さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和元年6月18日裁決で、無償等の資産譲渡に伴う第2次納税義務の成立が争点となった事例です。
具体的には、本件は夫婦関係にあった滞納者から請求人に対して、居住等に使用していた不動産を譲渡、対価を支払っていないので贈与が行われたものとして当該譲渡は、下記、国税徴収法39条に定める無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務に該当するとして、請求人に対して係る義務の通知が行われたことに対して、かかる通知の後に離婚しており実質的な財産分与であるとして、当該義務を負うことを不服として提起された事例である。
第二次納税義務自体が、非常にマニアックな制度であり、おそらく国税徴収法を勉強したぐらいしか知らないものであろうが(最近はだいぶ変わってきただろうか、少なくとも昔はこのような扱いであったのだが)、本件は、かかる特別な納税義務である第二次納税義務の成立の是非が中心的な争点になっている。第二次納税義務は徴収の便宜を図るため、特別な行為や利益を得ている場合にのみその成立が許された、直接的な納税義務者以外に別途滞納者の納税義務をか肩代わりするような形で発生させる義務であり、故に厳格な法定要件の充足が求められる部分ではあるわけですが、本件は、かかるような無償等の譲渡の成立自体が問題となった事例であり、基本的には事実認定の問題であるものと捉えられる。実質的な財産分与であるという主張(実際の実務ではこのような課税から逃れるような離婚なども珍しくないのでしょう)に対して如何にしてその成立を否定されているのかという点が問題になっているものである。
(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)
第三十九条 滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行つた政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他滞納者と特殊な関係のある個人又は同族会社(これに類する法人を含む。)で政令で定めるもの(第五十八条第一項(第三者が占有する動産等の差押手続)及び第百四十二条第二項第二号(捜索の権限及び方法)において「親族その他の特殊関係者」という。)であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。
以上のように、本件は事実関係として、当該贈与が実施されてから一年以上超過した後、第二次納税義務の告知処分直後に離婚したような、また、請求人の贈与税確定申告書(本件不動産に関する、配偶者控除の適用も)が提出されており、法定要件において不当等の回避的な意図の存在は要求されていないものであり、本件でも明確には認定されていないが、実質的には租税債務の滞納者が租税負担を免れようとしていることを否定することとなっている。配偶者控除の適用を申請した確定申告書の存在など、請求人の主張は、正直支離滅裂であるという印象を拭えないが、判断も
「本件離婚があったのは本件所有権移転から約1年2か月後の平成30年11月1日であり、また、上記イの(ハ)のとおり、請求人は、本件所有権移転がなされた平成29年9月7日から1年以上にわたり本件各不動産において本件滞納者と同居していたことが認められることに加え、当審判所の調査の結果によっても、本件所有権移転が本件離婚を前提として行われた財産分与であると認めるに足る証拠はない。」
上記のように、離婚を前提とした財産分与であるとの主張は排斥されている。そもそも法が要求する譲渡において、財産分与が対象となるのかという点は、検討されていない。財産分与が譲渡所得を発生させるものであるとの判示は最判でも確定しているものであるが、本件のような第二次納税義務の発生においても対象となるのかという点は、制度趣旨も考慮した上で、検討されるべきものではないだろうか。
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