2022年2月21日月曜日

判例裁決紹介(東京地判令和2年2月28日、医療法人と関連会社の取引、通知処分における立証責任)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判令和2年2月28日で、医療法人と関連会社の内部取引が問題となった事例であり、架空、水増し計上が対象となっているものです。

具体的には、医療法人(薄毛治療)を営む法人である原告が査察調査により指摘された関連会社の法人(税理士が代表を務める、MSと呼ぶのでしたか)に対して支出した広告宣伝・外注費(総額12億)が架空あるいは水増し計上であり、外部への再委託等で原告代表者の私的費消に活用されているとのことで、当該費用の計上が虚偽の計上であるとして、修正申告を求めたことに対して、更正の請求を行ったことを否定されたことを不服として提起した事例である。

金額も巨額なものであるが、典型的な医療系の関連法人を活用した所得分散、所得逃避であるが、架空計上、水増しによる虚偽の申告が課題となっているものであり、対象となる関連法人における修正申告額との相違をもって、被告である課税庁がその金額の相違を具体的に明らかにしていないとして不服を申し立てているものである(実質的には虚偽の計上であることは争点とされていない、原告主張によれば未練たらたらであるが)。なぜこれを訴訟として受け入れられるとして提起したのかという点は個人的には疑問な事件ではある。

「原告の主張は,関連会社社各更正処分において認められた関連会社の原告に対する売上高(平成24年2月期につき2億1532万5129円,平成25年2月期につき3億4858万0274円)と,本件各法人税修正申告における本件各減算金額(平成24年6月期につき2億0569万1112円,平成25年6月期につき3億8136万6415円)とが一致しないことを前提に,関連会社更正処分で認められた関連会社の実態のある売上の詳細については,被告が明らかにすべきと主張するものとも解される。しかしながら,更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消訴訟では,納税者の申告によって確定した税額等を納税者に有利に変更することを求めるものであることからすると,納税者において,確定申告書の記載が真実と異なる旨の主張立証責任を負うと解するのが相当であるところ,原告がこの点について具体的に主張立証をしているとはいえない。また,関連会社社の原告に対する売上高と本件各減算金額(関連会社社分)に上記のとおり不一致があるものの、以下の点が認められることを考慮すると,このような不一致があることをもって直ちに本件各減算金額に誤りがあるということもできないのであって,いずれにしても原告の主張には理由がないといえる(したがって,本件各通知処分が憲法84条に違反するという主張についても理由がない。)。」


以上のように、本件の中心的な争点は、修正申告と更正処分における金額の差異、納税者からの更正の請求に関して更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消訴訟において、具体的な立証責任をどちらが追うべきであるのかという点が、中心的な争点となっている。

「更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消訴訟では,納税者の申告によって確定した税額等を納税者に有利に変更することを求めるものであることからすると,納税者において,確定申告書の記載が真実と異なる旨の主張立証責任を負うと解するのが相当であるところ,原告がこの点について具体的に主張立証をしているとはいえない」

この中では上記のように、明確にかかる取消訴訟では、立証責任を納税者が有することが判断されている。よく質問検査、申告納税を基礎として立証責任を課税庁に委ねることが原則として理解されているものであるが、推計課税の実額反証のようなケースで一部問題になったことはあるものの、本件のような取消訴訟において、課税庁ではなく、納税者に立証責任が転換されていることが本件の特徴と考えられる。近年は、租税訴訟の段階では、納税者にその立証責任を課すようなケースが増加しているものであるが、本件のように、虚偽の租税に関する申告等を行っているようなケースにおいてと明確に限定することなく、納税者に認めているケースは珍しく特徴とも言えよう。このような立証責任のあり方が広く受け入れられ、立証責任を証拠との距離等から明確に分配することになるのかという点は今後どのように理解されていくことになるのかという点は、今後の実務においても重要なものであろう。少なくとも課税庁にその責任があるのであり、納税者にそのような責任はないのであるとして、不服を提起することが現実的には困難になるものであろう。本年の税制改正においても対象は一部であるが、立証責任の転換を明確にする制度が予定されているが、これは質問検査の段階における立証責任の転嫁であり、訴訟提起の段階とは異なるものであるが、明らかに傾向として立証責任の分配が始まっており、機械的に課税庁にその責任があるとする理解は過去のものとなりつつあるだろう。租税の実務家としては、単に計算事実の認識にとどまらず、必要性や計算の根拠が法的な価値判断として適正なものであるのかという視点からの検討が求められるものであり、ICTやソフトウェアの発達によって単純な処理は簡易化が進んでいるが、適正なものであるのかという点からの検討が必要になってきているのであろう(そういう点では監査的といってもよいのかもしれない)。今までの実務は立証責任を課税庁に委ねることが基本となってきており、かえって租税実務家の視点が計算を基礎とするレベルにとどまっており、法的な要件の充足、判断レベル・根拠の準備が劣位となってきた背景があるものであるが(実質と形式の対立ともいえるがこれが基本的には訴訟レベルでの圧倒的な課税庁の勝利につながっているものであろう)、証憑レベルの確認にとどまらず取引内容の把握や実質的な意図などが検討対象になることであろう(大量反復的な処理の中でバランスを取ることになるだろうが、ICT等の発展によってこの抽出が容易になっていくことだろう、現にシステム的な監査チェックが課税庁においても始まっているようであるし)。もちろん、実務で支配的な実質的なという抽象的な文言のみでのやり取りなどが処分の根拠となるようなケースは減少するであろうし、より各種要件の充足やその意味内容を検討することが重要な要素となっていくだろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。



2022年1月29日土曜日

判例裁決紹介(令和3年6月24日裁決、共同相続人への預け金等に対する過少申告加算税と宥恕)

 

また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和3年6月24日裁決で、共同相続人への預け金や家屋相続に関する相続税申告に関する不記載に関して過少申告加算税を賦課決定されたことを不服としてるものであり、具体的に知り得る状況になかったものとして(及び共同相続人に対する贈与であるとして)かかる処分の適用の取り消しを求めたものである。

具体的には本件は、相続人たる請求人(明示されていないがおそらく税理士)が行った相続税の確定申告につき、共同相続人(紛争あり、訴訟予定)への現金の預け金(通帳からの引き出し)、家屋譲渡(の不成立)につき、相続人として調査を行っても知り得る状況になかったとして(あわせて預け金は共同相続人に対する贈与であるとして)、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に対する取り消しを求めたものである。主に贈与としての認定の是非及び、相続財産の把握につき、正当な理由があって、不備があったことを肯定できるものであるのかという点が争点となっているものである。相続税の申告の現場においてはおそらく、珍しいものではないものであろうが、被相続人預金からの引き出しがあった場合における対応や資産譲渡の成立の有無が対象となっているものであり、従前の事例と特に相違があるものではないのかもしれない。ただし、多くの場合、通常、このようないわゆる預け金に関しては、被相続人の債権として処理して相続財産に含まれるものとして考えることが中心であったが本件では、贈与としての実質を備えているのか否か(みなし贈与)という点から主張がなされていることは興味深いものである。判断では、この部分は、その適用を否定されているが、近年の高齢相続において預金管理が俎上に上がることが多い中では別アプローチとして検討する枠組みが上がっているのかもしれない従前ではこのような処理はどのように処理されているのか実務家に聞いてみたいところ。

本件の事実関係のもとでは、共同相続人が被相続人の死亡前から継続的に引き出した預金(6000万円超)が不当利得であり、預け金ではなく、みなし贈与となるのかという点から争われているが、租税負担の回避を防止する趣旨であり、かかるような贈与と実質的な贈与と同様のものとして評価できるのか否かという点から判断が行われ、否定されている。

また、過少申告加算税の宥恕としての正当な理由としては、下記のように最判を用いて、
「過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置と解される。この趣旨に照らせば、通則法第65条第4項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決民集60巻4号1611頁参照)。」

真に納税者の責めに帰す事ができない状況にあることを求めており、公平負担を考慮してもなお、不当等と評価されうるものであることを求めている。
この状況が如何なるものとして判断されるのかという点が事実関係のもとで、争点となっている。本件も含め特に問題となるのが、相続人間の紛争がある状態にあることが前提となっていることである。従前から紛争状態にあるものとそうではない状態であることの場合に対して、当然のことながら、財産把握の程度などにおいて差異が発生することは現実的には否めない。しかしながらこのような紛争の状態は相続人間の事情であり、この事情を考慮するのかという点は納税者間の公平性を確保している趣旨からは、受け入れがたいものと考えざるを得ないものといえよう。


以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

判例裁決紹介(令和2年3月3日裁決、滞納処分の執行停止取消処分)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和2年3月3日裁決で、処分庁がなした滞納処分執行停止を取り消したことを不服として提起された事例です。

具体的には、最近手に入るようになった地方税に関わる裁決事例からであるが、本件は滞納者たる請求人(納税者)が自己の滞納債権につき、滞納処分の執行を停止されていた状態にあったが、軽自動車の所有等の財産状況が調査によって判明したことから、かかる停止の取り消しを受けたことから生活困窮である状況は継続しており、かかる不服を申し出た事例である。判断としては処分庁の処分は取り消されている。

基本的な争点は、執行停止取り消しの下記条件が充足されているのか否かである。このような滞納処分の執行停止が争われること自体が珍しい(紛争としては、実際には非常に多いのかもしれないがこの辺は実務家に聞いてみたいところ)が、国税徴収法と同様の解釈を巡って、具体的な事実関係において、財産の有無や生活の窮迫度合いが中心的な争点となっている。判断としては、処分庁の調査不足を理由に処分の取消を行っている。

(滞納処分の停止の取消)
第十五条の八 地方団体の長は、前条第一項各号の規定により滞納処分の執行を停止した後三年以内に、その停止に係る滞納者につき同項各号に該当する事実がないと認めるときは、その執行の停止を取り消さなければならない。
 地方団体の長は、前項の規定により滞納処分の執行の停止を取り消したときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。

以上のように本件の中心的な争点は地方税法が定める滞納処分の停止を取消す際の要件が如何なるものであるのか、本件の具体的な事実関係において充足されているのかという点が基本的な争点になっているものである。裁決文のみでは、必ずしも事実関係が明らかではない部分はあるが、下記具体的な要件のうち、生活を著しく急迫させる恐れがあるときという点についての判断が行われていないことが本件処分庁の取り消しが否定された要因となっている。


(滞納処分の停止の要件等)
第十五条の七 地方団体の長は、滞納者につき次の各号のいずれかに該当する事実があると認めるときは、滞納処分の執行を停止することができる。
 滞納処分をすることができる財産がないとき。
 滞納処分をすることによつてその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。
 その所在及び滞納処分をすることができる財産がともに不明であるとき。
 地方団体の長は、前項の規定により滞納処分の執行を停止したときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。
 地方団体の長は、第一項第二号の規定により滞納処分の執行を停止した場合においてその停止に係る地方団体の徴収金について差し押さえた財産があるときは、その差押えを解除しなければならない。

すなわち、生活保護とほぼ同意義に解される生活窮迫であるか否かという点について処分庁は判断せず、財産の把握ともともと営んでいた事業を再開したことを根拠とした処分であって、法定の要件に合致していないとの判断が行われたものである。生活保護と同程度であることをもって窮迫を捉えることが妥当であるのか(法令上の趣旨が異なるものと)という点が本件判断の基礎が逐条解説書にとどまっている点は懸念されるところであるが、本件は基本的に調査不足を基礎として判断を下しているが、窮迫という点を評価することは現実的には福祉部局の範疇であり、困難を伴うものであるのかもしれない。現実的には立証が困難なものであり、形式的な財産の存在をベースに判断されているような現行の処理実務が垣間みられるところでもあるが本件は明示的にこの点について否定したものであろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

判例裁決紹介(令和2年9月4日裁決、役務提供のない支払手数料と仮装隠蔽)

 

また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和2年9月4日裁決で役務提供のない支払手数料の損金計上と重加算税の賦課決定処分が有効であるのか否かという点が争点となった事例です。

具体的には本件は、不動産業を営む法人である請求人が元代表取締役である(会長)からの指示により税理士に指示をして、不動産開発の共同事業者であった社に対して支払手数料(資金調達実施等に対する利益配分、共同事業に関する分配金)を実質的な役務提供がなされていないにも関わらず支払ったものとして損金計上を行ったことは、課税要件等に関する仮装隠蔽等に該当し、もって重加算税の賦課決定処分を受けたことを不服として提起された事例である。

基本的に実質的な経営を担う存在であった元代表取締役(きれいな世界ではこのような存在はイメージし難いが租税の世界ではよく出てくる、おそらく実務の世界ではこのような意思決定権限者の存在が如何に認定されるのかという点が課題なのでしょう)が本件の契機となった支払手数料を支払うべき義務を有していたことの認識の有無が、

(重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

上記重加算税の要件たる税額の計算の基礎たる事実を隠蔽仮装に該当するのか否かという点が中心的な争点となっており事実認定の問題となっている。判断としては珍しく、課税庁の処分を否定し、仮装隠蔽の成立を否定し、納税者の主張を認めたものであるが、その根拠は書面による、合意文書の存在を基礎として、納税者の主張、意思の裏付けとしている。故意に事実を曲げて損金の計上を行ったものではなく、支払義務があったことを否定する「可能性が全くないとまではいえない」という表現で事実関係を認定している点が興味深いが、最近は裁決レベルでも司法と同様に文書資料を重視した事実認定、証拠調査が反映されているものとも考えられ、実質的なという表現で進んできた租税実務も少し客観的な資料を重視するような形で変化してきているのかもしれません(課税庁の処分を否定した事例を参照しているからなのかもしれませんが)。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


2022年1月4日火曜日

判例裁決紹介(東京地判令和元年11月19日、米国不動産の帰属、共有関係の判断)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判令和元年11月19日で米国不動産の帰属が争われたものです。

具体的には、本件は相続人たる原告(夫が被相続人)が相続により取得した米国の不動産(被相続人単独名義)につき、登記名義とは異なる共同持分を有していたとして、持分部分を減額した評価額にて、相続税の確定申告を行ったことに対して、主張なような共有関係を否定した課税庁による更正処分等を不服として提起された事例である。契約関係書類や登記名義による、被相続人単独名義とは異なる夫婦による共有関係が事実として存在しているのか否かという点が中心的な争点となっている。基本的には共有の事実関係をめぐる事実認定の問題であり、相続税の基本となるべき財産関係の帰属、評価に関わる典型的な事例の一類型といえよう(立法的には夫婦財産の共同稼得と相続対応は検討されるべきであろうが)。本件の特徴は、米国の不動産の帰属関係を巡る訴訟である点であり、日本とは異なる米国における不動産の背景、米国遺産税の申告状況等の反映が如何に事実関係を考える上で、特徴的であり近年では米国への不動産投資も増加傾向であり、参考となるべきものであろう。

判示では、基本的に遺産分割協議書や米国遺産税申告書、登記名義といった客観的な書証により、共有であった(その合意があったとする)納税者の主張を排斥している。客観的な資料に加え、原告の意思表示が付与された書証であり、非常に強固な資料として、扱われているものであろう。


以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


2021年12月20日月曜日

判例裁決紹介(令和3年3月4日裁決、推計課税と処分理由の説明)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和3年3月4日裁決で、未申告・非協力な納税者に対して推計課税を適用した事例です。

具体的には本件は、自動車整備業を営む請求人(推計課税ではおなじみの業界でもありますが)自己の所得税の申告に関して未申告(調査への非協力)であったことから、処分庁が推計課税を実施し、更正処分等を実施したことにつき、過程における推計方法等に関する充分な説明がなかったことと当該推計方法に合理性があるのかという点が中心的な争点になっているものである。

調査手続における説明義務が国税に関する調査手続の改正に伴い制度化されて、しばらくたつが、最近はこのような説明義務を充分に果たしていないとして不服を提起するケースが増加している。いかなるものをもって充分な説明と呼ぶべきであるのかという点は些か明確ではなく、不毛であるという意見もあるが、この点を検討する上でも参考となろう。また、本件は推計課税の適用も行われており、古くて新しい論点であるが一部推計方法の課税庁の用いたものとは異なる形で修正している点も本件では見られ、いかなるものが合理性を有するものであるのか(最近は推計課税そのものに対する不服よりもこのような方法論の合理性を争うことが多い)が検討する上で参考となる事例でもあろう。

「通則法は、第7章の2《国税の調査》において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられるから、調査手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないものと解される。もっとも、通則法は、通則法第25条《決定》の規定による決定処分について、「調査により」行う旨規定しているから、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合には、課税処分の取消事由となるものと解される。そして、これには、調査を全く欠く場合のみならず、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続(以下「証拠収集手続」という。)に重大な違法があり、調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合も含むものと解され、他方で、証拠収集手続自体に影響を及ぼさない手続の違法は、上記の原則どおり、課税処分の取消事由となるものではないというべきである。」

本件では、上記のように法令解釈の原則を示した上で、調査手続を一律に捉えるのではなく、証拠収取手続等に分類した上で処分の効力を相違するものとして解釈している。確かに重大な違法性がある場合のみ調査の違法を認定するという我が国の原則は租税の性格上肯定されるべきものであると考えられるが、このような手続の分類が適正であるのか、調査自身が受忍義務を追っており、立証責任や租税の強制性も考慮するという点は未だ議論が煮詰まっていないところであろう。租税手続と刑事手続の類似性は保持されるべきであるが、証拠収集等において限定的に手続の違法性を限定する考えは、租税に関する情報の大きな格差や適正な手続きの要請から肯定されるのか更に検討が必要であろう。

「証拠収集手続に重大な違法があった場合には、課税処分の取消事由になるものと解されるところ、仮に調査結果の内容の説明に不十分な点が認められたとしても、そのことは、調査終了の際の手続であって、既に行われた証拠収集手続ではないから、原処分を取り消すべき事由には当たらない。」

また、上記のように、この原則的な手続への分類から、調査終了の際の説明に関して、あくまでにもすでに終了手続であり、不十分な点があっても処分取り消し理由にならないという一律に理解している。この点は確かに充分であるのか否かという点は主観的な要因であり、また相手に依存するものであって、不毛なものであってこれが違法性を帯びているのか否かという点を判断することは困難なものであることは避け得ないが、このように一律に説明を終了のものであって収集に影響がないものとして理解することが、恣意を防ぎ、納税者の便宜を図る本制度の趣旨に合致しているのかという点は疑問である。

また、本件では主たる事業以外に付帯的な事業を行っている先の抽出が課題になっている。裁決では、かんたんに退けられているが、事業が付帯的に行われている企業も多く、この点を抽出、比較対象とする際には、どのように捉えるべきであるのかという点は課題となろう。


以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。




 

2021年12月11日土曜日

判例裁決紹介(令和2年3月3日、非営利型法人における資金貸付の収益事業該当性)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和2年3月3日裁決で、非営利型法人における金銭貸付が収益事業に該当するのか否かという点が争点となった事例です。

具体的には、本件は、非営利型法人(社会貢献を目的とする)である一般社団法人である請求人が行った資金の貸付による利息が益金に算入されるのか否かという点が中心的な争点になっているものである。背景としては当該利子の基礎となる資金貸付が収益事業に該当するのか否かという点が起点となっているものである。非営利型法人の行う事業が収益事業に該当するのかという点が争われた事例は近年珍しく、従前の収益事業の判断との対比が必要であろう。

法人税法第2条
十三 収益事業 販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう。

以上のように、本件の中心的な争点は、上記法人税法に定めのある収益事業の該当性である。

「法人税法は、公益法人等の所得のうち収益事業から生じた所得について、同種の事業を行うその他の内国法人との競争条件の平等を図り、課税の公平を確保するなどの観点からこれを課税の対象としている。そして、法人税法第2条第13号は、収益事業を「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」をいう旨規定し、同号を受けて、法人税法施行令第5条第1項は、一般営利企業と競合にないと認められる事業を収益事業の対象から除くなどして、課税対象とされる収益事業の範囲を個別具体的に規定している。」

判断では、上記のように、基本的に従前(著名なペット葬祭事例等と同様)であり(裁決である以上当然とも言えるが)、同様の事業を行う他の法人との競争上の条件を統一する、整合性を図ること、いわゆるイコールフッティングが基礎となっており、かかる点から判断が行われている。このような点で従前と継続性が確保されているものと言えよう。基本的には、公益法人改革のもとで、公益事業、公益財団法人社団法人の概念が整理され、公益性の判定により収益事業の枠外を措置が、制度化された。これは公益目的事業が対象であり、租税法規の枠外において定められている概念である。明確に上記立法措置が取られており、公益の概念自体が不明確な要素をはらみつつも一定の条件をつけること及び第三者による事業評価、事後検証を行うように手続対応、付与されたバランスが取られた制度である(実効性があるかどうかはまだ事例が少ないが)。本制度改正は、100年ぶりの民法改正も含む大幅な制度改正であり、民法の対応も含め、現実的には大きな混乱も生じつつも対応が整理されつつあるの現状であろう(一時的な公益認定~一般への移行などが行われつつあるのもそれを表していよう)。このような制度変更が租税法規においていかなる影響を及ぼすものであるのかという点が本件の起点となっているものと考えられる。

結論としては、上記のように裁決レベルでは、特段影響がなく、従前と同様の法令解釈が適用されているものと考えられる。収益事業の趣旨は変化せず、いわゆるイコールフッティングが基本となっている(そもそもこの考え方が収益事業一般に及びうるものであるという点は検討が必要であろうが)ことは変わりないことが見て取れる(実務上は)。理屈としてはこのあたりは、本当に公益性の認定などの影響が含まれるものではないのかという点が検討したいところ。私見としては課税要件の判断において、租税法律主義が基本出会って、本件で主張されるような非営利性、公益性は租税法規の枠外の概念であり、準拠すべき法律的根拠を付与されるとは言い難いものと考えられ、原則に反するものではないかと考えているが、分離して考えるべきであろう。そもそも公益性や非営利性とは明瞭性にかけるものであり、論者によってその意義は異なりうるものである。租税法規が養成する明確性を備えているものとして検討することは不安定性を抱え込むことになろう。
 
また、本件とは少々ズレるが収益事業における、継続して事業場を設けてという点も解釈上の課題だろう、近年は、オンライン上での提供も増えており、継続的な事情場という概念自体が時代遅れになりつつあるものとも言えよう。
 

以上です。

毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。