さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。 今回は令和2年3月9日裁決で、 相続放棄により実際の所有者とは異なる名義人を課税対象として固 定資産税賦課決定を行ったことを不服として提起された事例です。
具体的には相続人たる請求人に対してなされた不動産の共有名義( 被相続人名で登記)に関する固定資産税賦課決定処分に対して、 登記変更はなされていないが、 当該持分は被相続人が相続放棄を行っており( 登記は変更されていないが)、 実際には所有していないとしてかかる処分の取消を求めたものであ る。
相続登記の義務化が決定されているものの未だ義務化がなされてい ない現況においては、 実質的な所有者と登記名義人が異なることは珍しくもないものであ るが(これがわが国の土地制度の根本的な問題でしょう)、 実質的に自分の財産を明確にしていない(把握していない、 あるいは把握していないようにすることで公知しない)のは、 わが国の伝統的な特徴( こういう中で本質的に申告納税制度が機能するのかというのは根本 的な疑問ですが)であるところで、 本件のような類似事例は色々な地域で見られるものであろう。 所有者不明土地とよく言われる問題ではありますが、 基本的な前提が崩れているところに、 大きな問題が発生している典型的なところであるように考えられる ところ。 本件も登記の実効性が喪失している中での問題の類型であり、 経過的な事例であるのかもしれないが、今後も重要な事例であり、 本件は納税者の主張が認められた珍しい事例でもある。
本件では、地方税法に定めのある
第三百四十三条 固定資産税は、固定資産の所有者( 質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土 地については、その質権者又は地上権者とする。 以下固定資産税について同様とする。)に課する。
2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、 登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者( 区分所有に係る家屋については、 当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項の区分 所有者とする。以下固定資産税について同様とする。) として登記又は登録がされている者をいう。この場合において、 所有者として登記又は登録がされている個人が賦課期日前に死亡し ているとき、 若しくは所有者として登記又は登録がされている法人が同日前に消 滅しているとき、 又は所有者として登記されている第三百四十八条第一項の者が同日 前に所有者でなくなつているときは、 同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものと する。
確定規定を基本的な争点とするものであり、被相続人( 相続放棄済み) 及びそこから相続した相続人が対象となった固定資産を現に所有し ているものと捉えられるものであるのかという点が中心的な課題と なっている。事案としてはシンプルであるが、 この登記と異なる状況において、 相続放棄の事実関係等は争われず、 課税庁が主張するように相続の放棄の効果が第3者に対して主張す るには登記を必要とするところ、 登記名義及び固定資産課税台帳への登録名義が異なることを理由と して賦課決定処分を行うことが妥当であるのかという部分が課題と なっているものである。 実質的にいわゆる台帳課税主義と呼ばれる固定資産税の基本的な考 え方を前提とした解釈であるが、 このような考え方が基本的に適用可能であるのかという点が問題に なろう。
判断は、この適用を否定して、 現に所有しているものとは判断できないとしているもので、 相続放棄の効果を認めている。蓋し、 上記のような台帳課税主義の固定資産税一般へ適用という理解は一 面的なものであり、法令の趣旨からも、 例外規定として所有権の実質的な反映を図る趣旨であることから登 記を絶対的に捉える考え方はこの後半部分には適用されえないとい う解釈が適用されよう。 法令解釈的には現に所有というのを如何に解するのか、 認定するのかという部分も問題としては困難ではあるが・・・。
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