2016年12月5日月曜日

判例裁決紹介(減額更正処分における国家賠償、東京地判平成26年10月17日】

さて、また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判平成26年10月17日で、減額更正処分を行うべき国の責任を納税者が求めた事案です。

具体的には納税者が新株予約権の行使益に対して確定申告を行ったところ、それが誤りであったとして、当該納税者の破産管財人が係る所得に対する所得区分や収入金額の算定に関して、誤りがあったとして、国に対して更正の請求を求める機会を与えるべきであったところ、更正の請求の期限超過等を理由として、減額更正処分を行わないとした判断により、その行為を認めなかったとして、国に対して国家賠償を求めた事案です。

この処分においては、従来の課税処分と国家賠償の関係を最高裁が判断した事案と整合的であり、かかる判断基準に則り具体的な判断を行っています。。すなわち、単に過大な賦課徴収を行っていたからと言って直ちに違法があるものというべきものではなく、減額更正処分を行うか否かについて、その必要性を認定判断する上で、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく、漫然と更正を行わなかったと認めうるような事情がある場合に限り違法の評価を受けるものとの最高裁判示に従い、判断を行って原告の主張を退けています。

この判示自身、申告納税制度の趣旨及び、更正の請求の期間制限に依拠した上で、限定的に国家賠償の対象を解していますが、現在の更正の請求に対する期間制限に対して判断されたものではなく、旧法の状況による判断であり、現行法の制度を前提とした場合、いかなる国家賠償の対象となるのか、議論の余地があるものと考えます。少なくとも更正の請求の期限延長において、いかなる変更がありうるのか、私見としては基本的に、申告納税制度を前提としている以上、この最高裁判示の変更が行われるべきものとはいえないと考えていますが、議論の前提として検討するべきものと考えています。

そもそも、課税庁において、更正すべき義務があると解されるのか、この点も問題であります。たとえ、客観的かつ明白な誤りの存在によって、申告に重大な瑕疵があったとしても、何をもってそもそも課税処分や、申告に誤りがあるものと判断すべきか、定かではありません。こちらについても申告納税制度を前提とする我が国の所得税において【賦課課税の場合はまた別の判断がなされる可能性は存在しているといえるでしょう】、減額すべき義務を課税庁に観念することは、たとえ誤りによって担税力がないものへの課税であり、租税負担の公平性に反するものとして法律上無効として判断される余地があるといえども、立法によることは別として解釈上導くことは極めて困難な状況にあるものと考えられます。


本件自身は、どちらかといえば、本来、納税者の申告においてサポートした税理士の責任を問うべきものであり、国家賠償をもって対応すべきとすることは、かえって通常の納税者との間で、衡平に反するものというべきではないでしょうか。

以上、毎度のごとく、論文Stockとして作成しているものですので、完成度は低いですが、参考までに。判決

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