第三九条 滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行つた政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他の特殊関係者であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。
以上のように、本件の中心的な争点は、
上記のような事実関係における第二次納税義務の成立が上記国税徴
収法39条に定める無償譲渡等の第二次納税義務の要件を充足する
のかという事実認定が中心的な課題であろう。しかしながら、
租税法規において第二次納税義務の成立は、通常、本来、
各租税法規が定めた課税要件の充足以外において、
何らかの特別な関係性を基礎として、
当該特別の関係に対して一定の課税要件の充足と類似の関係を認め
、本来の主たる納税者に続き、
従たる納税義務を一定の制限を付した上で、認めるものであり、
事実上、納税義務の発生していないところに、徴収の便宜、
公平な租税負担の確保という趣旨から、制度化されたものであり、
侵害規範たる租税法において、
財産権の保護を図る租税法律主義と上記趣旨との衡平が問題の核心
となるべきものである。従って、当該要件の解釈は従前、
租税法規における重要な関心であった。
本件はその延長として近年の役務提供が情報技術の発達に伴い、
第二次納税義務の背景にある従来の特別な関係性を如何にして認識
するのかという点で、
重要なものであるのではないかと考えられる。
また、実務的には、
その活用などは基本的に非常にレアなものであるだろうが、
近年は企業の再生等、滞納者が問題となる事案は増加しており、
当該要件の法解釈は重要な課題となるものと考えられる。
まず、
第二次納税義務の成立要件たる無償等の譲渡が如何なる意義を有す
るものであるのかという点が課題であろう。
本件では対価性の存在を重要な点としている。
本件では上記条文の法令解釈として如何なるものが要件となるのか
、
当該規定の趣旨が如何なるものであるのかという点を明らかにせず
、当該対価性の存在をもって第二次納税義務の成立を認めている。
如何なる法令の解釈によって対価性を問題としたのかという点は本
件において定かではないが、
その根拠となるものが必ずしも明らかではない。
本件では金員の支払いが贈与に該当するものと捉えられるが、
低額で譲渡した場合も対価性が問題となる。
私見としては対価性の有無は、
単に金員の授受に関する事実関係において判断されるものではなく
、本件において、
事業所得として申告した役務提供者と金員の支払いを行った滞納者
との間では役務提供の認識に相違があるように、提供された譲渡、
業務、役務の提供との関係から判断されるものであり、
上記当事者間での認識の相違等に代表されるように当事者の意思が
介在することになるものであり、
第二次納税義務の成立の要件の法令解釈として対価性を前提として
当事者の意思という主観的な要素が介入することで要件の充足が左
右されることは問題であるのではないかと考えられる。
本件でも提供した業務内容、役務の提供等は、
ライブチャット会社が定めるものとは異なり、
当事者の内心に依拠する不定なものといえる。如何にして業務・
役務提供として認定、
要件の充足を判断するのか問題となるものといえる。
総合的な判断によるべきものであろうが、
当事者間の意思が異なることも実際においては通常の取引において
は存在するところではあり、
契約の意思が必ずしも合致していない、
齟齬がある要な場合において、
無償や低額譲渡という要件を単に金銭のやり取りの事実関係におい
て、特別の関係を認め、
上記のようなバランスにおいて制度化された第二次納税義務の成立
を判断することは困難であろう。
このように、無償の譲渡等の意義が必ずしも定かではない。
以上のように対価性を如何にして導き得たのかという点は議論の余
地があろうが、第二次納税義務の趣旨目的から鑑みるに、
単に金銭等のやり取りをもって特別の関係を認め、
第二次納税義務の成立を認める根拠は明らかではなく、
法が要請する第二次納税義務の成立要件として起点となる行為であ
る、
無償の譲渡等に該当するのかという点は第二次納税義務の法令解釈
として課題となる。
第二次納税義務が主たる納税者以外に特別な関係をもって納税義務
を負わせていることは、課税処分上、
租税法律主義の基本的な要請として厳しい制度であり、
この成立が上記のように財産権の保護と租税徴収の具体的な実現の
確保という趣旨のバランスから構築されたものであると考えるなら
ば、さらに、制度として二次納税義務の対象を、
その受けた利益に限定することからも、その具体的な判定、
基準は明確であるべきであり、
本件では無償として受けた金員全てを利益額として特段の記述なく
認定しているが、
低額譲渡も含む規程として如何なるものが第二次納税義務の対象と
なる利益額となるのか決定する上でも必要であるものと考えられる
。
また、本件の基礎となった事実関係は、
近年の情報技術の発達に伴い、一度も面談等がない、
当事者間で発生したものであり、通常の経済活動において、
想定されうるものではなく、異常な行為、
計算が基礎となっていることは明らかではあるが、
従来の異常な取引を基礎とする第二次納税義務の対象者とはその性
格として異なるものであるのでは無いだろうか。
確かに従前と同様、
無償の譲渡等の取引が行われることは異常な取引であって、
そこに特別な関係性を認めていることは整合的ではあるが、
従前はこの第二次納税義務の成立は、
事実関係の相違に起因するものでもあるものの、
従前の特別な関係の前提として、
租税負担の回避を図るような当事者間を基本的に想定していたもの
であり、
本件のように独立の当事者間での成立を認めていることは注目に値
するものでろう。換言すれば、
基本的な第二次納税義務の趣旨を鑑みるに、
租税負担の回避を図るような事実関係、
意図を前提としたものをその対象としたものであり、
確かに異常な取引を形成しており、
形式的には成立要件を充足していることに異論は無いものの、
本件のような異常な取引を形成した事実関係において、
当該取引を第二次納税義務の対象として譲受人に対して第二次納税
義務の成立を認めることは違和感がある。
従前の当事者間とは異なり、
一方の相手側に問題となるような行為の当事者であるという認識が
必ずしも存在しないのではないだろうか。
事業所得として申告していることからも、
納税者の意識としては内心を活用した通常経済的取引であり、
異常な行為ではあるものの、
当事者間に於いて租税負担の回避等を図ったものでは無いことは明
らかではないだろうか。
上記のように特別の関係を生み出す上で、
第二次納税義務の成立において、租税負担の回避を防止し、
適切な租税徴収の実現を図ることが、
通常課税要件を充足していないにも限らず、
二次納税義務の発生を肯定する基本的な制度趣旨であると考え、
限定的に第二次納税義務の成立を解釈することは、
法文を概観するに、厳密な文言解釈としては、
困難であるかもしれない。
しかしながら租税負担の回避等を生み出すような特別の関係性を前
提とする考え方は、
租税法の基本的な要請と第二次納税義務の性格から考えて文理解釈
として必ずしも否定しうるものではないのではないのではないだろ
うか。もちろんこのような社会情勢の変動を捉え、
本来の趣旨に立ち返り、
立法論として対象の範囲を限定する検討は合理的な選択とも言えよ
う。
(基因すると認められるとき)
9 法第39条の「徴収すべき額に不足すると認められること」(以下9において「徴収不足」という。)が無償譲渡等の処分に「基因すると認められるとき」とは、その無償譲渡等の処分がなかったならば、現在の徴収不足は生じなかったであろう場合をいう。
また、本件では特に判断されていないが、上記39条においては、
単に問題となる、
要件の充足となるような行為の存在のみが第二次納税義務の成立の
要件として導くことは妥当ではない。
法規においては、
当該行為が滞納に関する徴収の不足に対して基因するものと認めら
れるときという要件が規定されている。
本件ではこの点に対しては、
特に基因しているものであるとの認定、判断を行っていない。
この点においても、
本件判断は法の要請に従っているとは捉えることは困難であると評
価可能である。
この徴収の不足に対して当該行為の基因すると認められるときとい
う文言は、上記のように、通達において、
一定の国税庁の解釈が示されているが、
その意義は必ずしも明らかとはいえない。すなわち、単に、
徴収不足と当該行為との間に、
如何なる程度の因果関係を要するものであるのか、
認められるということは如何なる主体(
同族会社の行為計算の否認と同様に)において、
必要であるのか等は、明示的ではなく、
本件とは問題となっていないものの、
より詳細な検討が必要であるものと考えられる。
以上のように本件は問題の起点となった事実関係は非常に特殊な事
案ではあるが、
係る点で事例判断と考えることも可能であるが第二次納税義務の成
立が、如何なるものであるのかという法解釈を明らかにする上で、
非常に検討すべき点を含んでいるように考えられる。
サービス(ライブチャット)の受益から一方の当事者において、
個人間のやり取りとして変化したことが本件の事実関係において、
問題の前提、起点となるべきものであるが、
特にもd内の中心的な争点となった対価性の有無が上記のように課
題と言えよう。本件判断は前記のように、
単なる事実認定にのみ主軸をおいており、
39条が定める第二次納税義務の成立要件の具体的な解釈、
その背景となる制度趣旨の関係に関して、
具体的な検討を行っていない。
この点で不充分であるように捉えられる。
最終的には、
請求人が自己の主張となる事故の役務提供の意思を示す証拠資料の
提示を行っていないことからも、
本件の判断を構成することになったと考えられるが上記のような検
討を行うこともまた必要であるものと考えられる。
結論として本件の金員の支払いが贈与であることを否定しうるもの
ではないが、
第二次納税義務の成立に対する要件の充足を果たして満たしている
のかという点はその立証、
判断過程において問題があるようにも捉えられる。
なお、
本件はライブチャットのような特殊な取引を前提としたものであり
、
一般的な事情を検討する上では必ずしも参考となるべき部分が示さ
れていないことも確かである。
上記のような検討を行うことは重要であるが、本件が示すことは、
このような特殊な取引における当事者の思惑の相違が現れているこ
とが興味深く、租税事例の生々しさ、
現実的な側面を示していることが本件の提示することであるだろう
。
以上です。毎度の如く、
論文Stockとして作成しているものですので完成度は低いです
が参考までに。
裁決
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