さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は収用換地に関する特別控除の適用対象に該当するのか否かが争われた事例です。
具体的には、建設業を営む請求人が、その所有する土地に付き、収用等によって処分する事になった場合において、その適用対象となるべき収用換地等に伴う特別控除の適用を当初申告においては、申請せず(書類添付なし)、後日その適用を求めて更正の請求を行った事例であり、基本的には特別控除の適用に関する書類添付がないことを基礎として更正すべき理由はないとされた処分の取消を求めているものである。本件では当該制度の複数の適用要件の充足を巡って争いがあるものであるが、主たるものとして書類の添付における宥恕規定の適用(やむを得ない理由の存在)及び、当該制度の適用対象となるべき固定資産に該当するのか(すなわち対象となった土地等が、棚卸資産ではないのか)という点が主たる争点となっているものである。直接的な争点としては、収用換地等に関わる特別控除の適用要件の充足が主たる争点となっているものであり、かかる点においてレアな事例であるとも捉えられようが(特に事実関係として)、その基本的な争点として法人税法における棚卸資産として如何なるものを捉え、もって固定資産を以下に把握するのかという点が問題の起点となっているものであり(特に資産の保有者の意図を基礎とした判断においていかにしてその意図を判断するのか、会計記録の処理方法を基礎としている点なども)、かかる点において、租税実務家においても参考となるべきものと考えられる。
(収用換地等の場合の所得の特別控除)
第六十五条の二 法人の有する資産で第六十四条第一項各号又は前条第一項第一号若しくは第二号に規定するものがこれらの規定に該当することとなつた場合(第六十四条第二項の規定により同項第一号に規定する土地等又は同項第二号に規定する土地の上にある資産につき収用等による譲渡があつたものとみなされた場合及び前条第七項に規定する譲受け希望の申出の撤回があつたときにおいて、同項の規定により同条第一項第四号に規定する建築施設の部分の給付を受ける権利につき収用等による譲渡があつたものとみなされる場合を含む。)において、当該法人が収用等又は換地処分等(以下この条において「収用換地等」という。)により取得したこれらの規定に規定する補償金、対価若しくは清算金(当該譲受け希望の申出の撤回があつたことにより支払を受ける対償を含む。以下この条において「補償金等」という。)の額又は資産(以下この条において「交換取得資産」という。)の価額(当該収用換地等により取得した交換取得資産の価額が当該収用換地等により譲渡した資産の価額を超える場合において、その差額に相当する金額を当該収用換地等に際して支出したときは、当該差額に相当する金額を控除した金額)が、当該譲渡した資産の譲渡直前の帳簿価額と当該譲渡した資産の譲渡に要した経費で当該補償金等又は交換取得資産に係るものとして政令で定めるところにより計算した金額との合計額を超え、かつ、当該法人が当該事業年度のうち同一の年に属する期間中に収用換地等により譲渡した資産(前条第一項第三号から第六号までに掲げる場合に該当する換地処分等により譲渡した資産のうち当該換地処分等により取得した資産の価額に対応する部分として政令で定める部分及び同条第七項から第九項までの規定により換地処分等による譲渡があつたものとみなされる資産を除く。次項及び第七項において同じ。)のいずれについても第六十四条から前条までの規定の適用を受けないときは、その超える部分の金額と五千万円(当該譲渡の日の属する年における収用換地等により取得した補償金等(変換清算金及び防災変換清算金を含む。)の額又は交換取得資産の価額につき、この項、次項又は第七項の規定により損金の額に算入した、又は損金の額に算入する金額(第六十八条の七十三第一項、第二項又は第七項の規定により損金の額に算入した金額を含む。)があるときは、当該金額を控除した金額)とのいずれか低い金額を当該譲渡の日を含む事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
以上のように、本件は、収用換地等に関する特別控除の適用対象となるのかという点が問題になっているものである。上記制度の適用に関しては、下記のように、明細書の添付を必要としているものであり(正確にはその他書類の保存も含む)、本件では当初申告においてかかる添付がなされていない時点で本件の適用は困難であるが、租税特別措置法においてかかるような要件の付与は、ごく通常のものであり、多様な事例においてかかる書類要件の不備が問題になっているものである。一般的な認識においては単なる書類のミスが問題であり、形式的なものであり、その不備が適用において問題になることは想定しがたいものであるのかもしれないが、租税特別措置の性格からかかる点の不備は致命的なものであることは留意されるべきものであり、本件でも宥恕規定の適用の可能性が基本的な問題になっている。
4 第一項又は第二項の規定は、確定申告書等にこれらの規定により損金の額に算入される金額の損金算入に関する申告の記載及びその損金の額に算入される金額の計算に関する明細書の添付があり、かつ、これらの規定の適用を受けようとする資産につき公共事業施行者から交付を受けた前項の買取り等の申出があつたことを証する書類その他の財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。
また、本件で中心的な争点となっているものは、下記のように、租税特別措置法に定める収用等に関する適用対象資産において、棚卸資産を除くのかと言う文言が問題になっている。しかるに棚卸資産が如何なるものと解されるべきであるのか、という点が基礎となっている。
収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例)
第六十四条 法人(清算中の法人を除く。以下この条、次条、第六十五条第三項及び第五項並びに第六十五条の二において同じ。)の有する資産(棚卸資産を除く。以下この条、次条、第六十五条第三項及び第六十五条の二において同じ。)で次の各号に規定するものが当該各号に掲げる場合に該当することとなつた場合(第六十五条第一項の規定に該当する場合を除く。)において、当該法人が当該各号に規定する補償金、対価又は清算金の額(当該資産の譲渡(消滅及び価値の減少を含む。以下この款において同じ。)に要した経費がある場合には、当該補償金、対価又は清算金の額のうちから支出したものとして政令で定める金額を控除した金額。以下この条及び次条において同じ。)の全部又は一部に相当する金額をもつて当該各号に規定する収用、買取り、換地処分、権利変換、買収又は消滅(以下この款において「収用等」という。)のあつた日を含む事業年度において当該収用等により譲渡した資産と同種の資産その他のこれに代わるべき資産として政令で定めるもの(以下第六十五条までにおいて「代替資産」という。)の取得(所有権移転外リース取引による取得を除き、製作及び建設を含む。以下第六十五条までにおいて同じ。)をし、当該代替資産につき、その取得価額(その額が当該補償金、対価又は清算金の額(既に代替資産の取得に充てられた額があるときは、その額を控除した額)を超える場合には、その超える金額を控除した金額。次条第九項において同じ。)に、補償金、対価若しくは清算金の額から当該譲渡した資産の譲渡直前の帳簿価額を控除した残額の当該補償金、対価若しくは清算金の額に対する割合(次条において「差益割合」という。)を乗じて計算した金額(以下この項及び第八項において「圧縮限度額」という。)の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその帳簿価額を減額することに代えてその圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法(当該事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法を含む。)により経理したときは、その減額し、又は経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
措置法第65条の2第1項の本件特別控除は、法人税法第2条第20号に規定する棚卸資産には適用されないところ(措置法第64条)、法人税法第2条第20号は、棚卸資産について、「商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産(有価証券を除く。)で棚卸しをすべきものとして政令で定めるものをいう。」と規定し、それを受けた法人税法施行令第10条は、同条第1号で「商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)」と規定している。これを土地についていえば、不動産業者がその事業の過程において顧客に販売する目的を持って所有する土地は、当該不動産業者にとって、商品の性質を有するものであるから、棚卸資産に該当すると解するのが相当であり、当該不動産業者が自身の店舗の敷地又は賃貸用のマンションの敷地などに現に供しており、又は 供する目的で所有している土地は、固定資産と解するのが相当である。
上記のように判断でも、事業の過程において保有者の意思によって、その目的を判断して、商品として該当するのかという点が問題になっている。あまり明示的にされていないが、棚卸資産としての該当性というよりも、商品の解釈として販売目的の認定をその起点としているように捉えられる。通常、棚卸資産としては、販売の意図(意思)が重要と解されているが、より具体的には、商品という法規定においての解釈としてその所有者の意図が問題とされることになるもの言えよう。
二十 棚卸資産 商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産で棚卸しをすべきものとして政令で定めるもの(有価証券及び第六十一条第一項(短期売買商品の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する短期売買商品を除く。)をいう。
(棚卸資産の範囲)
第十条 法第二条第二十号(棚卸資産の意義)に規定する政令で定める資産は、次に掲げる資産とする。
一 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)
二 半製品
三 仕掛品(半成工事を含む。)
四 主要原材料
五 補助原材料
六 消耗品で貯蔵中のもの
七 前各号に掲げる資産に準ずるもの
この、所有者の意図を如何にして反映させることになるのか、証明することが可能となるのか、という点が本件の重要な点である。請求人は当該土地の保有、購入意図を賃貸用としてと主張しているが、裏付けとなる資料を提供できておらず、単に所有者の意思が単純に反映されるものではなく、販売目的が重要な判断要因であることは否定し難いが、単に所有者の目的を立証することは困難であることもまた、留意されるべきである。客観的にその立証が図られるべきであり、本件もその枠組が基礎して判断が行われている。具体的には、購入時の意図を会計帳簿に販売用資産としていたことが重要な判断要因としている。固定資産としていないことが課税庁の棚卸資産としての判断を支えているものであり、帳簿記帳にその信を置くものとなっている(青色申告であるのか不明であるが)。帳簿記録にどの程度の信頼を置くのかと言う判断は、専門家によっても異なるものであるが、このように、帳簿への記録が勘定科目にも重要な事実関係を認定することがあり得る(本件は裁決であり、訴訟においてここまで会計記録の勘定科目が重要視されるのかという点は考えにくいとの見解もありえよう)ことは、専門家として認識しておくべきではないだろうか。
以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。
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