2020年10月20日火曜日

判例裁決紹介(大阪地判令和元年12月5日、バックリベートの法人所得帰属認定)

 

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪地判令和元年12月5日で、架空の広告宣伝費の計上と、代表取締役が受け取ったバックリベートが法人の所得に帰属するとして、それを除外した申告における青色申告の取り消し、重加算税の賦課がなされたことを不服とする訴訟です。

具体的には、本件は、不動産業を営む原告法人が、同族関係者ではない(雇われの)代表取締役がなした他社への架空広告宣伝の発注とバックリベートの受領(学生にとってはこのような商習慣の存在自身も認識するべきだろう)を行っていたことをもってその課税関係が問題に、特に青色申告の取り消し重加算税の賦課が行われたことを代表取締役(特に雇われの)個人の行為であり、法人に帰属させるべきものではないとして、提起した事例です。架空の費用の計上も争点となっているものであるが、どちらかというと法人ではなく、代表取締役個人が受け取ったものであり、法人の収入としてカウントすることが妥当であるのか否か、法人の所得として認定されるのか否かという認定の是非が中心的な論点になっているものである。いわば実質的所得者の判断が基礎となる事例である。なお、他にも損害賠償請求権の計上タイミングも同じく争点とされている。

実務的には、このような所得帰属の認定、特に代表取締役個人と法人を同一視するような所得帰属の認定は珍しいものではないのであろうが、一般的にはおそらくこのような法人と個人の分離が認めがたいような所得帰属の判断は疑問に思われようが(いささか乱暴であるようにも印象を持つだろう)、我が国特に、中小企業においてはこのような実質的な所得者を認定することは現状に合致しているという(というか我が国の特徴とも言えるものと考えられるが)点では違和感はないのかもしれない。いずれにしてもこのような実質的な所得認定が現状においてもなされていることは、課税庁、租税専門家ともに、留意されるべきであり、参考となる事例だろう。

法人税法11条資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

「法人税法の課税標準の計算上,事業から生じた収益に係る所得が誰に帰属するかについては,実質上その収益を誰が享受するかによって判断すべきであるところ(実質所得者課税の原則。法人税法11条参照),バックリベートに係る収益が,当該事業主体である法人に帰属するか,バックリベートを現実に受領した個人に帰属するかの判断に当たっては,バックリベートが支払われることとなった経緯や目的、バックリベート支払の根拠や算出方法,バックリベートを現実に授受した者の法律上の地位・権限,バックリベートと法人の事業との関連性の程度,取引関係者の認識,バックリベートの使途等,バックリベートの授受に関する諸般の事情を総合的に考慮して,法律上,当該バックリベートを享受する権利ないし地位をいずれが有するかによって判断すべきである。」

以上のように、本件はその中心的な争点として、バックリベートが法人の所得として認定されるものであるのか、いわゆる実質的所得者課税の原則が課題になっている。あまり詳細が表に出ることのないバックリベートの存在に関して実質的所得者を認定した事例はとても珍しいものであろうが、このような状況、収入に対する実質的所得者の原則の適用が如何に行われるべきであるのか、近年は特に実質的所得者の原則に関する事例は珍しく、かかる点からも参考とすべき事例であるだろう。

特に本件では、相手側となる、取引関係者の認識、意図がどのように判断されるのかという部分が中心的な認定要因となっている。リベートである以上、致し方ないものでもあるのだろうが、相手側の意図が判断要因となりうる点は、予測可能性の観点からは、帰属判定を行う上で、納税者側にとっては困難であるようにも考えられる。

以上です。毎度如く備忘録として作成しているものですので完成度は低いですので参考までに。

0 件のコメント:

コメントを投稿