さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年3月31日裁決で役員として経営に従事しているとして
更正処分を行った事例に対して、
不服申し立てを行ったことに対して一部請求人の主張が認められ、
役員としての地位にはなく、
支払った金額は業務委託費であると認定されたものです。
外注費と役員の関係は珍しいですが、
役員給与の認定と関連してその経費の性格を議論したものとしては
実務上も参考になるものと評価しています。
具体的に裁決は、保険代理店業務を営む請求人の株式50%
超を保有している使用人がみなし役員に該当するとして当該使用人
に対して支払った保険契約の募集に関する業務委託料は、
法人税法におけるみなし役員に該当し、
役員給与として更正処分を行ったものです。
主たる争点は当該使用人が経営に従事している役員に該当するか否
かという点ですが、
設立時の経緯からも当該使用人の家族を代表者とするなど、
経理的に未整備な企業であるようであり、
他にも事業経費の損金性が問題となっています。
当該使用人は請求人の株式を50%超保有して、
調査段階でも供述で代表者として業務を行っていたとの書類や契約
書に代表取締役として署名しているなどの事実関係を有している状
況にあるのですが、
このような状況であっても役員としての認定を必ずしも裏打ちする
ものとはとらえず、
裁決としては判断としてその役員として認定を退けました。
通常であれば、株式会社の株式50%
超の保有しているような状況では、
取締役として登録されているべきであると判断して、
通常は経営に従事していると判断してその者への支払いは役員給与
として認定することが妥当であろうと考えられます。
しかしながら、本件では裁決としてその認定を否定しました。
上記のような通常の一般的な観念に基づく役員の認定を行うことな
く、
株式の保有がその経営に直接的に結びつくものではないとして慎重
に判断しています。役員としての認定に関しては、
その実質的な業務内容等に関して、総合的に、
客観的な事情に基づいて判断されるべきとして、
認定を行ったことになります。
本件の主たる争点が役員としての認定にあるのではなく、
請求人の支出がいかなる性格を有しており、
租税法上いかに評価されるべきであるのかがその主たる争点である
ことに鑑みると、
単に役員であることとしてみなされることがその役員報酬に該当す
るものではく、
いかなる業務に対して支払われたものであるのかという、
支出先ではなく、
その支払対価としての性格に着目した判断ともいえ、
冷静な判断過程に基づく判断と評価されるべきです。
特に判断を左右した点としては、
基本的な認定が当該使用人の行動や供述にのみ基づいていることと
考えられます。
現在の業務を主宰する請求人の代表取締役等に調査を行っていない
など、調査手続き上、
立証において調査段階での不備が問題になっていますが、
他の争点でも本件は調査段階での問題が争点になるなど、
調査上の不備が認定を支えるべき客観的な資料の要求に達しておら
ず、
経営に従事しているとの認定が困難になったものと評価されるべき
かもしれません。
そのような意味でも調査における実質的な資料の入手が、
判断上のプロセスの合理性が具体的な判断における重要なテーマに
なったものと考えるべきです。
もちろん、経営に従事しているとの認定においては、
その経営に関する業務に従事していることが必要であるのですが、
具体的に経営に関する業務とは如何なるものであるのかという点は
、定かとは言えません。
経営とは包括的な概念であるとは考えられますが、
いかなるものがその業務に該当することになるのかという点は、
本件に限らず、
外注と人件費とを区分するうえでも問題視されるべきとはいえるの
ではないでしょうか。
また、別の争点になりますが、請求人の損金の認定において、
その具体的な立証を図るうえで、いかなる事実関係にあるのか、
業務との関連性、あるいはその実在性について、
納税者と処分庁のいずれかにあるのかという点で明確に証拠との距
離感から納税者に対して一定の責任を求めています。
先般の東京地判でもありましたが、
裁決例において事実上の立証責任の転換を図った事例としては注目
されるべきものといえるのではないでしょうか。
基本的に課税庁に立証責任があることは否定されていませんが、
証拠との距離に照らして、
更正処分時において損金の額について参入を認めることができない
との事実上の推認ができる場合には、
納税者に推認を破る程度の具体的な反証を求めています。
このような立証責任についての考え方は、
近年の傾向であるともいえますが、
このような責任を分配する考え方は、
いかなる形態の課税処分において適用されるのか、
あるいは包括的に、
一般的になされるべき責任分配であるのかという点についてはより
詳細な検討が必要でしょう。
以上です。
毎度のごとく論文ストックとして作成しているものですので、
完成度は低いですが参考までに。
裁決
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