2020年10月24日土曜日

判例裁決紹介(令和元年6月6日裁決、売上計上漏れの告白と更正の予知)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和元年6月6日裁決で、過少申告加算税などにおける更正の予知がないことを条件とする宥恕措置が、調査段階において代表取締役が調査官に売上の漏れ【除外を】告白したことが該当しうるものであるのかという点が争点となった事例です。

具体的には法人たる請求人が自身の申告を修正する修正申告書を提出し、この経緯として売上の計上漏れがあったとして重加算税等の賦課決定処分を受けた事案において、調査の着手段階で代表取締役が調査官に対して売上の計上漏れを告白しているとして、更正の予知があったものではないとして過少申告加算税の適用等を免れるべきであるとして、不服を提起したものである。あまりこのような争点は、焦点が当てられることがないものでマイナーなものであろうが【そもそも申告を誤っていた等の状態にある場合において附帯税を付与することで公平性を担保しようとしている制度のさらなる例外であり、このような納税者は少ないだろう】、附帯税の宥恕を図るべきものとして、そして申告納税制度を基礎とする我が国の租税制度において、自発的な修正を促す趣旨として理解される制度である。現行法は下記のように、予知されていないこととあわせて事前通知の前【事前通知の前というタイミングは実際的には問題になりうるが】に制限が強化されている、附帯税の適用範囲を制限することが厳格に制度化されている現況であるが、本件な旧法の事前通知が要件とされていない段階のものである。この予知の有無に関してはこの旧法において事例が積み重ねられていたが、現行法においても同種の予知が存在しないことを養成されており、詳細な事実認定のもと、本件は参考となるべき事例だろう。

国税通則法65条
5 第一項の規定は、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る第七十四条の九第一項第四号及び第五号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(次条第六項において「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない。

以上のように、本件は修正申告書の提出において、調査による更正の予知があったのか否かというものが課題となっているものである。実際の修正申告自身は調査の後に行われており、調査の着手前に売上の計上漏れがあることを調査官に告白していることが実質的に上記要件を充足するものであるのかという点が課題となっている。本件の制度趣旨が自発的な修正申告によって申告納税制度を保護しようとする趣旨にあるとするならば、この告白により、修正申告を決意したものであり実質的に要件を充足するとして、本件の告白は自発的なものであり、保護されるべきという主張が背景にあるものであろう。


過少申告加算税の制度は、過少申告により納税義務に違反した者に加算税を
課することによって、当初から適正に申告した納税者との間の客観的不公平
実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、
適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置
である。


これに対して裁決は、確かに下記のように自発的な修正申告を促すものとしているが、 上記のように過少申告加算税の基本的な趣旨を出発点にして判断の枠組みを示している。


一方、通則法第65条第5項は、過少申告がされた場合であっても、その後
修正申告書の提出があり、その提出が「その申告に係る国税についての調査が
あったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたもの
でない」場合において、その申告に係る国税についての調査に係る通則法第
74条の9第1項第4号及び第5号に掲げる事項その他政令で定める事項の通
知がある前に行われたものであるときは、過少申告加算税を賦課しない旨規定
しているところ、これは、課税庁において課税標準を調査する等の事務負担等
を軽減することができることも勘案して、自発的に修正申告を決意し修正申告
書を提出した者に対しては例外的に加算税を賦課しないこととし、もって納税
者の自発的な修正申告を奨励することを目的とするものと解される。

そして、通則法第65条第1項括弧書、同法第68条第1項括弧書及び旧通
則法第65条第5項に規定している「その申告に係る国税についての調査があ
ったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたもので
ない」ときもその目的は同様と解される。

ロ 上記イの通則法及び旧通則法の各規定の文言及び趣旨からすると、修正申告
書の提出が、「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国
税について更正があるべきことを予知してされたものでない」ときに該当する
か否かの判断に当たっては、調査の内容及び進捗状況、それに関する納税者の
認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合
考慮して判断するのが相当である。

このように、裁決は判断の枠組みを示した上で、調査と修正申告が具体的に関わるという認定【除外額の認定など】から修正申告が調査に関わりなく、予知がないものとを前提としてなされたものではないという判断を示している。私見としても附帯税が公平性を担保する趣旨にあり、例外的な本件の規定であることを鑑みるならば、決意などのような内心に関わることを基礎として時系列上、調査と修正申告書が続く形であっても更正の予知がないものとするような認定の方法は拡張的であり、本条の基本的な趣旨に反するものであると考える。単に自発的な申告を促すことのみが問題ではなく、附帯税の趣旨とのバランスから解されるべきであろう。また、法が修正申告書の提出と明記していることからも内心の表明として【決意とされているが】の告白のタイミングでの修正申告未提出にあるものを適用対象とすることは拡張的な判断で採用しがたいものではあるだろう。


以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

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