2018年8月23日木曜日

判例裁決紹介(平成29年10月31日裁決、中小企業投資促進税制の適用要件)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成29年10月31日裁決で、中小企業投資促進税制の適用要件を充足しているのか否かが争われた事例です。

具体的には製造業を営む請求人が販売者から機械装置(本税制の適用対象資産)を取得し、もって自社の事業の事業の用に供していた場合において、 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除 、いわゆる中小企業投資促進税制の適用がある旨の確定申告を行ったところ、課税庁より、当該資産は、販売者の側にて、展示等に使用されており、請求人がはじめて使用した、新品であることとは認められないとしてその適用を否認された事例であり、中小企業投資促進税制の適用要件が争われたものである。中小企業投資促進税制は、租税特別措置であり、対象資産が変更されているもののその適用期限は延長され、中小企業において設備投資を行う上では、重要な考慮対象であるものと考えられ、その適用要件は留意されるべきものと捉えられる。

より詳細には、当該制度の適用にあたって適用要件として設けられている その製作の後事業の用に供されたことのないものを取得したことを要件としている点が、本件の事実関係において充足しているのか否か、という点が問題になっているものである。基本的には事実関係によるものであるが、法規定における適用要件、特に租税特別措置の適用要件を課題としているものであり、かかる要件の具体的な意義は適用を行うにあたって重要なものである。この云わば、新品であることを要件としていること、事業のように供されているのか否か(かかる点から判断すると、単に租税特別措置の要件として飲みなあず、減価償却等の判定においても関わってくるものである)、、特に事業とは如何なるものと意味するものと解すべきであるのか、供しているとはどのような状況にあることを指し示すべきであろうかというような点が本件の起点として発生している。このような固定資産を事業の用に供しているのか否かという点が、取得された資産が新品であるのか否かという点の裏には、このような典型的な法人税法、租税法規における固定資産としての判断が表裏一体となっているという点は実務家としても認識されるべきであろう。特に中小企業投資促進税制においては、取得側において対象の指定事業に供されているか否かという点bか有りが強調されているようにも捉えられるが、かかるように、取得資産の状況もまた留意されるべきものとして再度認識されるべきであろう。取得者側において判断が容易であるような指定事業に用いていることとは異なり、販売者側での状況は、把握が困難なことも想定され(輸入品などはその典型であろうが)、一般的には中古資産の判定は、耐用年数の判定のような状況に利用されることが多いものと想定されるが、租税特別措置の要件でもあることは本件からの示唆として特徴的なものではないだろうか。

(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)
第四十二条の六 第四十二条の四第三項に規定する中小企業者又は農業協同組合等で、青色申告書を提出するもの(以下この条において「中小企業者等」という。)が、平成十年六月一日から平成三十一年三月三十一日までの期間(次項において「指定期間」という。)内に、次に掲げる減価償却資産(第一号又は第二号に掲げる減価償却資産にあつては、政令で定める規模のものに限る。以下この条において「特定機械装置等」という。)でその製作の後事業の用に供されたことのないものを取得し、又は特定機械装置等を製作して、これを国内にある当該中小企業者等の営む製造業、建設業その他政令で定める事業の用(第四号に規定する事業を営む法人で政令で定めるもの以外の法人の貸付けの用を除く。以下この条において「指定事業の用」という。)に供した場合には、その指定事業の用に供した日を含む事業年度(解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く。次項及び第九項において「供用年度」という。)の当該特定機械装置等の償却限度額は、法人税法第三十一条第一項又は第二項の規定にかかわらず、当該特定機械装置等の普通償却限度額と特別償却限度額(当該特定機械装置等の取得価額(第四号に掲げる減価償却資産にあつては、当該取得価額に政令で定める割合を乗じて計算した金額。次項において「基準取得価額」という。)の百分の三十に相当する金額をいう。)との合計額とする。
一 機械及び装置並びに工具(工具については、製品の品質管理の向上等に資するものとして財務省令で定めるものに限る。)
二 ソフトウエア(政令で定めるものに限る。)
三 車両及び運搬具(貨物の運送の用に供される自動車で輸送の効率化等に資するものとして財務省令で定めるものに限る。)
四 政令で定める海上運送業の用に供される船舶

以上のように本件の中心的な争点は、上記特別償却の適用要件を如何に解すべきであるのかという点、すなわち、制作後事業の用に供されたことがないものをどのように解すべきであるのかという点が争われたものである。国税庁の解説においても、下記のようにのべ、その具体的な状況として新品であることをその条件としているものである。

その製作の後事業の用に供されたことのない(つまり新品の)次に掲げる資産で、指定期間内に取得し又は製作して指定事業の用に供したもの

本件では、当該購入製品を販売者が見本品として活用していたことが事業のように供されたものであるのかという点が具体的に課題となっている。放棄において新品であることが、販売者が活用することを含むものであるのかということが問題になっている。一般的に新品であれば、製造者から他社に対して販売されたことがないものであることもまた、一般的な用法であり、請求人の主張するように、販売者以外の者によることを前提としていると言う解釈もまた、成立しうるものではないだろうか。特に新品という用語に着目すればこのように考えることもまた、一定の合理性があろう。特に見本のように活用していることは、当該製品の試運転とも捉えられ、これを販売者における事業の用に供していたとして理解することは必ずしも自明であるとは評価し難いとも言えよう。

具体的な判断では、以下のように、一般的な説明である新品という用語ではなく、法文の事業のように供されたことがないものという点を基礎として判断しており、また、特段の限定がついていないことから、納税者のような解釈は否定されるものとして最終的に納税者の主張を退けている。

「措置法第42条の6第1項は、その適用の要件のうちに、①「その製作の後事業の用に供されたことのないもの」である特定機械装置等を取得し、②「指定事業の用に供した」ことを掲げている。そして、①の要件に係る「事業」について「指定事業」というような限定がされておらず、事業を営んでいる者も限定されていないことから、「その製作の後事業の用に供されたことのないもの」とは、特定機械装置等の製作者及び特定機械装置等を取得した販売者(以下「販売者等」という。)において使用されたことのない、いわゆる新品であるものをいい、それに該当するかどうかは販売者等における業種、業態、その資産の構成及び使用の状況に係る事実関係を総合的に勘案して判断することになる。」

このように法文上、明示的に事業の用に供していることに対してその実施者を制約していないが、租税法律主義の基本的な要請からは、解釈においてその制約をかけるべきものと考えることは困難であろう。まして、本制度は租税特別措置として、特別控除を提供するものであり、基本的に法文に忠実であるべきであることが求められるものとも言える。新品であるという文言がいわば誤解を招くような状況を発生させているような状況とも言えるが、事業の用に供していると言う文言から本件判断の一定の合理性は得られよう。しかしながら、本件制度がいかなる理由に基づきいわゆる新品であることを要請しているのかという点を、すなわち制度趣旨を考慮しておらず、かかる点からはより詳細な検討があってしかるべきものとも考えられる。新品であることを強く要請する、設備投資を促す趣旨としては、中小企業の基盤強化がその基礎となるものであれば、特段販売者側での活用を排除すべき理由は少ないとも考えられよう。実際において(特に、重要な機械設備であれば)見本品を現場でみて考え、購入を行うことはごく一般的に想定されうるものである。

またそもそも見本品に活用することが事業の用に供していることになるのかという点も疑問である。他の租税法規においても事業の意義は議論対象となるが、基本的に継続的な行為を指すものと解される。しかるに見本品は、試行的なものであり、継続性が確保されているものであるのかという点からも、事業の用に供しているという判断になることは議論の余地があろう。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。

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