2021年10月2日土曜日

判例裁決紹介(大阪地判令和2年9月14日、虚偽の住所移転と所得秘匿)

 

また、興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪地判令和2年9月14日で、虚偽の住所移転を繰り返し、インターネットにおける所得を秘匿したとして所得税法違反のほだつ犯として提起された事例です。

具体的には、本件は被告人がインターネットのオークションにより得た所得を免れるため、居住実態のない地を住所地として登録することにより、複数年度の所得に関して所得を秘匿(所得税等3000万円超)したものであるのかという点が中心的な争点になっている、刑事の案件で厳格な認定が行われており、他の別名義の口座からの支払等が秘匿行為に該当するのか等も争点になっているが、本件では、合理的疑いが残るとして認定が行われている。秘匿行為として認定されたものがこの居住実態のない住所登録を繰り返すことで所得の把握を免れようと舌行為であり、実際、正式な調査の実施に着手するまでに事前通知から3年の長きに渡る期間を要している。被告人は、京都から、兵庫県、大阪、奈良など、複数回の住所地を移転する行為を繰り返しており、事前通知や国税局の訪問の後、住所を移転することを行っているものであり、親族に申告を促されても拒否するなど、背信的悪意をもってほだつを行っているものであろう。判示でも、最終的に納税者の主張を退けている。よく巷でも住民票を移動させれば、あるいは本店所在地を移動させ、申告場所を変化させることで納税義務の充足を免れようとする行為が報告されているが、本件は、近年では珍しく、このような住所地移転における行為を明確に下記のように、所得秘匿行為であるとして、判断している。

「税務署は、原則としてその管轄区域内に住所を有する納税義務者を対象として所得税の賦課徴収に当たるため、納税義務者が居住実態のない住所に虚偽の住民登録を行うことで居住実態と住民登録が異なる状態が生じると、当該納税義務者につき管轄を有すべき税務署において、当該納税義務者の存在自体を把握できず、これを把握しても当該納税義務者が居住地等につき虚偽を述べるなどして、税務調査に着手しても所得の把握が困難になるといった事態が生じ、税の賦課徴収が困難となる。」

本件では、対象となった納税期間においては、住所地を移転させることを行っていない期間も含まれているが、居住実態のない住所地への虚偽登録を行っていること自体がそもそも問題のある、所得秘匿行為であるとして判断しており、上記のような居住実態の乖離が基本であると判断している点は特徴的であろう。


以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


0 件のコメント:

コメントを投稿