さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は新潟地判令和2年3月26日で、地方部に整備されたリゾートマンションの固定資産税評価額に対して、周辺での売買価格より大幅な高額な評価額であり、係る評価に基づく固定資産税評価額が是正されるべきであるとして提起された事例です。
具体的にはリゾートマンションの所有者である原告(居住しておらず、15年以上訪れていないような状況で、扉を開けるなどが困難な損耗が見られるもの)が固定資産税評価額を付与した魚沼市を提起したものであり、固定資産税評価額が課題とされている事例である。近年社会問題となりつつある、地方部の限界的な集落や不動産家屋の負動産として扱われるような状況、空き家問題が議論されているところですが、廃棄寸前の空き家などの存在がクローズアップされている点は周知のとおり。新規供給が途絶えることがない(推進している現況において一方で人口減少の影響から特に地方部で家屋自体が課題となっているものであり、この点が不動産評価においても顕在化しつつある現況をよく表しているものであると評価される事例であろう。従来は、一軒家を中心とした家屋の問題が中心でしたが、マンション、特にこのようなマンションが今後において問題になりつつあるのが我々の最近の見方ではないだろうか。一軒家に比して解体コストや管理コスト、意思決定、周辺への外部効果の大きさなどから影響が大きなマンションなどの区分所有建物ですが、地方では大した量は供給されていないとの見方が支配的だったが、どうも使用されている建材の危険性も含め、地方での老朽化した建物の存在は大きな課題になりそうである。10年後の家屋関係を考える審議会にいますが、家屋評価も含め、このような存在をどのように扱っていくのか、という点が我々世代の課題になるのでしょう。老朽化した団地などは廃墟としかならないように思いますが反射的な反対も含め、地域課題としては間近に迫っているようです(利活用も提案されていますが、おそらく区分所有は難しいでしょう、一軒家には行政の資金が入ることになりましたが、拡大するような気がしてなりません、一斉建築の弊害です)。
このような社会背景となっている現況が典型的に現れているのが本件のリゾートマンションの評価額であり、本件のような事例が今後も継続することでしょう。特に地方税担当の部署においては、このような存在に対する評価の課題が、所有者が近隣にいないことも含め、継続的に対応していくことになりそうです。リゾートマンションという実需から離れたところにある建築物に対しては早めに顕在化しつつあるのであろうが、老朽化している点も含め、需要の対象が高齢化により変化している点は不動産の評価に反映される点において課題が発生していると考えられる。スキーなどのレジャー自体がその影響力を失いつつあり(私は生まれは北陸ですが、あまり興味ないです、なんで寒いときにわざわざ寒いところにいくのでしょうというタイプです。こたつぬくぬくが至高です)、周辺環境の変化が市場取引に影響を与えている点は回避し難いのは本件がよく表している。周辺の建物が10万円でも売却されない状況が生まれつつある点は特徴的であろう。このような建物に固定資産課税台帳の価格が150万との評価が付与されている点は今後このような問題が独発することを想起させる。市場において取引されている場合であれば、近隣価格として参考とすべき点はいえようが、需要が減退し取引が成立しない点が問題となる。都市部においては高騰する不動産価格の現状がありながら、大多数の地方部において不動産価格の減少、市場取引が成立しない環境(このような二極化している点が今後の特徴であろう)を、今後は前提として評価の原則を構築していかねばならない現状に至っているのではないだろうか。
少し判例から離れた立法論とならざるを得ないが、現況は固定資産評価基準に枠組みにおいて評価の是非を争うほかない。本件も減点補正の対象となる特別の事情があるのか否かという点が主たる論点となっているが、その成立を認めていない。主張が基本的に主観的な主張にとどまっているという点が原因とも考えられるが、市場取引が成立していない環境をどのように捉え固定資産税評価に反映させていくのかという点が今後の課題として発生することになる。現行法の制度、特に評価基準の中では本件のような市場取引が成立しない環境を反映させることは困難であると考えざるを得ない。
固定資産税の対象を時価として理解する点がそもそも問題であるようにも思われる。利用を前提とした家屋ではその取引は主観的な事情に依拠せざるを得ない点は否めないが、残存価格の規制も含め、評価基準は、そのベースとして地方税における応益、負担分任の反映がなされている点が忘却されているようにも捉えられる。改めて固定資産税の基本としてこのような応益性や負担分任の思想が反映されている点を再定義していくべきであろう。これと資産価値の反映が行われていることが固定資産税評価の大きな特徴であり、固定資産評価基準は実質において、市場取引が成立しないような不動産の状況をあまり想定していない。均衡ある評価と客観性の確保を重点におき、主観的な要因を排除しつつある評価基準の特徴と根本において地方税や固定資産税の特徴を反映している点が固定資産評価基準の現代的な意義、特徴となっているものであり、固定資産の需給事情の反映、減点補正における今日の社会環境の反映は、主観的な要因の排除の点から遅滞しているものと考えられ、今後の課題として、需給事情の反映における対象の拡大を如何に固定資産税評価基準に反映させていくのかという点が今後の課題となる。本件は、このような社会環境の変化を反映させる上で、重要な起点となるものと考えられよう。
相続登記の義務化や一部不動産の放棄の規程の導入など(管理費の前払いが必要であるようであるが)、地方税における固定資産評価に関する周辺環境の変化も始まっている。今後はこのような変化を反映して(おそらく固定資産税負担は他の費用に比して少ないことが多いのでまだ地方部の不動産は固定化されたままであろうが)、如何なる固定資産税評価の評価が合目的であるのか更に検討が必要であろう。
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