2016年11月19日土曜日
判例裁決紹介(社交飲食店に関する上納金の所得帰属、所得区分、平成27年12月11日裁決】
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成27年12月11日裁決です。
社交飲食店を営む請求人の他人名義の口座に振り込まれた金銭がいかなる所得であるのか、が問題となった事例です。
具体的には、不動産業を営む請求人が、複数のキャバクラ経営者【これを社交飲食店と言うそうです、初めて知りました】から定期的に各店舗の売上の一部を継続的に送金させ、しかも当該送金先は、他人名義【これもいわゆる交際相手:愛人関係にあったようです】であった事案で、重加算税が課された事案です。なかなかドロドロとした事案ですが、当該送金を指示した携帯電話が数年間で20回近く機種変更されるなど、また、情報提供やクレジットカードの機械手数料であるとの主張もなされましたが、課税庁の認定としていわゆる上納金であるとして、雑所得として課税を行った事案です。
上納金【そもそもこれは何でしょうか、一般的な意義ではわかるのですが】という認定自身も興味深いですが、事実関係も含め、複雑な社交関係飲食店に関する事実関係を表す事例としても興味深いものと思います。
裁決の判断もこの課税庁の処分を是認していますが、当該経済的利得がいかなる認定を受けるべきものか?そもそも、法的な権利のない所得であり【あえて違法とは評価していません】、所得の帰属はどこになるのかという点も問題となっており、中心的な争点は所得の帰属に関する事実関係の争いであるというべきでしょう(特に、携帯電話のやり取りなどは特殊ですが、なかなか興味深いものです】。
法令解釈としては、いわゆる所得の認定において管理支配基準の適用によって、その経済的利益の課税関係を認定しています。対象となる金銭が送金された口座の実質的に支配に基づき、その判定を行っているのですが、この点では管理支配基準の具体的な適用として、何をもって実質的な支配であるのかという点は、検討すべき課題であり、参考となるものと考えています。
また、法的な権利に基づかない、金銭所得の所得判定プロセスも重要であり、本件のように、所得の帰属が主たる論点となり、所得の種類自身は主たる争点とはならず、ほぼ帰属の判定をもって雑所得認定を行っている点は一般性を持つのではないでしょうか。
加えて本件では直接的な争点とはなっていませんが、当該上納金は事業所得の経費としていかなる立場に該当するのでしょうか。所得分類の影響と経費性を如何に関連付けるという点では、思考実験として当該上納金がいかなる経費性を帯びているのか、そもそも必要経費性を有するのかという点は検討すべきではないでしょうか。
以上、少し雑駁な裁決事例であり、そもそもこの面白さは事実関係の認定にあるところではあるのではないかと考えており、論文Stockとしてはいつものようにならないような気もしますが、参考までに。
裁決
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