2021年5月26日水曜日

判例裁決紹介平成31年1月11日裁決(相続財産としての同族会社への貸付金の評価)

さて、また興が乗ったので、判例裁決紹介を作成しました。今回は、平成31年1月11日で、同族会社への貸付金を相続により取得した場合における、財産評価、一部回収不能であるのか否かという点が課題となった事例です。

具体的には、本件は相続により請求人が取得した同族会社への貸付金をその相続税申告において計上せず、のちの調査によってかかる貸付金債権は、回収が不可能である、不能であるものであるとして評価を行うことはできないとして、更正処分が行われたことを不服として、特に一部は回収不能であることは明らかであるとして提起された事例である。

このような同族会社への貸付金は、いわゆる役員借入金として実務上、特に法人税法の世界ではごく当たり前に存在するものであろうが、これが相続税の財産評価においては、非常に厳格な評価(正直言うと、単に額面で評価されるというだけとも言えますが、他の財産と比して相続時における評価の余地がないことは確かでしょう)、を適用されることで、相続税のマネジメントの観点からは課題となることをよく表している事例であるように思います。中小企業のMAや事業承継などが課題となるような時代において、このような内部的な債権債務の存在は、今後の税務上のリスクであるという認識は租税専門家として常に意識されるべきものであるように捉えられる。

基本的には、当該貸付金が回収可能であるのか、一部でも不能であるのかという点が争点となっているものであるが、法人の唯一の債務であることなどが考慮要因となって、実質的に事業継続の妨げにならず、もって、回収不能の判断を適用すべきではないという点が中心的な判断の要因となって請求人の請求を棄却している。租税法規の伝統でもあるが、同族会社という存在を前提とした評価の事例であり、単に貸付金の回収可能性を議論しているものではないという点が、単に額面評価にとどまらず、本件のような貸付金評価における実質的な評価を導いていることは改めてその重要性を再認識されるべきであろう。


(貸付金債権の評価)

204 貸付金、売掛金、未収入金、預貯金以外の預け金、仮払金、その他これらに類するもの(以下「貸付金債権等」という。)の価額は、次に掲げる元本の価額と利息の価額との合計額によって評価する。

(1) 貸付金債権等の元本の価額は、その返済されるべき金額

(2) 貸付金債権等に係る利息(208≪未収法定果実の評価≫に定める貸付金等の利子を除く。)の価額は、課税時期現在の既経過利息として支払を受けるべき金額

(貸付金債権等の元本価額の範囲)

205 前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。(平12課評2-4外・平28課評2-10外改正)

(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)

イ 手形交換所(これに準ずる機関を含む。)において取引停止処分を受けたとき

ロ 会社更生法(平成14年法律第154号)の規定による更生手続開始の決定があったとき

ハ 民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の決定があったとき

ニ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったとき

ホ 破産法(平成16年法律第75号)の規定による破産手続開始の決定があったとき

ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき

(2) 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額

イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額

ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額

(3) 当事者間の契約により債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等が行われた場合において、それが金融機関のあっせんに基づくものであるなど真正に成立したものと認めるものであるときにおけるその債権の金額のうち(2)に掲げる金額に準ずる金額

以上のように、本件の中心的な争点は、財産評価基本通達における貸付金の原則元本評価である。財産評価基本通達は明示的に元本金額をもって貸付金として評価することとしているが、ただし、一部例外的な処置として回収不能である状態における評価減を認めているものである。ここに実質的な判断の余地を設けて現実の状況との比較衡量を図っていることが実務上でも課題となっている。その例外的な措置は、厳格に考慮されるべきであり、これは時価における客観的価値を要求する法の趣旨に合致しているものであろう。したがって、同族会社への貸付金においても上記通達が厳密に適用されるだけではなく(単に形式的に通達の評価方法に依拠するのではなく)、同族会社という状況を反映させ、検討することは妨げられるべきものではないものと解される。係る点で法人の資産債務状況から回収不能であると言う形式的な評価がなされたとしても、同族会社としての性格を考慮して、他の債務(本件ではこの貸付金が唯一のものであるという認定)とのバランスから事業継続の妨げにならず、もって貸付金の評価に回収不能であることを反映させることは否定されている判断が導かれているものである。

このような貸付金を中心とした、債権の評価に関しては法人税における部分的貸し倒れも含め、従前問題とされることとなってきたが、本件では基本的にその判断基準は整合的であるように評価される(特に全体の回収可能性を追求している点は)。予測可能性や安定性の側面からは係る点からは、法人税法と整合的に回収可能性による評価を中軸に貸付債権の評価を行うこととなり、部分的な評価により一部回収が不能であるという点を相続財産の評価においてカウントすることは困難であろう。しかしながら租税法規特に、相続税と法人税法はその目的を異にするものであり、同一の評価軸をもって当たるべきであるのかという点から異論が出る可能性も考えられる。法人税法が条文をもって明確に評価損の計上を否定していることと対比するならば、相続税法において客観的な時価をベースに構築される判断の枠組みと整合的であるべきであるのかという点は、評価損に対する条文のあり方も含め、検討することも、政策論として実務上の負担も考慮されることになろうが、論点としてはあり得るのではないだろうか。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているもので完成度は低いですが参考までに。

 

2021年5月18日火曜日

判例裁決紹介(大阪地判令和2年6月25日、法人資金で費消した法人役員への給与認定)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪地判令和2年6月25日で、法人代表者の妻で役員(副社長)でもある者が法人資金で費消した服飾品・宝飾品の購入が給与所得に該当するとして源泉徴収税の徴収及び仕入税額控除の適用が行われた事例です。

具体的には、リサイクル業務等を行う原告法人(同族会社)において、支出した(交際費として処理、調査後、貸付金処理)金額(服飾品、宝石等)を、個人の受益に属するものであるとして、役員の報酬(給与所得)であるとして、法人における源泉徴収及び、仕入税額控除の否定が行われたことを不服としているものである。金額的に非常に多額(3年間で6億超)である案件であり、この種の法人(特に同族会社)における個人的な費消における給与認定は従前より珍しくないものであるが、このような事例が訴訟で争われることは珍しい(正直今でもこのような多額な公私混同のような支出が行われることがあるんだという印象)。このような社内交際費に該当する事例は、従来は交際費としての該当性が課題となることも多かったが現在は交際費制度の変化もあり、給与認定、給与課税されるものであるのか否かという点が主たる争点となっているものである。実務に携わっている人であれば、このような認定を行う事例は大なり小なりごく当然のように見かけるものであろうが(意外と個人的な費消が給与課税されるという思考が理解が一般にはないだろうが)、法令解釈としては特段珍しいものではなく、よりも事実関係、トレーニングケースとして取り扱うべき案件であろう。本件は事実関係、主張(旦那である代表取締役が外商に売らないように頼む、当人の弁解としての必要性主張)等を興味深く読むべき案件であろう。

本件では理由提示に関しても争いがある。判示では、判断の基礎となった間接事実や補助事実までも詳細に書く必要はなく、判断基準や処分の根拠を提示することを求めている。私見としても、提示の趣旨は、基本的に恣意的な課税処分を抑える目的を持つものであり、訴訟等の救済措置への対応は便宜的にとどまるものと解され、間接事実や補助事実までも詳細に書くべき必要があるものとは考えがたいものと捉えられる。間接事実や補助事実がいかなるものであるのかという点、どのようなものを指すものであるのかという点は必ずしも定かではないが、基本的に判断の根拠や判断プロセスとなる通達等の提示がなされていることで、理由提示に不足はないものと解するべきであろう。

また本件では、立証のプロセス、判決のプロセスに着目するべきであろう。
調査段階での指摘から本件のような貸付金としての主張も行っているが(最近は消費税の観点からもこのような貸付金処理も流行らなくなっているだろうが)、殆ど考慮されていない。初期段階での交際費等としていた点において、贈答者がいかなるものであるのか不明である点をまずは認定し、この段階での交際費としての該当性を否定した上で役員たる地位に基づいているものであるのか、職務内容や権限等の観点から、給与として職務執行の対価としての給与認定を行っている。以前福岡での判決にもあったように、社内交際費としての認定は、変化しているものであるが、帰属が特定の個人に明確であるような場合においてはこの給与認定が課題となることは今後も重要な点であろう。特に消費税がその位置づけを増す現況においては、給与認定と交際費としての認定においてはその租税負担において大きなさいが生じることは明らかであり、本件は非常に金銭的に多額の事例であるが、法人代表者による個人的費消の扱いは慎重な対応が求められるべきものであろう。

判示では、交際費としての否定には、相手先の特定がまずは重要な判断材料としている。交際費としての処理への対応であるが、近年はこのような相手先の不明瞭、判別が困難であるような場合の損金否認が増加している傾向にあり、消費税の適格請求書も視野に入れられているようでもあるが、課税調査における視点が従来の実質的な部分を重視することも減ってはいないものの、形式的とはいえ、損金の支出という部分の立証、証拠の保存がキーとなっていることは留意されるべきである。原告の主張は、経営者としての交際の必要性、理由(交際のためきちんとした格好をしていなければならない、多様な人と損してでも交際するなどの)主張がなされているが、この点は判示では重要視されていない。所得税の必要経費の主張でも垣間見られるものであるが、概して法人経営者の主観的な判断に依拠したものであり、相手先の特定などの客観的な判断を重要している点は租税実務家としては留意されるべきものである。

なお、最終的な給与認定に関しては、法人役員としての職務内容の幅が広いことと、給与所得の従前の解釈から整合的であり、役員個人への帰属が明確である以上は、係る認定を覆すことは現行の法解釈からは困難である。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。



 

2021年5月10日月曜日

判例裁決紹介(宇都宮地判令和元年7月3日、給与支払の実態の欠如と源泉徴収税還付申告)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は宇都宮地判令和元年7月3日で、源泉徴収の還付を求めた原告の訴えを給与支払いの実態がないとして、否認した事例です。
具体的には原告(個人)が休眠状態の法人(太陽光、破綻し信用保証協会からの弁償を受けている段階、元代表取締役で解任済み)から給与を受け取っていたとして確定申告において源泉徴収額の還付申告を行ったものであり、課税庁が当該法人は休眠状態で稼働の実態がなく(未申告)、源泉徴収の対象となる給与支払の実態が存在しないとして、背原告の請求の退けたことを不服として提起されたものである。

破綻に伴う係争が行われ活動実態がない法人の支払に関するもので(そもそも代表取締役を解任された者に対する支払いがあるのかという基本的な疑問あるが)、基本的には報酬支払の事実関係が存在しているのか否かという事実関係の問題であるが、給与支払の台帳などを提示して源泉徴収の還付を求める事案であり、いかなる所以があってこのような請求を行ったのか疑問を覚えるものであるが、口座のやり取りや支払者の状況等、多方面からの事実関係の認定により係る支払の事実関係を否定している点は、いささか特殊な事案であるようにも捉えられるが租税の実務家としてはトレーニングケースとして参考となろう。


給与所得)
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。

以上のように本件の基本的な争点は給与所得の原因となる報酬の支払など、給与所得の実態が発生しているものであるのか否かという点が争われているものである。本件では従来の給与所得の判例と整合し、上記給与所得の法令解釈として給与としての形式的な支払に限らず、雇用契約類似の契約を基礎に労務の対価として提供された指揮命令等の存在が課題であるとして以下のように判示している。

「給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命
令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。な
お、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何ら
かの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務
の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかか(マ
マ)重視されなければならない。」(最高裁昭和56年4月24日第二
小法廷判決・民集35巻3号672頁)

判事では上記の判例に則り、要件事実として(あまりこのような表現は従前表現されなかったものであるが)、

「「給与所得」の支給があったといえるためには、①当
該給与支給者との関係で、空間的・時間的な拘束を生じさせる雇用又はこ
れに類する何らかの原因関係が存在していること(要件①)、②かかる雇
用契約等に基づき継続的ないし断続的に労務又は役務の提供がされている
こと(要件②)、そして③かかる労務又は役務提供の対価として上記給与
支給者から一定の給付がされた事実があること(要件③)
を要件として満
たす必要があると解されるから、被告は、これらの要件事実のいずれかが
不存在であることを主張・立証する必要があるものと解され、かつ、それ
で足りるもの
というべきである」

として明確に不存在の局面における立証の材料を明らかとしている点は特徴的である。
給与台帳による支払の証明を限定的に捉え、給与所得の基本的な性格から必要となる立証の範囲を明らかとしており、本件でも特に給与支払の実態や継続的な労務の提供等が不存在であるとの認定が中心となっており、租税法規の特質でもある実態をベースに判断を行っている点は今後の参考として捉えられるのではないだろうか。


以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

2021年5月7日金曜日

判例裁決紹介(新潟地判令和2年3月26日、リゾートマンションの固定資産税評価額と実態の乖離)

 

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は新潟地判令和2年3月26日で、地方部に整備されたリゾートマンションの固定資産税評価額に対して、周辺での売買価格より大幅な高額な評価額であり、係る評価に基づく固定資産税評価額が是正されるべきであるとして提起された事例です。

具体的にはリゾートマンションの所有者である原告(居住しておらず、15年以上訪れていないような状況で、扉を開けるなどが困難な損耗が見られるもの)が固定資産税評価額を付与した魚沼市を提起したものであり、固定資産税評価額が課題とされている事例である。近年社会問題となりつつある、地方部の限界的な集落や不動産家屋の負動産として扱われるような状況、空き家問題が議論されているところですが、廃棄寸前の空き家などの存在がクローズアップされている点は周知のとおり。新規供給が途絶えることがない(推進している現況において一方で人口減少の影響から特に地方部で家屋自体が課題となっているものであり、この点が不動産評価においても顕在化しつつある現況をよく表しているものであると評価される事例であろう。従来は、一軒家を中心とした家屋の問題が中心でしたが、マンション、特にこのようなマンションが今後において問題になりつつあるのが我々の最近の見方ではないだろうか。一軒家に比して解体コストや管理コスト、意思決定、周辺への外部効果の大きさなどから影響が大きなマンションなどの区分所有建物ですが、地方では大した量は供給されていないとの見方が支配的だったが、どうも使用されている建材の危険性も含め、地方での老朽化した建物の存在は大きな課題になりそうである。10年後の家屋関係を考える審議会にいますが、家屋評価も含め、このような存在をどのように扱っていくのか、という点が我々世代の課題になるのでしょう。老朽化した団地などは廃墟としかならないように思いますが反射的な反対も含め、地域課題としては間近に迫っているようです(利活用も提案されていますが、おそらく区分所有は難しいでしょう、一軒家には行政の資金が入ることになりましたが、拡大するような気がしてなりません、一斉建築の弊害です)。

このような社会背景となっている現況が典型的に現れているのが本件のリゾートマンションの評価額であり、本件のような事例が今後も継続することでしょう。特に地方税担当の部署においては、このような存在に対する評価の課題が、所有者が近隣にいないことも含め、継続的に対応していくことになりそうです。リゾートマンションという実需から離れたところにある建築物に対しては早めに顕在化しつつあるのであろうが、老朽化している点も含め、需要の対象が高齢化により変化している点は不動産の評価に反映される点において課題が発生していると考えられる。スキーなどのレジャー自体がその影響力を失いつつあり(私は生まれは北陸ですが、あまり興味ないです、なんで寒いときにわざわざ寒いところにいくのでしょうというタイプです。こたつぬくぬくが至高です)、周辺環境の変化が市場取引に影響を与えている点は回避し難いのは本件がよく表している。周辺の建物が10万円でも売却されない状況が生まれつつある点は特徴的であろう。このような建物に固定資産課税台帳の価格が150万との評価が付与されている点は今後このような問題が独発することを想起させる。市場において取引されている場合であれば、近隣価格として参考とすべき点はいえようが、需要が減退し取引が成立しない点が問題となる。都市部においては高騰する不動産価格の現状がありながら、大多数の地方部において不動産価格の減少、市場取引が成立しない環境(このような二極化している点が今後の特徴であろう)を、今後は前提として評価の原則を構築していかねばならない現状に至っているのではないだろうか。

少し判例から離れた立法論とならざるを得ないが、現況は固定資産評価基準に枠組みにおいて評価の是非を争うほかない。本件も減点補正の対象となる特別の事情があるのか否かという点が主たる論点となっているが、その成立を認めていない。主張が基本的に主観的な主張にとどまっているという点が原因とも考えられるが、市場取引が成立していない環境をどのように捉え固定資産税評価に反映させていくのかという点が今後の課題として発生することになる。現行法の制度、特に評価基準の中では本件のような市場取引が成立しない環境を反映させることは困難であると考えざるを得ない。

固定資産税の対象を時価として理解する点がそもそも問題であるようにも思われる。利用を前提とした家屋ではその取引は主観的な事情に依拠せざるを得ない点は否めないが、残存価格の規制も含め、評価基準は、そのベースとして地方税における応益、負担分任の反映がなされている点が忘却されているようにも捉えられる。改めて固定資産税の基本としてこのような応益性や負担分任の思想が反映されている点を再定義していくべきであろう。これと資産価値の反映が行われていることが固定資産税評価の大きな特徴であり、固定資産評価基準は実質において、市場取引が成立しないような不動産の状況をあまり想定していない。均衡ある評価と客観性の確保を重点におき、主観的な要因を排除しつつある評価基準の特徴と根本において地方税や固定資産税の特徴を反映している点が固定資産評価基準の現代的な意義、特徴となっているものであり、固定資産の需給事情の反映、減点補正における今日の社会環境の反映は、主観的な要因の排除の点から遅滞しているものと考えられ、今後の課題として、需給事情の反映における対象の拡大を如何に固定資産税評価基準に反映させていくのかという点が今後の課題となる。本件は、このような社会環境の変化を反映させる上で、重要な起点となるものと考えられよう。

相続登記の義務化や一部不動産の放棄の規程の導入など(管理費の前払いが必要であるようであるが)、地方税における固定資産評価に関する周辺環境の変化も始まっている。今後はこのような変化を反映して(おそらく固定資産税負担は他の費用に比して少ないことが多いのでまだ地方部の不動産は固定化されたままであろうが)、如何なる固定資産税評価の評価が合目的であるのか更に検討が必要であろう。

以上です。毎回のごとく備忘録として作成しているものですが、参考までに。