2022年12月5日月曜日
判例裁決紹介【東京高判令和2年1月16日、給与の支払事実関係の認定】
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京高判令和2年1月16日で、給与所得の源泉徴収還付に関する給与支払いの事実関係の認定が争われた事例です。
具体的には、本件は、法人の役員であった控訴人【原告、元税務署職員】が、その確定申告において、給与所得に関する源泉徴収の還付申告を行ったことにつき、当該給与支払いの事実はなく【源泉徴収も納付されていない】、もって当該申告は受け入れられず、もって虚偽の源泉徴収票により還付申告を行ったとして重加算税の賦課決定処分を受けたことを不服として提起された事例である。判示も地裁同様課税庁の主張を認め、控訴人が主張する、あるいは準備した給与支払台帳は信憑性に欠けるものとして、訴えを棄却した事例である。
一般的に給与の受け取りは、当然その受取を行った者である本人が把握している、感知すべきことであることはいうまでもない。しかるにこれが事実関係として争点になることは、不可思議な事象であると考えられるのが一般の感覚であろう【実務家としてはさもありなんというような印象を持つかもしれない】、学生には思いもよらないことかもしれないが、このような不可思議な事象が発生するのが実務の世界であることは改めて認識されよう。本件では、このような事象の背景を詳細には述べておらず、濁した表現にならざるをえないが、本件判示も地裁の判断を基礎としており、元税務職員である原告控訴人が起点となったこのような申告に関して給与支払の事実を基礎に対応を図っているのであろう。)具体的な事実関係は地裁を参照すべきであるが、本件の事実関係や立証の過程は、支払関係の事実を立証する過程で有益なものであろう。
中心的な争点は、以上のように、本件源泉徴収が行われたとされる給与支払の事実の有無であり、その事実関係が認定できるのかという点に尽きる。このような意味で事実認定の問題であるが、主張立証の責任が納税者に転換されていることは、本件でも同様であり、如何にしてその事実を証する証拠資料を準備できるのかという視点は今後必要となるのでしょう。
個人的には、源泉徴収制度における、徴収状況【未納付】と還付のリンクが制度上、図られているのかという点は懸念されるところではあるがこの辺りはどのようになっているのであろう。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであり、完成度は低いですが参考までに。
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