影響を除外することを意図した制度であることから、今後の増税においても同様の制度が予定されており、このような側面においても有益性があるものと評価される。あくまでも本件は所得税に関する租税特別措置法の解釈に関する事例であるが、その基礎には、消費税法改正の影響が鑑みられるものであり、横断的な判断が検討が必要な事例とも捉えられる。

(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)
第四十一条 
3 前項に規定する借入限度額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 居住年が平成十二年から平成十六年までの各年、平成二十一年又は平成二十二年である場合 五千万円
二 居住年が平成十七年、平成二十三年又は平成二十六年から平成三十三年までの各年である場合(居住年が平成二十六年から平成三十三年までの各年である場合には、その居住に係る住宅の取得等が特定取得に該当するものであるときに限る。) 四千万円
三 居住年が平成十八年又は平成二十四年である場合 三千万円
四 居住年が平成十九年である場合 二千五百万円
五 居住年が平成二十年又は平成二十五年から平成三十三年までの各年である場合(居住年が平成二十六年から平成三十三年までの各年である場合には、その居住に係る住宅の取得等が特定取得に該当するもの以外のものであるときに限る。) 二千万円

5 第三項に規定する特定取得とは、個人の住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額が、当該住宅の取得等に係る消費税法第二条第一項第九号に規定する課税資産の譲渡等(第四十一条の三の二第十八項、第四十一条の十九の二第二項第一号、第四十一条の十九の三第二項第一号及び第四項第一号イ並びに第四十一条の十九の四第二項第一号において「課税資産の譲渡等」という。)につき社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)第二条又は第三条の規定による改正後の消費税法(第四十一条の三の二第十八項、第四十一条の十九の二第二項第一号、第四十一条の十九の三第二項第一号及び第四項第一号イ並びに第四十一条の十九の四第二項第一号において「新消費税法」という。)第二十九条に規定する税率により課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額の合計額に相当する額である場合における当該住宅の取得等をいう。

以上のように、本件の中心的な争点は、請求人が個人の居住用財産として取得した住宅に関する住宅借入金等特別控除の適用を巡って、その要件たる特定取得に該当するのか否かが問題になっているものである。かかる取得の該当如何によっては、住宅借入金等特別控除の適用の対象となる借入金の限度額が異なる結果となり、税額控除の金額に直接的に影響を及ぼすものである。この特定取得は、そもそもとして、消費税法の改正に伴う、税率の上昇を契機として消費活動や景気への影響を除去すべく設けられた制度であり、控除対象の金額において、消費税法の改正による増税の影響を拝すべく、限度額が定められているものである。その定義としては、上記のように、租税特別措置法41条の5項において、 個人の住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額となるような取得を対象とすることを要件としている。ここで問題となったのが、その取引における消費税の計算である。本件では、当該住宅の取得取引は、個人間の売買であり、必然的に消費税の負担は発生しておらず、仲介手数料として不動産業者に支払った金額にのみ上記増税された消費税負担が発生しているものとなる点が問題を発生させることになる。

法は上記のように、その適用において、
対価の額又は費用
として、「又は」で結んで取得に関する要件を整理している。仲介手数料は住宅の対価ではなく、付随費用と捉えられるべきものであり、取得の対価に該当しないものと解されるが(この点につき、付随費用として取得の対価とする見解もあり得ようが)、又は以下における費用に該当するものに関しては、新消費税の適用を受けており、もって特定取得に該当するということが請求人の主張となる。文言においては、又は費用として付随費用部分を、対価と並列的に規定しているように理解することは特段、違和感がないものであろう。請求人の主張もかかる点を捉え、法の要請として、対価又は付随費用のいずれかにその新消費税の負担が発生していることで特定取得は足りるものとしている理解が基礎にあるものである。しかしながら判断の解釈は、

特定取得とは、①居住用家屋の新築若しくは既存住宅の取得に係る対価の額
又は
②増改築等に係る費用の額に含まれる消費税額等の合計額が、新消費税率により課され
るべき消費税額等の合計額に相当する額である場合における住宅の取得等であると解す
るのが相当

として、取得等の内容を分類し、純粋な取得と、住宅借入金等特別控除の対象たる増改築等に分けて捉えることで、その適用対象における、上記文言の費用部分を解している。これにより、取得における仲介手数料のような対価に含まれない部分における消費税負担では、特定取得には該当しない、すなわち、特定取得の判断のメルクマールはあくまでも対価の額であり、付随的な費用は関連を有しないものとしていることになる。かかる解釈は、通常の文言を見れば、容易に理解できるものとはいい難いものであろう(かかる点において納税者の主張は理解できよう)。当該解釈の根拠はこの特定取得の立法趣旨であり、制度趣旨として親消費税の影響を除去することにあることから、対価に含まれる消費税の負担が問題であり、対価に含まれないものまでもその適用対象とはしないものとする理解が導かれていることになる。上記のような趣旨に基づく解釈は、租税法規の基本的な要請と整合的であるのかという点では疑問が指摘される可能性はある。そもそも我が国の租税法規においては、原則から逸脱することは限定されるべきものであることが強く主張され、このように趣旨が考慮されることは比較的珍しいものと評価される。しかるに、租税法規における趣旨が必ずしも明確ではないこともまた多いものであるが、本件のように裁決であるが制度趣旨を明らかとし(本法ではなく、租税特別措置法における制度であることが趣旨の特定につながったものであろう)、適用要件を分類整理してその適用を明らかとしている事例として、参考となるべき事例と考えられる。所得税の確定申告においては、この住宅借入金等特別控除の申請において、記入欄に消費税の計算に関する項目欄(実務においてはその具体的な意義を考えているだろうか・・・多分そんな暇はないと言われそうだが)があるが、かかるような消費税と所得税の関連をその制度背景として有していることは理解されるべきであろうし、本件のような問題の発生は専門家としてより留意されるべきものと考えられる。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年3月4日月曜日

判例裁決紹介(平成29年6月9日裁決、仕入税額控除の適用要件としての帳簿の保存、調査段階で第三者の立会、説明の自発的拒否)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は平成29年6月9日裁決で、消費税法における仕入税額控除の適用を巡って帳簿等の保存の有無及び、調査段階での第三者立会、説明の拒否があった場合における課税処分の効力が争われた事例です。

具体的に本件は、営業外交業務を担う事業者たる請求人が、確定申告等を行っていなかったところ、調査により消費税法の仕入税額控除の適用がなく(推計により売上は存在し、消費税の納税義務者であることは確定している)、消費税額の納税を決定した処分の適否に対して、調査上の違法(第三者の立会、請求人に対する説明の未了)を主張してその適用の是非に関して争点とされている事例である。

本件の起点は、第三者の立会における調査が認められるうるものであるのか否かという点が起点となっているものであり、専門職であれば、これだけでその具体的な意義については想定されるものであろうが(ご苦労さまです、かかるような調査対応の存在は聞いていますが。)、かかる点において特殊な状況に基づくものと評価されるべきものと評価することもできようが、当該対応に起因して、自発的な納税者による説明の拒否が行われている(事実上)状況を如何に評価すべきであるのかという点が、問題になるものである。

もう一つの争点は、消費税法の仕入税額控除の適用として、その適用たる帳簿等の保存に関する手続的な問題である。この点は、従前と基本的に変わるものではなく、保存の具体的な解釈が問題になっているものである。周知のように最判において、かかる文言の解釈としては、単に文字通りの保存のみではなく、調査等において提示を求められた場合において具体的な提示ができるような状況にあることをその具体的な意義としていることは本件でも踏襲されている。しかるに法令解釈として特段特徴的なものではないものと考えられるが、手続法の改正後、その調査手続の意義が具体的に問われているものとして、本件は参考となるものと言えよう(私見としては、国税通則法の改正から一定期間経過し、学会でのメインテーマになったような状況であろうが、租税負担の公平性あるいは、近年のICT等の発展に伴った手続のあり方を立法論として検討すべき段階にあるように考えている)。

この保存の意義においては、下記のように、消費税法30条において、保存の意義を拡張的に解釈している。ほぼ目立つ条文ではないが、かかる点において、その具体的な記載事項等も明記されており、その不備も含め消費税法の非常に重要な条文であるが、その解釈として保存の意義は、上記のように最判を踏襲しており(当たり前であるが)、重要な判断であろう。しかしながら如何なるものを充足すれば、提示したことになるのか、本件でも問題にあったが、一部資料(この資料自体が帳簿等には該当しないとして最終的には、その提示を否定しているが)のみをみせ、コピー等を拒否し、複写を求めるなど事実上資料の確認ができない、十分に確保できないような状況等を如何に捉えるべきであるのかという点は今後の課題となるべきではないだろうか。帳簿等の意義も含め(今後は適格請求書の保存も問題になるが、おそらく、帳簿等にのみ依拠する段階からよりその記載事項の適格性が問題になるものと想定される)、かかる点を保存においてどのように位置づけ、適格な仕入税額控除の適用要件として評価するのかという点は、すなわち、何をもってその適格な提示として理解されるべきであるのかという点は今後の検討課題となるべきものと評価されよう。

第三十条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下この条及び第三十二条から第三十六条までにおいて同じ。)若しくは特定課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第四十五条第一項第二号に掲げる課税標準額に対する消費税額(以下この章において「課税標準額に対する消費税額」という。)から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に百八分の六・三を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)、当該課税期間中に国内において行つた特定課税仕入れに係る消費税額(当該特定課税仕入れに係る支払対価の額に百分の六・三を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)及び当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この章において同じ。)につき課された又は課されるべき消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。次項において同じ。)の合計額を控除する。
一 国内において課税仕入れを行つた場合 当該課税仕入れを行つた日
二 国内において特定課税仕入れを行つた場合 当該特定課税仕入れを行つた日
三 保税地域から引き取る課税貨物につき第四十七条第一項の規定による申告書(同条第三項の場合を除く。)又は同条第二項の規定による申告書を提出した場合 当該申告に係る課税貨物(第六項において「一般申告課税貨物」という。)を引き取つた日
四 保税地域から引き取る課税貨物につき特例申告書を提出した場合(当該特例申告書に記載すべき第四十七条第一項第一号又は第二号に掲げる金額につき決定(国税通則法第二十五条(決定)の規定による決定をいう。以下この号において同じ。)があつた場合を含む。以下同じ。) 当該特例申告書を提出した日又は当該申告に係る決定(以下「特例申告に関する決定」という。)の通知を受けた日

7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。
8 前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。
一 課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
ニ 第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額
二 課税仕入れ等の税額が特定課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 特定課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 特定課税仕入れを行つた年月日
ハ 特定課税仕入れの内容
ニ 第一項に規定する特定課税仕入れに係る支払対価の額
ホ 特定課税仕入れに係るものである旨
三 課税仕入れ等の税額が第一項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物に係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税貨物を保税地域から引き取つた年月日(課税貨物につき特例申告書を提出した場合には、保税地域から引き取つた年月日及び特例申告書を提出した日又は特例申告に関する決定の通知を受けた日)
ロ 課税貨物の内容
ハ 課税貨物の引取りに係る消費税額及び地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。次項第三号において同じ。)又はその合計額
9 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類をいう。
一 事業者に対し課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この号において同じ。)を行う他の事業者(当該課税資産の譲渡等が卸売市場においてせり売又は入札の方法により行われるものその他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われるものである場合には、当該媒介又は取次ぎに係る業務を行う者)が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項(当該課税資産の譲渡等が小売業その他の政令で定める事業に係るものである場合には、イからニまでに掲げる事項)が記載されているもの
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
ハ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
ニ 課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。)
ホ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
二 事業者がその行つた課税仕入れにつき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で次に掲げる事項が記載されているもの(当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る。)
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ハ 課税仕入れを行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税仕入れにつきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
ニ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
ホ 第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額
三 課税貨物を保税地域から引き取る事業者が税関長から交付を受ける当該課税貨物の輸入の許可(関税法第六十七条(輸出又は輸入の許可)に規定する輸入の許可をいう。)があつたことを証する書類その他の政令で定める書類で次に掲げる事項が記載されているもの
イ 納税地を所轄する税関長
ロ 課税貨物を保税地域から引き取ることができることとなつた年月日(課税貨物につき特例申告書を提出した場合には、保税地域から引き取ることができることとなつた年月日及び特例申告書を提出した日又は特例申告に関する決定の通知を受けた日)
ハ 課税貨物の内容
ニ 課税貨物に係る消費税の課税標準である金額並びに引取りに係る消費税額及び地方消費税額
ホ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
10 第七項に規定する帳簿の記載事項の特例、当該帳簿及び同項に規定する請求書等の保存に関する事項その他前各項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

また、以上のように、本件ではその中心的な争点は、上記のように仕入税額控除の適用要件としての保存等が問題になっているのみならず、かかる点の状況を調査する段階で、質問検査の実施、あるいは実地調査の段階において、税理士等の有資格者ではない、第三者の立会を認めるか否か、そして、調査の終了の際の手続として説明を行うこととされているが、この説明が適格に実施されていないような状況が課税処分の効力に影響を及ぼすレベルにあるのか否かという点が中心的な争点となっている。

調査段階における手続上の不備は、一般論として下記のように本件判断においても示されているように、刑罰法規への抵触などを除き、必ずしも処分の違法性、取消事由として該当するものではないものとして理解されている。但し、かかる判断の基礎は、平成23年の国税通則法の改正以前の判示によるものであり、必ずしも現行法においては特に判断が示されているものではない。私見としては、調査自身の基礎となるべき趣旨の共通性は維持されており、しかるにその効果の否定においても特段、従前と異なるものではないものと考えてられる(一般論としては打倒しているもの)が、より事例の集積を必要とするべきものであろう。刑罰法規に限定するような違法性の評価と適正な課税負担との衡平において妥当と評価されうるのか、個々の調査手続は一様ではなく、より個別具体的にその手続の趣旨も含め、検討されるべきものと考える。旧法における身分証の提示等一部しか認められていなかった手続法の状況とは現状は全く異なるものであり、かかる手続の目的等も異なる可能性がある。

「通則法第25条は、同条の規定による決定は、その調査により行う旨規定しているところ、税務調査の手続は、租税の公平かつ確実な賦課徴収のために課税庁が課税要件の内容を構成する具体的事実の存否を調査する手段として認められた手続であって、その調査により課税標準の存在が認められる限り、課税庁としては課税処分をしなければならないのであり、また、決定処分の取消しを求める審査請求や訴訟においては客観的な課税標準の有無が争われ、これについて実体的な審査がされるのであるから、税務調査の手続の瑕疵は、原則として決定処分の効力に影響を及ぼすものではなく、例外的に、税務調査の手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び、何らの調査なしに決定処分をしたに等しいものとの評価を受ける場合に限り、決定処分の取消事由となるものと解するのが相当である。」

第三者の立会に関しては、守秘義務の観点から、有資格者ではない第三者の立会を認めるべきではないことは、判例においても、従前と整合しており、ほぼ確定しているものといえよう。しかしながら実務的には会計事務所の職員など実務担当者を如何なる論理において正当性を填補することになるのかという点は興味深い。

また、下記のように本件における調査終了の手続としての説明の拒否は如何に評価されるものであろうか。法は下記のように、その手調査終了の手続として明確に説明を行うことを義務付けている。しかしながら、説明という概念は、法的には特段の定義がなされているものではなく、如何なる意義を有するものであるのか、拙稿において指摘したが、その具体的な意義は、応答を含むものであるのか、どの程度の説明を要するものであるのか等、その具体的な意義は必ずしも明らかとなっているものではない。実務的には、メモ、書類のの交付等の実施をもって処理しているようであるが、非常に煩雑な状況にあるものとも捉えられる。もちろんかかる状況は納税者の権利保護の観点からは理由附記と相まって、抑制的な効果をもたらすものとして肯定的に評価する見解もあり得よう。しかし本件もかかる処分の前提としての説明を充足していないものの、その経緯として納税者の拒否(事実上の)に起因しているような場合において、適格な手続を充足しているものと評価されるものであるのかという点は、明文の根拠がなく、如何なる位置づけにあるものとして処理されるべきか課題となるべきものであろう。判断では、この制度の趣旨を特段検討することなく(単に重大な違法がないと判断しているだけであり、裁決とはいえ、詳細な検討に欠けているとの評価も受けうるだろう)、下記のように、納税者の事実上の拒否による、すなわち納税者の帰責によるべきものとして、その充足の不備による処分の取消事由としての該当を否定している。私見としてもかかる判断は、納税者の事実上の拒否は、自身の権利の放棄であり、処分の前提として法的な効果が説明されているならば、妥当性を有するものであるとの評価されるものと考えるが、かかる説明の趣旨目的からより検討される必要があると考える。一般にいわゆる税務調査(質問検査の実施、実地の調査)は任意調査とされていることから、かかるような本件における理解が正当性を有しているのかという基礎的な疑問は、検討の余地があるものである。任意調査という位置づけと実効的な調査手続のあり方は、より、検討されるべき課題ではないだろうか。

調査の終了の際の手続)
第七十四条の十一 税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等(第三十六条第一項(納税の告知)に規定する納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)を含む。以下この条において同じ。)をすべきと認められない場合には、納税義務者(第七十四条の九第三項第一号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる納税義務者をいう。以下この条において同じ。)であつて当該調査において質問検査等の相手方となつた者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。
2 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。

「本件調査担当職員は、調査結果の内容の説明を行う日を調整するために請求人の携帯電話に架電したり、調査結果の内容の説明を行う日時場所、都合が悪い場合 には連絡してもらいたい旨、連絡も来署もない場合には調査結果を更正決定等通知書により知らせることになる旨などを記載した書面を請求人あてに郵送したりしたが、それにもかかわらず、請求人は何ら応答しなかったというのであり、これらの事実によれば、本件各決定処分等に当たり、請求人に対して調査結果の内容が説明されなかったのは、請求人が説明を受けようとしなかったためであると認められる」

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。

2019年2月25日月曜日

判例裁決紹介(静岡地判平成29年3月9日、保険の解約払戻金による一時所得と負担者が異なる保険料の控除可否)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、静岡地判平成29年3月9日で、保険の解約払戻金に対する控除対象の保険料を負担者が異なる部分まで含むのか否かという点が争いになった事例です。

具体的には本件は、法人の代表取締役であり、法人が契約した逓増保険(年間900万ほどの保険料、総額1億4000万の保険契約)を法人から原告たる代表取締役に対して譲渡(譲渡時においては、その時点での解約した場合に受領できる解約払戻金相当額約400万を支払っている)し、一定の時期経過後、もって原告が当該保険料を解約し、解約払戻金(約2600万)を受領した事例において、当該解約払戻金が一時所得を構成するものであるのか否かという点が争点とされているものである。より具体的には、一時所得の計算上、当該所得を得るために支出した金額に対して、原告以外の法人が負担した損金(福利厚生費として処理済み)として処理した保険料金額が該当するのか否かという点が問題となっているものである。本件で問題となった事例は平成22年度所得に関するものであり、下記のように平成24年の税制改正において、所得税法施行令183条4項が追加され、基本的に対象となる控除可能額は、個人が負担したものに限定される旨が明確化されたものであるが、その以前においては、一部資料において、個人が負担したもの以外の総額を対象とする旨の記載があったものもあり、その適用が問題となっていたものである。判時としては、本件でも引用されているが、先行する最判(平成24年最判)において、当該改正による以前においてもその対象となる経費は、個人が負担したものに限定する旨が示されているものであるが、本件は、かかる判示を否定するものであり、一時所得の文言や、総額としていたことから、あるいは、本件改正によって遡及的に適用され、あるいは事後法において課税対象とされたことを問題視しているものである。判示としては、原告の主張を排斥しているものであるが、最判を引用し、経費控除を個人負担に限定するもののみならず、信義則の成立も否定しているものである。法人の節税策として、保険を活用した措置は、広く行われているものであり、本件もその中の事例の一つであるように捉えられるが、解約払戻金を途中解約においては、低く抑え、保険料と調整し、原告へ負担保険料総額よりも低額で移転させ、もって総額負担として、一時所得の発生も減少させるような本件のスキームは、珍しいものではなかったものと考えられるが、最判によって否定され、法文においても明確に否定されているものであるが、最判を踏襲して一時所得の控除対象を否定し、更に、信義則等の成立を否定した本件は実務上も参考とされるべきものであろう。保険を活用したスキームは、非常にアグレッシブなものから、多様な存在が確認されるものであるが(多くの事例において、非常に否定的な、租税負担の回避を否認する処理が形成される予定であろうが)、経費控除において大幅な制約が付与されており、保険に関する法規の解釈は常にアップデートする必要性を示唆してくれる事例であるように考えられる。対比として、租税法の基本的な要請として租税法律主義により、明示的に主体が同一であることを要求していない(原告の主張でも)点を鑑みるに、また明文をもっって平成24年改正によって対応している点からも現行法の解釈における負担の主体の一致を要求することに対してその論理的な根拠としては、適格なものであるのかという点は議論の余地があるものと考える。いずれにしても、平成24年改正による法文の追加が明確化を図る、確認規定であるのか否か、という点も考慮対象として行くことも必要であろう。現行法の解釈においてはかかる点は確認として、一般的に、一時所得の趣旨からあるいは所得類型に分類している趣旨からその判断は、導かれるものと理解している事になっているものと捉えれよう。

(一時所得)
第三十四条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。
3 前項に規定する一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。

以上のように、本件の中心的な争点は、上記一時所得の算定において控除対象となる金額の範囲を以下に解するのかという点が問題となっている。収入を得るために支出した金額がどのように解されるのか、という点は、勝馬投票券の事例でも問題となっているが本件のような保険においても重要な要因となっている。

本件のように保険契約の譲渡を伴うような事例は本来は一時所得に想定の対象であるのかという点も疑問を覚える点であるが(給与所得として課税対象とすべき場合もあるように評価されよう)、基礎的な条文の解釈、一般論としての一時所得の対象をどのように捉えるのか、という点が、本件のような特殊な事例ではあるが、問題とされている。保険契約の譲渡や、経費負担を本人以外が行うような事例は他に想定されるのかという点は実務家に聞いてみたい点である。

本件の事例としては下記のように現行法において、保険の控除対象を限定する形で明文をもって限定が付与されており、現在において直接的には問題となるような状況ではないのかもしれないが、本件も最判も一般的な所得税法における条文の解釈を通じて、個人負担を行ったものに限定される旨は一時所得においては重要な判定材料になっているものと理解されるべきであろう。すなわち、一時所得から控除されるものとして、所得に対して個人が負担したものに限定されると解しており、一般的な理解であろう。判示では、その判断は、担税力を起点としてその判断を行っており、担税力を減少させるものをその対象としている。個人の所得負担において担税力を減少させるものは、個人が負担したものに限定されるとの判断であろう。原告のように所得者と負担者が一致しないようなケースは従前は想定されていなかったものであるが、保険契約に限らず、金融取引の操作性から鑑みるに、このような負担者の相違に関しては、法はどのように捉えているのかという点を理解する必要性があろう。本件のような主体の統一を要求する解釈は法文というよりは、租税負担の類型、所得類型の性格に、一時所得の性格に着目した判断であり、法文上の根拠という点では劣位とも評価されうる。特に担税力という概念を基礎としているが、かかる概念は法文上は存在しない概念であり、もって必ずしもその具体的な意義内容が確定しているものではない。かかる点を基礎としている判断は検討の余地があるのではないか。私見としては結論は賛成を示すものであるが、控除対象において直接との文言を付与されている点から、個人負担に限定する解釈が導けるのではないかと考えている。

所得税法施行令183条
2 生命保険契約等に基づく一時金(法第三十一条各号(退職 
二 当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金(第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産及び確定拠出年金法第五十四条第一項(他の制度の資産の移換)、第五十四条の二第一項(脱退一時金相当額等の移換)又は第七十四条の二第一項(脱退一時金相当額等の移換)の規定により移換された同法第二条第十二項(定義)に規定する個人別管理資産に充てる資産を含む。第四項において同じ。)の総額は、その年分の一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入する。ただし、次に掲げる掛金、金額、企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金の総額については、当該支出した金額に算入しない。
イ 旧厚生年金保険法第九章(厚生年金基金及び企業年金連合会)の規定に基づく一時金(第七十二条第二項(退職手当等とみなす一時金)に規定するものを除く。)に係る同項に規定する加入員の負担した掛金
ロ 確定給付企業年金法第三条第一項(確定給付企業年金の実施)に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて支給を受ける一時金(法第三十一条第三号に掲げるものを除く。)の額に第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産に係る部分に相当する金額が含まれている場合における当該金額に係る法第三十一条第三号に規定する加入者が負担した金額
ハ 第七十二条第三項第五号イからハまでに掲げる規定に基づいて支給を受ける一時金(同号に掲げるものを除く。)の額に第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産に係る部分に相当する金額が含まれている場合における当該金額に係る第七十二条第三項第五号に規定する加入者が負担した金額
ニ 小規模企業共済法第十二条第一項(解約手当金)に規定する解約手当金(第七十二条第三項第三号ロ及びハに掲げるものを除く。)に係る同号イに規定する小規模企業共済契約に基づく掛金
ホ 確定拠出年金法附則第二条の二第二項及び第三条第二項(脱退一時金)に規定する脱退一時金に係る同法第三条第三項第七号の二(規約の承認)に規定する企業型年金加入者掛金及び同法第五十五条第二項第四号(規約の承認)に規定する個人型年金加入者掛金


4 第一項及び第二項に規定する保険料又は掛金の総額は、当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額から次に掲げる金額を控除して計算するものとする。

三 事業を営む個人又は法人が当該個人のその事業に係る使用人又は当該法人の使用人(役員を含む。次条第三項第一号において同じ。)のために支出した当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金で当該個人のその事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額若しくは山林所得の金額又は当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上必要経費又は損金の額に算入されるもののうち、これらの使用人の給与所得に係る収入金額に含まれないものの額(前二号に掲げるものを除く。)

以上毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年2月18日月曜日

判例裁決紹介(平成30年3月1日裁決、有利発行による株資金も引受と所得課税)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は平成30年3月1日裁決で、同族会社の役員が有利発行により引き受けた株式の時価との差額が経済的利益として課税対象になった事例です。

具体的には、非上場で、同族会社の取締役である請求人が、父であり、当該法人の代表取締役から法人株式の移転を受けるべく、税理士等の助言を受けた評価額をもって通常の譲渡(贈与)を行うのはなく、当該発行法人である法人を経由して、譲渡を行い(法人にとっては自己株式の取得)、かかる株式を請求人が引き受けた取引を行ったものであり、法人の資金需要に答えるべく増資されたものではなく、株式の移転を行うべき意図をもって、このような株式の引き受けた行為を前提として、当該引受けに伴う金額と当該法人の株式の価額の差額が、役員たる地位に基づく、賞与であるとして(現行法において賞与という概念はないように捉えられるが、受領者側の評価だろう。)、所得課税対象となるべきであるのかという点が問題になっている事例である。

他の争点としては、かかるような租税負担に対する誤解(税理士がついているような状況でこれが認められる可能性があるのか疑問ではあるが)あるものであり、錯誤であるとして当該移転が無効であり、その所得負担は発生していないものとして主張している点も争点に含まれている(なお、この主張の前提として、当該移転に伴う利益の解消は測れられていない)。この点に関しては単なる誤解を主張するものであり、経済関係の解消は図られておらず、租税負担の錯誤による取引の無効は認められていない。

本件は、息子たる請求人への株式の移転を企図した事例でありながらも通常の株式の譲渡や贈与という取引を行うことなく、法人を経由して、その移転と同様の結果となる取引を行っていることが特徴的であり、自己株式の取得と株式の引受け(法人の側面からは自己株式の処分)が行われているものであり、通常の株式の引受けにおいては、経済的成果の発生する余地はないものであり、引受時の株式価額との差額が有利な発行に該当するとして所得課税が付与されるべき経済的利益にとして評価されるか否かという点が起点になっている事例である。法人の株式の移転は、通常の取引においては、特段問題となるべきものではないが、近年の事業承継や相続税の負担の増加等を鑑みるに、日常的に行われうる取引であろうし、当該金額の算定がそもそもの問題として、実務家においても移転スキームの留意点として記憶されるべき事例ではないだろうか。

収入金額)
第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

以上のように本件の中心的な争点は上記所得税法に定める経済的利益が、本件の事実関係、株式の移転において発生しているのか否かである。ちなみに、株式の移転にかかわらず、新株予約権等の株式の取得金額を付与されているケースにおいても、所得税法及び所得税法施行令において下記において、その経済的利益の発生を明文を持って規定している。

(発行法人から与えられた株式を取得する権利の譲渡による収入金額)
第四十一条の二 居住者が株式を無償又は有利な価額により取得することができる権利として政令で定める権利を発行法人から与えられた場合において、当該居住者又は当該居住者の相続人その他の政令で定める者が当該権利をその発行法人に譲渡したときは、当該譲渡の対価の額から当該権利の取得価額を控除した金額を、その発行法人が支払をする事業所得に係る収入金額、第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等の収入金額、第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等の収入金額、一時所得に係る収入金額又は雑所得(第三十五条第三項(雑所得)に規定する公的年金等に係るものを除く。)に係る収入金額とみなして、この法律(第二百二十四条の三(株式等の譲渡の対価の受領者等の告知)、第二百二十五条(支払調書及び支払通知書)及び第二百二十八条(名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書)並びにこれらの規定に係る罰則を除く。)の規定を適用する。

発行法人から与えられた株式を取得する権利の譲渡による収入金額)
第八十八条の二 法第四十一条の二(発行法人から与えられた株式を取得する権利の譲渡による収入金額)に規定する政令で定める権利は、第八十四条第二項各号(譲渡制限付株式の価額等)に掲げる権利で当該権利の行使をしたならば同項の規定の適用のあるもの(次項において「新株予約権等」という。)とする。
2 法第四十一条の二に規定する政令で定める者は、贈与、相続、遺贈又は譲渡により新株予約権等を取得した者で当該新株予約権等を行使できることとなるものとする。

本件では請求人の主張にもあるが、基本的にその経済的成果の存在がそもそも観念し得るのかという点も問題であり(通常の株式の引受けとして)、また具体的に如何なる方法をもって算定されるべきであるのかという方法論も問題となっている。特に後者に関しては、下記のように所得税基本通達において、財産評価基本通達による評価を当てることが、明記されており、基本的に相続税における財産評価を基本目的とする評価通達によるものが合理的であるのかという点が問題となる。本件は裁決であり、当然のように、通達による処理を基本的な前提としてその判断を行っているが、正確には、下記のように通達も評価通達に準じて処理を行うものとしており、所得税法の目的において一定の調整は行われるものと考えられるが(そもそも所得税法の目的をどのように解するのかという点は定かではないだろう)、いずれも通達をその根拠とするものであり、租税法規の基本的な要請として妥当であるのかという点は検討すべきものであろう。

相続税法においては、財産評価基本通達はその合理性を最判によっても肯定されており、原則としてその評価を用いることは合理性を有しているものと評価されるが、所得税法において、特に一定の調整を付与したものが、同一の位置づけを有しているもの評価すべきは検討すべき課題である。地方税法にその根拠(委任)を有する固定資産税評価基準とは異なり、財産評価基本通達はあくまでも通達であり、その位置づけは異なるものの、実際においては両者は同様に位置づけをもって評価されている。私見としては、固定資産税評価基準と同様に、位置づけ、法令に一定の基礎を置くべきであると考えるが、すべてを法令に落とし込むことは時価、価額の概念からも非合理的であろう。

(有価証券の評価)

36-36 使用者が役員又は使用人に対して支給する有価証券(令第84条第2項各号に掲げる権利で同項の規定の適用を受けるもの及び株主等として発行法人から与えられた株式(これに準ずるものを含む。)を取得する権利を除く。)については、その支給時の価額により評価する。この場合における支給時の価額については、23~35共-9及び昭和39年4月25日付直資56ほか1課共同「財産評価基本通達」の第8章第2節《公社債》の取扱いに準じて評価する。
「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」には、物品その他の資産の譲渡を低い対価で受けた場合におけるその資産のその時における価額とその対価の額との差額に相当する利益が含まれるものと解される。
そうすると、株式を有利な払込金額で取得した場合における課税関係は、株式の取得の時に、株式の時価と払込金額との差額に相当する経済的利益を所得として捉え、当該経済的利益の価額を収入金額として課税することになるというべきである。」
以上のように、判断では、本件のような株式の移転、株式の引受においてもその経済的利益の発生を肯定している。私見としても包括的所得概念を基礎とする我が国の所得税法においては、かかるように、時価と異なる金額で資産を取得している場合には、何らかの経済的利益を得ていることは所得税法上は肯定されるものであり、課税対象となるべきものと考えられる。この点については異論がないのであるが、続いて、判断では、具体的な経済的利益を算定する方法に話が飛躍している。本来ならば、かかる取引が如何なるものであり、請求人が受けた利益が如何なる所得区分に属するものであるのかという点の検討が必要であるだろう。本件では役員、取締役として賞与として最終的には給与所得としているがその判断の根拠は示されていない。
その支給時の価額は同通達23~35共-9及び評価通達の取扱いに準じて評価する旨を定め、所得税基本通達23~35共-9の(4)のニは、株式の価額について、当該株式が非上場株式で気配相場や売買実例がなく、その公開の途上にもなく、かつ、類似法人比準方式により評価することができない場合には、評価時点又はこれに最も近い日におけるその株式の発行法人の「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とする旨を定めている。これらの通達の定めは、株式を有利な払込金額で取得したことによる株式の時価と払込金額との差額に相当する経済的利益の有無を判断し、また、その価額を算定する前提として株式の価額を評価する場合において、当該株式が非上場株式で気配相場や売買実例がなく、その公開の途上にもなく、かつ、類似法人比準方式により評価することができない場合にも妥当するものと解されるが、このような一般的、抽象的な評価方法の定めのみに基づいて株式の価額を算定することは困難である。
下記のように、請求人の主張として、資産の譲渡とは異なるとの主張に関しては、会社法等をもって株式の譲渡と位置づけられることを示して、基本的に法人税法においては自己株式の処分において損益の発生(そもそも本件においては代表取締役からの株式の取得金額と請求人への引受金額は同額)は原則として観念されうるのであろうか、資本等取引の対象として理解されているように考えられる。特に出資の受入れとしての性質を肯定しながら、株式の譲渡と矛盾するものではないとの評価は如何なる根拠に基づくものであるのか、この判断は論理的な飛躍を持っているのではないだろうか。
請求人は、自己株式の処分は出資の受入れであって、資産の譲渡とは異なるから、株式を取得した者に原則として経済的利益は生じない旨主張する。しかしながら、自己株式の処分が、出資の受入れとしての性質を有することはいうまでもないが、そうであるとしても、自己株式の処分が、株式の譲渡であることと矛盾するものではなく(なお、自己株式の処分が法令上も株式の譲渡として位置付けられていることにつき、会社法第128条《株券発行会社の株式の譲渡》第1項、法人税法施行令第8条《資本金等の額》第1項第1号等を参照。)、当該自己株式を有利な払込金額で取得した場合には、その取得した者に時価と払込金額との差額に相当する経済的利益が生じると解することに支障はない
本件は税理士のアドバイスもあってその金額が評価され、当該取引の意図において株主間の株式移転から、発行法人を経由した取引を行うスキームとすることで、自己株式の取得、処分、株式の引受というプロセスが行われる事となっている点が上記のように特徴である。上記のように、経済的利益を株式の譲渡として位置づけ、判断を行うことは、この取引の根底にあるべき意図が判断に影響しているのではないだろうか(実質的な判断?)。個々の取引は、自己株式の譲渡と株式の引受であり、通常は経済的利益を生み出すものではない。この組み合わせによる成果が問題になっているものであるが、個々の取引を事実上、納税者の目的、意図によって組み換えるような効果を付与することは租税法律主義との関連において肯定されうべきであるのかという点は、本件においても検討課題となろう。
本件におけるかかるような経済的利益が所得税法において課税対象となることは上記のように肯定されるべきものであるが、上記その判断プロセスによっては、所得の類型が異なることも考えうる。移転を強調するのであれば、既存株式からの利益の移転であり、贈与等の評価にもなりうる。経済的な成果を課税対象とすることと、所得の類型は合わせて検討されるべき課題であり、法人における資本等取引、出資者側から株式の引受においても、所得を給与所得として課税対象とすべきか否かは、より詳細に検討されるべき問題ではないだろうか。
以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2019年2月12日火曜日

判例裁決紹介(平成29年12月6日裁決、収用換地等に関する特別控除の適用対象資産、棚卸資産の判定)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は収用換地に関する特別控除の適用対象に該当するのか否かが争われた事例です。

具体的には、建設業を営む請求人が、その所有する土地に付き、収用等によって処分する事になった場合において、その適用対象となるべき収用換地等に伴う特別控除の適用を当初申告においては、申請せず(書類添付なし)、後日その適用を求めて更正の請求を行った事例であり、基本的には特別控除の適用に関する書類添付がないことを基礎として更正すべき理由はないとされた処分の取消を求めているものである。本件では当該制度の複数の適用要件の充足を巡って争いがあるものであるが、主たるものとして書類の添付における宥恕規定の適用(やむを得ない理由の存在)及び、当該制度の適用対象となるべき固定資産に該当するのか(すなわち対象となった土地等が、棚卸資産ではないのか)という点が主たる争点となっているものである。直接的な争点としては、収用換地等に関わる特別控除の適用要件の充足が主たる争点となっているものであり、かかる点においてレアな事例であるとも捉えられようが(特に事実関係として)、その基本的な争点として法人税法における棚卸資産として如何なるものを捉え、もって固定資産を以下に把握するのかという点が問題の起点となっているものであり(特に資産の保有者の意図を基礎とした判断においていかにしてその意図を判断するのか、会計記録の処理方法を基礎としている点なども)、かかる点において、租税実務家においても参考となるべきものと考えられる。

(収用換地等の場合の所得の特別控除)
第六十五条の二 法人の有する資産で第六十四条第一項各号又は前条第一項第一号若しくは第二号に規定するものがこれらの規定に該当することとなつた場合(第六十四条第二項の規定により同項第一号に規定する土地等又は同項第二号に規定する土地の上にある資産につき収用等による譲渡があつたものとみなされた場合及び前条第七項に規定する譲受け希望の申出の撤回があつたときにおいて、同項の規定により同条第一項第四号に規定する建築施設の部分の給付を受ける権利につき収用等による譲渡があつたものとみなされる場合を含む。)において、当該法人が収用等又は換地処分等(以下この条において「収用換地等」という。)により取得したこれらの規定に規定する補償金、対価若しくは清算金(当該譲受け希望の申出の撤回があつたことにより支払を受ける対償を含む。以下この条において「補償金等」という。)の額又は資産(以下この条において「交換取得資産」という。)の価額(当該収用換地等により取得した交換取得資産の価額が当該収用換地等により譲渡した資産の価額を超える場合において、その差額に相当する金額を当該収用換地等に際して支出したときは、当該差額に相当する金額を控除した金額)が、当該譲渡した資産の譲渡直前の帳簿価額と当該譲渡した資産の譲渡に要した経費で当該補償金等又は交換取得資産に係るものとして政令で定めるところにより計算した金額との合計額を超え、かつ、当該法人が当該事業年度のうち同一の年に属する期間中に収用換地等により譲渡した資産(前条第一項第三号から第六号までに掲げる場合に該当する換地処分等により譲渡した資産のうち当該換地処分等により取得した資産の価額に対応する部分として政令で定める部分及び同条第七項から第九項までの規定により換地処分等による譲渡があつたものとみなされる資産を除く。次項及び第七項において同じ。)のいずれについても第六十四条から前条までの規定の適用を受けないときは、その超える部分の金額と五千万円(当該譲渡の日の属する年における収用換地等により取得した補償金等(変換清算金及び防災変換清算金を含む。)の額又は交換取得資産の価額につき、この項、次項又は第七項の規定により損金の額に算入した、又は損金の額に算入する金額(第六十八条の七十三第一項、第二項又は第七項の規定により損金の額に算入した金額を含む。)があるときは、当該金額を控除した金額)とのいずれか低い金額を当該譲渡の日を含む事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

以上のように、本件は、収用換地等に関する特別控除の適用対象となるのかという点が問題になっているものである。上記制度の適用に関しては、下記のように、明細書の添付を必要としているものであり(正確にはその他書類の保存も含む)、本件では当初申告においてかかる添付がなされていない時点で本件の適用は困難であるが、租税特別措置法においてかかるような要件の付与は、ごく通常のものであり、多様な事例においてかかる書類要件の不備が問題になっているものである。一般的な認識においては単なる書類のミスが問題であり、形式的なものであり、その不備が適用において問題になることは想定しがたいものであるのかもしれないが、租税特別措置の性格からかかる点の不備は致命的なものであることは留意されるべきものであり、本件でも宥恕規定の適用の可能性が基本的な問題になっている。

4 第一項又は第二項の規定は、確定申告書等にこれらの規定により損金の額に算入される金額の損金算入に関する申告の記載及びその損金の額に算入される金額の計算に関する明細書の添付があり、かつ、これらの規定の適用を受けようとする資産につき公共事業施行者から交付を受けた前項の買取り等の申出があつたことを証する書類その他の財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。

また、本件で中心的な争点となっているものは、下記のように、租税特別措置法に定める収用等に関する適用対象資産において、棚卸資産を除くのかと言う文言が問題になっている。しかるに棚卸資産が如何なるものと解されるべきであるのか、という点が基礎となっている。

収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例)
第六十四条 法人(清算中の法人を除く。以下この条、次条、第六十五条第三項及び第五項並びに第六十五条の二において同じ。)の有する資産(棚卸資産を除く。以下この条、次条、第六十五条第三項及び第六十五条の二において同じ。)で次の各号に規定するものが当該各号に掲げる場合に該当することとなつた場合(第六十五条第一項の規定に該当する場合を除く。)において、当該法人が当該各号に規定する補償金、対価又は清算金の額(当該資産の譲渡(消滅及び価値の減少を含む。以下この款において同じ。)に要した経費がある場合には、当該補償金、対価又は清算金の額のうちから支出したものとして政令で定める金額を控除した金額。以下この条及び次条において同じ。)の全部又は一部に相当する金額をもつて当該各号に規定する収用、買取り、換地処分、権利変換、買収又は消滅(以下この款において「収用等」という。)のあつた日を含む事業年度において当該収用等により譲渡した資産と同種の資産その他のこれに代わるべき資産として政令で定めるもの(以下第六十五条までにおいて「代替資産」という。)の取得(所有権移転外リース取引による取得を除き、製作及び建設を含む。以下第六十五条までにおいて同じ。)をし、当該代替資産につき、その取得価額(その額が当該補償金、対価又は清算金の額(既に代替資産の取得に充てられた額があるときは、その額を控除した額)を超える場合には、その超える金額を控除した金額。次条第九項において同じ。)に、補償金、対価若しくは清算金の額から当該譲渡した資産の譲渡直前の帳簿価額を控除した残額の当該補償金、対価若しくは清算金の額に対する割合(次条において「差益割合」という。)を乗じて計算した金額(以下この項及び第八項において「圧縮限度額」という。)の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその帳簿価額を減額することに代えてその圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法(当該事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法を含む。)により経理したときは、その減額し、又は経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

措置法第65条の2第1項の本件特別控除は、法人税法第2条第20号に規定する棚卸資産には適用されないところ(措置法第64条)、法人税法第2条第20号は、棚卸資産について、「商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産(有価証券を除く。)で棚卸しをすべきものとして政令で定めるものをいう。」と規定し、それを受けた法人税法施行令第10条は、同条第1号で「商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)」と規定している。これを土地についていえば、不動産業者がその事業の過程において顧客に販売する目的を持って所有する土地は、当該不動産業者にとって、商品の性質を有するものであるから、棚卸資産に該当すると解するのが相当であり、当該不動産業者が自身の店舗の敷地又は賃貸用のマンションの敷地などに現に供しており、又は 供する目的で所有している土地は、固定資産と解するのが相当である。

上記のように判断でも、事業の過程において保有者の意思によって、その目的を判断して、商品として該当するのかという点が問題になっている。あまり明示的にされていないが、棚卸資産としての該当性というよりも、商品の解釈として販売目的の認定をその起点としているように捉えられる。通常、棚卸資産としては、販売の意図(意思)が重要と解されているが、より具体的には、商品という法規定においての解釈としてその所有者の意図が問題とされることになるもの言えよう。

二十 棚卸資産 商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産で棚卸しをすべきものとして政令で定めるもの(有価証券及び第六十一条第一項(短期売買商品の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する短期売買商品を除く。)をいう。

(棚卸資産の範囲)
第十条 法第二条第二十号(棚卸資産の意義)に規定する政令で定める資産は、次に掲げる資産とする。
一 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)
二 半製品
三 仕掛品(半成工事を含む。)
四 主要原材料
五 補助原材料
六 消耗品で貯蔵中のもの
七 前各号に掲げる資産に準ずるもの

この、所有者の意図を如何にして反映させることになるのか、証明することが可能となるのか、という点が本件の重要な点である。請求人は当該土地の保有、購入意図を賃貸用としてと主張しているが、裏付けとなる資料を提供できておらず、単に所有者の意思が単純に反映されるものではなく、販売目的が重要な判断要因であることは否定し難いが、単に所有者の目的を立証することは困難であることもまた、留意されるべきである。客観的にその立証が図られるべきであり、本件もその枠組が基礎して判断が行われている。具体的には、購入時の意図を会計帳簿に販売用資産としていたことが重要な判断要因としている。固定資産としていないことが課税庁の棚卸資産としての判断を支えているものであり、帳簿記帳にその信を置くものとなっている(青色申告であるのか不明であるが)。帳簿記録にどの程度の信頼を置くのかと言う判断は、専門家によっても異なるものであるが、このように、帳簿への記録が勘定科目にも重要な事実関係を認定することがあり得る(本件は裁決であり、訴訟においてここまで会計記録の勘定科目が重要視されるのかという点は考えにくいとの見解もありえよう)ことは、専門家として認識しておくべきではないだろうか。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。