2021年6月14日月曜日

判例裁決紹介(令和2年3月10日、修繕費の前倒し計上と仮装)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は令和2年3月10日裁決で、損金として前倒し算入した修繕費の計上が仮装に該当するのか否かという点が争点となり、課税庁の主張が排斥され、認められず納税者の主張が認められた最近では珍しい事例です。

本件は事案としてはシンプルで、請求人が法人の損金として算入した修繕費に関して、調査により年度末において未着工であるとして請求書等の日付に基づき損金として計上した処理は、事実の状況と異なる請求書等の発行を促し、経理処理、申告処理を行っているとして、仮装隠蔽に該当するものであるとした課税庁の処分を不服として提起された事例であり、この事実関係における仮装として評価されうるものであるのかという事実関係の認定が中心的な課題となっているものである。

結論として裁決段階において、課税庁の主張が排斥され、仮装行為が成立していないとした判断である。この点は、本件の事実関係は請求書等に記載情報と実態の乖離、そして請求書等に基づく申告という、非常に一般的な事案が租税となっているものであり、どのような点が仮装としての評価にまで至らないものと評価されるのかという点を考える上では、実務上も参考となるものではないだろうか。

本件では年度内の日付が付与された請求書等の準備及び帳簿への虚偽の記載が主たる争点となっている。
まず、請求書の準備に関しては、施工業者が準備段階に入った段階で提出されたものであり、納税者から請求書の記載等を求めた通謀虚偽があったとまでは認められないとの評価であり、納税者と施工業者との間での通謀関係があるのか否かという側面から係る点の証拠等の提出がないことが判断の要因となっている。必ずしも準備段階において日付を付与した請求書の発行は便宜的なものであり、不自然であるとまでは評価し難いとの民事的な判断がベースになっている。

また、帳簿への記載に関しても納税者は関与しておらず、税務代理人が会計処理を行ったものであるという点を基本に(我が国の現況法人は大部分はここに該当することになるだろうが)、納税者に対して当該修繕費が損金対象とはならないとの認識があったものとは言い難いという点が評価されている。テクニカルな点において納税者が損金等の知見を有しているような状況は想定し難いものであるが、代理人の行為と納税者の行為を分断しているようにも捉えられる。税務代理という点は、現実的に通常の代理とは異なるものと評価しうるのかという点は気になるところであるが、このような租税専門家が関与するような状況はごく日常的なものであり、係るような背景から会計処理等における納税者の関与をどのように評価していくのか、仮装行為においては本件は検討の素材となるだろう。

いずれにしても、仮装という行為において重加算税を賦課することは、故意に事実を歪曲するような状態を基礎としている法解釈を背景としており、故意であるとの評価がなされるような事実関係にあるものではない、特に税務代理人が関与しているごく一般的な事実関係において、このような故意の成立を否定している判断の枠組み、行為と会計処理の両側面から判断していることはティーチングケースとして参考となる事例ではないだろうか。

以上です。毎回の如く備忘録として作成しているものですので、完成度は低いですが参考までに

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