今回は、平成27年7月28日裁決で、
損害賠償請求に基づき裁判所命令で、 保有する株式を発行会社に譲渡した請求人が当該所得の所得区分を巡って争ったものです。
事案として少しレアなケースに基づく判断ではありますが、所得区分を判断するタイミングをどの時点で行うのかという点では一般性を持つ判断であると考えていますので参考となると思います。
複数の損害賠償請求を訴訟にて争っている請求人がそのうち一つの訴訟において賠償を認められ、その弁済として保有する株式を発行会社に譲渡することで発生した所得、通常ですと、自社株の取得に伴うものであるので、譲渡所得ではなく、みなし配当の対象として配当所得課税の対象となるのですが、今回も課税庁は当該所得区分として更正処分を行いました(約4億円)。しかしながら、請求人は、当該所得は、強制的な譲渡によるもので所得税法9条に基づき、強制的な債務弁済のための資産の譲渡に該当し、資産の譲渡原因が譲渡者の資産状況、経済状況が悪化したことに伴い債務弁済が著しく困難である場合に該当するとして非課税所得として主張したものです。
確かに、当該譲渡命令以後、請求人は、抱えていた同様の損害賠償請求において債務弁済を命じられ、実質的に債務弁済が非常に困難な状況に至りました。従って、非課税所得の該当性を判断するタイミングがいつの時点であるのかこの点が主たるテーマとして争われました。
裁決としては、課税庁の主張を認め、資力の判断は譲渡時によるものとして、請求人が主張するように、処分時の状況において判断すべきとする主張は退けています。
私見としても、当該裁決の判断は妥当と考えています。
そもそも、9条の規定の趣旨は、包括的所得概念の基本的な理解から、複数の理由から、包括的所得概念の志向する公平性を犠牲にしてもなお、所得課税の実現を図ることが妥当ではない類型を立法化することで非課税所得に該当することを制度的に保証したものです。従ってその非課税の趣旨から鑑みて、適用範囲やタイミングを決定すべきことになるのですが、今回のケースでは、資力の実質的な喪失が理由となっているものです、この点がいかなる理由によっているか否かは、見解が分かれるところではありますが、大きく分けて徴収上の便宜や債務者弁済の実を図るものととらえられるものと考えています。
このように解すれば、実質的な妥当性を図る観点からみて一定の将来の時点での状況を考慮して、債務弁済に関する状況を判断することが可能となる見解も一定の妥当性を有するものとも考えられますが、今回の判断のように納税義務が発生する譲渡時をその判断起点とすることが、解釈論としては妥当でしょう。
確かに連続した今回のようなケースでは損害賠償請求による債務弁済、経済状況の判断は比較的容易であり、想定の範囲内であります。しかしながら、このようなレアケースをもとに、判断のタイミングを拡張することが法的な安定性を図るべきとする租税法律主義の要請に合致するとする判断はなく、もう一つの租税負担の公平性の観点からも当該制度がその犠牲を図ってもなお、非課税とする趣旨であることから考えるに、拡張的な解釈の妥当性は極めて限定的にとらえるべきでしょう。
もちろん、より詳細に本規定の非課税趣旨を議論すべきでもありますが、訴訟段階にある他の状況を鑑みて、経済状況を把握すべきとするような拡張的な解釈をすべき理由は、当該他の債務が未確定である以上、実質的にみても個別的な妥当性を追求して解釈を広げるべき理由とはなりえないものと評価しています。
以上、毎度のごとく論文ストックとして作成しているものですので完成度は低いですが気にせず。
事案として少しレアなケースに基づく判断ではありますが、所得区分を判断するタイミングをどの時点で行うのかという点では一般性を持つ判断であると考えていますので参考となると思います。
複数の損害賠償請求を訴訟にて争っている請求人がそのうち一つの訴訟において賠償を認められ、その弁済として保有する株式を発行会社に譲渡することで発生した所得、通常ですと、自社株の取得に伴うものであるので、譲渡所得ではなく、みなし配当の対象として配当所得課税の対象となるのですが、今回も課税庁は当該所得区分として更正処分を行いました(約4億円)。しかしながら、請求人は、当該所得は、強制的な譲渡によるもので所得税法9条に基づき、強制的な債務弁済のための資産の譲渡に該当し、資産の譲渡原因が譲渡者の資産状況、経済状況が悪化したことに伴い債務弁済が著しく困難である場合に該当するとして非課税所得として主張したものです。
確かに、当該譲渡命令以後、請求人は、抱えていた同様の損害賠償請求において債務弁済を命じられ、実質的に債務弁済が非常に困難な状況に至りました。従って、非課税所得の該当性を判断するタイミングがいつの時点であるのかこの点が主たるテーマとして争われました。
裁決としては、課税庁の主張を認め、資力の判断は譲渡時によるものとして、請求人が主張するように、処分時の状況において判断すべきとする主張は退けています。
私見としても、当該裁決の判断は妥当と考えています。
そもそも、9条の規定の趣旨は、包括的所得概念の基本的な理解から、複数の理由から、包括的所得概念の志向する公平性を犠牲にしてもなお、所得課税の実現を図ることが妥当ではない類型を立法化することで非課税所得に該当することを制度的に保証したものです。従ってその非課税の趣旨から鑑みて、適用範囲やタイミングを決定すべきことになるのですが、今回のケースでは、資力の実質的な喪失が理由となっているものです、この点がいかなる理由によっているか否かは、見解が分かれるところではありますが、大きく分けて徴収上の便宜や債務者弁済の実を図るものととらえられるものと考えています。
このように解すれば、実質的な妥当性を図る観点からみて一定の将来の時点での状況を考慮して、債務弁済に関する状況を判断することが可能となる見解も一定の妥当性を有するものとも考えられますが、今回の判断のように納税義務が発生する譲渡時をその判断起点とすることが、解釈論としては妥当でしょう。
確かに連続した今回のようなケースでは損害賠償請求による債務弁済、経済状況の判断は比較的容易であり、想定の範囲内であります。しかしながら、このようなレアケースをもとに、判断のタイミングを拡張することが法的な安定性を図るべきとする租税法律主義の要請に合致するとする判断はなく、もう一つの租税負担の公平性の観点からも当該制度がその犠牲を図ってもなお、非課税とする趣旨であることから考えるに、拡張的な解釈の妥当性は極めて限定的にとらえるべきでしょう。
もちろん、より詳細に本規定の非課税趣旨を議論すべきでもありますが、訴訟段階にある他の状況を鑑みて、経済状況を把握すべきとするような拡張的な解釈をすべき理由は、当該他の債務が未確定である以上、実質的にみても個別的な妥当性を追求して解釈を広げるべき理由とはなりえないものと評価しています。
以上、毎度のごとく論文ストックとして作成しているものですので完成度は低いですが気にせず。
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