2022年10月17日月曜日
判例裁決紹介(令和2年12月15日裁決、実質所得者課税の原則)
また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和2年12月15日裁決です。不動産取得に伴う収益が法人税法上の実質所得者課税の原則の適用によって更正処分を受けたことを不服として適された事例です。
具体的には、請求人たる法人が複数の不動産取引【土地の譲渡や権利金の収受】によって発生する収益が請求人に帰属するものであるのかという点が直接的な争点となっている。他に帰属に伴う収益の時期等も争点になっているが、中心的な争点は実質所得者課税の原則による名義人とは異なる請求人への収益の帰属の判断が妥当であるのか否かという点が課題となっている。本件は不動産取引という日常的な取引において発生したものであり、別途仮装隠蔽が争われるなど、基本的には事実認定が中心的な問題となっているものであろう。最近は訴訟レベルにおいて、実質所得者課税の原則の適用が争われるケースは減少しているが、まだ裁決レベルでは、法人税においても適用が争われているケースが発生している。かかる点は実務家においても参考とすべきものであろう。
(実質所得者課税の原則)
第十一条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
法人税法第11条は、別紙3の2の(1)のとおり規定するとこ
ろ、同条は、法律上の所得の帰属の形式とその実質が異なるときに
は、実質に従って租税関係が定められるべきであるという租税法上の
当然の条理を確認的に定めたものと解される。
したがって、事業収益の帰属者が誰であるかは、当該事業の遂行に
際して行われる法律行為の名義人が誰かというだけでなく、取引に係
るその他の諸事情を総合勘案して、当該事業の主体は誰であるかによ
り判断することとなる。
以上のように、本件は実質所得者課税の原則が適用されるべきであるのか否かという点が中心的な争点となっており、法文は収益金が誰が享受しているのかという点が基礎になっている。理論的な争点としては、法はその適用対象をどのように捉えるのか、名義人とは異なる対象者をどのように解釈し、適用対象を判断するべきであるのかという点が基本的な問題となる。原則から離れた処置であり、個別事例に依拠しなければならないが、かかる点が基本的な争点となろう。
判断は、上記のように租税法上の当然の条理という点で、実質との相違をとらえるものという趣旨理解からから、事業の主体を基礎とした判断を行っている。当然の条理というものが如何なるゆえんで判断されているのかという点が定かではなく、かかる判断の根拠が不明確であるように捉えられるが、事業主体を基礎とする判断をどのように導いているのか従前の事例との相違も含め本件の判断は検討すべきものであろう。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成したもので完成度は低いですが参考までに。
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