今回は平成27年10月7日裁決でソフトウェアの開発を依頼した
請求人の消費税法における仕入税額控除のタイミングとして課税仕
入を行った日が問題となったものです。
具体的には、
外部業者にソフトウェアの開発を委託していた請求人が、
当該外注費用を課税仕入の額に含めて確定申告を行ったところ、
課税庁が当該費用の仕入税額控除を否認し、
仮装隠蔽が行われたとして重加算税を賦課決定したところこれを不
服として提起されたものです。
法令解釈としては、
仕入税額控除の判定を行う課税仕入の日がいつになるのかという意
義内容が問題となったことになるのですが、
ソフトウェアのみならず外注における課税仕入の日を具体的に判定
する基準として、実務上も有益なものであると考えています。
課税仕入が如何なるものであるのか自身がそもそも法令解釈として
は、問題でもあるわけですが、現状の帳簿方式を前提とする以上、
課税資産の譲渡等を表裏一体の関係にあると解されることになりま
す。
仕入税額控除の趣旨目的から鑑みてこの解釈自身の妥当性も議論さ
れるべきではあると考えていますし、
今後適格請求書保存方式が導入される中でこの一体性が今後も同様
の解釈がなされうるものであるのかという点は疑問の余地もありま
す。
現状においては法的な取引が成立履行した時点をもって課税資産の
譲渡等が行われたものと判断すべきであり、
租税法の基本的な要請に従い、
客観的に契約の成立履行が確認可能なタイミングによるべきと解す
るべきであります。
この具備が適格請求書保存方式の採用において変化すべきか否かは
、今後より検討すべき課題であると考えています。
したがって具体的な当てはめにおいては、
今回の外注が請負契約である以上、
通常の外注は請負契約であることは当然のことかもしれませんが、
民事法上、この請負契約が、いかなる性格のものであり、
この点から上記課税仕入、
課税資産の譲渡等に該当した日として判断されるべきか決定される
べきであり、
基礎となる取引の有する法的な性格に基づき当該判断は行われるべ
きものと考えています。
単に課税仕入れがいつ行われたかという当事者の認識に基づくもの
ではなく、
恣意性を排除し客観的な事実関係に支持されたものであるべきでし
ょう。
このような考えによれば請負契約は契約の整理その性格上一定の目
的物の完成引渡しをその主たるものとしています。
この目的物の完成引渡しがいかなる時点であり、
課税資産の譲渡等において合致するのかが問題となります。
今回はソフトウェアの外注による委託開発という成果物であること
の特性が課税仕入れの日の判断に影響を及ぼすことになるでしょう
。
つまり成果物の完成がいかなるものであり、
どのタイミングで引き渡しされたものととらえるべきか判断される
ことになるのでしょう。本件の事実関係ではメールでの引き渡し・
納品である場合に、
いかなる時点で引き渡しが行われたものであり、
それが完成したものであるのか判断する(検収)
プロセスが基準として重要なものとなるでしょう。
より具体的にはメールサーバーでの到着日がメール納品における判
断基準として指摘されています。ソフトウェアという性格上、
メール納品が行われることからもどのタイミングが消費税法上、
適格であるのかさらに議論されるべきでありますが、
バグの修正等完成の判断が明示的ではないものであり、
本件でも完成が未了でありながら、
部分的に納品されたものをもって課税仕入れとして判断していたと
の認定で課税庁の判断を支持しています。
本判断ではあまり問題になっていないのですが、仕様、
契約内容における具体的な要求に基づいているのか等の基準の明確
化が今後このようなソフトウェア開発等の増加に対して租税法の課
題であると考えています。
もちろん適格請求書の導入においても一義的にこの請求書に依拠し
た判断はかえって、租税負担の公平性を損なう恐れがあり、
この観点からもこの基準の検討が必要であると考えています。
本件で問題となった外注業務一般においてもいかなる時点で請負契
約の完了を租税法務において認定し、
消費税法上課税仕入れの日として判断するかは上記のような枠組み
によるべきものと考えられますが、成果物の性格に基づき、
具体的な完了を客観的に判断する基準を見出すことが必要であると
いえるでしょう。
もちろんこの判断は基本的には民事上の議論に依拠すべきものであ
ることも事実ですが・・・。
また、他にタイミングの決定を補完するものとして、
いかなるものを考えるべきでしょうか。
現行は帳簿方式を採用していることもあり、
法人税法上の損金計上のタイミングに基本的に整合しています。
この点は本件のような事実関係においても整合するものとして判断
されるべきでしょうか。この形式は簡易的ではありますが、
そもそも法人税法と消費税法は性格を異にするものであり原則的に
整合すべきものであるとは考えていません。また、
実際の金銭の支払関係をいかに把握したうえで判断に活かすべきで
しょうか。
消費税の性格上個々の取引に応じて判断されることから実際の金銭
の支払はそのタイミングを決定する上で考慮要素として実務的には
重要なのは変化がないのではないでしょか。
この点も今後も検討したいところです。
長々と書きましたが、以上です。
毎度のごとく論文ストックとして作成しているものですので完成度
は低いですが、参考までに。
裁決