2022年7月9日土曜日

判例裁決紹介(東京地判令和2年9月1日、キャバクラ接客による報酬の所得類型)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判令和2年9月1日で、キャバクラ接客による報酬の所得類型が給与であるのか、事業所得の対象であるのかという点が基本的な争点になっているものです。 具体的には、本件はキャバクラ等を経営する法人である原告が従業員(接客を担当するキャストと呼ぶらしいです)に対して支払った金員が報酬であるとして申告を作成していたところ、本件は、指揮命令、時間的な拘束の関係から給与であるとして、更正処分を受けたことを不服として提起された事例である。従業員(このような書き方自体が雇用関係を前提としているようであるのでキャストと呼びますが)が受け取った報酬が給与となるのか、事業所得の対象となるのかという点が中心的な争点となっているものである。争点としては源泉徴収義務が上がっているが、基本的には、仕入税額控除の適用対象となるのか否かという点が本件の起点となっているものといえよう。 一般的な働き方はではないが、そもそも教科書的な雇用契約というものは減少傾向にあり、事業所得と給与所得の境目は曖昧となりつつあるのが現状であって、両所得の要素を混在させているような働き方が増加傾向にあるものであり、本件もかかる点でその類型に属するものであろう。教科書的は働きからが明瞭であるようなケースはあくまでも教科書であり、事実関係の積み重ねにより(基本的には租税法の問題ではないのかもしれないが、)租税法の適用関係を判断することになるという点は重要な点であろう。このような非典型的な働き方における所得区分(源泉徴収義務や仕入税額控除の適用まで拡大するが)がどのように判断されるものであるのかという点は古くて新しい問題であり、本件もその1類型として、検討材料となるべきものであろう。特殊な働き方というように考えず重要な判断要因を検討することが実務家にとっても参考となるべきものであろう。 以上のように、基本的には事実関係を基礎に、本件の報酬がいかなる所得区分に該当するものであるのかという点が問題の中心になっているものである。 結論として給与であるとの認定を行っているもので、課税庁の主張を全面的に受け入れているが、納税者が主張する、高額の報酬の発生可能性や指導の有無等は発生は可能性に過ぎないものであり、主張としては根拠に欠けるものであって(経費が自己負担であることは主張の根拠となるものであるが、実際には、主たる要因にはなりにくい、個人属性が強い職務である以上経費負担は自己負担で報酬でカバーせざるをえない)、租税法規では一般的にかかるキャストは事業所得であるとの認定という主張も根拠に欠ける(確かに紛争では事業所得であるとの認定を受けるケースも多いが)ものとして評価されているものである。立証の問題であるように思われるが、裏付けが客観的であるの否か、仕入税額控除の適用を目的としてなどのようなものでは、当然不適当であろうし、立証の巧拙が明確に結論を左右しているような事案であろう(印象で裏付けようとしている)。 本件では、罰金の存在・、他店での勤務禁止、売掛金の回収義務の存在(この種の業界ではよくあることですが)が基本的な判断要素となって指揮命令存在や独立性が認定されなかったことで、給与としての認定を総合的に判断しているものである。キーとなる部分をどこに置くかにより判断が分かれるところで、本件は事業所得ではないという認定のアプローチ(給与所得の対象は非常に広範囲という前提から)が基本的なアプローチになっているものと捉えられる。 判示では、各キャストの中には、個人事業主として確定申告している存在があるからと言って事業所得に関連するものではないとの判断も行っている点は興味深い。多くの実務ではこのような個人の申告での対応が一つの裏付けとなるような事案が、主張が多いものであるが、本件ではこれは受領側の認識に留まり、支払側の認定の材料としては主たるものとしてはなり得ないとの判断を示している点は留意が必要であろう。近年は消費税の位置づけが強化され、形式的な判断の要請が法人税等にも入ってくるようになっているが、必要経費の認定も困難であり、このような一種の厳格化傾向は今後も強調される可能性は考慮されるべきであろう。 以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

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