2017年9月19日火曜日

判例裁決紹介(平成28年9月7日、一括借上住宅提供契約に伴う消費税非課税)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。
今回は平成28年9月7日裁決で、消費税法における非課税となる住宅の貸付に関して、契約により一括借上げによって住宅として転貸している場合において当該非課税の対象となりうるのか否かという点が争われたものです。

具体的には、請求人が保有する建物を住宅用途にて、外部の住宅会社に対して契約により一括にて貸付け、その後当該住宅会社が住宅として、利用者に対して貸し付けることが契約により保証されているものであり、このような一括借上げに伴う転貸、住宅用途建物としての貸付けが課税資産の譲渡等に該当するとして、確定申告を行ったところ通達に基づく、転貸に該当するとして更正処分を行ったところ、当該処分を不服として、提起されたものが本件である。消費税法6条に定める非課税となる住宅の貸付けに該当するのか否かという点が争点となったものである。近年の取引において、一括借上に伴う不動産賃貸の取引形式は非常に増加傾向にあり、複合的な課題を有するものであるが、今後もこのような実質的には家賃保証等の役務提供等の内容を含有する契約(本件においても契約により住宅としての貸付用途限定、家賃保証等が明記されているが、利用者が特定されていないこのため本件における請求人のを如何に評価すべきであるのかという点は課題となるのであろう。かかる点で本件は参考となるべきものと考えられよう。

本件は裁決である以上、基本となる課税処分を巡って、契約によって居住の用に供する旨が限定されているものの、このような契約に基づく貸付けが下記のように通達が対象とする転貸に該当するのか否かという点で争いが行われているが、特に通達による転貸の想定が本件における取引を含有するのか否かという点が、課題として考えられている。上記のように近年はこのような賃料保証等を含む一括借上のような形式による転貸契約は増加傾向にあり、かかるような取引が本件のように、消費税法上如何に捉えられるものであるのかという点が本件の問題の背景にあるものである。かかる点において本件は実務上も検討すべき課題、特に消費税法上の取引の捉え方を如何に行うべきであるのかという点を検討する上で有益な事例であろう。かかる検討においては、前提として消費税法上の非課税となる住宅の貸付けが如何なる趣旨目的を持つものであり、かかる点から如何に住宅の貸付けという意義を捉え、本件のような事実関係において当てはめるのかという点が争点となるものである。

第六条  国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。

十三 住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

上記のように消費税法上、代表的な非課税対象となるものとして、住宅の貸付けがその対象となっている。消費税法の別表に於いては上記のように定め、一時的なもの等を除外する制度的な構築を行っているものである。本件における問題となるものは、契約において人の居住の用に供するものとして明らかであることが求められていることに起因する。そもそも居住の用とは如何なるものを指すものであるのかという点は必ずしも定かではないが、この点に起因する転貸契約における契約状況の把握が住宅用途として、如何に捉えられ、通達によって一定の概念的な拡張を図られているものと考えられる。実質的な居住の用途に利用する転貸という点が制度的な趣旨から合理的なものとして拡張されているものといえる。

(住宅の貸付けの範囲)

6-13-1 法別表第一第13号《住宅の貸付け》に規定する「住宅の貸付け」には、庭、塀その他これらに類するもので、通 常、住宅に付随して貸し付けられると認められるもの及び家具、じゅうたん、照明設備、冷暖房設備その他これらに類するもので住宅の附属設備として、住宅と一体となって貸し付けられると認められるものは含まれる。
 なお、住宅の附属設備又は通常住宅に付随する施設等と認められるものであっても、当事者間において住宅とは別 の賃貸借の目的物として、住宅の貸付けの対価とは別に使用料等を収受している場合には、当該設備又は施設の使用料等は非課税とはならない。

(転貸する場合の取扱い)

6-13-7 住宅用の建物を賃貸する場合において、賃借人が自ら使用しない場合であっても、当該賃貸借に係る契約において、賃借人が住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合には、当該住宅用の建物の貸付けは、住宅の貸付けに含まれるのであるから留意する。
(注) この場合において、賃借人が行う住宅の転貸も住宅の貸付けに該当する
「住宅の貸付けが非課税取引とされている趣旨は、住宅の貸付けを行う事業者が賃借人に対し、消費税相当額を転嫁しないことにより、住宅賃借人を政策的に保護することにあるものと解される。そして、本件通達は、上記1の(4)のハのとおり、住宅用の建物の賃貸借係る契約において、賃借人が自ら使用しない場合であっても、賃借人が「住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合」には、上記の趣旨に鑑み、当該住宅用の建物の賃貸借を非課税取引と取り扱う旨を定めたものであり、本件通達の取扱いは当審判所においても相当であると認められる。」

かかる通達による拡張的な解釈としては、上記のように本件では合理的である旨が判断されているが、この点は、裁決である以上特に問題とならないのであって、まずはこの拡張的な住宅の貸付けの意義が如何なる趣旨に基づいているものであるのか、という点が検討の素材であろう。すなわち本件の基本的な問題の背景は上記通達の拡張的概念に対して本件の事実関係が該当するのか否かという点で通達の合理性、適用対象となる拡張的な取引対象をいかに捉えるべきであるのかという点が過大となるものである、かかる点がまずは議論の焦点を当てるべきであるが、上記のようにこの合理性を住宅賃借人を政策的に保護するものと捉え、合理性を肯定している。本件が裁決である以上、やむを得ないものであるが、如何なる理由で、住宅賃借人が具体的に保護されているのか、かかる規定の趣旨が上記のような理解では具体的な保護対象となるべきものが明示的ではない。おそらくは、契約により転貸が明示的である以上実質的な貸付対象は住宅であり、上記条文における非課税の保護となるべきものと考えられたものであり、実質的な取引・契約内容を非課税取引に於いて反映させるべきものと捉えたものと考えられるが、まずもって政策的な保護という対象が具体的な保護対象を明らかにしておらず、かかる点において、住宅の貸付けを拡張的に実質的な契約をも反映させるべきであるのかという点は判断プロセスとして疑問である。

また、上記の法文において住宅としての貸付けであることが明らかであることを要請していることからも、契約によって、住宅としての貸付に利用されることが明らかであることをも拡張的に住宅の貸付けとして捉えることが可能であるとの考え方もありえよう。しかしながら、上記規定は非課税の保護の対象となる以上、その具体的な判定において、認定において、利用用途によって建物の消費税法上の取扱が異なりうるという状況下において、主観的な要因を排除し、もって恣意的な非課税としての保護を受けるべき対象を操作することが忌避されうべきものと捉えられ、これを防止する趣旨によるものであり、かかるように捉えるならば、住宅の貸付けを実質的なものまで契約によって拡張的に判断認定することを要請するものと考えられない。すなわち非課税規定としての趣旨を鑑みるならば、消費者に対して一定の便宜を供与するものであり、かかる点からはその適用対象としては厳格に捉えられるべきものとという点を考慮したものであり、逆に非課税の対象となる取引等を実質的に拡張する趣旨を含むものと解することは、本件の中心的な争点となる規定が非課税規定であることからも否定されるべきものであり、拡張的な解釈は厳格に捉えるべきものと考えられるべきである。もちろん消費税法上の非課税規定であり、所得税法等の非課税とは同視されるべきものではないとの考えもありえる。しかしながら租税法規の基本的な要請からも拡張的な解釈によって事実関係と課税要件を捉えることは法的な安定性や納税者の予測可能性を減ずるものであろう。かかる点からは本件の通達の対象となる取引は必ずしも転貸というような形式的な契約状況に合致すればそれを非課税の対象とするような判断は合理性を欠く可能性がありえよう。

本件のように、賃料保証等を付与されている場合においては、転貸といえど、仮に住宅の貸付けを行ったとしても、居住者の不在の場合においても何らかの金銭収入が入ってくることになる。上記非課税規定が一時的な居住を排除している(もちろんより詳細な点においては一時的なものとは如何なる程度のものを指すのかという点は課題であるものの)、点からも対象となる住宅の貸付けを限定的に捉えることも可能であろう。一時的な居住を認めることにより、容易に非課税規定の保護を受けるような状況は排除されるべきであり、かかる点からは居住を実質的な期間的な意義も含め、居住実態の存在を要請しているものと捉えることも可能である。このように考えると居住者が不在(一時的に)の場合においても稼得されるような収入は非課税の対象となるべき取引となりうるものといえるのであろうか。本件ではあまり問題視されていないが、かかるような居住者が不在の場合も考慮すると、あくまでも転貸によって家賃保証を得つつ住宅の貸付けによる不動産収入を意図した取引であり、住宅の貸付けを含むものの一種の役務提供を行ったものと捉えることも充分に可能であり、より詳細な住宅の貸付けとして如何なるものを保護すべきであるのか、さらには保護によって如何なる政策的な対象者を消費税の転嫁対象として排除しているものであるのかという点はより検討すべきものといえよう。

通達において住宅の貸付けを実質的に捉え、拡張的に契約の文言をもって転貸も含むと解することは、消費税法が個々の取引段階において課税を行い、相互牽引によって形式的に判断することを要請している点とも照らし合わせて如何に判断すべきであるのかという点を考えるべきであろう。現在の非課税規定において住宅の貸付けの存在は重要な位置づけを占めており、具体的に如何なる判断方法を取っているのかという点は重要である。単に住宅の貸付けを拡張的に解釈を行い実質的な状況を反映させるべきであるのか、たとえ消費税法が取引段階を課税対象とし、流通税であり、大量の取引を処理するためには、契約等の形式的な文言を重視し、実質的なあるいは恣意的な、主観的な要因を反映させるべきものと捉えることは困難であるが、さらには実際の居住の状況までも非課税規定の適用において考慮要素とすることは実際的ではないかもしれないが、判断プロセスとしてはより詳細な検討が必要であるように考えられる。

以上です。
毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

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