2022年12月5日月曜日
判例裁決紹介、令和2年6月24日裁決、国外居住者の扶養控除申請と付属書類の未整備】
また、興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は令和2年6月24日裁決で、扶養控除の申請において、国外居住者を申告した請求人も附属書類の未整備が課題となった事例です。
具体的には本件は個人たる請求人がその確定申告において、国外【中国】に居住する者【父と母)を扶養親族であるとして、扶養控除を適用していたことにつき、法の定める書類の添付がなかったため、更正処分等により扶養控除の適用を否定したことを不服として提起された事例である。
現金で支払ったとする受領書の提出をもって、その証明とするということが本件の事実関係において、行われたものであり、かかる証明では法の定める扶養の事実を証明するものではないということで、適用が否定された事例である。
書類の未整備という形式的な行為が基礎となる処分事例であるが、近年はこのような国外居住者に対する取り扱いに限らず、立証責任を事実上納税者に転換するような、より正式には適用の根拠となる書類【証拠となる】の整備を求めることが基本的な流れとなってきている。些か形式的な処遇であり、賛否はあろうが、このような取り扱いが基本的な流れになっていることは、租税実務を行う者としては認識しておくべきものであろう。
所得税法130条
二 第一項の規定による申告書に、第八十五条第二項又は第三項(扶養親族等の判定の時期等)の規定による判定をする時の現況において非居住者である親族に係る障害者控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は扶養控除に関する事項の記載をする居住者 これらの控除に係る非居住者である親族が当該居住者の親族に該当する旨を証する書類及び当該非居住者である親族が当該居住者と生計を一にすることを明らかにする書類
以上のように法は、上記のように、扶養親族の判定において、非居住者【国外居住者】に対する現況として、生計同一も含め具体的な書類による担保を求めている。より具体的には所得税法施行令に置いて定めがあるものであるが、
3 法第百二十条第三項第二号(法第百二十二条第三項、第百二十三条第三項、第百二十五条第四項及び第百二十七条第四項において準用する場合を含む。)に掲げる居住者は、同号に規定する記載がされる親族に係る次に掲げる書類を、当該記載がされる障害者控除に係る障害者(確定申告書に控除対象配偶者又は控除対象扶養親族として記載がされる者を除く。以下この項において「国外居住障害者」という。)、当該記載がされる控除対象配偶者若しくは配偶者特別控除に係る配偶者(以下この項において「国外居住配偶者」という。)若しくは当該記載がされる控除対象扶養親族(以下この項において「国外居住扶養親族」という。)の各人別に確定申告書に添付し、又は当該申告書の提出の際提示しなければならない。ただし、法第百九十条第二号の規定により同号に規定する給与所得控除後の給与等の金額から控除された当該国外居住障害者に係る障害者控除の額に相当する金額、当該国外居住配偶者に係る配偶者控除若しくは配偶者特別控除の額に相当する金額若しくは当該国外居住扶養親族に係る扶養控除の額に相当する金額に係る次に掲げる書類又は当該給与等の金額から控除されたこれらの相当する金額に係る国外居住障害者、国外居住配偶者若しくは国外居住扶養親族以外の者について法第百九十四条第四項(給与所得者の扶養控除等申告書)、第百九十五条第四項(従たる給与についての扶養控除等申告書)若しくは第二百三条の六第三項(公的年金等の受給者の扶養親族等申告書)の規定により提出し、若しくは提示した第一号に掲げる書類については、この限りでない。
一 次に掲げる者の区分に応じ次に定める旨を証する書類として財務省令で定めるもの
イ 国外居住障害者 当該国外居住障害者が当該居住者の親族に該当する旨
ロ 国外居住配偶者 当該国外居住配偶者が当該居住者の配偶者に該当する旨
ハ 国外居住扶養親族 当該国外居住扶養親族が当該居住者の配偶者以外の親族に該当する旨
二 当該国外居住障害者、国外居住配偶者又は国外居住扶養親族が当該居住者と生計を一にすることを明らかにする書類として財務省令で定めるもの
本件は、このような法定されている書類の準備が、適当ではないということで争いになっているものである。具体的には現金を手渡ししたという受領書の書類では、生計を同一として評価することは困難との認定である。
そもそも、生計を一にするという要件自身がいかなる意義であるのか、送金の事実に現在は、その判定をほぼ委ねているような現況を法令解釈として的確であるのかという疑問もあるものであるが、上記施行令が国外居住者に対して上記のような特別な書類の整備を求めていることの趣旨は、海外に居住している故に、その扶養の証明が困難であることを起点とするものであり、事実上立証責任を転換していることにあるものと解するならば、本件のような当事者で作成したような書類で足りるとする根拠は成立せず、第三者が関与するような【口座】のような形式での証明が必要であり、法【財務省令】が多様な書類による証明を許容していると解することは困難と考えるべきであり、判断は是認されよう。
またふとした疑問であるのだが、このような送金関係の金額【に依拠した判断と】と扶養控除金額がリンクされていないことは扶養控除の趣旨から適格であるのであろうか。法はあくまでも生計を一にするということが条件であり、法は、金額を持って基準としていないものであるが、扶養控除の金額よりも明らかに少ない送金等の金額で扶養控除の適用が判断されるようなことはないのかという点は、疑問に思う。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであり完成度は低いですが参考までに。
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