さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、千葉地判令和3年12月24日で、調査拒否による仕入税額控除の非適用を手動したとして税理士が損害賠償義務を認められたものです。
具体的には、本件は原告(遊技場経営法人)が調査等において、帳簿等の提示を行わず、もって消費税の仕入税額控除の適用ができないとして38億円を超える仕入税額控除が否定された、近年著名な事例(法令解釈的には保存の意義を巡るものであり、最判と変わるものではないので珍しいものではないのですが)において、税務調査等の対応を行った顧問税理士(被告)に対する原告法人による損害賠償請求の事案であり、総額38億円を超える損害の損失を裁判所が認定し、当初の請求満額である3億を超える損害賠償が認められた事例である。おそらく税理士に対する損害賠償としては認められた損害としては、最高額に属するような事案であるものと考えられる。地判の判断は、上記課税処分を争った事例における事実関係をなぞったものではあるが、租税専門家として、いかなる責任を追っているのかという点を認識する上で、非常に重要な事例であろう。
課税訴訟では再三の調査拒否により、調査非協力(このようなものであっても調査忌避に関する罰則の適用が実施されていないのは日本の租税制度の特徴ではあるのはないかと思われるところであるが)によって帳簿の保存がないということで(資料として読む分にはあっさりと認定されることになりますが、事実関係を読むと多年に渡るやり取り、本店所在地の変更や調査官マニュアルの作成、刑事告発を検討するなど多様な事実関係が存在しています)、ほぼ全ての仕入税額控除の適用が認められず、もって消費税の負担が38億円増加した事案であり、当初は事前通知がないことに対する書面による回答を求め調査を拒否することが発端となって課税訴訟も合わせ、一連の事実関係が形成されているものであるが、このような一連の流れに関して租税専門家として留意すべきことが多いものであり、経緯を理解してしておくことは重要であろう。
本件訴訟では、被告税理士は、課税訴訟と同様に課税庁の対応を指摘するのみであり、事前通知等に対する自己の解釈に基づき対応していたことから、
「本件調査に対する対応を行うに当たり、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、税法の解釈に関する自らの見識を有しつつも、適時に、原告(X2)に対し、本件調査の状況と見通しを客観的かつ真摯に説明し、原告から、本件調査に対する対応の方針について、十分に知識、情報を与えられた上での指示ないし同意を得た上、苟且にも、原告が、本来受けることができた青色申告の承認を受けることによる税法上の特典を受けることができなくなることや、本来受けることができた消費税の仕入税額控除を否認されることがないよう、細心の注意をもって、適切に対応を行う義務を負っていた」
として、判示ではその責任を認定され、専門家として特に説明や同意を求められている。この部分を怠り、
「被告は、原告の税務代理人として、本件調査に対する対応を行うに当たり、本件担当者から、本件各連絡票の送付を受け、法人税、消費税等の納付の基となる全ての帳簿書類を提示し税務調査に応ずることを求められ、当初は明示されなかったものの、その求めに応じなければ、青色申告の承認の取消処分を受け、消費税の仕入税額控除を否認されるおそれがある状況となり、後にはそのような重大な不利益処分がされる可能性があることが明示されたにもかかわらず、X2らとともに、原告の本店所在地を異動することを決定する、F国税局に対してA税務署の調査であれば税務調査に応ずる旨の文書を提出することを決定するなどの弥縫策をとったのみで、本件調査が原告に対する事前通知を行うことなく開始されたことの違法を主張して本件調査に応ずることを拒否するというそれまでの方針を維持することの可否について、課税当局の対応見込みを踏まえて原告(X2)と真摯に検討することがないまま、最後まで、本件調査が原告に対する事前通知を行うことなく開始されたことの違法を主張して本件調査に応ずることを拒否するという自らが立てた方針に拘泥し、その方針に基づいた対応をとった」
上記のように弥縫策として取り繕う行為を行ったものとして認定が行われている。。重大な不利益措置の内容を通知されながら(税務の専門家としては通知がなくとも認識すべき項目であろうが)専門家としての対応を行わなかった点が重大な責任を怠ったとして損害賠償責任を負うことになっているものである。
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