また、興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。 今回は令和3年6月24日裁決で、 共同相続人への預け金や家屋相続に関する相続税申告に関する不記 載に関して過少申告加算税を賦課決定されたことを不服としてるも のであり、具体的に知り得る状況になかったものとして( 及び共同相続人に対する贈与であるとして) かかる処分の適用の取り消しを求めたものである。
具体的には本件は、相続人たる請求人( 明示されていないがおそらく税理士) が行った相続税の確定申告につき、共同相続人(紛争あり、 訴訟予定)への現金の預け金(通帳からの引き出し)、家屋譲渡( の不成立)につき、 相続人として調査を行っても知り得る状況になかったとして( あわせて預け金は共同相続人に対する贈与であるとして)、 更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に対する取り消しを求 めたものである。主に贈与としての認定の是非及び、 相続財産の把握につき、正当な理由があって、 不備があったことを肯定できるものであるのかという点が争点とな っているものである。相続税の申告の現場においてはおそらく、 珍しいものではないものであろうが、 被相続人預金からの引き出しがあった場合における対応や資産譲渡 の成立の有無が対象となっているものであり、 従前の事例と特に相違があるものではないのかもしれない。 ただし、多くの場合、通常、 このようないわゆる預け金に関しては、 被相続人の債権として処理して相続財産に含まれるものとして考え ることが中心であったが本件では、 贈与としての実質を備えているのか否か(みなし贈与) という点から主張がなされていることは興味深いものである。 判断では、この部分は、その適用を否定されているが、 近年の高齢相続において預金管理が俎上に上がることが多い中では 、 別アプローチとして検討する枠組みが上がっているのかもしれない 。 従前ではこのような処理はどのように処理されているのか実務家に 聞いてみたいところ。
本件の事実関係のもとでは、 共同相続人が被相続人の死亡前から継続的に引き出した預金( 6000万円超)が不当利得であり、預け金ではなく、 みなし贈与となるのかという点から争われているが、 租税負担の回避を防止する趣旨であり、 かかるような贈与と実質的な贈与と同様のものとして評価できるの か否かという点から判断が行われ、否定されている。
また、過少申告加算税の宥恕としての正当な理由としては、 下記のように最判を用いて、
「過少申告加算税は、 過少申告による納税義務違反の事実があれば、 原則としてその違反者に対して課されるものであり、 これによって、 当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質 的な是正を図るとともに、 過少申告による納税義務違反の発生を防止し、 適正な申告納税の実現を図り、 もって納税の実を挙げようとする行政上の措置と解される。 この趣旨に照らせば、通則法第65条第4項にいう「 正当な理由があると認められる」場合とは、 真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、 上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少 申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解 するのが相当である( 最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決・ 民集60巻4号1611頁参照)。」
真に納税者の責めに帰す事ができない状況にあることを求めており 、公平負担を考慮してもなお、 不当等と評価されうるものであることを求めている。
この状況が如何なるものとして判断されるのかという点が事実関係 のもとで、争点となっている。本件も含め特に問題となるのが、 相続人間の紛争がある状態にあることが前提となっていることであ る。 従前から紛争状態にあるものとそうではない状態であることの場合 に対して、当然のことながら、 財産把握の程度などにおいて差異が発生することは現実的には否め ない。 しかしながらこのような紛争の状態は相続人間の事情であり、 この事情を考慮するのかという点は納税者間の公平性を確保してい る趣旨からは、 受け入れがたいものと考えざるを得ないものといえよう。