2020年10月31日土曜日

判例裁決紹介(最判令和2年3月19日、不動産取得税非課税算定のための画地計算法における価格按分の否定)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、最判令和2年3月19日で、不動産取得税における非課税対象を決定する際に用いた一画地の分割評価における固定資産税評価に関する判決です。

より具体的には、共有により土地を保有していた被上告人が共有物の分割により共有持分を取得したところ、通常の共有物の分割ではなく、分割前の持ち分の割合を超える部分の取得があったとして、不動産取得税の賦課決定処分をを受けたことを不服として、本件共有物の取得は形式な所有権の移転に該当するとして取消しを求め提起された事例である。共有物の持分の割合を超過しているか否かの判定において、すなわち当該土地の評価及び分割された土地の評価方法が問題とされたものであり、すなわち固定資産税評価基準に定める画地計算法に基づく評価方法と土地評価額を地積により按分される方法がこの不動産取得税の共有物分割における分割の局面において妥当であるのかという点が中心的な争点となっている。したがって、不動産取得税の事例ではあるが、固定資産税評価基準の適用、評価方法が争点となっているものである。

原審である大阪高裁では、納税者の主張を認め、共有物分割による分筆後の各土地の価格比により按分することを認めた判決を出したが、大阪府が上告し、本件の判断として、交際の判断を否定したものである。些か特殊な不動産の共有物分割のの流れの中での判断ではあるが(おそらく実務的には珍しいものではないだろうが)、判断が別れ最高裁の判示が示すように、不動産取得税における共有物の分割においては、固定資産税評価基準における評価を逸脱する、例外的な処理を行うことが妥当であるのかという点が否定的に解されたものであり、この判断のアプローチは租税法規において一定の評価を用いることが原則的な状況でありながら、それを逸脱する場合における困難な状況を示したものともいえ、当然固定資産税評価基準と財産評価基本通達の位置づけ等は異なるものであるが、特に固定資産税評価基準から外れることが如何に困難であるのかという点でも、今後の参考となるものであろう。

形式的な所有権の移転等に対する不動産取得税の非課税)
第七十三条の七 道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
二の三 共有物の分割による不動産の取得(当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。

以上のように本件は、上記地方税法における形式的な所有権の移転であり、不動産取得税の非課税対象となるのかという点が争点となったものであり、共有物の分割における分割前の部分を超過する部分の測定方法が問題となったものである。


土地1の価格は、一画地として認定された本件各土地全体の評点数を算出した上、これを地積比であん分する方法によって算定されているが、持分超過部分の有無を判断する場合にあっては、僅かな評価の差異によってその判断が異なることとなるから、より慎重な方法によって算定する必要がある。そして、一画地を構成する各筆の土地が所有者を異にする場合、各筆の土地はそれぞれの所有者がこれを拠出して一画地を構成しているという関係にあるから、それぞれの土地の価格の割合であん分する方がより公平に適するというべきである。また、本件においては、本件土地1と本件土地2の地積が異なる以上、その地積比で本件各土地の価格をあん分すれば、地積の大きい本件土地1について必然的に持分超過部分が生ずることは明らかであった。このような場合において、本件処分が、他の合理的な計算方法を試みることなく、漫然と地積比に従ってあん分計算をして本件土地1の価格を算定したことには、違法がある

この点については、原審は以上のよう(最判まとめ)に租税負担の公平性を基礎として、地積比による按分を否定している。慎重な方法により算定すべき(租税法規である以上当然ではあるが、共有物の評価においてより慎重さが求められるものとしているようにも読める)としてこの公平性の判断をいかなる公平に基づくものとして判断しているのか、些か不明瞭ではあるが、一画地に対する認識も最高裁と全く異なる。複数土地の拠出と捉え判断していることになろう。

これに対して最判は以下のように、

1筆の宅地又は隣接する2筆以上の宅地について、その形状、利用状況等からみて、これを一体を成していると認められる部分に区分し、又はこれらを合わせる必要がある場合においては、その一体を成している部分の宅地ごとに一画地とするものとしている。この例外は、筆界が土地の形状や利用状況等に即したものであるとは限らないことか
ら、上記の原則を貫くと、宅地の客観的な交換価値を合理的に算定することができず、分筆や合筆の仕方次第で評価額が異なることにもなって、評価の不均衡をもたらす可能性があるため、評価の均衡上必要があるときは、筆界のいかんにかかわらず、その形状、利用状況等からみて一体を成していると認められる範囲をもって、一画地として画地計算法を適用することとしたものと解される。

固定資産税評価基準における画地計算法を採用した趣旨に言及した上で上記のように、評価の不均衡を懸念したものであるとしている。この上で、下記のように、一画地として認められること(そもそも本件では一画地として認められるかどうかという点は争いとされていない、本来ならばこの点がまず問題とされるのであろうが)を前提とした上で、

隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定すべき場合とは、これらの宅地が形状、利用状況等からみて一体を成していると認められる場合であって、この場合の各筆の宅地は、一体を成している当該画地の構成要素にすぎず、個別に客観的な交換価値を算定するのに適さないものである。そうすると、隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定し、当該画地について画地計算法を適用する場合において、算出された当該画地の単位地積当たりの評点数は、当該画地全体に等しく当てはまるものと解するのが相当である。以上によれば、評価基準により隣接する2筆以上の宅地を一画地として認して画地計算法を適用する場合において、各筆の宅地の評点数は、画地計算法の適用により算出された当該画地の単位地積当たりの評点数に、各筆の宅地の地積を乗ずることによって算出されるものというべきである。

一画地を構成する各土地は、構成要素に過ぎず、個別に時価を算定するべきものではないと捉え、高裁と全く異なる土地の評価を行っている。固定資産税評価基準における伝統的な時価の評価における客観的な交換価値との対比において時価を超過しているものであるのかという点を判断の枠組みとする点を不動産取得税においても維持して、納税者の主張する(原審が認めた)各土地の価格で按分する方法は、そもそもの地方税法が想定する客観的な交換価値に該当するものではないとして捉えている。このように述べた上で、一画地とされる土地においては、各土地は一体として評価された土地の価格の地積按分であるべきとして判示している。結果として不動産取得税における評価基準の適用の局面であっても固定資産税評価基準からの例外的な処理を認めていないものと考えられる(画地計算法における地積按分を確定的に評価しているものであろう、あとはこの時価が客観的な交換価値よりも高いかどうかの問題に)。上記のように評価の不均衡を懸念する固定資産税評価基準による評価方法を是としたものであり、一律な評価の基礎とすることが客観的な交換価値における重要な要素であり、固定資産税評価基準の重要な目的であることを判断の基礎としたものであろう。租税負担の公平性を基礎とした原審と異なり、地方税法や固定資産税評価基準という基本的な評価における趣旨を重視した判断であり、固定資産税評価基準における事例ではあるが、原則的な評価方法を逸脱することの困難を租税法規において、示したものとも考えられる。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

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