2020年5月9日土曜日

東京高判平成30年9月26日、税務代理権限証書の意義)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は東京高判平成30年9月26日で、納税者が実質的な税務代理権限を与えていたと推定される税理士に対して課税庁が納税者の相続税申告に関する違法行為(課税に関する書類を送付)したことにより、別件訴訟で敗訴しもって、財産上の損害を受けたことから国家賠償を求める事例です。

いささか、事実関係が不明な点も多いものの、本件は具体的には、納税者が別件訴訟で敗訴した責任を、課税庁における送付文書の送付(税理士への)行ったことが違法であるのか否かという点が、すなわち、当該税理士は税務代理権限証書を提出されていなかったものであるが、かかる状況にある税理士に対して相続税の更正処分の書類を送付したこと、あるいは税務代理権限証書の提出を求めなかったことが違法と評価されるのかという点が中心的な課題となっている事例である。別件訴訟での敗訴原因の追求など、より検討すべきものも多いものであろうが、本件は、課税庁職員の行為と税理士の関係が現れており、特に権限証書の意義が俎上に乗った珍しい事例であろう。かかる点が訴訟として課題となることは珍しく、税務代理権限証書の位置づけを理解する上で参考となる事例である。あまり実務では重要視される書類ではないのでないかと推定されるが、このような課税庁職員の行為に関して違法性に及びうるものであることは興味深いものであろう。


(税務代理の権限の明示)
第三十条 税理士は、税務代理をする場合においては、財務省令で定めるところにより、その権限を有することを証する書面を税務官公署に提出しなければならない。

以上のように、本件は、税理士法30条に規定する税務代理権限証書の意義が以下のように判示されている。

税理士法30条は、税務官署において、代理権の存否の判断を容易にさせることをその趣旨としているにとどまるものと解されるから、■■■■■が代理権限を付与されていた以上、本件相続税の税務代理に当たって税務代理権限証書の提出が必要不可欠であったとはいえず

として、権限証書の背景にある税理士において実質的に代理権限が付与されているか否かという点が重要であり、税務代理権限証書自身には、その意義として、代理権の存否に関する判断を容易にさせることが趣旨にとどまるとして、違法性の評価において当該証書を提出を求めなかった行為につき違法性を否定している。税務代理権限証書の意義を限定的に理解している上記判示であるが、必ずしもその解釈上の根拠が示されていない点は、議論の対象となるのではないだろうか。実務における位置づけもこの程度にとどまるものとして理解されるものであるのだろうか。かかる点はより検討が必要であるように思う。かかる点からは当該証書の関係する手続法違反は、多くの場合において、手続き上の不備として課税処分において、効力を発揮するものとは評価されないものといえよう。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。


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