2021年12月11日土曜日

判例裁決紹介(令和2年3月3日、非営利型法人における資金貸付の収益事業該当性)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和2年3月3日裁決で、非営利型法人における金銭貸付が収益事業に該当するのか否かという点が争点となった事例です。

具体的には、本件は、非営利型法人(社会貢献を目的とする)である一般社団法人である請求人が行った資金の貸付による利息が益金に算入されるのか否かという点が中心的な争点になっているものである。背景としては当該利子の基礎となる資金貸付が収益事業に該当するのか否かという点が起点となっているものである。非営利型法人の行う事業が収益事業に該当するのかという点が争われた事例は近年珍しく、従前の収益事業の判断との対比が必要であろう。

法人税法第2条
十三 収益事業 販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう。

以上のように、本件の中心的な争点は、上記法人税法に定めのある収益事業の該当性である。

「法人税法は、公益法人等の所得のうち収益事業から生じた所得について、同種の事業を行うその他の内国法人との競争条件の平等を図り、課税の公平を確保するなどの観点からこれを課税の対象としている。そして、法人税法第2条第13号は、収益事業を「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」をいう旨規定し、同号を受けて、法人税法施行令第5条第1項は、一般営利企業と競合にないと認められる事業を収益事業の対象から除くなどして、課税対象とされる収益事業の範囲を個別具体的に規定している。」

判断では、上記のように、基本的に従前(著名なペット葬祭事例等と同様)であり(裁決である以上当然とも言えるが)、同様の事業を行う他の法人との競争上の条件を統一する、整合性を図ること、いわゆるイコールフッティングが基礎となっており、かかる点から判断が行われている。このような点で従前と継続性が確保されているものと言えよう。基本的には、公益法人改革のもとで、公益事業、公益財団法人社団法人の概念が整理され、公益性の判定により収益事業の枠外を措置が、制度化された。これは公益目的事業が対象であり、租税法規の枠外において定められている概念である。明確に上記立法措置が取られており、公益の概念自体が不明確な要素をはらみつつも一定の条件をつけること及び第三者による事業評価、事後検証を行うように手続対応、付与されたバランスが取られた制度である(実効性があるかどうかはまだ事例が少ないが)。本制度改正は、100年ぶりの民法改正も含む大幅な制度改正であり、民法の対応も含め、現実的には大きな混乱も生じつつも対応が整理されつつあるの現状であろう(一時的な公益認定~一般への移行などが行われつつあるのもそれを表していよう)。このような制度変更が租税法規においていかなる影響を及ぼすものであるのかという点が本件の起点となっているものと考えられる。

結論としては、上記のように裁決レベルでは、特段影響がなく、従前と同様の法令解釈が適用されているものと考えられる。収益事業の趣旨は変化せず、いわゆるイコールフッティングが基本となっている(そもそもこの考え方が収益事業一般に及びうるものであるという点は検討が必要であろうが)ことは変わりないことが見て取れる(実務上は)。理屈としてはこのあたりは、本当に公益性の認定などの影響が含まれるものではないのかという点が検討したいところ。私見としては課税要件の判断において、租税法律主義が基本出会って、本件で主張されるような非営利性、公益性は租税法規の枠外の概念であり、準拠すべき法律的根拠を付与されるとは言い難いものと考えられ、原則に反するものではないかと考えているが、分離して考えるべきであろう。そもそも公益性や非営利性とは明瞭性にかけるものであり、論者によってその意義は異なりうるものである。租税法規が養成する明確性を備えているものとして検討することは不安定性を抱え込むことになろう。
 
また、本件とは少々ズレるが収益事業における、継続して事業場を設けてという点も解釈上の課題だろう、近年は、オンライン上での提供も増えており、継続的な事情場という概念自体が時代遅れになりつつあるものとも言えよう。
 

以上です。

毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


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