さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和元年7月2日裁決で、請負契約による成果の納入に伴う損金計上において未検収の損金を計上したとして重加算税の仮想隠蔽に当たるとした処分が裁決段階で、その仮想隠蔽の成立が否定された事例です。
具体的には請求人が手書きの図面をデータ化し、書類のファイリング(データ化資料の印刷)の提出とデータ化した記録媒体を納品されることを約した契約により費用を支払うこととなっていた事案において、電子化が完了し、検収を行っていないにも関わらず、損金に計上したことをもって、相手方と通謀し、虚偽の申告を行ったものとした更正処分につき、その取消を求めるものである。裁決段階で、課税庁が主張する仮想隠蔽の成立が否定された珍しい事例であり、事実関係に左右されるべきものであるが、多様な納入形態、検収が予定される中で、事実上、継続的な役務提供が図られている中では、このような事案の発生は特段珍しいものではなく、本件では仮想隠蔽の成立は否定されたが、微妙なところで判断が異なる結果となっており、継続的な役務提供における留意を示しているのではないだろうか(本件では書面によるファイリング段階でほぼ検収ができているとの認識、データ化に対する認識に対する課税庁と請求人における相違が結果として仮想隠蔽の成立を、意図的ではないとして否定される事となっている)。
本件では重加算税の基本的な趣旨を及びその解釈は特段、下記のように特徴的なものではなく、従前の例と整合している。したがって、事実関係の微妙な認定によって重加算税の賦課徴収が決定されることは改めて認識されるべきであろう。データ化物品の納入でありながら、請負契約によるものであり、事実上継続的に役務提供がなされるような契約形態であることも本件の相違を生み出したものであるともいえようが、このように引渡と役務提供は必ずしも分断されるものではなく、また簡単に、契約の成立履行が明確に判断できるということは必ずしも異なるのが実際のところではないだろうか。本件は講学的にあるいは教科書的に、機械的に検収が終了しているとかの判断が行われるものではないこともまた再認識されるところであって、実務的な勘所が現れている事案であるように捉えられる事案ではないだろうか。
(重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
通則法第68条第1項は、上記1の(2)のとおり、通則法第65条第1項の
規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算
の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は
仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、
過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
そして、通則法第68条第1項にいう「事実を隠蔽し」とは、課税標準等又は
税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽しあるいは故意に脱漏する
ことをいい、また、「事実を仮装し」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等
に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲す
ることをいうと解するのが相当である
規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算
の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は
仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、
過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
そして、通則法第68条第1項にいう「事実を隠蔽し」とは、課税標準等又は
税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽しあるいは故意に脱漏する
ことをいい、また、「事実を仮装し」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等
に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲す
ることをいうと解するのが相当である
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