2020年12月26日土曜日
判例裁決紹介(令和元年6月24日裁決、居住用財産の譲渡特例、段階相続)
2020年12月19日土曜日
判例裁決紹介(平成31年1月18日裁決、介護施設への入居と居住用不動産の判定)
を認めている趣旨は、個人が居住の用に供している家屋又は当該家屋と共にする
敷地の用に供されている土地を譲渡した場合には、これに代わる新たな居住用財
産を取得するのが通常であるなど、一般の資産の譲渡に比して特殊な事情があ
り、その担税力が弱いことから、居住用財産の譲渡につき30,000,000
円を限度とする特別控除を認め、所得税の負担を軽減して新たな居住用財産の取
得を容易にすることにあるものと解される。
このような本件特例の趣旨に照らすと、居住用家屋とは、真に居住の意思をも
って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋をいうと解す
るのが相当である。」
2020年12月1日火曜日
判例裁決紹介(東京高判令和元年11月6日、輸出名義人と仕入税額控除)
と本件各国内事業者との間に売買契約があったとは認められず、■が本件各
取引により資産を譲り受けたとはいえないのであるから、■は、本件各取引
について輸出免税の適用を受けることはできず、輸出免税の適用者として仕
入税額控除の適用があるという余地はない。控訴人の上記主張は、その前提
を欠くものであり、採用できない。」
2020年11月20日金曜日
判例裁決紹介(平成30年8月1日裁決、委任先職員の任務懈怠と青色申告の取消)
これに基づき所得金額を正しく計算して期限内に申告納税することを期待し、
かかる納税者に対してその特典を付与するものであるところ、法人税法第
127条第1項に規定する青色申告の承認の取消しの趣旨及び目的は、青色申
告の承認を受けた納税者について、青色申告の特典の付与を継続することが青
色申告制度の趣旨及び目的に反することとなる一定の事実がある場合には、そ
の承認を取り消すことができるものとすることによって、青色申告制度の適正
な運用を図ろうとするものであると解される
を提出するにふさわしくないと認められる場合に行うものであるから、
本件事務運営指針の4に該当する場合においても、役員その他相当の権
限を有する地位に就いている者が知り得なかったこともやむを得ないと
認められるなどその事実の発生について特別な事情があり、かつ、再発
防止のための監査体制を強化する等今後の適正な記帳及び申告が期待で
きるなど、取消しをしないことが相当と認められるものについては、本
件事務運営指針の4にかかわらず、所轄国税局長と協議の上その事案に
応じた処理を行うものとする
る事実があれば必ず行われるものではなく、現実に取り消すかどうかは、個々
の事情に応じ、所轄税務署長の合理的な裁量によって決すべきものと解され
る。
そして、処分を行うにつき、法の規定から処分行政庁に裁量権が付与されて
いると認められる場合において、税務署長がその裁量権に基づき行った青色申
告の承認の取消処分については、それが社会通念上妥当性を欠いて裁量権の範
囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合や法の趣旨及び目的からみて
裁量権の不合理な行使であると認められる場合でない限り、その裁量権の範囲
内にあるものとして、違法又は不当とはならないものと解するのが相当であ
2020年11月13日金曜日
判例裁決紹介(令和元年7月2日裁決、未検収による損金計上と仮想隠蔽の不成立)
規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算
の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は
仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、
過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
そして、通則法第68条第1項にいう「事実を隠蔽し」とは、課税標準等又は
税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽しあるいは故意に脱漏する
ことをいい、また、「事実を仮装し」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等
に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲す
ることをいうと解するのが相当である
2020年10月31日土曜日
判例裁決紹介(最判令和2年3月19日、不動産取得税非課税算定のための画地計算法における価格按分の否定)
ら、上記の原則を貫くと、宅地の客観的な交換価値を合理的に算定することができず、分筆や合筆の仕方次第で評価額が異なることにもなって、評価の不均衡をもたらす可能性があるため、評価の均衡上必要があるときは、筆界のいかんにかかわらず、その形状、利用状況等からみて一体を成していると認められる範囲をもって、一画地として画地計算法を適用することとしたものと解される。
2020年10月24日土曜日
判例裁決紹介(令和元年6月6日裁決、売上計上漏れの告白と更正の予知)
課することによって、当初から適正に申告した納税者との間の客観的不公平
実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、
適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置
である。
修正申告書の提出があり、その提出が「その申告に係る国税についての調査が
あったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたもの
でない」場合において、その申告に係る国税についての調査に係る通則法第
74条の9第1項第4号及び第5号に掲げる事項その他政令で定める事項の通
知がある前に行われたものであるときは、過少申告加算税を賦課しない旨規定
しているところ、これは、課税庁において課税標準を調査する等の事務負担等
を軽減することができることも勘案して、自発的に修正申告を決意し修正申告
書を提出した者に対しては例外的に加算税を賦課しないこととし、もって納税
者の自発的な修正申告を奨励することを目的とするものと解される。
そして、通則法第65条第1項括弧書、同法第68条第1項括弧書及び旧通
則法第65条第5項に規定している「その申告に係る国税についての調査があ
ったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたもので
ない」ときもその目的は同様と解される。
書の提出が、「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国
税について更正があるべきことを予知してされたものでない」ときに該当する
か否かの判断に当たっては、調査の内容及び進捗状況、それに関する納税者の
認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合
考慮して判断するのが相当である。
2020年10月20日火曜日
判例裁決紹介(大阪地判令和元年12月5日、バックリベートの法人所得帰属認定)
2020年10月13日火曜日
判例裁決紹介(大阪地判令和元年11月7日、従業員の横領による架空仕入の計上と重加算税)
通則法68条1項は,過少申告をした納税者が,その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し又は仮装し,その隠蔽し又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは,その納税者に対して重加算税を課することとしている。この重加算税の制度は,納税者が過少申告をするにつき隠蔽又は仮装という不正手段を用いていた場合に,過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を課すことによって,悪質な納税義務違反の発生を防止し,もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。同項は,隠蔽仮装行為の主体を納税者としているのであって,本来的には,納税者自身による隠蔽仮装行為の防止を企図したものと解される。しかし,納税者以外の者が隠蔽仮装行為を行った場合であっても,それが納税者本人の行為と同視することができるときには,形式的にそれが納税者自身の行為でないというだけで重加算税の賦課が許されないとすると,重加算税制度の趣旨及び目的を没却することになる(最高裁平成18年判決参照)。
本件のように,納税者が法人である場合,当該法人の構成要素として存在する役員及び従業員をして,法人の事業活動,経済的活動が行われると同時に申告納税義務を適正に履行することが求められているのであって,これらの者に対する不十分な指揮監督,組織管理の不備という法人の内部的事情を理由に,申告納税制度による適正な納税義務の履行を免れるとすると,重加算税制度の趣旨及び目的が没却されることになりかねない。
そうすると,納税者である法人において,その従業員が隠蔽仮装行為をし,その隠蔽仮装行為をしたところに基づき過少申告がされた場合であっても,当該法人において,従業員による隠蔽仮装行為を認識し,又は容易に認識することができ,法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず,当該法人においてこれを防止せずに隠蔽仮装行為が行われ,それに基づいて過少申告がされたときには,当該隠蔽仮装行為を納税者本人の行為と同視することができ,当該法人に対して重加算税を賦課することができると解するのが相当である。
2020年10月3日土曜日
判例裁決紹介(東京地判令和元年10月24日、未使用ポイントと権利確定)
日までに債務の確定しないものは損金の額に算入することができないものと
されており(債務確定要件。2号括弧書き)、その趣旨は、未発生の販管費
等に係る引当金については、発生の見込みや金額の算定について法人の恣意
が入りやすいため、当該事業年度終了の日までに債務が確定したものに限り
損金算入を認めることとして、課税計算の適正を図ろうとするものと解され
る。
すなわち、原価については、特定の収益を生み出すために直接必要であっ
た費用であり、個別的かつ客観的に収益と対応するものといえることから、
当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が確定していない場合であ
っても、近い将来にこれを支出することが相当程度の確実さをもって見込ま
れており、かつ、その金額を適正に見積もることが可能であれば、損金の額
に算入し得るものである〔最高裁判所平成12年(あ)第1714号同16
年10月29日第二小法廷判決・刑集58巻7号697頁参照〕のに対し、
販管費等については、特定の収益と個別的かつ客観的に対応させることが困
難であり、将来発生する費用の発生の可能性の評価や費用となる金額の算定
に当たって、法人の恣意性が入り込みやすいことから、企業会計上は引当金
を計上するとともに費用処理する処理が一般に公正妥当なものといえる場合
であっても、法人の所得の金額の計算上は、当該事業年度終了の日までに債
務が確定したものに限り損金算入を認めることとして、損金の額に算入され
る販管費等の額につき法人の恣意が入り込む余地を排除し、もって課税計算
の適正を確保しようとするのが、債務確定要件の趣旨であるというべきであ
基準として、当該事業年度終了の日までに、当該費用に係る債務が成立して
いること(債務確定基準①)、当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原
因となる事実(具体的原因事実)が発生していること(債務確定基準②)及
びその金額を合理的に算定することができること(債務確定基準③)を定め
る〔関係法令等(3)〕ところ、その内容は、企業会計上、すべての費用及
び収益はその発生した期間に割り当てるように処理しなければならないもの
とする発生主義の考え方に整合するとともに、その発生の可能性の評価等に
関する法人の恣意を排除するという債務確定要件の上記趣旨にも沿うものと
いえる。そして、上記のとおり法人税法が引当金の損金算入を限定している
ことや、上記の債務確定要件の趣旨に照らせば、債務確定基準②の具体的原
因事実が発生したというためには、企業会計上引当金として計上できる程度
に将来費用が発生する可能性が高いとされるだけでは足りず、当期において
費用の発生を基礎付ける具体的原因事実の発生が認められなければならない
ものと解するのが相当である。
2020年9月23日水曜日
判例裁決紹介(東京高判令和2年1月29日、個人所有の不動産貸付収益の同族会社への帰属)
2020年9月15日火曜日
平成31年2月3日裁決、違法な貸金業を営む実質的経営主体と所得課税)
2020年9月1日火曜日
相続財産としての同族会社への貸付金の評価
産の取得の時における時価によるべき旨を規定しており、ここにいう時価とは
相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
しかし、相続財産は多種多様であるから、その客観的交換価値は必ずしも一
義的に確定されるものではなく、これを個別に評価することとしたときには、
その評価方法等により異なる評価額が生じて納税者間の公平を害する結果とな
ったり、課税庁の事務負担が過重となって大量に発生する課税事務の適正迅速
な処理が困難となったりするおそれがある。
(貸付金債権の評価)
204 貸付金、売掛金、未収入金、預貯金以外の預け金、仮払金、その他これらに類するもの(以下「貸付金債権等」という。)の価額は、次に掲げる元本の価額と利息の価額との合計額によって評価する。
(1) 貸付金債権等の元本の価額は、その返済されるべき金額
(2) 貸付金債権等に係る利息(208≪未収法定果実の評価≫に定める貸付金等の利子を除く。)の価額は、課税時期現在の既経過利息として支払を受けるべき金額
(貸付金債権等の元本価額の範囲)
205 前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。(平12課評2-4外・平28課評2-10外改正)
(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)
イ 手形交換所(これに準ずる機関を含む。)において取引停止処分を受けたとき
ロ 会社更生法(平成14年法律第154号)の規定による更生手続開始の決定があったとき
ハ 民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の決定があったとき
ニ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったとき
ホ 破産法(平成16年法律第75号)の規定による破産手続開始の決定があったとき
ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき
(2) 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額
イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額
ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額
(3) 当事者間の契約により債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等が行われた場合において、それが金融機関のあっせんに基づくものであるなど真正に成立したものと認めるものであるときにおけるその債権の金額のうち(2)に掲げる金額に準ずる金額
以上のような条件には本件の状況は該当しないが、債務超過の状態にあること、そして事業の継続性が疑義がある(後継者がいない)という点が評価額の減少に繋がりうるのかという点が具体的に見解が別れているものであろう。一見すると債務超過は回収可能性に影響があることは否定しがたいものであるが、必ずしも決定的な要因としては判断されていない点は本件では重要であろう。同族会社であることが影響しているものであるが、単に債務超過にあることを強調するのではなく、他からの債務がなく、債権回収による事業の継続が危ぶまれるものではないという点に力点が置かれているものと捉えられる。いわば債権評価における回収可能性を、資産の状況に限定することなく、経営、事業継続という点も加味して多面的に判断を行っていることは判断枠組みとして重要となるのではないだろうか。
また、経営状況に関しても、本件では、請求人の後継者がいないなど、事業の継続性危ぶまれる状況が請求人の主張の基礎となっている。結果論として判断でも実際には、事業が少なくとも継続していたことを加味して、かかる主張を排斥しているようにも評価される。相続税がその取得の時を一定時点として判断する構造をとっている以上、将来時点の状況、後発的な状況をを加味することは、相続税法における判断として困難な点である。債務等でも取り扱われる課題ではあるが、相続時点での将来の状況は客観的な交換価値という点からも、特に本件のような交換価値を減少させることが客観的に担保されるものであるのかという点からも評価される事になり、後継者や事業の状態などは、判断要因としては劣位として理解せざるを得ないことを認識されるべきであろう(立法論としての救済の余地は議論されるだろうが)。近年は、事業の継続、法人の継続は必ずしも担保されるものではないのが現状であり、後継者不足の状況は特段珍しいものではないが、相続税評価においては、本件のように、将来情報として考慮要因としては限定的に評価されるものと考えられる。
いずれにしても、貸付金の評価は相続税法においては、評価減を図ることは限定的、ハードルが高いものと言うことは改めて認識されるべきだろう。
以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
2020年8月22日土曜日
判例裁決紹介(東京地判平成29年1月30日、固定資産税評価における国家賠償)
本件南側区有地は平坦な地面であって,本件南側国有地に沿接する側には木が植えられており,明らかに本件南側国有地とは異なる形状,利用形態となっていた。そのため,現地で公図等の図面資料も参照しながら確認しさえすれば,このことは一目で明らかになるものとさえいえる。
として認定し、
被告担当職員が,本件土地の南側が玉川通りに沿接するとして本件土地を評価し,賦課処分を行う際に,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と認定,判断したといわざるを得ない。
という形で厳しく処分庁の責任(注意義務違反)を追求し(ほぼ現場確認していれば判別がつくものという評価)、もって、20年分の返金(損害賠償請求の最大)が結論とされている。つい最近までは、課税処分を行う上で、課税庁の誤りが認められることは極稀であり、主に本件のような固定資産税の評価基準が遡上に上がる程度であったのあるが、近年はその状況も変わりつつある(判例において20年の起算点を変更することも行われつつある)。本件もそのような類型に属するものであり、地方税の現場においては留意されるべきものであろう。国税の場合は、あまりこの責任が認められることは未だ珍しいものであるが、地方税においては基本的に賦課課税であり、租税専門家であっても漫然として書類による課税を受けている現状は今後はより変化しているものであろう。実際、大阪や東京では税理士や弁護士が主導して固定資産税の再評価を促しているケースが増加しているようである。
2020年8月19日水曜日
判例裁決紹介(津地判平成30年3月15日、市街化調整区域に対する太陽光パネル設置に伴う固定資産税評価額の変更)
地方税法341条5号の「適正な時価」とは,正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解され,固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が同期日における当該土地の客槻的な交換価値を上回る場合には,上記価格の決定は違法となる(最高裁平成15年6月26日第一小法廷判決・民集57巻6号723頁参照)。
そして,土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格の決定が違法となるのは,当該登録価格が,〔1〕当該土地に適用される評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回るときであるか,あるいは,〔2〕これを上回るものではないが,その評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものではなく,又はその評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情が存する場合であって,同期日における当該土地の客観的な交換価値を上回るときであると解される(最高裁平成25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁参照)。
事実上、本件の争いとしては、原告の主張にも織り込まれていないが、基準年度の評価が離れて新たな評価額を付した段階が適正か否かという段階で問題の中心がほぼ解消されている。山林から雑種地へその地目が変更され、その評価額の認定が異なるものとして受け入れている段階(この点についてはほぼ争いがない)で、上記のような枠組みでは具体的な固定資産税評価の争いは、認定に過誤がない限りは、納税者の主張が認められることは期待できないだろう(大幅な評価額のアップは適正な負担であるのか、取得価額を大幅に超過することへの不服はあり得ようが)。
私見としては本件は現行の枠組みでは、上記のような判断となることは異論がないものといえよう。制度的な課題としてこのような大幅な負担の変更を許容するのか(過酷ではないか)あるいは、土地の利用拡大を図る上での成約となるとの主張もあり得ようが、いずれも立法に属する問題であり、太陽光パネルの登場という点で一部の特殊事例と捉えるべきか、あるいは社会情勢の変化に伴う具体的な現れであり、本件のような負担の大幅の変更を如何に捉えるべきか等を制度的に検討すべきであるのかより検討すべき段階にあるのかもしれない。
以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
2020年8月13日木曜日
判例裁決紹介(東京地判令和2年1月17日、特定生産性向上設備の導入と事業の用に供しているか否か)
減価償却資産は,法人の事業に供され,その用途に応じた本来の機能を発揮することによって収益の獲得に寄与するものと解されるから(最高裁平成20年9月16日第三小法廷判決・民集62巻8号2089頁),ある資産を「事業の用に供した」か否かは,個別具体的な事実関係を前提として,当該資産をその用途に応じた本来の機能を発揮するために使用を開始したと認められるか否かにより,認定及び判断すべきものと解するのが相当である。
件発電システム本体を「事業の用に供した」ということができるのは,本件発電システム本体により発電した電力を本件電気事業者に対して売電することができることが物理的に可能となったときであるというべきである。
2020年8月4日火曜日
判例裁決紹介(東京地判令和2年3月11日、国外にて組成されたパートナーシップ持分の現物出資の適格性、資産の国内所属判定)
2020年7月28日火曜日
判例裁決紹介(福岡高判令和二年2月4日、上納金に対する所得課税、所得帰属の認定)
2020年7月18日土曜日
判例裁決紹介(東京地判令和元年10月18日、高額譲受による資産の譲渡と売上原価、寄附金)
具体的には原告である不動産業を営む法人が、取得した土地(取得対価は、譲渡法人への当該法人の貸付け等の相殺による)に関する取得価額が時価よりも非常に高額(約1億円)であり、当該不動産の譲渡において、この高額な譲受金額をもって売上原価として損金計上を行い、もって繰越欠損を計上した確定申告につき、時価を超える金額は売上原価から除外されるべきものであるとしてその損金計上を否認した課税庁の処分を不服として提起された事案です。何故か岡山の事案が東京で争われるなど、些か不明な点もある事例ではあるのですが、売上原価という損金、費用計上において最も基本的な部分でありながらも、時価との対比、寄附金の認定等、法人税法上の計算の影響を受けるものとした事案であり、実務的にも影響を及ぼす(おそらく、金額的にもこのような取引は少ないでしょうし、そもそも高額譲受け自体が純経済人の行為としては不合理なものであることは言うまでもないことですが、意外とこのような関連会社等を活用した費用分配に属するような取引は行われているものであろう、グループ法人税制の点からも検討すべきであろうが)可能性があり、今後の参考となる事例だろう。
棚卸資産の販売の収益に係る「売上原価」とは,当該資産の「取得価額」を指し,購入した棚卸資産の「取得価額」には,「当該資産の購入の代価」が含まれるとされている(法人税法29条2項,法人税法施行令32条1項1号イ)。
本件土地のように購入した棚卸資産の「購入の代価」はその販売の収益に係る「売上原価」として損金の額に算入されることになるが,時価よりも高額な売買代金による高額譲受けが行われた場合に,当該資産の「購入の代価」をどのように評価すべきかについて,法人税法や法人税法施行令に直接の規定は設けられていない。
以上のように本件は、高値で仕入れた土地の金額が購入の対価として売上原価を構成するものであるのかという点が基本的な争点となっているものである。時価相当額がいくらであるのか、同族会社の行為計算否認の適用、当該高額部分は合理的な対価を含むものであるのかという点な中心的な争点となっていない(債権放棄における合理性と寄附金の関係が通常は争われるような事案ではあるだろうが何故かこの点は主張が少なく、主たる争点となっていない)。判示としては、寄附金の法人税法37条の解釈から本件のような高額譲受は、寄附金に相当するものであり、かかるようなものは、購入の対価に該当しないとして原告の主張を棄却している。
下記のように、法人税法は、37条8項において、いわゆる低額譲渡に関しては、明文をもって寄附金への該当を定めている。原告の主張は、このような法的な基礎を持たない、高額の譲受けの場合は、本件のような損金から除外することは、違法であるという主張を行っている。
法人税法
(寄附金の損金不算入)
第三十七条
内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
7
前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。
8
内国法人が資産譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち
実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。
「経済的な利益の……無償の供与」をした場合における当該「経済的な利益」の時価として,法人税法37条7項が定義する「寄附金の額」に該当することから,当該金額が損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないものであることを
確認的に規定したものと解される。
法人が時価よりも高額の売買代金により不動産等の資産を購入した場合も,売買代金と時価との差額は,買主たる法人から売主に「供与」された「経済的な利益」であり,そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」については,「経済的な利益の……無償の供与」をした場合における当該「経済的な利益」の時価として,法人税法37条7項が定義する「寄附金の額」に該当することになるから,当該金額は損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないこととなるものと解される。」
しかしながら、判示は、上記のように、法人税法の寄附金規定は、取引を否認するものではなく、租税法規の適用上、その効果を損金算入否認という形で表現するものであり、寄附金の額としては、非常に広範囲のものを対象としており、8項は確認的な規定(少し話はずれるが、そもそも8項における低額譲渡のうち、その具体的な金額を規定する実質的に贈与等した金額と認められる金額とはいかなるものであるのだろうか、実質的にという部分をどのように解するべきであるのかという点は解釈論としても具体的な金額を確定するためにも些か不確定な文言であるようにも捉えられる)であるとして、本件のような高額譲受においても寄附金の該当性を認めている。寄附金規定の包括的な対象を基礎としている以上、8項を確認規定と理解して、7項から本件のような高額譲受に関しても寄附金該当性を認める事となっているものであろう(この是非に関しては賛否が分かれる物と言えようが法人税法がその固有概念として寄附金を包括的に規定していることは明らかであり、高額譲受を対象から除外していると理解することは趣旨に反するものであろう。具体的な金額として実質的な金額を如何に捉えるのかという点は気になるところであるが、本件では時価との対比される金額については大きな争いはない。)。
以上のように判示は前提として寄附金規定の解釈から、このような高額譲受の時価との乖離相当額を売上原価として否定して損金に算入することを否定しているものである。しかし、以下のように、寄附金としての該当から、損金算入制限を受けるものであるという点から下記のように売上原価、あるいは購入の対価ではないとする判断、直接的に売上原価から除外して、損金算入はできないと判断をすることの論理が必ずしも定かではない。
たしかに法人税法は、寄附金への該当するものとして認定されるものに関しては、損金算入を否定しており、結果として損金算入を否定するという点において売上原価から除外することと差異はないのかもしれない。しかしながら、寄附金規定は損金算入限度額を設け、その超過額を損金算入を否認するものであり、売上原価ではないとして損金としての該当性を判断するものとは法人税法上の適用される計算構造が異なるものである。寄附金としての認定、該当性を基礎とするならば、37条の直接的な適用による損金算入限度額の計算に当てはめられるべきではないだろうか。従って判示は下記のように売上原価とは異なる別の費用損失として損金該当性を判断するものとしているが、仮に別の費用損失であるとしても寄附金への該当性が直接争われるべきものであることには変わりなく、本件ではこの点の検討、特に対価性の議論がより行われるべきであるのではないだろうか(おそらく本件高額部分が結論として寄附金へ該当して損金算入に制限を加えられることに相違はなく、売上原価に該当しないからと言う部分を判断しているだけでは本件の中心的な争点である損金算入への影響を判断することは困難であろう。)。
「「寄附金の額」と評価される場合には,法人税法の適用上,損金の額への算入が制限されるのであるから,そのような扱いを受ける当該差額は,当該資産の販売の収益に係る費用として当然に損金の額に算入される「
売上原価」とは異質なものといわざるを得ず,「売上原価」とは異なる費用又は損失の額として別途損金該当性を判断すべきもの」
判示でも述べられているように、法人税法上の寄附金規定は、私法上の法律行為としての否定や変更等を伴うものではなく、寄附金への該当から損金への否定を行うのみである。上記のように売上原価とは異質なものとして評価してるが、本件はあくまでも寄附金という法人税法上の損金の一般規定ではなく別段の定めという部分の課題であり、法人税施行令が購入の対価を持って棚卸資産取得額と定めている部分について、特に購入の対価の解釈を寄附金規定の影響を鑑み、固有の概念として理解しているようにも捉えられる。すなわち対価という私法部分での評価を覆すものとして、限定的に捉えるべきものであろうか(最終的な結果は変わらないかもしれないがこの部分の解釈に関しては予測可能性を基礎とする租税法規の解釈においては整合しているものであろうか)。29条と37条の関係の問題であるのかもしれないが、法規上は29条において売上原価として認めても37条の適用の余地はあるものであろう。課税庁の主張としては売上原価として認定することで対価性が認められ、もって寄附金の該当性を否定されることになることを危惧したものとも理解することはできるが、8項とは異なり明文の規定がない高額譲受を用いて法人税法上の売上原価、購入の対価の範囲を限定的に解することは租税法規の基本的な要請として予測可能性を担保しているものとは言い難いのでないだろうか。本件は寄附金としての該当性を中心的な争点として争われるべきものであったように思われる。
以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
2020年7月13日月曜日
判例裁決紹介(最判令和2年7月2日、破産会社における過払金返還請求に過年度損益修正と公正処理基準)
等の利害関係人や債権者との利害調整の基盤が揺らぐとは考えられない。」
定めるもの又は法人の定款等で定めるもの等。13条)における所得の金額を課税
標準として課税することとし(21条),確定した決算に基づき各事業年度の所得
の金額等を記載した申告書を提出すべきものとしており(74条1項),国税通則
法も,当該申告書の提出による申告をもって,当該事業年度の終了時に成立した法
人税の納税義務につき納付すべき税額が確定することとしている(15条2項3
号,16条1項1号及び2項1号)。
ても適用されることを前提とし,具体的な要件と手続を詳細に定めていることから
すれば,同法は,破産者である法人であっても,特別に定められた要件と手続の下
においてのみ事業年度を超えた課税関係の調整を行うことを原則としているもの」