2022年8月23日火曜日

判例裁決紹介(令和元年9月25日裁決、減価償却資産における金額の範囲、事業供用に直接要する費用)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和元年9月25日裁決で、減価償却資産における金額の範囲、事業供用における直接要する費用の範囲が如何なるものであるのかという点が争点になった事例です。 具体的には、本件は、廃棄物処理業を営む法人である請求人が、資産を取得し、当該資産に対して中小事業者における特例償却等の対象であるとして申告したものにつき、かかる特例の適用対象の金額(160万円)に満たないものであり、適用を否定した更正処分等を行ったことを不服として、修繕費等も当該資産の金額に含まれるとして提起した事例である。特例のための添付書類における資産の購入台数と実数が調査により異なることが判明し、もって特例適用対象の金額を充足しないことが発端となっているものであり、請求人の仮装的な行為が問題ではあるものであるが(範囲の問題の前に当初申告の問題としてこちらで事案としては終了するものともいえるのかもしれないが)、関連費用と減価償却資産の範囲を考える上では、特に事実認定の問題として実務家には有益な事例であろう。 一 購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額 イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額) ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額 以上のように、本件は、修繕費等の関連費用が、上記、法人税法施行令64条における、減価償却資産の金額として該当するのか否かという点が中心的な争点となっている。特にロの事業のように供するために直接ようした費用の額に該当するのか否かという点が課題となろう。必要経費等に限らず、直接という文言をどのように考えるのかという点は、租税法規において重要な論点であり、本件もその解釈を如何に捉えるべきであるのかという点が起点となっている。判断ではどのようなものを直接と解するのかという点は必ずしも明らかとなっていないが、別個の資産に関するものであることや先行取得された段階で、稼働しており、追加した資産の有無にかかわらず機能している点が判断要素となって、請求人の主張が排斥され、判断が導かれている。 請求人の主張は、追加的な費用は当該資産と機能的な一体性をもったものであり、関連するものであるとの主張が基礎となっている。機能的に一体な資産に関するものであり、包括的に捉えるべきであって、金額を構成するという主張となっているものであろう。いかなる点を基礎に機能的な一体性を持っているのかという点に対する立証が必ずしも行われておらず、どのようなものを機能的な一体性ということで理解しているのか、その根拠となる条文上の根拠は如何なるものであるのかという点は定かではない。 しかし、実務的にはこのような機能的な一体性という表現は資産の範囲を判断する際において多用されるものであろう。減価償却資産が、そもそもとして事業供用を基礎として構築されるものである以上、複数年に渡る支出の効果が及ぶことに加え、単に資産の種別にとどまらず、利用を目的とした単位での構成が行われうるものである。経営者の主観的な判断が介在する余地があるのが如何なるものを事業対象として資産の購入目的を判断するのかという点であろう(そもそも資産の購入が複数の目的や、漠然としたものである、私用と区分が曖昧なことも現実的にはありえよう)。一括での費用化が好ましいのかもしれないが、直接という文言は、多様な資産の活用方法が想定される中で、無制限な費用の組み込みを回避する機能も持っていることは本件のような事例において明らかとなるだろう。法令解釈として直接という文言は必ずしも定かではなく、実務家においてはその判断をどのように行うのかという点が重要であろうが、本件のように、単に機能的な一体性という主張のみでは実効性を有しないという点は、改めて認識されるべきであり、事業との直接の牽連性、関係性、因果関係があることを主張立証できることが重要なものであろう。 以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

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