さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京高判令和元年11月6日で、輸出名義人として税関長の許可証を有する原告、控訴人がなした輸出免税に関する仕入税額控除の適用を否認した事例です。
具体的には本件は、香港へ商品を輸出取引を行う原告・控訴人が、一月ごとに区分した課税期間を設置し(この時点で、いささか特殊な取引であり、輸出免税による仕入税額控除の還付を目的とした取引を行っているものであろうことが推測される)、当該商品の仕入税額を課税仕入であるとして申告し、還付申告を行った場合において、かかる課税仕入は、原告控訴人が国内で行った売買契約とは認められず、課税仕入が認められないとした更正処分を不服として提起された事例である。本件では、原審と同様に、課税庁の主張が認められ、納税者は単なる名義人、特に、輸出免税における税関長の証明書の名義人に過ぎないのであって、課税仕入の契約当事者ではないとして課税仕入そのものがなかったものとして事実認定されているものである。地判では、取引当事者の国内事業者は、香港の企業と直接契約を行っており(原告控訴人とは契約書などがなく)、国内取引として経理処理されていることを加味して、原告控訴人が契約を行った課税仕入ではないとして、仕入税額控除の認めないとした判示を行っており、基本的に、高裁でもその判断が是認されているものである。
重要なのは、地裁段階で行われた事実認定であり、契約が実際に行われているのか否かという点が基本的な争点となっているものである。いささか特殊な輸出免税のケースであるのかもしれないが、税関長の証明が存在することをもって形式的な判断を基軸におく、消費税の取引判断において、実質的な契約内容が存在するのか、本当に課税仕入が存在するのかという部分によって、課税仕入を比定した事例として、貴重な事例であるように捉えられる。おそらくは地裁段階での事実認定及び高裁で示されているように、形式的な書類保存が重視されることの多い、消費税の実務において、かかるように取引の存在を詳細な事実認定により否定した事例の存在は、今後、適格請求書が採用されたとしても
貴重な事例として考えられるのではないだろうか。
(輸出免税等)
第七条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。
一 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
二 外国貨物の譲渡又は貸付け(前号に掲げる資産の譲渡又は貸付けに該当するもの及び輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(昭和三十年法律第三十七号)第八条第一項第三号(公売又は売却等の場合における内国消費税の徴収)に掲げる場合に該当することとなつた外国貨物の譲渡を除く。)
三 国内及び国内以外の地域にわたつて行われる旅客若しくは貨物の輸送又は通信
四 専ら前号に規定する輸送の用に供される船舶又は航空機の譲渡若しくは貸付け又は修理で政令で定めるもの
五 前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるもの
2 前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない。
以上のように、判示では、輸出免税の対象として、下記のように納税者の主張に答え(そもそも課税仕入そのものの存在が争点となっている段階では主張が噛み合っていないものとも言えようが)、形式的な点を重視し、輸出の名義人である納税者の救済を図るべきとの主張に対して、輸出免税の対象を書類の名義人である主体に着目するものではなく、取引の内容に則るものであるべきと明確に判断している点は着目されよう。書類の保存等を重視する形式的な判断を重視している消費税の基本的な運用において、それを逆手に取るような、申告が行われている現状へ、本件の判断はより留意されるべきであろう。かかる判断は、輸出免税の法解釈から導かれているものであることは着目されるべきであろう。
「消費税法7条1項は、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け」等の同項各号所定のものについては、消費税を免除する旨を定め、同条2項は、その課税資産の譲渡等が同法7条1項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、消費税法施行規則5条所定の方法により証明がされたものでない場合には消費税法7条1項の規定は適用しない旨を定めている。このような消費税法7条の規定の文言に照らすと、同条1項は、取引の主体ではなく、取引の内容・態様に着目して消費税の免除の要件を定めていることが明らかであり、同条1項により消費税を免除されるには、事業者が国内において課税資産の譲渡等のうち同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものを行ったことを要するものと解される。
本件各取引について、■は輸出許可書の名義人であったというにとどまり、■
と本件各国内事業者との間に売買契約があったとは認められず、■が本件各
取引により資産を譲り受けたとはいえないのであるから、■は、本件各取引
について輸出免税の適用を受けることはできず、輸出免税の適用者として仕
入税額控除の適用があるという余地はない。控訴人の上記主張は、その前提
を欠くものであり、採用できない。」
と本件各国内事業者との間に売買契約があったとは認められず、■が本件各
取引により資産を譲り受けたとはいえないのであるから、■は、本件各取引
について輸出免税の適用を受けることはできず、輸出免税の適用者として仕
入税額控除の適用があるという余地はない。控訴人の上記主張は、その前提
を欠くものであり、採用できない。」
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