2021年11月6日土曜日

判例裁決紹介(横浜地判令和2年2月26日、カイロプラクティック事業と事業税の業種判断)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は、横浜地判令和2年2月26日で、カイロプラクティック事業が個人事業税における請負業として該当するのか否かという点が争点となった事例です。

具体的には、本件は原告が個人として営むカイロプラクティック事業が地方税法上の事業税の対象となる事業区分において、いかなる業種区分、第1種(請負業)もしくは第3種(医療類似事業)に該当するのかという点が中心的な争点となっている事例である。カイロプラクティック事業がその区分が問題になっていることは耳にしているものの、個人的にマッサージに興味がないの正直今回、この判決でその事業の中身を知ったところではあるが、医療に類似するものとしても特段免許等を必要とするものではなく、また定義が明確なものではなく、最終的に如何に事業区分が事業税において判断されるのかという点は事業の実態に依拠するものの、社会通念にしたがってその適否を争う他なく、事業税の判断において、どのように判断を行うことになるのかという判断プロセスは、本件の展開が参考となるものであろう。特に、事業環境が変化して、個人が営む事業の多様化が図られている現況では、あるいは趣味的な事業も拡大している現況も鑑みるならば、処分庁においても具体的な事業の判断のプロセスは検討が必要となってくるだろう。本件では医療類似の第3種事業に該当するのであれば低税率であることもあって、納税者はその該当を主張しているが、この免許を不要な事業の取り扱いを如何に捉えるべきであるのかという、地方税法の立法趣旨に関する検討が必要となってくるだろう。

(事業税の納税義務者等)
第七十二条の二 
 個人の行う事業に対する事業税は、個人の行う第一種事業、第二種事業及び第三種事業に対し、所得を課税標準として事務所又は事業所所在の道府県において、その個人に課する。

十四 請負業

10 第三項の「第三種事業」とは、次に掲げるものをいう。
 医業
 歯科医業
 薬剤師業
 削除
 あん摩、マツサージ又は指圧、はり、きゆう、柔道整復その他の医業に類する事業(両眼の視力を喪失した者その他これに類する政令で定める視力障害のある者が行うものを除く。)

以上のように本件は、あまり普段お目にかかることのない、地方税法における事業税の事業区分が課題となっているものである。判断の順序としては請負業に該当するという判断の後に第3種事業ではないという判断が重なる必要性が判示されている。

判示では、課税庁が主張したように、租税法規における請負業の意義を非常に拡張的に解釈する、法人税法の収益事業における請負業の判断の枠組みも元に(請負契約にとどまらず広範囲のものを含む)、また、事業税の課税趣旨、制定経緯(営業税から広範囲を対象として、基本的にあらゆる事業を含むものと)から非常に広範囲の対象を請負業に求める見解の主張に対して、明確な判断を示していない。物理的な物の完成にとどまらず、役務提供における完成物の提供もまた対象となりうるものとしている点で、広範囲を対象として請負業として捉えているようにも考えられるが、直接的には、民事法の枠を超えた判断を本件の解釈には適用していないものとも評価できる。明確に否定されているわけではないので本件の事実関係の下では、基本的には民事法の請負の適用を議論すればよく、蛇足的なものとして言及を避けたものとも推定されるが、処分行政庁の主張にあるような広範囲を請負業において含めうるものであるのかという点は地方税法の事業税においては、まだ検討の余地があるものと考えるべきであろう。

私見としてはあくまでも先例的な法人税法における請負業が民事法の枠組みに限定される非常に拡張的な意義を持つものであることは、あくまでの収益事業の範囲を見定めるものであり(イコールフッティングを基礎とする)、本件の対象となる地方税法の事業税において、その範囲の検討において根拠として成り立ちうるものであるのかという点は疑問であるものと考えられる。文言は同一でも基本的な背景、趣旨が異なるものであり、租税法規として統一的な検討を促すものではないだろう。ただし、事業税の立法経緯からは課税庁が主張するように、限定列挙されているといえど、課税を広く事業に及ぼす趣旨であり、結果として請負業において対象範囲を民事法に限定された解釈にとどまるものではないのではないかと考えているが、この点は更に事業税の趣旨目的の検討が必要な部分であろう。

第3種事業の医療類似が基本的に免許制度を前提としたものであるというのは(限定的な解釈かもしれないが)、他の列挙とも整合的であり、合理的なものであると考えられる。そもそも適用税率が類似事業において低い可能性があることは、いかなる立法措置であるのかという点は現在の事業環境からは検討の余地があるものとも言えよう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

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