2022年12月5日月曜日

判例裁決紹介(令和2年6月4日裁決、国外不動産の一括取得における資産区分】

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、令和2年6月4日裁決で国外不動産取得時における土地と建物の一括取得価額の資産区分が課題となった事例です。 具体的には、個人たる請求人が投資用不動産の取得のため米国にある土地及び建物を取得した件につき、一括取得であるため土地と減価償却資産に按分すべきところ、かかる按分比率【建物に80%】が非合理的であり、過大な減価償却を計上しているとして、更正処分等を受けたことを不服として提起された事例である。 近年、我が国の不動産環境が変化して、収益性が低下していることから、そして、不動産特に、建物に関する評価、取引価額の事情の相違から減価償却を我が国の制度上過分に活用できるとして【損益通算に対して制度的手当が一部なされているが、まだ減価償却制度の改善の余地はあるだろう、私見としてはそろそろ減価償却という会計的な概念は、租税制度にどのように扱うのか、資産概念が変化している環境において見直されるべきものと思っているが・・・】、増加傾向にある米国不動産投資であるが、本件は、このような投資用の不動産紹介における減価償却の利用に関して留意すべき点が示されている。 建物と土地の一括取得における取得費の配分の課題【明瞭に区分されていない】は、古くから国内取引においてもよくある紛争事例であるが、現在では、ほぼ固定資産税評価を利用するケースが一般的であるように考えられる【それでもたまに事例としては見かけるが】。本件は国外における取得において、当該投資用不動産のパンフレットに記載されていた按分比率をもとにして【勧誘利回りもそれを基礎に計算されていた】減価償却資産である建物に按分していたことが不合理であるとして中心的な争点となっているものである。 裁決では結論としてその勧誘用のパンフレットや米国における鑑定士の評価も用いられているが、課税庁が按分比率の引き直しに活用した州不動産評価局による評価按分を基礎として引き直しされている。固定資産税評価額を用いて按分する現行的な支配慣行とほぼ同様の処理を行ったものであるが、かかる処理の合理的な判断の根拠は必ずしも明らかではない【結論としては合理的判断であるとは考えられるが】。 裁決においては米国の租税裁判所の判断でも同様のケースがあることを一つ根拠としているようにも読めるものであるが、具体的な判例名も示されておらず、また、米国と我が国の不動産を取り巻く環境は必ずしも一律とは言えず一義的に米国における按分の基準が適正であるのかという論理は必ずしも妥当ではないだろう。 いずれにせよ、国内における不動産取引とは異なる市場慣行や評価が成立するのが米国における取引であり、海外における不動産取引は米国にとどまらず増加傾向にあるようであるので、本件も含め租税実務上の留意はより蓄積されるべきものであろう。 以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが、参考までに。

判例裁決紹介【東京地判令和2年3月18日、同族会社への貸倒損失と必要経費認定】

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京地判令和2年3月18日で、同族会社への貸倒損失が事業場の必要経費に該当するのか否かという点が基本的な争点となった事例です。 具体的には、本件は競走馬の保有業を営む原告が、保有する同族会社(競走馬の育成等)への貸付債権の貸倒損失を当該事業所得の必要経費に該当するものとして確定申告したところ、課税庁により、かかる損失は、事業の遂行上必要ではないとのことで、否認された更正処分等を不服として提起された事例である。 本件の事実関係はシンプルであり、競走馬の保有という些か特殊な事実関係を基礎としたものであるが、貸倒損失が事業上の必要経費を構成するのか否かという点、所得税法上の争点とする事例は少なく、事業との関連や、必要性を検討する上で、特に貸付金は中小企業の運営上、実務上非常に多くの活用がなされているものであり(今現在はだいぶ変わっただろうか?)、実務上も参考とすべきものであろう。 資産損失の必要経費算入) 第五十一条 居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供される固定資産その他これに準ずる資産で政令で定めるものについて、取りこわし、除却、滅失(当該資産の損壊による価値の減少を含む。)その他の事由により生じた損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額及び資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除く。)は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。 2 居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。 本件は具体的には上記所得税法51条における資産損失の計上が是認されるのか否かという点を基本的な争点としているものである。必要経費一般の議論は非常に事例も多いものであるが、資産損失に関しては必ずしも事例は多くなく、当該損失における必要経費判断の枠組みは、重要なものであろう。 法は上記のように、事業(所得を生ずべきという制限が付与されているが)について、事業の遂行上という要件を付与している。この遂行上というものがいかなる意義を有するものであるのか、という点が背景にあろう。通常、必要経費に置いては必要性や関連性が基本的な判断の要件であるが、資産損失に関しては損失ということもあり、必ずしも同様の判断の枠組みが適用できるとは考えがたい。 「所得税法51条2項にいう「その事業の遂行上生じた」とは、当該事業所得等の 基因となる事業と何らかの関連を有する全ての場合をいうものではなく、当該事業 の業種、業態からみて当該事業所得等を得るために必要なものと客観的に認められ る場合をいうものと解するのが相当」 判示では上記のように、事業所得との必要性を基礎において判断を行っている(直接・間接との表現は用いられていない)。資金の貸付という行為において事業との必要性を観念できるものであるのか、同族会社への支援・投資との差異は如何に判断されるべきであるのか、事業内容の関連程度であれば、その遂行上のものであるとの判断の枠組みの提供は困難であろうことが事例は示しているように考えられる。 単なる事業上の経費とは異なるのが損失であり、基礎となる資産の起点がまずは重要な判断の要因であり、かかる点から事業との関連が検討されることが必要であるのではないだろうか。 以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであり完成度は低いですが参考までに。

判例裁決紹介、令和2年6月24日裁決、国外居住者の扶養控除申請と付属書類の未整備】

また、興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は令和2年6月24日裁決で、扶養控除の申請において、国外居住者を申告した請求人も附属書類の未整備が課題となった事例です。 具体的には本件は個人たる請求人がその確定申告において、国外【中国】に居住する者【父と母)を扶養親族であるとして、扶養控除を適用していたことにつき、法の定める書類の添付がなかったため、更正処分等により扶養控除の適用を否定したことを不服として提起された事例である。 現金で支払ったとする受領書の提出をもって、その証明とするということが本件の事実関係において、行われたものであり、かかる証明では法の定める扶養の事実を証明するものではないということで、適用が否定された事例である。 書類の未整備という形式的な行為が基礎となる処分事例であるが、近年はこのような国外居住者に対する取り扱いに限らず、立証責任を事実上納税者に転換するような、より正式には適用の根拠となる書類【証拠となる】の整備を求めることが基本的な流れとなってきている。些か形式的な処遇であり、賛否はあろうが、このような取り扱いが基本的な流れになっていることは、租税実務を行う者としては認識しておくべきものであろう。 所得税法130条 二 第一項の規定による申告書に、第八十五条第二項又は第三項(扶養親族等の判定の時期等)の規定による判定をする時の現況において非居住者である親族に係る障害者控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は扶養控除に関する事項の記載をする居住者 これらの控除に係る非居住者である親族が当該居住者の親族に該当する旨を証する書類及び当該非居住者である親族が当該居住者と生計を一にすることを明らかにする書類 以上のように法は、上記のように、扶養親族の判定において、非居住者【国外居住者】に対する現況として、生計同一も含め具体的な書類による担保を求めている。より具体的には所得税法施行令に置いて定めがあるものであるが、 3 法第百二十条第三項第二号(法第百二十二条第三項、第百二十三条第三項、第百二十五条第四項及び第百二十七条第四項において準用する場合を含む。)に掲げる居住者は、同号に規定する記載がされる親族に係る次に掲げる書類を、当該記載がされる障害者控除に係る障害者(確定申告書に控除対象配偶者又は控除対象扶養親族として記載がされる者を除く。以下この項において「国外居住障害者」という。)、当該記載がされる控除対象配偶者若しくは配偶者特別控除に係る配偶者(以下この項において「国外居住配偶者」という。)若しくは当該記載がされる控除対象扶養親族(以下この項において「国外居住扶養親族」という。)の各人別に確定申告書に添付し、又は当該申告書の提出の際提示しなければならない。ただし、法第百九十条第二号の規定により同号に規定する給与所得控除後の給与等の金額から控除された当該国外居住障害者に係る障害者控除の額に相当する金額、当該国外居住配偶者に係る配偶者控除若しくは配偶者特別控除の額に相当する金額若しくは当該国外居住扶養親族に係る扶養控除の額に相当する金額に係る次に掲げる書類又は当該給与等の金額から控除されたこれらの相当する金額に係る国外居住障害者、国外居住配偶者若しくは国外居住扶養親族以外の者について法第百九十四条第四項(給与所得者の扶養控除等申告書)、第百九十五条第四項(従たる給与についての扶養控除等申告書)若しくは第二百三条の六第三項(公的年金等の受給者の扶養親族等申告書)の規定により提出し、若しくは提示した第一号に掲げる書類については、この限りでない。 一 次に掲げる者の区分に応じ次に定める旨を証する書類として財務省令で定めるもの イ 国外居住障害者 当該国外居住障害者が当該居住者の親族に該当する旨 ロ 国外居住配偶者 当該国外居住配偶者が当該居住者の配偶者に該当する旨 ハ 国外居住扶養親族 当該国外居住扶養親族が当該居住者の配偶者以外の親族に該当する旨 二 当該国外居住障害者、国外居住配偶者又は国外居住扶養親族が当該居住者と生計を一にすることを明らかにする書類として財務省令で定めるもの 本件は、このような法定されている書類の準備が、適当ではないということで争いになっているものである。具体的には現金を手渡ししたという受領書の書類では、生計を同一として評価することは困難との認定である。 そもそも、生計を一にするという要件自身がいかなる意義であるのか、送金の事実に現在は、その判定をほぼ委ねているような現況を法令解釈として的確であるのかという疑問もあるものであるが、上記施行令が国外居住者に対して上記のような特別な書類の整備を求めていることの趣旨は、海外に居住している故に、その扶養の証明が困難であることを起点とするものであり、事実上立証責任を転換していることにあるものと解するならば、本件のような当事者で作成したような書類で足りるとする根拠は成立せず、第三者が関与するような【口座】のような形式での証明が必要であり、法【財務省令】が多様な書類による証明を許容していると解することは困難と考えるべきであり、判断は是認されよう。 またふとした疑問であるのだが、このような送金関係の金額【に依拠した判断と】と扶養控除金額がリンクされていないことは扶養控除の趣旨から適格であるのであろうか。法はあくまでも生計を一にするということが条件であり、法は、金額を持って基準としていないものであるが、扶養控除の金額よりも明らかに少ない送金等の金額で扶養控除の適用が判断されるようなことはないのかという点は、疑問に思う。 以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであり完成度は低いですが参考までに。

判例裁決紹介【東京高判令和2年1月16日、給与の支払事実関係の認定】

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、東京高判令和2年1月16日で、給与所得の源泉徴収還付に関する給与支払いの事実関係の認定が争われた事例です。 具体的には、本件は、法人の役員であった控訴人【原告、元税務署職員】が、その確定申告において、給与所得に関する源泉徴収の還付申告を行ったことにつき、当該給与支払いの事実はなく【源泉徴収も納付されていない】、もって当該申告は受け入れられず、もって虚偽の源泉徴収票により還付申告を行ったとして重加算税の賦課決定処分を受けたことを不服として提起された事例である。判示も地裁同様課税庁の主張を認め、控訴人が主張する、あるいは準備した給与支払台帳は信憑性に欠けるものとして、訴えを棄却した事例である。 一般的に給与の受け取りは、当然その受取を行った者である本人が把握している、感知すべきことであることはいうまでもない。しかるにこれが事実関係として争点になることは、不可思議な事象であると考えられるのが一般の感覚であろう【実務家としてはさもありなんというような印象を持つかもしれない】、学生には思いもよらないことかもしれないが、このような不可思議な事象が発生するのが実務の世界であることは改めて認識されよう。本件では、このような事象の背景を詳細には述べておらず、濁した表現にならざるをえないが、本件判示も地裁の判断を基礎としており、元税務職員である原告控訴人が起点となったこのような申告に関して給与支払の事実を基礎に対応を図っているのであろう。)具体的な事実関係は地裁を参照すべきであるが、本件の事実関係や立証の過程は、支払関係の事実を立証する過程で有益なものであろう。 中心的な争点は、以上のように、本件源泉徴収が行われたとされる給与支払の事実の有無であり、その事実関係が認定できるのかという点に尽きる。このような意味で事実認定の問題であるが、主張立証の責任が納税者に転換されていることは、本件でも同様であり、如何にしてその事実を証する証拠資料を準備できるのかという視点は今後必要となるのでしょう。 個人的には、源泉徴収制度における、徴収状況【未納付】と還付のリンクが制度上、図られているのかという点は懸念されるところではあるがこの辺りはどのようになっているのであろう。 以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものであり、完成度は低いですが参考までに。