2022年12月5日月曜日
判例裁決紹介【東京地判令和2年3月18日、同族会社への貸倒損失と必要経費認定】
さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判令和2年3月18日で、同族会社への貸倒損失が事業場の必要経費に該当するのか否かという点が基本的な争点となった事例です。
具体的には、本件は競走馬の保有業を営む原告が、保有する同族会社(競走馬の育成等)への貸付債権の貸倒損失を当該事業所得の必要経費に該当するものとして確定申告したところ、課税庁により、かかる損失は、事業の遂行上必要ではないとのことで、否認された更正処分等を不服として提起された事例である。
本件の事実関係はシンプルであり、競走馬の保有という些か特殊な事実関係を基礎としたものであるが、貸倒損失が事業上の必要経費を構成するのか否かという点、所得税法上の争点とする事例は少なく、事業との関連や、必要性を検討する上で、特に貸付金は中小企業の運営上、実務上非常に多くの活用がなされているものであり(今現在はだいぶ変わっただろうか?)、実務上も参考とすべきものであろう。
資産損失の必要経費算入)
第五十一条 居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供される固定資産その他これに準ずる資産で政令で定めるものについて、取りこわし、除却、滅失(当該資産の損壊による価値の減少を含む。)その他の事由により生じた損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額及び資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除く。)は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
2 居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
本件は具体的には上記所得税法51条における資産損失の計上が是認されるのか否かという点を基本的な争点としているものである。必要経費一般の議論は非常に事例も多いものであるが、資産損失に関しては必ずしも事例は多くなく、当該損失における必要経費判断の枠組みは、重要なものであろう。
法は上記のように、事業(所得を生ずべきという制限が付与されているが)について、事業の遂行上という要件を付与している。この遂行上というものがいかなる意義を有するものであるのか、という点が背景にあろう。通常、必要経費に置いては必要性や関連性が基本的な判断の要件であるが、資産損失に関しては損失ということもあり、必ずしも同様の判断の枠組みが適用できるとは考えがたい。
「所得税法51条2項にいう「その事業の遂行上生じた」とは、当該事業所得等の
基因となる事業と何らかの関連を有する全ての場合をいうものではなく、当該事業
の業種、業態からみて当該事業所得等を得るために必要なものと客観的に認められ
る場合をいうものと解するのが相当」
判示では上記のように、事業所得との必要性を基礎において判断を行っている(直接・間接との表現は用いられていない)。資金の貸付という行為において事業との必要性を観念できるものであるのか、同族会社への支援・投資との差異は如何に判断されるべきであるのか、事業内容の関連程度であれば、その遂行上のものであるとの判断の枠組みの提供は困難であろうことが事例は示しているように考えられる。
単なる事業上の経費とは異なるのが損失であり、基礎となる資産の起点がまずは重要な判断の要因であり、かかる点から事業との関連が検討されることが必要であるのではないだろうか。
以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであり完成度は低いですが参考までに。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿