2022年5月7日土曜日

判例裁決紹介(東京高判令和3年1月27日、業務受託先から受け取る報酬の社会保険料診療報酬該当性)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京高判令和3年1月27日で、麻酔科医が業務委託先から受け取る報酬の取扱(控除特例の対象となる社会保険料診療報酬に該当するのか否か)が問題になった事例で、 以前紹介した東京地判令和2年1月30日の控訴審です。

事案としてはシンプルで、基本的な争点は、地裁同様、麻酔科医として自己の医院も開業している原告が自己の病院以外で委託契約により実施した手術等の麻酔提供の業務の対価として受け取った報酬(業務委託契約、受託側)が租税特別措置法26条に定められる社会保険証料報酬の所得計算特例(概算経費控除)の適用対象となりうるものであるのか否か(当然自己の医院における収入が対象であることは争いがない)という点が主たる争点となった事例であり、当該報酬も含んだ形で確定申告に対して、課税庁が当該報酬は、社会保険料診療収入には該当せずの適用対象ではないとして更正処分を行ったことを不服申立を行ったことが発端となっている事例である。

判示は地裁を基本的に引用しており、結論も同様の形となっていて、控訴人の主張を全面的に認めていない。
本件は社会保険料診療に該当するのかという点で租税法規としてどのように判断されるのかという点が問題になっているが、その起点となるべきは麻酔科医という、専門職に関する人的役務の提供に関する報酬の捉え方が基礎となっている。事業所得であるのか、給与所得であるのかという所得区分の問題では本件はないが近年は、働き方の変化が進み、ジョブ型雇用の導入など、従前とは異なる独立的な働き方が登場し、所得区分を以下に捉えるのか等の紛争が想定されている。かかる点に対して判示の枠組みが一般性をもつものであるのかという点は必ずしも定かではないが(私見としては手術という提供した業務内容に対する判断が基本であり、拡張性は乏しいものと考えられるが)他の独立的、専門的な職務の捉え方を、租税法規としてどのように捉えるのかという点を検討する上で、参考となるべき事例であろう。専門職、独立的な、高度な判断を基礎として提供された業務、役務提供に対してどのように判断するのかという点は、複合的な所得や、その所得区分を中心に費用区分等、様々な論点を含むものであり、検討課題であろう。

特に本件では手術という複合的な業務に対して、地判同様、主体的な提供者であるのかという点から租税法規の適用対象としての該当性が判断されている。かかる判断の枠組みは些か明瞭ではなく、どのようなものを主体的と評価するのかという点は定かではないが、このように複合的な業務は多岐にわたるものであり、近年の労務環境から、チーム形成がなされていることは非常に多く、その一部切り取った判断を行うことは主観的な判断になる傾向があり、如何に所得を分解し検討するのかという点を検討する上では今後の検討課題であろう。

以上です。毎回の語録備忘録として作成しているものであり完成度は低いですが参考までに。

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