2022年7月9日土曜日
判例裁決紹介(東京高判令和3年8月26日、事業税における駐車場業の判断、土地貸付)
また今週も興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判令和3年8月26日で、個人が駐車場用地として法人に貸し出し(貸出賃料は不動産所得)、もって法人が駐車場を営む方式(土地賃貸方式)で納税者が営む場合において当該個人の納税者が事業税の課税対象となる駐車場を営む駐車場業に該当するのか否かという点が争点になった事例です。
具体駅には本件は駐車場業という地方税法における事業税の適用範囲が課題になった事例である。業界関係では著名な、東京都における独自の判断枠組みで事業税を課していた(本件のような土地の貸付も駐車場業として)点が争点となったものであり、地裁に引き続き、納税者の主張が認められ、処分行政庁の主張が排斥された事例である。本件は最高裁にはあげられず、高裁段階でとどめており、処分行政庁としても今後の取り扱いを検討しているものであろう。業界関係では東京都がこのように駐車場業の解釈として、単に自己が所有する土地を用いて駐車場を営むに限定せず、実質的な公平性を確保する(との主張によれは時代の変化等に対応した新しい取引形態への対応等が意図され、都の事務提要にも明確に定めている(法律ではないのですが)趣旨にも反するとして地裁に引き続き、土地を賃貸している者に対しても個人事業税を賦課することの正当性を主張したことにつき、明確にその処分を裁判所は否定している。
「道府県が個人事業税を賦課する根拠は、地方税法72条の2第3項以外にないのであり、被控訴人が「駐車場業」を行う者であると認められなければ、「駐車場業」を行う者として個人事業税を賦課することは許されないことは自明である。そして、地方税法72条の2第8項13号の「駐車場業」とは、対価の取得を目的として、自動車の駐車のための場所を提供する業務を自己の計算と危険において独立して反復継続的に行うものであることを要すると解すべきであることは、当審が引用する原判決が説示するとおりである。
また、事業税は、事業を行う者と道府県との間の応益負担の原則に立脚するものであることからすれば、個人事業税の対象となる「駐車場業」とは、当該個人において、事業といえる程度の形態で有料の駐車場が営まれていることが必要であると解すべきことも、当審が補正の上引用する原判決が説示するとおりであって、これらを前提に、原判決の前提事実及び認定事実を総合すると、被控訴人が「駐車場業」を行う者であると認めることはできないというべきであり、原判決の認定判は、その手法も含め相当であると認められるから、控訴人の上記主張を採用することはできない。」
以上のように、高判も基本的な判示は地裁を踏襲しているが、一部事業税の基本的な性格として事業を行う者道府県との間の応益負担を基礎として解釈を追加して(この事業税の性格については争いがあるだろうが)、事業の主体を明確にしている(応益関係において、本件は個人が事業を営むことが必要であるとしている)。かかる点は地方税の基本的な性格を鑑み、単に事業や駐車場業の意義だけではなく、当事者を明確にしたものとして、今後の事業税や地方税の解釈においても参考となるべきものであろう。
上記の解釈も含め最終的に判示は、
「個人の事業の方式や形態は時代の変化に伴い変容するものであり、駐車場に関する経営手法についても、従前の自己経営方式から近年は土地賃貸方式が主流となっているところ、その利益に対して事業税を課すことは合理的であり、土地賃貸方式のみを課税の対象から外すことは不均衡というべきであるから、土地賃貸方式による駐車場経営が「駐車場業」という文言の拡張解釈であると判示する原判決の判断には誤りがある」
と主張した処分行政庁の主張に関しては、すなわち、明瞭に駐車場を直接営まず、土地を提供している法形式を無視して実質的な公平性を担保すべく法解釈によって駐車場業を拡張的に解釈しているのが事務提要であるとの判示を否定している課税庁の主張は、以下のように、
「しかし、個人事業税の対象となる「駐車場業」とは、当該個人において事業といえる程度の形態で有料の駐車場が営まれていることが必要であると解すべきことは、前記アに説示したとおりである。控訴人が指摘する土地賃貸方式による駐車場事業を個人事業税の賦課の対象から外すことは不均衡であるとの主張は、課税対象となる個人において行う「事業」の意義を正しく理解せず、都事務提要の「駐車場業について」の規定文言にとらわれ、土地賃貸方式による駐車場事業に関わる当該土地の賃貸人も一律に「駐車場業」を行う者に該当するとの誤った解釈を行うものであって相当でないから、控訴人の主張は採用することができない」
として
自分たちの作成したガイドライン、基準である事務提要に固執したものであり、駐車場業はあくまでも業として、事業として駐車場を営むものであり、駐車場を営む場所を提供する行為を、事業において不可欠なものを提供しており実質的に事業を営むものとして評価することは、租税法規の基本的な要請である分離解釈を超えるものと判示されているものと考えられる。地方税法においてもそもそもとして事業とはいかなるものであるのかという点は明確にされていない(所得税等と変わりはない)という点は課題であろうが、負担の公平に着目し拡張的に地方税法を解釈していることが否定された事例であって、地方税法の世界にとどまらず、通達等の解釈においても参考となるべき本件であろう。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。
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