2022年10月17日月曜日

判例裁決紹介(大阪高判令和2年1月31日、従業員が行った架空経費の計上と法人の重加算税賦課)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪高判令和2年1月31日で、従業員が行った架空経費等の計上が、仮装隠蔽にあたり、法人として重加算税の適用対象となるべきであるのか、という点が争点となっているものである。 具体的には、控訴人(原告)である法人の従業員が、行った架空の経費計上及び、売上の過小計上が、法人の行為として同視でき、重加算税の賦課決定処分の対象となりうるのかという点が中心的な争点となっているものである。控訴審では地判と同様に、控訴人の主張を退け、課税庁が行った重加算税の賦課決定処分が適法である旨判示しているものであり、控訴審では、従業員の行った行為であり、納税者である法人において、過少申告などの認識もなく、意図的に行う仮装行為等を行う意思はなかったとして、重加算税の適用は否定されるべきであるとの主張が課題となっているものである。事実認定として、納税者である法人の行為と、自己の利益のため会社に損害を与えるような行為をする従業員の行為を同視することが可能であるのかという点が、争われた地判とは異なり、重加算税の性格などが基本的な背景として争われている。 (重加算税) 第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。 基本的に上記のように、重加算税の賦課は、ほ脱とは異なり罰則としての機能ではなく、法の趣旨としてあくまでも附帯税としての性格に則り、下記のように事実としての仮装隠蔽の存在と申告によって足りるものであり、納税者の申告時の認識(これは法人においては具体的に判断するのは困難ではあるとは考えるのだが)は必ずしも必要のないものであるとの最判を引用した上で、判断している。基本的には、従前のものの踏襲であり、整合的で特段珍しい解釈が示されたものではないが、重加算税という実質的には制裁・罰則としての要素が強い附帯税においても同様の判断を適用されるべきであるのか、という点は、現代においても検討課題とすべき点ではあるだろう。 納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又 は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽、仮装行為を原因として過少申告の結 果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過 少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではない〔最 高裁昭和62年5月8日判決〕 法人としては、従業員による犯罪の被害者であり、重加算税のような制裁的な納税上の取り扱いを受けることは酷であるとの思いが背景にあるものであろうが、基本的に法人と従業員の民事関係(損害賠償)等で対応すべきというのが、租税の基本的な考え方でもあることは、従前どおりであろう。変更には立法的な対応が必要であろうが、近年はあまりこの議論はなされていないように思う。従業員の犯罪行為に関しては、このような論点もあるということが一つの留意点として実務家として素直な感情論とは異なる対応が必要であることは認識されるべきであろう。 以上です。毎回の如く備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに。

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