2017年9月23日土曜日

判例裁決紹介(東京高判平成27年9月17日、被相続人が管理している財産への不当利得請求権と相続財産)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判平成27年3月27日、東京高判平成27年9月17日で、被相続人が管理していると推認される財産に対して不当利得返還請求権の存在を認定し、当該財産を相続財産として課税対象とした事例です。

具体的には、本件は、相続財産たる認定に関する事例であり、株式の売却にかかる代金の受領をし、相続人たる原告(控訴人)がこれを管理しているとして当該財産が、相続財産として構成されうるものであるのかという点が争点となったものである。基本的には事実認定が問題となったものであり、特徴的な法令解釈等が問題になったものではない。高裁、地裁、ともにその判断は共通しており、何らかの特徴的な法令解釈等が問題にあがったものではないものと考えられる。しかしながら、相続財産の帰属関係の判定は、相続税申告の基礎中の基礎となるものであり、本件ような認知症状態にある、被相続人の財産の処分関係や帰属関係の具体的な判定は、特に所有している財産の売却委託等の関係から財産帰属が問題となるような事案は、近年の相続環境においては増加傾向にあるものと想定され、かかる点においても、重要なものであり、実務上も財産帰属を判断する判断、トレーニングする事案としても参考となるものといえよう。より具体的には、証券のホームトレードの利用や、被相続人のローン返済状況なども考慮して相続財産の認定を行っている。

特に本件は、財産帰属の判断において、名義の異なる状況を作出し、実質的な相続財産の状況を形式上異なる財産関係へ変化させるものであり、相続財産帰属関係を問題とする事案としては名義関係を活用し、実質的な判断を行うような事例ではあり類型としては通常なものとしてカテゴライズされるものといえようが、このような場合、被相続人とは異なる名義にあるような状況であっても、管理状況、処分等の関係から被相続人の財産として相続財産を構成するものとして認定する事案が通常であるが、本件では管理状況から売却資金の所在を相続人に対して推認し、不当利得返還請求権を認定することで相続財産を構成していたものとして認定している点は特徴的なものといえよう。主張において、認知症状態にある、被相続人による財産の費消(浪費)が原告から主張されているという点も関係しているのかもしれないが(最終的には全く考慮されていない、浪費や費消を主張することは相続財産の認定においては悪手であり、具体的な主張としては、特に認知症状態にあり病院に居住している状況にあっては、非常に困難と評価せざるを得ない)、相続財産を広く解釈して、適切な租税負担を企図しているものと考えられ相続税法の基本的な判断において、忠実な判断であると捉えられる。

特に本件における判断においては、株等の財産としての帰属ではなく、資金としての帰属関係が問題になったものであり、かかる点から判断するに、資金の出捐先が重要視された判断であり、かかる認定は、財産種別を考慮しても判断プロセスとしては重要なものであろう。いずれにしても本件の面白い点は財産認定の主張でありホームトレードの利用に伴う財産帰属は近年の特徴であり参考となるものであろう。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

0 件のコメント:

コメントを投稿