さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京地判令和2年3月26日判決で、原告法人の代取が個人的に費消した交際費が否認された事例です。
具体的には、パチンコ等の複数の原告法人の代取が支出したクラブ(銀座らしいです)、ホステスさんとの同伴に関する経費(6000万超、一回あたり20万円を超えるらしい)を法人の損金として計上していた事につき、かかる経費は、法人の業務とは関連がない、個人的な費消であり、法人の損金としては認められないものであり、法人調査の指摘による貸付金への振替も含め、仮想隠蔽に当たるとして重加算税の賦課決定処分が行われたことを不服として提起された事例である。
法令解釈としては特段珍しいものではなく、修正申告における貸付金への修正、振替そのものも重加算税の対象としている点は珍しいものであるようにも考えられるが、本件はクラブホステスとの個人的な費消に関する費用を法人の損金として、特に交際費として適合するものであるのかという点が中心的な課題となっている事例であろう。時代錯誤のような事例でもあるように捉えられるところでもあるが、本件はこのような事実関係が未だに特段珍しいものではない点を楽しむべき、事案として理解されるべきであろう。
このような法人と個人の境界が曖昧なまま運営されているビジネス環境は特段珍しくないという点は、程度の差もあるところであるが、我が国の法人の大多数が中小法人であり、また赤字であることが大半とされていても、実態はこの種の私的費用が介在していることを租税に関わるものとして再認識すべきだろう。この辺がきれいな世界ではあまり想定されないところだろうし、租税に関わって初めて目にするところで、テキストではかかれない租税の世界の面白い、人間臭いところだと言えよう(生まれたときからどっぷり使っている私としては当たり前の感覚で、こんなところが俗世間にまみれている法律屋と呼ばれるだとは思うが)。
より具体的な主張においては、非常に多数のウイスキーが注文されていることが複数人による交際の証であるとか(原告主張)、法人の役員である代取の妻にホステスの写真(そもそもこのような写真まで準備するんだ・・・と思うが)を見せて交際費として確認しないとと課税庁の職員が発言していることが違法な調査に当たるとの主張がなされている点などは、実務での、現場でのやり取りが垣間見えるものであり、正直、読んでいてニヤッとしています(不謹慎ですが)。
何れにせよ朝一番に読むべき案件ではないようには思うが、我が国の租税の世界での事実関係の典型として理解されるべき事案ではないだろうか。
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