2022年7月9日土曜日

判例裁決紹介【令和元年9月10日裁決、架空外注費に対する調査と終了の裁量】

 

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和元年9月10日裁決で、架空外注費に対する調査への手続的な不備が問題になっている事です。

具体的には本件は不動産管理等を行う、法人の外注費の損金算入否認【架空外注費】であるのか否かという点が争点となっており、典型的な外注費に対しての計上否認が争いになっている事であろう。

事案としては、基本的に事実関係が問題になっているものであるが、本件において気になるのは、調査過程に違法性をというものであり、特に近年の調査の終了という点が争点になっている点が本件の特徴であろう。

通則法は、第7章の2《国税の調査》において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、公平の観点からも問題があると考えられることからすれば、調査手続の瑕疵は、原則として課税処分の効力に影響を及ぼすものではないと解すべきである。
もっとも、通則法は、第24条の規定による更正処分、第26条の規定による再更正処分等について、いずれも「調査により」行う旨規定しているから、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合には、課税処分の取消事由となるところ、これには、調査を全く欠く場合のみならず、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続(以下「証拠収集手続」という。)に重大な違法があり、調査を全く欠くに等しいとの評価を受ける場合も含まれるものと解され、ここにいう重大な違法とは、証拠収集手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなどの場合をいうものと解するのが相当である。
他方で、証拠収集手続自体に重大な違法がないのであれば、課税処分を調査により行うという要件は満たされているといえるから、仮に証拠収集手続に影響を及ぼさない他の手続に重大な違法があったとしても、課税処分の取消事由となるものではないと解するのが相当である。

上記のように、基本的に調査上の瑕疵、手続き上の違法性に関しては、法令解釈上、その不備に関する取消要因としては限定的であることはほぼ確定した解釈であろう。しかしながら本件のように、証拠収集手続という視点からはさらに限定されている。調査が処分の前提である以上、必ずしも証拠収集に限定した対応を行う所以はないようにも考えられるが、近年はこのような手続上の不備に関する解釈が主たるものとして機能し始めているようである。調査における各段階も異なるものであり、一律にその評価が行われることは困難であるように思われるが、証資料に関して証拠書類としての帳簿の位置づけを強化する税制改正も行われ、この手続き上の瑕疵をどのように評価するのかという点は、新たに検討が行わるべき時代になりつつあるのでしょう。

質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施
の細目については、質問検査の必要性があり、かつ、これと相手方の
私的利益との衝量において、社会通念上相当の限度にとどまる限り、
権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられていると解される。そし
て、どの段階で調査等を打ち切って更正処分を行うかについても、
定法に何ら定めもないことから、制度の趣旨、目的に反しない限りに
おいて、原処分庁に裁量が認められていると解される。

本件では上記のように、調査の具体的な実施に関する調査官の裁量が広範囲にゆだねられている。原則論としてかかる解釈は合理的であるように考えられるが、調査の終了に関しては実定法に定めはないとして同様にその適用を図っている点は疑問がなしとはしえない。説明を実施することが法定されている段階において、このように、制度趣旨目的という比較的広範な視点からの制約において、裁量権を認めることの妥当性は議論されるべきであろう。そもそも調査が説明が不十分とか、調査拒否をどのように認定するのかという点は、非常に事実関係から認定することが困難な分野であり、かかる点からは立法化は困難であろうが、議論されるべきものだろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


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