2023年1月28日土曜日
判例裁決紹介(東京地判令和2年10月9日、未申告の継続と他行政機関への虚偽回答と仮装隠蔽)
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判令和2年10月9日で、未申告の継続や他行政機関への虚偽回答が仮装隠蔽に該当するのか否かという点が争点となっている事例です。
具体的には、本件は個人たる原告が不動産賃貸事業や塾の講師として得た所得(6年間の未申告であるが、創業後20年以上未申告】を積年、未申告であったことにつき、調査により、重加算税等の賦課決定処分等を受けたこと不服として提起された事例である。重加算税という非常に厳しい制裁的な要素をもつ附帯税の要件として仮想隠蔽の充足があるものであるのかという点が争われた事例であるが、未申告の累積と他の機関【地方自治体の調査への回答を虚偽】であることを起点として、所得税のほだつや仮想隠蔽の起点として判断されている点である。通常、直接的な行為が認定対象となることは多いが、本件のようなケースは珍しく、租税実務家にとっては、有益な事例であろう。
(重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
2 第六十六条第一項(無申告加算税)の規定に該当する場合(同項ただし書若しくは同条第七項の規定の適用がある場合又は納税申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
以上のように、本件の中心的な争点は仮想隠蔽の成立に関する要件である。
本件では、下記最判を引用し、制度趣旨から書類の偽造等の積極的な租税負担を回避する行為とそれに基づく申告にとどまらず、当初から納税者の意図としては、未申告であることと外部から伺いうるような行動を行っていることで足りるとしている。本件も含めこのような直接的な行為にとどまらず、当初段階からの未申告の意図やかかる意図が伺いうるような行為の存在にまで要件に含むとされる解釈が基本的な前提となっているものである。通常紛争事例としては、本件とは異なり、直接的な租税負担を回避する行為が前提となることが多く、比較的拡張的な本件及び最判の判断は、特徴的であり、重要なものと考えられる。もちろん、重加算税の40%を超過するような負担を課すことで公平負担とのバランスを取ろうとする本制度の趣旨からすれば、厳格にその要件を判断すべきという指摘もあり得よう。
「納税者が、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事
実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したとこ
ろに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったときは、その
納税者に対して重加算税を課することとされている(通則法68条2
項)。この重加算税の制度は、納税者が法定申告期限までに納税申告書を
提出しないことについて隠蔽、仮装という不正手段を用いていた場合に、
無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税
義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を
確保しようとするものである。」
「したがって、重加算税を課するためには、納税者のした無申告そのものが
隠蔽、仮装に当たるというだけでは足りず、無申告そのものとは別に、隠
蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた無申告がされたことを
要するものである。しかし、重加算税制度の上記趣旨にかんがみれば、架空
名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると
解するのは相当でなく、納税者が、①当初から法定申告期限までに納税申告
書を提出しないことを意図し、②その意図を外部からもうかがい得る特段の
行動をした上、③その意図に基づき法定申告期限までに納税申告書を提出し
なかったような場合には、重加算税の上記賦課要件が満たされるものと解す
べきである〔最高裁平成●●年(○○)第●●号同7年4月28日第二小法
廷判決・民集49巻4号1193頁参照〕」
しかしながら本件では、かかる判示を前提に未申告の累積【不動産の購入や通帳金額の増加も含め】があり、また、他の自治体【居住地における国民健康保険料計算】によることをもって、上記のように当初からの未申告の意図や外部からの伺いうるような行為であるとの認定を行っている点は、先例的な価値があろう。特に未申告の累積は、多くの事案において租税に関する知識不足等から発生しうるものであり、また、直接的な納税に関わる機関においてなされたものでなくとも、所得を隠蔽するような行為を行っている【虚偽の所得の回答を行っている】ことが上記のような重加算税の要件に合致するということは、珍しい判断であろう。検討対象としても先例的なものとしても本件は有益な事例であるように考えられる。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
判例裁決紹介(札幌高判令和2年11月12日、給与と外注の認定)
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回札幌高判令和2年11月12日で、運転手への支払が給与であるのか、外注であるのか否かという点が基本的な争点となった事例です。
具体的には、本件は、地裁と基本的な判示を共通するものであるが、運送業を営む控訴人(原告)がその運転手に対して支払った金員が課税仕入であるとした確定申告に対して、当該金員は給与に該当するものであるとして課税仕入であることを否定した(仕入税額控除を認めない)更正処分等を不服として提起された事例である。
正直、古典的な論点であり、実務においてもこの論点に対して自分なりの見解を持っていることは当然であろうと思われるような事案であるが、同様の事案において、近年紛争として司法の判断を受けている事例であり、最近の状況を反映させるべき事案であろう。いわゆる外注と給与では、その負担が異なることは周知の事実であり、本件もその類型に属するものであるが、基本的には受けての給与所得としての認定要素である従属性をその基礎として点は、現行の事実認定、判断枠組み、特に租税法規の判断枠組みや事実認定に習熟するという点において本件は参考となるべき事例であろう。
近年は法人税法上の源泉徴収義務や役員給与という点から争われることは減少しており、概ね消費税の仕入税額控除の適用対象となるすなわち課税仕入であるのか否かという点が本件と同様に、中心的な争点であることが多くなっているが、仕入税額控除であるのか否かという点において消費税の負担は大きく相違することは明らかであり、法人としてかかる点につき、関心が高くなるのはやむを得ない。本質的にはこの構造自体が問題であるように考えているところでもあるが、適格請求書等の導入が本格化したところであり、この点が消費税の負担においても今後も焦点が当たることであろう。
ただし、本件も他の類似案件も同様に、消費税と法人税(源泉徴収)をミックスする形で取り扱いが議論されているが、実務家としてはこの感覚が未だに主流であるようにも捉えられるところであるが、今後は適格請求書を起点とした中で如何にして判断を行っていくことになるのかという点が今後の課題であり、課税仕入であることを如何にして判断を行うべきであるのかという点から今一度、判断枠組みを整理すべき時期でとは私見です。
また近年のように、従来とは異なり、働き方や契約、柔軟な働き方へと変化している環境下では(DAOとかは典型的かもしれないが、これが本格的に導入されるかどうかも含め)、このような枠組みが妥当であるのか否かという点も含め(国境をまたぐことも)人的な役務提供の判断において基準の変更が必要であるのかという点が基軸となるべきものと考えられる。
本件は、基本的に従属性を起点に判断を行っている。所得税の枠組みが活用されているが、本件では同様の業務を行う給与支給者との間で対比も行っているところで、他者との代替が行われうるものであるのかという点が判断において採用されている。この点は最近はあまりみない視点であるが、雇用という性格をよく表しているのではないだろうか。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
判例裁決紹介東京地判令和2年12月22日、課税売上の認定)
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判令和2年12月22日で、課税売上が存在するか否か、より正確には、仕入税額控除に見合うような課税売上割合に該当するような課税売上が存在するか否かという点が争点となった事例です。
具体的には、本件は不動産賃貸を行う原告が、その設置する自動販売機に関する収入【546円】があったものとして課税売上割合を100%として、当該課税事業年度において、仕入れた賃貸用の不動産に関する仕入税額控除の適用を行い、もって2000万円を超過する消費税の還付を申告したところ、かかる課税事業年度において資産の譲渡等は発生していないとして、課税売上は存在せず、その還付は認められないとした更正処分等を行ったことを不服として提起された事例である。
売上収入と消費税の還付金額に明らかな不整合があり、課税事業年度を短縮するなどして、賃貸用の不動産仕入のタイミングにあわせて課税売上の発生を観念し、賃貸用不動産に関する控除を最大限に活用しようとしているような作為的な印象は拭えない・・・おそらくかかるような行為をもって消費税の還付を図るような行為を租税回避であり、適格ではないという認識が起点になっていることであろう。
直接的な争点は、当該課税事業年度において、課税売上が発生したか否か、消費税法におけるタイミングの問題としているが、今後の適格請求書を基礎とする制度の中において、本件のような状況がどのように対応されるものであるのかという点は興味があるが【かかる点で意義を有するのかという点は議論の余地があろう】、本件判決は現行法の状況において、消費税法における課税売上のタイミングを如何に判断すべきであるのかという非常に基本的な点を基礎として、もって租税回避への事実上の対応策を行っている点において重要な事例であるように考えられる。
原告の主張は基本的に、契約書の計算期間をもって事業年度末を含む期間における計算書を分割し、課税売上が発生しているとした主張であり、課税売上に関する権利の確定が契約上で捉えられるのかという点が判示において否定されているのが本件の論理であるが、権利確定主義自身が所得税法や法人税法に基礎的な概念であり、消費税法において明文をもって定められているとは見解の相違があろう。かかる点につき、帳簿の連関を通じた検討もありえようが、今後は適格請求書の存在をベースとした場合において、如何にしてそのタイミングを判定すべきであるのかという点は、より検討が必要であるように思われる。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。
判例裁決紹介(大阪地判令和4年3月25日、複合構造による家屋の固定資産税評価に於ける補正率算定方法と実施要領の位置づけ)
また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今週は大阪地判令和4年3月25日で、複合構造をもつ家屋の固定資産税評価額の算定において、適用される経年減点補正の算定方法につき、自身の要領に記載する方法とは異なる旧来の方法を用いていた事により、かかる所以をもって、構造上最も長い耐用年数に基づく【SRC構造】補正率の算定が行われたいた事が課題となった事例であり、課税庁が主張する低層階方式における評価の継続的していることの合理性が否定され、課税庁が敗訴した事例です。
具体的には、本件はS構造【鉄骨】とSRC構造【鉄骨鉄筋】が混在する家屋【ホテルや商業施設等が一体となった建物】を保有する原告が、当該家屋の固定資産税評価額としての登録価格に対して不服を固定資産評価審査委員会に申し立てたところ、棄却されたことから、その評価額の算定、経過年数による劣化を反映すべく定められた経年減点補正率の適用が誤ったものであるとして提起された事例である。家屋評価における経年減点補正率という非常にテクニカルな部分が基本的な争点となっているものであるが、本件は、構造別に補正率を定める評価基準の適用において、複合構造の家屋に対する評価額の算定における経年減点補正率の算定方法適用が直接的には争いとなっているものであるが【おそらくこのような複合的な大規模施設は増加しており、このような意味でも重要であろう】、固定資産税評価額という税務において基軸となっている評価額の算定において、複数の評価方法がありうる場合において、かかる評価方法において如何なるものを選択すべきであるのか、その合理性を判断する上で判断の枠組みを示したものであり、かかる点において重要と考えられる。
本件では補正率の算定において、構造を異とする家屋について、構造ごとに区分する方式ではなく、一棟ごとに一定の仮定をおいた上で、床面積の最大値を基準とする床面積方式か低層階における構造における補正率を適用する低層階方式のいずれかが合理的であるのか、課税庁たる市町村の裁量がこのような複数の評価方法が存在する場合において認められるべきであるが、かかる裁量が如何なる点において合理的であるのかという点が中心的な争点となっているものである。
本件では、課税庁は低層階方式を利用し、もって構造上、重量があるSRCが低層階に来るのは必然であるがため、もって必然的に長期間の利用期間が想定され、補正率を適用した評価額の算定が高額とならざるをえない形になっていることが、固定資産税評価額として合理的な、客観的な時価を算定するという趣旨に合致しているのか否かという点が争点とされ、全体面積の80%を占める主たる床面積を占める構造物の補正率を適用する床面積方式の適用がなされないことよって、S構造による評価を適用されることがない事によりもって評価額が引き上げられていることを不服としているのが本件の原告における主張である。
判示は最終的に原告の主張を認め、課税庁の主張する低層階方式の評価継続の合理性を否定したが、まず最初の印象としては、この判決が確定することで、大きな固定資産税の評価額の減額は発生しうるように、他への波及が大きいものと想定されるところである。
そもそもとして課税行政庁は、自身が定めるその実施要領にて、平成18年の改正において従前の床面積方式以外の方式【低層階方式等】の適用を認めていた文言を削除しており、現在の実施要領では床面積方式の採用による評価補正率の算定を定めていながらも、本件家屋に関しては少なくとも平成18年改正前のまま低層階方式を継続してその評価額の算定を行っていたことが本件の起点となっているものともいえよう。地方自治体において租税実務の担当者が頻繁に入れ替わるような状況等も想定されるところであり、現場的には、過去の状況まで遡って対応するのは物理的に困難な状況にあったのではないかとも考えられるが遡及的に評価額の修正を促すべき行為は課税庁において期待薄であるのかもしれない【かかる点で本件訴訟は確定すれば、実質的な影響は大きいだろう】。基本的に新築時の付与された評価が継続するのは固定資産税の評価の世界では一般的な考え方であるが、かかる所以は膨大な事務作業への配慮があるものと考えられる。しかるに、事務負担への配慮による合理性を基礎とした、この評価の継続が合理性を有する場合とその合理性が喪失しているか否かという点は、如何に判断されるのかという点は重要な点である。
本件では、低層階方式の非合理性に関して、建築士や評価研究センターの知見を活用して主張しているが、これは原告が信託銀行で不動産のプロであるがゆえに行われた故に【それでも是正すべきことに気づくのに10年以上かかっているが】、如何に賦課課税方式による是正が困難であるのかという点も垣間見られる事例である。近年は東京都などの大都市部を中心に固定資産税の評価額に関する訴訟が増加しているが、地方部においてこそこの評価が適性が行われているのか否かという点を検討する実効的な仕組みが必要とされるのだろう。先日、固定資産税評価審査委員会の、不作為等に関して国家賠償法上の責の存在について最高裁が審理をやり直すべきという判断が行われていた事例【この判断が行われれば、おそらく評価委員会の責務はより強化されることになるだろう】もあるが、複雑な評価基準を理解して、多様な固定資産に対して適用の是非を判断することができる人材がどの程度いるのだろうとは以前からの疑問。
「複合構造家屋に適用する経年減点補正率の求め方の選択が、評価基準が市町村長に許容した範囲内の合理的な選択といえるか否かは、①当該市町村長が選択した経年減点補正率の求め方が、経年減点補正率に係る評価基準の定めの内容、趣旨に沿ったものといえるか否か、②当該家屋に適用する経年減点補正率の求め方の選択が、当該市町村内における評価の統一性の要請からみて合理的といえるか否かの双方の観点から判断するのが相当である。」
以上のように本件では、上記のような判断基準を示し、評価基準の定めの趣旨等からの判断及び評価の統一性の要請の視点からの2側面からの判断を法令解釈としている。単に規定の趣旨以外にも固定資産税評価基準の法的な性格に依拠した評価の統一性の要請【ただし、本来の統一性は全国一律であることを要請することが基本であり、市町村内ではないとも指摘する意見もあるのかもしれないが、基本的にその趣旨に相違はないだろう】が配慮されたものと考えられ私見として賛成される。近年市町村における実施要領等のルールの適格性が争われる事例が散見されるが、かかるような地方税法の要請により定められた評価基準の性格を損なうことは困難と解すべきである。
判示では、両側面から課税行政庁の判断を否定して原告の主張を認めている。少なくとも審査の申し出があった段階で評価の不均衡が発生していることを放置すべきか否かという点は否定的に判断されたものと捉えられよう。
「評価基準は、現に存続している限り家屋には一定の財産的価値があるとして、耐用年数が経過した後の経年減点補正率を残価率0.20のままに据え置いており〔前記認定事実(1)ウ〕、家屋の寿命が耐用年数を上回ることを当然に想定している。そうすると、評価基準において、耐用年数と家屋の寿命とは理論上区別して捉えられるべきであり、家屋が耐用年数を経過した後も現に存続していることは、耐用年数の延長を直ちに正当化するものではない。このような考え方は、経年減点補正率における耐用年数を定めるに当たり参考にされている減価償却資産の耐用年数と、実際の建物の使用可能年数との乖離が生じている旨の指摘がされていること〔前記認定事実(1)イ(ア)〕とも整合的である。」
なお、少し本題からずれるかもしれないが、本件では上記のように判示し、固定資産税評価における0.2残価率の設定を基礎として耐用年数が経過後も資産が存在していることを基礎として、必ずしも経過後も利用価値が失われていないことを固定資産税評価における特徴として理解する傾向がある課税庁の主張を排斥しているように捉えられる。利用価値があることを基礎として、もって地方税の応益性の反映に基づくものであろうが、その評価額の付与を行うことが一定の合理性があるという主張がなされることが多いが、本件では必ずしも受け入れられていないように思われる。
「通常の維持管理を行うものとした場合において、その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定めたものであつて、非木造家屋の構造区分に従い、」
上記は評価基準における経年減点補正率の背景にある趣旨であるが、あくまでも時の経過による通常の減耗を評価額に反映させることで時価の算定を行うというものであり、この点に厳密に判断しているように解される。この点について残価率の設定と応益性の視点からの特徴的な評価方法が固定資産税評価における特徴として他の評価方法にも影響を及ぼすものであるのかという部分は更に検討していきたい。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているもので完成度は低いですが参考までに。
判例裁決紹介(令和2年2月3日裁決、宗教法人代表者の修正申告に関する意思)
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和2年2月3日裁決で、宗教法人の代表者がなした修正申告について、自身の意思を無視したものであり、無効であるとして提起した事例である。
本件は具体的には、宗教法人の代表を務める請求人が、なした期限後申告に関する修正申告【所得税、賞与であるとして4000万円が加算】について、無申告加算税等の賦課決定処分等を受けたことにつき、当該申告は、調査時の言動等によるものであり、自身の意思によるものではないとして無効、取り消しを求めるものである。宗教法人への調査に基づく、請求人への支払を調査により指摘されたことを起点とするものであり、結局のところ、自身の納税額が多額であることを要因とするものであるように思われるところであるが【本件としては宗教法人からその代表者に対してこのような多額の金銭が支給されているような事案であり、特殊なものであろうが、このような背景となるような事実関係がどのようなものであるのかという部分が個人的には気になるところ】、自身の理解不足、認識不足を主張して課税の取り消しを求める案件である。
このような納税者の認識不足等を理由とした不服申立てが、現実的にありうるのかという点は実務に最近関わっていないので、結局のところ一般的な納税者の知見はこのようなものということなのかもしれませんが、昔と変わらないなとも思いますし、実務では日常茶飯事なのかもしれません。宗教法人という非営利による租税の特別措置を付与されていても認識不足が発生するところに我が国の基本的な租税教育の不足、主権者納税者としての認識不足を感じるところ。
理解不足や知識不足などは、申告納税制度においては、基本的に考慮されることがないという原則的な判断が再認識され、申告納税制度の重要性と租税に関する知識の普及と啓発が重要であることが再認識される事例だろう。
判例裁決紹介(令和2年8月21日裁決、行政指導とお知らせ文章)
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和2年8月21日で、相続に関する期限後申告とその基礎に無申告加算税を賦課決定処分を受けたことにつき、かかる点において、税務署からのおしらせ文書記載の誤解によるものであり、正当な理由があるとしてその取消を求めたものです。
具体的には当該税務署からの相続に関するお知らせ文書に記載された、法定納期限を誤解、読み違えたということで、主張されているものであるが、基本的には法の無知によるものであり、申告納税制度を基礎とする我が国の現行法制度において特段考慮される可能性は非常に低い事例であって、裁決判断も請求人の主張を否定している。
本件では、上記のような事例として、事実関係が問題となっているものであるが、重要なのは、この点ではなく、税務署からのお知らせ文章の意義について、課税庁として、の主張において、行政指導の観点から主張を行っているものであろう。近年は調査手法の多様化や、手続の改正もあり、このようなお知らせ文章が税務署から送付されることが増加しているものと考えられる。しかしながらその法的な性格は必ずしも明らかではなく、租税手続法、実務においても対応が不明瞭な点が存在している。この点を如何に解すべきであるのか、という点は、検討すべき課題であるが、本件では課税行政庁としては行政指導という観点から主張を構成している点が珍しく、興味深い。従前の行政指導とこのような書類の送付を同視すべきであるのかなど、更に検討すべきことを提起してくれる興味深い事例であろう。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているもので完成度は低いですが参考までに。
判例裁決紹介(令和4年2月15日、名義預金認定に出捐に基づく按分)
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今週は令和4年2月15日で、相続税の課税財産の把握において、課税庁が行ったいわゆる名義預金認定が納税者の主張により排斥された珍しい事例です。
具体的に本件は相続人たる請求人(一人は税理士)がなした相続税申告につき、課税庁の調査により、被相続人である家族名義の預金及び、相続発生後の出金が申告された相続財産に含まれていないとして更正処分等を受けたことから、当該預金等は被相続人の配偶者等(相続人)の帰属に帰するべきものであるとして、当該処分の取消を求めた事案である
いわゆる名義預金の認定という、家族名義の預金が如何なる者に帰属すべきものであるのかという点が中心的な争点となっているものである。相続税の申告の基礎となるべきものの一つが相続財産の把握であることは実務家にとって、言うまでもないことであろうが、本件もその中で最も争点とされることの多い、いわゆる名義預金が争点となったものである。テキストや問題文で、預金の名義が問題となることはほぼないものであるが、現実社会に出るとこのような名義の異なる、実質的な所有権者との相違が争点となってくることは、まずもって認識しべき問題であり、社会人がテーマとしがちの点ではあるが、多くの場合事実認定の問題であることが基礎として認識されるべきものであろう。ちなみに本件のような問題は名義預金の問題としてよく言われるのだが、なぜ、名義預金という表現になっているのか、というのがいつも疑問に思うところ(皆さんは思ったことはないだろうか?実質的な帰属と呼ぶべき問題であろうが)。
かかる点で本件は特段珍しいものではないが、本件の特徴的なところは、課税庁が行った名義預金の認定を納税者の主張により、審判段階ではあるものの、その認定が排斥されたということであろう。課税庁の主張立証の不十分ということがその要因と評価されるものであろうが、基本的に事実認定の問題であるものの、本件は預金の源泉の出捐先に関して、詳細な事実認定を行った上で(この点で近年の認定に関する流れを典型的に表現しているもの)判断を行っており、実務上は非常に参考となるものであろう。
「被相続人以外の者の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、当該財産又はその原資の出えん者、当該財産の管理及び運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、当該財産の名義人がその名義を有することとなった経緯等を総合勘案して判断するのが相当である。」
判示は上記のように家族、配偶者名義の財産のように、名義が異なる場合、その判断に関しては、出捐にとどまらず、管理状況など総合的な状況をもとにして実質的な判断を行うこととしている。このような法令解釈と判断の枠組みに関しては、特段珍しいものではない。裁判例とも整合的であり、原則的な枠組みとして合理的なものであろう。
しかしながら、本件では配偶者名義の預金に関しては勤務実績の存在等から配偶者の貢献を如何に判断すべきであるのかという視点が背景にあるように考えられる。この点で、従来とは異なる名義認定の背景が登場しているように思われる。すなわち、従前の名義預金の問題の中心は男性が働きその上で構築された預金の配偶者家族名義の分散を基礎としていることが、当然のようにその背景にあった(あまり議論されているものではないかもしれないが)。しかしながら、本件では、配偶者の勤務実績の存在がまずは前提としてあって、その上で、本件資産の形成における配偶者の貢献を判定することがまずは、求められていることになっている。
この点は、あまり意識されていないように思われるが、夫婦財産の形成における社会的な環境変化、共働きの増加という社会環境の変化を反映しているようにも思われ、租税を考える上では非常に重要な点であろう。従前、所得税などの単年度ベースでは環境変化の反映が垣間見られる事例は存在しているが、相続税という財産の長期間の形成における判断においてもこのような状況がみられるようになってきていることは、租税においても環境の変化を反映させる契機が到来しつつあることを感じさせるものであり、かかる点で重要な点であるようにも考えている。
このようなバックボーンの変化をと基礎としつつも、基本的にはこのような名義認定の問題に関しては租税法規としては課税の公平性を反映させ、課税の均衡を図る観点からも実質的な判断を基礎とすべきという点は変わないと考えるべきである。しかるに上記のような総合的な判断の要請は、判断枠組みとして合理的であるものと考えられるが、その具体的な基準に関しては、上記のような背景をもとに変化すべきものといえよう。
本件では判断の基礎は上記のような総合的な判断をベースを課税の公平を基礎に構築されるべきものでありながら、課税庁の主張が基本的に預金の出捐にほぼ収束された主張を形成していることが、判断の原因となっている。確かに従来の判断のベースは出捐を基礎とするような判断の枠組みが実際的な、あるいは判断の中心的な要因として機能している事例が多い。実務においてもおそらくこの出捐関係がその判断の基礎となっていることが多いものと想定されるが、テクニカルな実務ベースの判断の枠組みとしては機能しうるものであるが(この点においては予見性が高いが、結果的には中核的な部分を理解しておらず立証が不足していることが本件の判断の要因となっている)、規範的な意義において本質的には不十分であることはまた認識されるべきであろう。民事法的には、その名義を争う場合において出捐という点を重視するケースは多いものであるが、相続税という租税負担を検討するにあたっては、租税負担の均衡の要請の視点が背景とすべきことは留意されるべきものと考える。
何れにせよ、本件の判断は税理士が請求人に含まれていることもあり、名義認定の一般的な問題とはいささか異なる展開となっているが、従前の事例と対比することで今後の判断においても参考とするべき案件であろう。個人的にはマイナンバー等が口座に紐付けられる中で、このような管理状況などの判断の枠組みがどのように変化するべきであるのかという点が今後の検討課題であるように思われるところ。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
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