2017年7月31日月曜日

判例裁決紹介(平成28年8月24裁決、納税猶予の要件)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、
平成28年8月24日裁決で、納税者たる請求人がなした消費税申告に対する売上減少が納税の猶予の要件に対して適合するのか否かという点が争われたものです。

具体的には、事業を営む請求人が消費税の確定申告をしたところ、当該納税につき、当該請求人が下請け企業であって、元請企業から売上減少をしていることをもって、納税の猶予を申請したところ課税庁が納税の猶予の要件を充足しないとして不許処分を行い、この処分の取消を求めるものが本件である。従って、納税の猶予を定めた国税通則法46条2項に定める要件に合致しているのか否かという点が争点となったものであり、より具体的には、下記のように、4合における事業への著しい損失とその類似事実の発生が問題となっており、事実認定というよりは、当該法令解釈によって如何なる点をもって類似していると判断するのか否かという点が中心的な争点となっている。

納税の猶予の関しては、基本的に手続法上の問題であり、実務上はあまり目にする機会はないものであるかもしれないが、業績の問題もあり、しかしながら、消費税の負担の増加や近年の災害等の発生も考慮するとこのような納税の猶予の関する規定の理解は普段から取扱うものでないかもしれず、事例としても珍しいものであるようにも想定されるが、企業再建などの局面においても専門家の関与は増加しており、この制度背景の理解は一定の貢献はあるものと考えられる。

 税務署長等は、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合(前項の規定の適用を受ける場合を除く。)において、その該当する事実に基づき、納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、納税者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。前項の規定による納税の猶予をした場合において、同項の災害を受けたことにより、その猶予期間内に猶予をした金額を納付することができないと認めるときも、また同様とする。
一 納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかつたこと。
二 納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。
三 納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと。
四 納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと。
五 前各号のいずれかに該当する事実に類する事実があつたこと。
従前よりこの類似点も含め、猶予に関する解釈上の争点は議論が行われているものであるが、まずは、その前提となる納税の猶予制度の基本的な背景がまずは問題となろう。

 通則法第46条第2項に基づく納税の猶予は、期限内納付及び国税が期限内に完納されなかった場合の強制徴収の例外として、一定の事由により納付困難になった納税者を救済するものであるが、租税徴収手続における他の納税者との公平という観点をも考慮すると、4号該当事実とは、納税の猶予を申請した納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じた国税の納付を困難ならしめる事業についての著しい損失をいうものと解される 。通達においては以下のように例示している。

その他の事実)
12 この条第2項第5号の「前各号のいずれかに該当する事実に類する事実」とは、おおむね次に掲げる事実をいう。
(1) 第1号又は第2号に類するもの
イ 詐欺、横領等により財産を喪失したこと。
ロ 交通事故の損害賠償(使用者責任による場合を含む。)をしたこと。
ハ 公害の損害賠償をしたこと。
ニ 納税者の取引先等である債務者について、おおむね次に掲げる事実が生じたため、その債務者に対する売掛金等(売掛金のほか、前渡金、貸付金その他これらに準ずる債権を含み、また、これらの債権について受領した受取手形のうち割り引かれていない部分の金額及び割り引かれているものであっても、不渡り等のため買戻しを行ったものを含む。)の回収が不能又は著しく困難になったと認められること(従前に比べて決済に要する期間が著しく長期化したと認められる場合を含む。)。
(イ) 所在不明又は無財産になったこと。
(ロ) 事業の不振又は失敗により休廃業に至ったこと。
(ハ) 企業担保権の実行手続の開始決定があったこと。
(ニ) 破産手続開始の決定があったこと。
(ホ) 会社法の規定による特別清算開始の命令があったこと。
(ヘ) 法律の定める整理手続によらないが、債権者集会による債務整理の決定があったこと。
(ト) 手形交換所において取引の停止処分を受けたこと。
(チ) 災害、盗難、詐欺、横領により財産の大部分の喪失があったこと。
(リ) 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の決定があったこと。
(ヌ) 民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったこと。
(ル) 外国倒産処理手続承認の決定があったこと。
ホ 納税者と生計を一にしない親族(納税者の親族と同視できる特殊の関係にある者を含む。)が病気にかかり、又は負傷したこと。
(2) 第3号又は第4号に類するもの
イ 納税者の経営する事業に労働争議があり、事業を継続できなかったこと。
ロ 事業は継続しているものの、交通、運輸若しくは通信機関の労働争議又は道路工事若しくは区画整理等による通行路の変更等により、売上の著しい減少等の影響を受けたこと。
ハ 市場の悪化、取引先の被災、親会社からの発注の減少等により、従前に比べ納税者の事業の操業度の低下又は売上の著しい減少等の影響を受けたこと。
ニ 著しい損失の状態が生じたとまではいえないものの、それに近い税引前当期純損失の状態が生じる原因となった売上の著しい減少又は経費の著しい増加が生じたこと。
ホ 納税者が著しい損失(事業に関するものを除く。)を受けたこと。
(注) 「売上の著しい減少」とは、単に従前に比べて売上が減少したというだけでは足りず、事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できる か又はこれに準ずるような重大な売上の減少があったことをいう(平成23.5.26名古屋高判参照)。

本件判断においても、上記のように述べてこの納税猶予制度の基本的な前提を一定の事由の発生により、納付が困難になった納税者を救済する制度趣旨をもっている。そもそも租税は、行政の費用支弁を目的として調達される財源であり、租税債権債務の確定後、速やかに納期限等において現金により納付することが求められるものである。これは租税の基本的な性格から考えて自明なものであるといえようが、債権債務関係の早期確定を図りもって確実な徴収を図る基本的な趣旨とは異なるものとして解される。これが救済措置としての位置付けとしての本制度であり、この猶予制度が、単なる一定事由の発生のみを問題とするものではなく、税務署長による実質的な納税の困難を判断することを求め、できる規定として裁量的権限を与えていることからもその性格は裏付けられる。このような租税徴収における基本的な前提と本制度の趣旨を比較考量するならば、そして、納税者間の公平性を確保するためにも、その適用要件、特に法定の一定事由の解釈は限定的とならざるをえない。たとえ5号に於いて一定の類似性あるものと定められているとしても1~4号までの具体的な事由から如何なる点が類しているべきか明示的に解釈を行い、安定性と公平性を担保する必要性があることになる。すなわち、一般的に公平性を犠牲にしてもなお、なお納付が困難な状況にあることが求められるものと考えるべきであり、かかる状況が客観的に確定していることが必要であると考えられ、この納付が困難な状況にあることが法定事由及びその類似事由として確保されているのか否かという点が、本件の起因となるものと考えられる。つまり、納付が困難な状況にあること及びその原因が問題となるものであって、問題とその原因の間にあるべき関係性は納付が困難な状況にあることの因果関係であって、納付が困難になったことにな対して納税者の責めに帰すべき事情の存在を必ずしも求めているものではなく、この点は明確に峻別して捉えるべきであろう。

しかしながら、本件では特に問題とされていないものの、上記判断でも記載のように、納税者における帰責性の有無を具体的な要件として求めている。その根拠は納税者間の公平性を確保することに求めており、下記のように、通達においても一般的に猶予の条件として捉えている。この点において、本文の記載のない、一般的に帰責性を求めることに違和感がある。確かに、一般的に公平性を犠牲にしてもなお納付が困難な状況を救済する措置であり、かかる点で公平性の確保の観点から、一定の制約があるものとは理解されるが、法文には明示的ではなく、この要件の付与が如何なる根拠を持つものであるのかという点は必ずしも定かではない。制度が税務署長に裁量権を与え実質的な納付が困難であることを求めている以上、一般に帰責性を求めていることとしているのは法文に根拠を持たない措置であり、租税法律主義の基本的な要請に反するものではないかとも考えられよう。法定事由としての1~2号は天災等を対象としており、また46条1項も同様のものを対象としている。天災等においては確かに納税者の帰責性が存在していないものであるが、3~4号は必ずしも納税者の意思によっても発生しうるものであり、法文上、かかる制限はかかっておらず、納税が困難な状況を担保するに過ぎない。本件の問題は4号との類似性を議論するものであり、必ずしも、1~2号と同様に解することは飛躍があろう。救済措置であるが故に、同様に帰責性の存在がないことを理由づけすることは法が定める要件として具体的な事由を列挙している趣旨からいって異なるものと理解するべきである。

しかるに、猶予要件としては必ずしも、一般的に帰責性の有無を問うものではないともいえるが、上記1~2号要件との類似性、及び3~4号要件との類似性に於いてはその性格が異なるものと理解すべきであり、一般的に帰責性の存在を観念することは過剰であろう。

(納税者の帰責性)
8-2 この条第2項各号に該当する事実は、納税者の責めに帰することができないやむを得ない理由により生じたものに限る。
すなわち立法論とでも考えられるが、単に法定な事由の発生のみを問題としているのではなく、納付が困難であることの事実上の状況の立証も必要であると買いすべきであり、本件の適用にあたっては具体的な財務書類等の提出が求められるものと考えられる。但し、納付が困難であるということは必ずしも定量的な概念ではなく、制度上の一部限定での猶予や、金額の限度を定めていることからも定量、画一的な基準の設定は困難であって、納付が困難であるという課税の犠牲の上、単に事実の発生のみでは足りず、困難性もまた立証責任の転換を図り証明すべきであろう。しかしながらこの点においてあくまでも証明すべきは、納付が困難な状況にあることの法定事由との因果関係であって、自己の責任までも必ずしも要請されているとは考えることは困難であろう。この要請は逆に救済制度としての本制度の基本的な運用の制限であり、趣旨を損なうものとなるだろう。
また、具体的に、本件では売上の減少が約20%あったことが、4号要件の著しい損失に該当するのかという点が判断されている。この具体的な売上減少がその対象となるのか否かという点では具体的な納税の困難さあるいは重大である旨の立証を納税者が行っておらず、かかる点において不備があり、本件判断の原因となったものである。必ずしも20%の売上減少が対象となるのか否かという点は必ずしも定かではない。本件のみをもって、対象外と判断することは早計であろう。
またそもそも、何をもって著しい損失と捉えるのかという点は定かではなく、かかる点で類似性を如何に判断するのかという点は問題といえよう。この著しいという文言は、他の租税法規でもその意義について問題となるが、通達では以下のように理解している。
(事業上の著しい損失)
11-2 この条第2項第4号の「事業につき著しい損失を受けた」とは、猶予期間の始期の前日以前1年間(以下この項及び第46条の2関係1において「調査期間」という。)の損益計算において、調査期間の直前の1年間(以下この項及び第46条の2関係1において「基準期間」という。の税引前当期純利益の額の2分の1を超えて税引前当期純損失が生じていると認められる場合(基準期間において税引前当期純損失が生じている場合は、調査期間の税引前当期純損失の額が基準期間の税引前当期純損失の額を超えているとき)をいう。
この点で1/2という一定の基準が示されているものの、猶予制度の趣旨からいえば、本来いかなる状況にあれば著しいと判断するのかという点は明らかではなく、特にこの規定を受けて類似性を判断する5号要件の該当性を判断する上では安定性に欠けている。
納付限度額を設け、一部の納付を猶予する場合もある以上、制度上、この著しいとは事業の継続が困難な状況にあることまでも求めていること要請していると解することは困難であるが(高裁判断とは異なるものの)、納付が困難であることの理由付けが客観的に認定しうるレベルで必要であると解するべきであり、単なる売上の減少や損失の発生程度であっても対象となることはないとする判断は合理的であるが、救済制度としての制度背景を考慮すると、納税が困難であることの証明で足りるものであり、本件でもこの20%の売上減少が著しいものではないという判断に関しては必ずしも合理的な根拠を示してはいない。著しい=1/2という判断は安定性や予測可能性の観点からは合理的であるが、何をもって納付が困難であるとするのかという定量的な判断基準の作成は困難である者の、より具体的な判断基準の策定が必要になるものと理解される。
以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年7月19日水曜日

判例裁決紹介(ポイント交換における金員の受領と消費税の課税対象、対価概念、平成28年5月27日裁決)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成28年5月27日裁決でポイント交換に伴う金員の受領が消費税の課税対象として、課税資産の譲渡等に該当するか否かが争われた事案です。

具体的には、法人間で協同で契約により企業のポイント交換サービスを営み、その事務局機能を担う法人が請求人となった事案で、この加盟企業法人から受領するポイントの精算、預け等を行う、金員の受領を課税資産の譲渡等に該当するとして確定申告を行い、当該金員が、消費税の課税対象として、単なる各企業のポイント精算に活用する預り金であって消費税法2条8号に定める資産の譲渡等に該当し、事業として対価を得て行われる役務の提供に該当するものではないとして更正の請求がなしたところ、その対象ではないとして通知処分が行われたことからその取消を求めた事案である。判断としては課税庁の主張を認め、かかる金員の受領が消費税法にいう対価に該当する旨判断して、請求人の主張した課税資産の譲渡等に該当しない旨の主張は退けられている。

本件は下記のように、消費税法の課税要件である課税資産の譲渡等が如何なるものであるのかという点が争点になったものであり、非常に消費税法の基礎となる部分で争いが行われている。共同でポイント交換のサービスを営むもので場合において加盟法人からポイント交換に伴う事務局機能として精算等を行う法人が加盟法人から当該法人が受け取る金員が消費税の課税対象として認定されうるものであるのか否かという点が具体的に争いがあるものであり、事案としては本件のようなポイント交換に伴う金員の受領は限定的であるものの、判断においては消費税法の基本的な性格から課税資産の譲渡等、より具体的には対価の概念が争われており、近年のとみに重要性がます(おそらく今後その重要性は下がることはないであろう)消費税の基礎となる課税標準の該当性が問題となったものであり、かかる判断過程は、他の課税標準を認定する上でも参考となるべき判断であろう。特に実務においては、その具体的な費用の意図等が複合的なもの(交際費や寄附金など)は想定されうるところであり、原告が主張するように預り金的な性格を有するこのような費用に対して消費税法上、如何に取扱うべきであるのかという点は問題視されるべきものである。

本件契約によれば、ポイントは各店での利用によって付与され、後日決済に利用可能なものであり、毎月利用額と付与額との差額を清算金として請求人に対して支払う契約となっている。契約当事者の認識としてはポイント精算に伴う預り金であり、消費税法の課税対象となる付加価値や消費が存在していないという認識であることが本件の起因となっているものと考えられるが、事案としては特殊な取引類型に該当することは否定し得ないが、かかるような取引においてもその対価、課税資産の譲渡等に該当するのか否かという点で対価概念や役務提供の意義がその問題になっているものであるもの捉えられる。このような金員を預入、直接的に金銭を支払うことなく何らかの受益を、役務提供等を行うことは、想定されるところでもあり、何をもって役務の提供と捉え、対価と認定することが可能であるのかという点を理解する上で重要と考えられよう。特に対価概念は如何なるものであるのかという点は判決学説等においても見解が別れており、本件もその概念をより検討する上で参考となるものといえよう。


第四条  国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。

 資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。

まず、消費税法は上記のように、4条及び定義規定である2条8号において、消費税の課税標準として、資産の譲渡等を定めており、その具体的な意義として事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付、並びに役務の提供をいうものとして定めている。本件はかかる金員が対価に該当するのか否か、また請求人の行為が事業として行われる役務の提供に該当するのか否かという点が具体的に争われているものである。私見としては、このように分断して判断されるべきものではなく、下記のように、すなわち対価を得て行われる通達においてもその反対給付を受けることを指すものとして対価を解釈しているように、消費税法上の資産の譲渡や役務の提供に該当する行為の存在をもって、当該行為に関する反対給付として行われているものの存在を課税対象として捉えているものと考えられる。しかるに通常、対価とは、法的な契約関係などに代表される、資産の譲渡や役務の提供との行為において、債権債務関係等が発生し、かかる点に基づく直接的な対価関係をいうものを指すと解釈することが一般的な用法である。しかしながら、上記のように反対給付として、直接的な対価関係の存在に必ずしも限定していないものと解釈している。このように消費税法において、固有の概念として、対価を認定することが妥当であるのか、納税者に取って予測可能性に欠けるものではないのかという点が問題となるだろう。

この解釈の妥当性に関しては、その具体的な根拠として、判断は、以下のように、消費税の基本的な性格、広く薄く課税対象を設定し、最終的に消費者への転嫁を予定していることをもって、経済的な利益が収受されたといいうる程度で足りると判断している。
「消費税は、国内における消費全般に税負担を求めるため、広く薄く課税対象を設定し、最終的に消費者への転嫁が予定されている租税である。かかる消費税の性格に鑑みると、事業者が収受する経済的利益が消費税の課税要件としての資産の譲渡等における「対価」に該当するといえるためには、事業者が収受する経済的利益と事業者が行った当該個別具体的な資産の譲渡等との間に対応関係があること、換言すると、当該個別具体的な資産の譲渡等があることを条件として、当該経済的利益が収受されたといい得る対応関係があることが必要ではあるが、それ以上の要件は要求されていないものと解するのが相当である。」

確かに消費税法の基本的性格からその対象範囲を広くとることは制度上予定されているとみるべきであり、かかる点において、消費税の基本的な対象が広く解釈されるべきことは合理的であるものと考えられよう。しかしながら、かかる点を考慮したとしても上記のように、通常の文言をの意義と異なり、対価による制限を限定的に捉える解釈を合理的であると評価する根拠に乏しいのではないだろうか。少なくとも対価概念の解釈を限定的とするべき論理的な根拠に欠けるものとも考えられよう。上記のように消費税法の課税対象を決定する重要な概念である対価を得て行う課税資産の譲渡等において安定性に欠けるような状況にあることは、その消費税法の基本的な性格との間で比較衡量して、問題と考えるべきであり、より限定的な対価概念の法定を図るべきものともいえるのではないだろうか、立法論となるべきものでもあるが。

そもそも上記のような対価に対する理解は、対応という概念において、如何なるものを対象としているのかという点がそもそも定かではなく、租税法規としては異なるが、所得税法における必要経費の該当姓、直接的な・間接的な対応関係が問題となった事例もあり、この対応という概念によって、消費税法の対象を律することは適格性を有するものであるのであろうか。

しかしながら、私見としては、現行法を前提として考えるに、対価の概念を消費税法の固有概念として捉えることは必ずしも否定されるべきものではなく、消費税法の基本的な性格、要請に合致する用解釈することは必要となりうるものと理解すべきではある。原則的には法的な債権債務関係の存在による対価を要請するべきものともいえるが、そもそも多様な業務が想定され、かかる点を網羅的に、律するためにも、また消費税法が事業上の判断に影響を与えることがないよう、無償ではない取引を排除する趣旨をもつものとして理解して、対価概念を無償ではなく有償なものを指すものとして解するべきであろう。いずれにしても、この対価は、消費税法が対象とする取引(本件の場合は役務提供)に依存した概念であり、かかる取引が広く捉えられる点を受け、無償ではなく、何らかの反対給付があれば消費税法の対象となるべきものとして理解することになるのであろう。この役務提供等が如何なるものであるのかという点が一義的には問題となり、その具体的な認定をうけ、かかる対象取引が、無償あるか否かという点が消費税法の対象を規律するものとして理解されるべきではないであろうか。対価が反対給付である以上、そして付加価値・消費を対象としており、何らかの反対給付があれば消費税法はその基本的な性格として課税対象として捉えるべきであることから、具体的な対象となる取引が、本来、資産の譲渡や役務の提供に該当するのか否かという判断に委ねられ、かかる具体的な認定判断からその有償性が判断されるものであれば課税対象として判断すべきであるものと考えられる。

また、別件であるが、この対価という概念は、金額的な考慮を含む概念であり、適正な金額での取引を要請するものであり、(低額譲渡等)を排除して適切な消費税法の課税対象を律するものとしても機能しうるのかという点も課題であろう。法人税法等と異なり、消費税法には推計課税の規定は存在していない。消費税法は相互牽制機能を有するものであり、適正な金額や金額の合理的な認定が困難であるような状況が想定し得ないのかもしれないが(かかる点で、適格請求書等保存が設定された場合においては検討の重要性は下がるのかもしれないが)、しかしながら、帳簿記帳を原則としている現行法においては、その記録の不備が問題となる状況は発生し、事実上、推計課税の規定がないものの、法人税法等と同様に記録等の不備がある場合においては法人税法等の推計に依拠して消費税法の課税対象となる資産の譲渡等を認定して課税されている。事実上この根拠規定として、対価の概念が機能しうるのかという点も検討してみても良いかもしれない。

(対価を得て行われるの意義)

5-1-2 法第2条第1項第8号《資産の譲渡等の意義》に規定する「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とは、資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けることをいうから、無償による資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、資産の譲渡等に該当しないことに留意する。(平27課消1-17により改正)

このように考えると、消費税法における役務の提供とは如何なるものであると解されるのかという点が重要な点となる。法において、その具体的な規定は存在していないものの、消費税法の基本的な性格に基づき、その範囲が非常に広範囲に解されることは合理的であるが、以下のように、通達において取り扱っている。

(役務の提供の意義)

5-5-1 法第2条第1項第8号《資産の譲渡等の意義》に規定する「役務の提供」とは、例えば、土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演、著述その他のサービスを提供することをいい、弁護士、公認会計士、税理士、作家、スポーツ選手、映画監督、棋士等によるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供もこれに含まれる。
消費税法基本通達5-5-1は、消費税法第2条第1項第8号に規定する「役務の提供」とは、例えば、土木工事、修繕、運送、保管、印刷広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演著述その他のサービスを提供することをいう旨定め、「役務の提供」が、他人に対する労務、便益、サービスの提供と捉えられるものの一切を含む概念であることを明らかにしているところ、かかる解釈は、上記(イ)でみた消費税の性格に沿うものであるから、当審判所においても相当と認める。

この通達に対して本件判断は、上記のように他人に対して労務等を提供と捉えられるもの一切を含む概念であるとして理解していると認識している。結論として、非常に幅広い概念であることは異論はないが、この合理的な根拠を消費税法の基本的な性格に求める以上、より広範囲のものである旨は明示的に解釈通達においても明記するべきではないだろうか。また、その具体的判断として労務等の提供という概念であってよいのかという点もより具体的には検討課題とはなるだろう。


以上です。毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。

判例裁決紹介(法人社員である税理士の開業準備行為と所属する税理士法人への損害賠償義務、東京地判平成26年4月9日)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判平成26年4月9日で、若干趣をかえて、税理士法人からの独立に伴う開業準備行為とそれに伴う損害賠償責任が争われた事案です。

具体的には、原告税理士法人が、当該法人の社員であった被告税理士の独立によって、社員から脱退した際に、開業準備行為を超えるような、顧問先への信用失墜働きかけを被ったとして、顧問先の離脱に伴う、逸失利益(約2億円)等を損害賠償として求めたものである。租税法の事案ではなく、民事法の不法行為に基づく損害賠償責任が争われたものであるが、補助税理士、勤務税理士の独立会場とは異なり、法人の社員である、税理士が脱退する際における、法的責任、特に、社員として負う、任務懈怠、忠実競業避止義務等の責任が争われたものとして特徴的なものである。

判示としては、原告の請求を一切認めず、逆に反訴によって、被告が求めた報酬の無断減額(独立開業を告げた後の一方的な報酬の減額の補填や、法人への出資金の返還が認められた事案であある。

本件は専門家集団である、税理士法人の社員の独立とその運営に関わる多様な論点を含むものであるが(出資における営業権の紛争発生等)、主たる争点は、やはり税理士法人の社員であった被告税理士が独立に際して、顧問先への案内・勧誘、通常は独立に伴って、担当していた顧問先への案内・勧誘等の営業行為を行っており、法人社員としての善管注意義務、競業避止義務、任務懈怠に伴う、不法行為の成立が主たる争点となっているものである。独立予定者が帳簿や決算データの利用等を行うことは、当該法人の情報を活用して自己の利益を図る行為であり、不正競争防止法の対象となって損害賠償義務が発生することになるが、本件はかかる点からの検討は行わず、単に、上記責任の発生を、独立の結果である、法人顧客の引き抜き、勧誘、実際の移転に求めていることで原告の主張が構成されているものであり、あくまでも法人社員としての責任を問うものであり、補助、勤務税理士としての、いわば雇用者としての責任が問われたものではなく、不法行為の背景となる法的責任の相違が存在していることには留意が必要である。

しかしながら近年は補助税理士として勤務に関する制度改正など、従来とはその背景となる勤務状況、業務内容が変化しつつあり、かかる点で業務法人の経営者(代表者)、勤務者双方にとって、理解しておくべき法的責任の発生と事実関係の認定に関する事案として捉えられるべきものである。特に開業準備行為との関連が大きな争点となっており、かかる点で問題となるだろう。

個々の被告の行為における事実認定に関しては、多様な点が対象となっている。具体的には、顧客の勧誘の有無、従業員の引き抜き、顧客への説明、顧問契約破棄通知への関与、引継ぎの不備、データコピー等の事実に対して争いがある。最終的には、かかる点を総合判断して、被告行為が法人社員として不当、不法行為の成立に至るような状況にあったのかという点が判断されているものである。上記のように結果としては、原告の主張は一切認められず、被告が準備にあたって、弁護士に相談して慎重に作業を行っていたこともあり、不法行為による損害賠償義務がの成立を退けているものである。周到な準備等被告のリスクマネジメントが強調され得ようが、また、原告の主張が稚拙であり、ほぼ、単なる結果(顧客の移動)に伴う責任の所在を求めるものでった、必ずしも上記のような状況にあっても不法行為の成立が成り立ち得ないものと考えられるものではないが、、かかる点で個別事例である点は否めないものの、事実関係、特に会場の準備行為に関する責任の認定に関しては、上記のような種々の事情を考慮しており、かかる点は参考となりうるものといえよう。

また、改めて強調されるべきは、勤務税理士と同様に、社員であっても、高度な専門職業人として独立開業することは、基本的に憲法が定める営業の自由の点で保証されうるものと考えられる点であろう。本件のように、独立開業の事案においては、営業の自由と競業避止義務との間でその比較衡量が行われることが多いものと考えられる。憲法上の要請である営業の自由は非常に強固であり、かかる点で、勧誘などの行為が開業準備行為として行われていることがない限り(本件でも事実上、開業後、独立開業の案内を旧顧客に送っておりこの勧誘行為の有無が中心となっている)、不正競争の防止の観点等から不法行為の成立を認める可能性は、非常に困難であるともいえる。この点は社員であっても競業避止義務の強い要請があるとしても、最高裁判例で認められているものであり、かかる点は改めて認識されるべきものであるといえよう。

以上です。
毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2017年7月7日金曜日

判例裁決紹介(東京地判平成27年6月18日、共有建物の必要経費按分)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判平成27年6月18日で、共有建物の必要経費に関して、その按分による経費算入の可否が争われたものです。

具体的には、不動産賃貸業を営む原告と、原告が創業した医療法人で原告長男が代表を務める法人(専門学校を運営)が共有する建物及びその敷地に関して、発生した減価償却費、借入金利子、租税公課等の費用を持分に応じて負担していた原告が、当該費用を不動産賃貸業所得の必要経費であるとして確定申告をなしたところ、当該不動産賃貸は、基本的に一時的な貸室(大学等への入試、教室貸出し等)であり、具体的な利用状況に応じて当該利用以外の状況にかかる費用の必要経費該当性を否認した更正処分を受けたため、少なくとも当該建物の50%は、不動産賃貸業務に利用しているとしてその取消を求めたものである。判示としては、当該不動産賃借は、教室の貸出しであり、一時的な利用が中心であって、常時、貸出しの用に供しているものではないとして、具体的な日々の利用状況に基づき費用按分を行うこととした事案である。なお、共有している法人が専門学校として運用している、教室は、共有の持分割合(原告が3/4保有している)を超過して運用しており、事実上約50%を利用していたが、当該利用に関する金銭の収受は原告と法人の間では行われておらず(使用貸借)、原告の主張はその残りの50%を賃貸のように供しているとの主張である。

本件は、原告が子が代表者を務める法人と共有する建物及びその敷地につき、発生した費用の不動産所得における必要経費が如何なる部分であるのかという点が主要な争点となっており、より具体的には、常時賃貸に利用している不動産とは異なり、本件の用に一時的に不動産の貸付として利用しているような状況において、当該賃貸用の不動産にかかる費用における如何なる部分が経費として認定されるべきものであるのかという点が問題になったものである。法令解釈上、必要経費においては種々の議論、法令解釈、要件が唱えられているところではあるが、本件もその系統に属するものであり、主として、下記のように、所得との関連において直接的であるのか否か、すなわち直接性が問題になったものであるように捉えられる。特に不動産の賃貸おいて、無償で使用している使用貸借の部分や一時的な利用が混在している点が本件の問題の起因となっているものと理解される。

すなわち、特に、原告が主張するように、
不動産賃貸業においては、現実に賃貸の用に供した期間だけの経費が必要経費となるのではなく、客観的に不動産賃貸の用に供している不動産である限り、空き部屋として維持する期間の経費も、当然、必要経費とされる。

として、当該一時的な利用に伴う費用が必要経費になりうるのかという点が興味深い点であり、不動産利用の状況に関する事実認定の問題であるように理解されるが、その背景として如何なるものが必要経費であると捉えられるべきであるのか、つまり、以下のように所得税法37条が定める必要経費の要件が如何なるものであると解するのか、直接性を有するものと理解するべきものであるのかという点が主たる争点となっているものである。

本件におけるこの直接性を有するべきものであるのかという点は、弁護士会における会務費用の必要経費性が問題になった事案と同様に、直接性を有するべきものであるのかという点が問題になったものとして理解される。。基本的に従前とその解釈において異なるものではなく、費用を利用状況に応じて按分するという処理は実務上支配的な方法であることは、異論のないところであるが、このような共有物、利用状況が混在している場合において如何なる部分が必要経費として合理的であるのかという点を認定する上で実務上も参考となるものであるといえよう。特に不動産においては、常時賃貸のように供されているもの以外にも空き家や、一時利用などの状況の混在が想定されうるところであり、このような状況が混在している場合において如何なる部分が必要経費となりうるのかという点は重要な問題であるだろう。

第三七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

この条文の解釈として判示では、必要経費において、以下のように解釈している。
不動産所得の総収入金額から控除し得る必要経費といえるためには、それが事業活動と直接の関連を持ち、事業の遂行上必要な費用であることを要すると解される。

私見としては、本件の直接的な争点とは異なるものであるのかもしれないが条文を文言通りに読む限りにおいて、費用において、直接性を有するものであるのか否かという点は、下記の条文にあるように、売上原価その他と、販売費等と峻別した上で、判断されるべきものであると捉えられる。売上原価との対比において所得の総収入金額との間で因果関係が直接的である場合においては、特段の問題を生じないものであるが、この因果関係が明示的ではない費用すなわち販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用において、如何なる場合をもって、必要経費として認定されうるのかという判断の枠組みが問題になるものと理解される

具体的には、所得を生ずべき業務について生じた費用として該当するのか否かという点が問題になるものといえる。すなわち問題となる費用が所得を生ずべき業務について発生したものであるのか否かという、業務と所得の関係性が問題になると理解すべきであろう。これらに関しては、直接という文言はそもそも、使用されておらず(そもそも直接的な因果関係が認定し得ない費用である以上当然ではあるが)、下記のように本件の解釈において、必要経費の解釈としてひとまとめに直接の関連を有するものと明示的に示す解釈には違和感がある。

そもそも経費と所得において、その必要経費としての認定において、必要性と因果関係が明示的に分断できるものではなく、換言すれば必要性に(直接的な)関連性が含有されているものと解することも可能であり、何をもって関連していると理解するのかという点も問題であり、また、必要性もその具体的な認定は非常に困難であるともいえる。加えて販売費及び一般管理費が如何なるものであるかという定義規定は存在せず、所得に対する業務(この文言において事業等ではなく、業務としている点も具体的な課題である)多様なものが想定され、単に直接として関連性をもつものとして規定することは法令解釈として法文の規定を超過して制限をかけるものであるともいえる。

確かに、所得税が自然人を対象としており、法人とは異なり、業務活動以外にも、家事的な一般的消費活動を営むことは否めない。これら費用まで必要経費として所得の算定上、控除項目としてしまうことは適切な租税負担を把握する上で、否認されるべきであり、ここに、必要経費の認定の重要性、経費の範囲を具体的に確定する要請が発生するものであるのであるが、
一義的に必要性等の認定は、業務を実際に行った納税者において、理解されるものであり、多様な業務が想定されることからも所得税法において明文の規定をもって対応することは困難であり、過度の規定や法令解釈による制限は、租税による中立性の確保が図られず、事業者の経営判断を歪めるものであって、租税が経営判断に具体的に関与することになりかねない。販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用が必ずしも明確とならないことがその問題の起因であるが、所得との間において、直接的な因果関係をゆしない費用を如何にして所得の計算上把握するのかという基本的な問題ともいえる。家事費家事関連費との関連において、具体的な事実関係の積み重ねによる他ないのかもしれないが、予測可能性に反する状況が発生することは租税法の基本的な要請に反するものともいえる。

従って、その具体的な判定において文言上、販売費等は実際の所得の発生は必ずしも要請しておらず、所得を生ずべき業務費用と規定する文理からも、問題となる費用が発生した業務が如何なるものであるのか、これを所得の把握という点において適格であるのか否かという点で判断されるべきものと考えられる。私見としては、必要性もまた、主観的な要素を含有するものであることからも、当該業務に関連した費用が所得との間において適格であるのかという点は、個別に判断される他なく、その場合において、費用支出意図において所得稼得以外の目的が存在しないことが客観的に認定しうるのか否かという点が問題になるものと考えられる。法文上、売上原価等が所得との間において直接的であり、かつ客観的にその必要性を有するものであると捉えるならば、同様に直接的な対応、関連性を有していない費用においても客観的に所得との何らかの関連付けが必要であり、上記のように所得税の基本的な対象から考えて、その支出の意図、すなわち支出対象の業務において、所得稼得以外の目的が存在するか否かという点が具体的なメルクマールとなるべきであると考えられる。かかる判断基準が、法として、多様な業務への対応と、適格な所得の把握(消費支出との峻別)を衡量した本規定の趣旨に合致するものであるといえるのではないだろうか。

本件は、最終的に、課税庁が行った個別の不動産の利用状況に応じて、使用貸借部分(このようなものは明らかに営利目的はなく、何らかの事業以外の目的を有するものと考えられる)と一時的な利用における費用の按分を行っており、準備段階や未利用時における費用も考慮しつつも具体的に所得との関連からより具体的に按分を行っている。判断過程として直接的であることを求めたものであるが、このように直接的な関係性を求めるものであれば、より一般的に考えて不動産の一時的な利用による所得において、準備段階や具体的に利用されていない時期における費用の控除が困難となりうるものであり、これは一般的な所得の把握という点で、疑義が生じる可能性もありうる。結論として私見としても具体的な利用状況による按分は必要であるように考えられる画素の背景となる判断基準がより検討課題として理解されるべきものといえる。


以上です。かなり私見が多くなっていますが、毎度のごとく論文Stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。

2017年7月1日土曜日

判例裁決紹介(東京地判平成25年9月27日、物納制度の趣旨)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判平成25年9月27日で、相続税の物納許可が却下されたことを違法として取消を求めた事案です。

具体的には、相続人である原告らが平成3年の被相続人の死亡による相続税確定申告において一人あたり約4億7000万円の納税を求められたことに対して、借地としている土地の物納を申し出ていたところ、その主たる事務を担っていた原告一名が物納許可申請にかかる添付書類、特に登記上の書類、境界確定、土地の評価に関わる面積等を記載した書類の提出を怠り(自宅周辺に関しては難色を示し、借地人との人間関係のもつれから等)、度重なる督促や、課税庁職員の立会い、訪問調査等にも答えず、約18年が経過した平成22年になって、当該物納許可申請を却下(財産差押)したところ、最終的に延滞税47億も含め総額で66億円を超過する課税負担を行うこととなったため、相続税における物納許可に対する違憲性等を主張して出訴したものが本件であり、原告の主張はいずれも棄却されている。

本件は、約18年もの長期間に渡る事実関係が問題となった相続税関係の納税に係る事案であり、延滞税が47億円を超過するなど、租税負担に関する金額的にも非常に珍しい事案である。その主たる争点は、物納制度の許可に関わる要件等であり、その前提として相続税法が金銭納付を原則としており、物納を例外的に取り扱っていることが起点となっているものである。18年間に及び事実関係から、本件の訴因、争点は多岐にわたるものであるが、特にかかる点において納税者が違憲である旨主張しておるその判断が行われたものである。原告が主張する相続税納税に関する主張は、いずれも非合理であるが(個人的には弁護士がついていながらなぜこの種の主張がなされたのか理解できない)、本件の最終的な要因は種立つ窓口をになっていた原告の一人の怠慢や書類提出の不備、関係者(原告、借地人等)不協力、が原因となったものであり、かかるような状況が本件の相続税申告に種々のリスクを如実に表しており、結果として非常に多額の延滞税負担(相続分を超過する)を行うことになったものであるといえよう。かかる点で、本件はその、長期間渡る事実関係、金額等の点で非常にレアな事例であり、先例的な事案とはなりえないかもしれないが、租税に関する専門家としてこのような問題の発生はリスクとして充分に認識されるべきものと考えられる。この点で相続税申告における留意点に対して参考となるものと評価されるべきものであろう。

また、本件は徴収関係の事案であり、金額も含めレアなケースであると評価せざるを得ない。しかるに本件が先例となりうるのかという点では上記のように、確認の判断に委ねる他ないが、相続税制度の基本的な考え方から、租税制度一般における物納制度を理解する上で、重要な事案ともいえる。多年が経過しており、物納制度においても平成18年の改正によって、却下等の判断を行う期限制限が設けられたことからも、事案としての特殊性は否めないが、基本的な物納制度の趣旨は変化しておらず、かかる点で本件はその意義を有しているものと捉えられる。具体的には、物納制度の対象となる財産に対して却下する「管理または処分するために不適当」という基準が設けられているが、実務的にはマイナーな論点であろうが、近年の相続税負担の増加により、譲渡所得税がかからないなどのメリットから、物納を希望する納税者は増加しているものと考えられ、この点においては多少とも参考となるものといえよう。

具体的に、本件は上記のように、相続税確定申告における物納許可申請が却下されたことを発端としているものであって、当該許可申請が不適格であるのか否かという点が最大の争点となっているものである。すなわち下記相続税法41条に定める物納の要件及び42条の手続を充足しているのかという点が問題となっているものと捉えられ、この条文の法令解釈及び事実関係への当てはめが課題となっているものと理解される。下記条文に於いては、従来より、納付を困難とする金額制限が如何なるものであるのか、適格な物納財産が如何なるものであるのか等、法令解釈上の問題は存在していたが、本件は、そもそも、物納制度において、全額納付を認めていないことを違憲として主張している。



物納の要件)
第四一条 税務署長は、納税義務者について第三十三条又は国税通則法第三十五条第二項(申告納税方式による国税等の納付)の規定により納付すべき相続税額を延納によつても金銭で納付することを困難とする事由がある場合においては、納税義務者の申請により、その納付を困難とする金額として政令で定める額を限度として、物納の許可をすることができる。この場合において、物納に充てる財産(以下「物納財産」という。)の性質、形状その他の特徴により当該政令で定める額を超える価額の物納財産を収納することについて、税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときは、当該政令で定める額を超えて物納の許可をすることができる。

物納手続)
第四二条 前条第一項の規定による物納の許可を申請しようとする者は、その物納を求めようとする相続税の納期限までに、又は納付すべき日に、金銭で納付することを困難とする金額及びその困難とする事由、物納を求めようとする税額、物納に充てようとする財産の種類及び価額その他の財務省令で定める事項を記載した申請書に物納の手続に必要な書類として財務省令で定めるもの(以下この章において「物納手続関係書類」という。)を添付し、これを納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

この物納制度の趣旨に関しては、判示においても、

相続税の納付の方法として、特に物納の制度を設けたのは、相続税は、相続によって取得した財産の価額自体を課税標準として課税されるものであるところ、相続税については、課税価格計算の基礎となった財産の大部分が不動産、出資など換価することが困難なものであり、預貯金、現金等が僅少である場合などのように、金銭によって多額の相続税を一時に納付することが困難となる事態が生じ得る一方、金銭以外の財産によて相続税の納付を受けることにより、当該財産の管理又は処分を通じて金銭による納付があったときと同等の経済的利益を将来現実に確保することができるのであれば、国家の経費に充てるための資金の調達という目的は達成され得るものと考えられることから、一定の要件の下、例外的に、金銭による納付に代えて不動産等による納付を認めることとしたものである

として、租税の基本的な性格から、相続税の納付においても原則的に、金銭納付が原則であり、相続税の課税対象が財産であり、例外的に金銭以外の納付によっても得られる経済的利益が将来現実に確保できるものであれば、認められるとしたものとして一定の制度的合理性を認定している。行政の費用支弁を目的とする以上、金銭的な納付を原則とすることは合理的であり、換価等が必要となる財産による納付は、具体的な収入額が不確定であることからも、かかる物納を安易に認めることは、租税負担の公平性や、確実性に欠けるものとなる。但し、相続税法が物納を例外的に一部であっても許可しており、しかも、税務署長にできる規定として裁量を与えていることは、その条件として適格な物納対象財産として管理または処分において不適当の場合を除いており、相続税法の課税対象が財産の取得であることを考慮しつつも、上記立法目的、租税の基本的な性格から、比較考量されたものであり、一時的な納税者の流動性不足に対する配慮から設けられてものであるだろう。かかる点から考えて、管理支配が不適当とは、金銭による納付と比較して、同等の経済的利益が確保されることがその基準として理解されるべきであり、その立証に係る手続きの充足は、書面の添付等による実効性を表現することが求められる捉えるべきである。かかる点で書類添付要件を理解するべきであり、例外的な物納許可において、一定の救済を図るものである以上、その要件の充足は厳格に解釈されるべきであり、単に形式的な書類の添付のみならず、その必要と認められる範囲において、適格な書類を添付することまでも要請しているものと考えられる。この点は、不動産の納付一般にいえることであり、国有財産としての適格な管理運営を行うためにも、金銭納付とほぼ同等の経済的価値の実現が図られるべきであるのか否かを明らかにする必要性は高く、租税の申告にかかる書類の準備等を担うものとしてはその点を留意しておくべきであり、納税者に対する説明も必要となるだろう。

以上です。毎度のごとく論文stockとして作成しているものですので完成度は低いですが、参考までに。