また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和2年9月4日裁決で役務提供のない支払手数料の損金計上と重加算税の賦課決定処分が有効であるのか否かという点が争点となった事例です。
具体的には本件は、不動産業を営む法人である請求人が元代表取締役である(会長)からの指示により税理士に指示をして、不動産開発の共同事業者であった社に対して支払手数料(資金調達実施等に対する利益配分、共同事業に関する分配金)を実質的な役務提供がなされていないにも関わらず支払ったものとして損金計上を行ったことは、課税要件等に関する仮装隠蔽等に該当し、もって重加算税の賦課決定処分を受けたことを不服として提起された事例である。
基本的に実質的な経営を担う存在であった元代表取締役(きれいな世界ではこのような存在はイメージし難いが租税の世界ではよく出てくる、おそらく実務の世界ではこのような意思決定権限者の存在が如何に認定されるのかという点が課題なのでしょう)が本件の契機となった支払手数料を支払うべき義務を有していたことの認識の有無が、
(重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
上記重加算税の要件たる税額の計算の基礎たる事実を隠蔽仮装に該当するのか否かという点が中心的な争点となっており事実認定の問題となっている。判断としては珍しく、課税庁の処分を否定し、仮装隠蔽の成立を否定し、納税者の主張を認めたものであるが、その根拠は書面による、合意文書の存在を基礎として、納税者の主張、意思の裏付けとしている。故意に事実を曲げて損金の計上を行ったものではなく、支払義務があったことを否定する「可能性が全くないとまではいえない」という表現で事実関係を認定している点が興味深いが、最近は裁決レベルでも司法と同様に文書資料を重視した事実認定、証拠調査が反映されているものとも考えられ、実質的なという表現で進んできた租税実務も少し客観的な資料を重視するような形で変化してきているのかもしれません(課税庁の処分を否定した事例を参照しているからなのかもしれませんが)。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
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