2020年4月20日月曜日

判例裁決紹介(大阪地判平成31年1月17日、民事再生による資産の同一性非継続と譲渡所得)

さて、また興が乗ったので判例裁決紹介を作成しました。今回は大阪地判平成31年1月17日で、ゴルフ会員権の譲渡に伴う損失計上を認める対象として、民事再生による資産の同一性が継続しているのか否かが課題となった事例です。

具体的には、原告が保有していたゴルフ会員権の譲渡による損失を譲渡損失として申告したところ(申告年度以後は損益通算が制限されるため)、かかる譲渡損失の金額の起点となったゴルフ会員権は、民事再生の対象となり、新たに発行されたものであって、当初のゴルフ会員権(旧会員権)と譲渡会員権(新会員権)は同一性が認められるものではなく、もって、譲渡損失の計算上、旧会員権の取得費は対象とならないとした課税庁の処分を不服として提起された事例である。ゴルフ会員権の譲渡に関する租税法規の取り扱いはかつてより多様な事例を伴ってきたものであるが(多様な争点があったものであるが)、譲渡損失の損益通算が制限されたことで、今後はその対象となる状況も減少しているものとも考えられる(実務上も大きな課題であったであろうが現在はどのような形だろうか)。従って本件はゴルフ会員権という資産類型、民事再生の経緯等、些か特殊な事実関係に伴う事例とも評価することも出来よう。しかしながら、本件は譲渡所得における資産の概念が起点となっているものであり、単に資産の認定に関するものと理解するのではなく、同一性を資産概念においてどのように評価するのか、長期保有における資産の状況を所得に反映させる現行法の立場からは、資産の意義は重要なものとも考えられ、実務上も参考となるものであろう。特に本件のような会員権のような財産的価値の実態の裏付けが希薄な資産に対する声質の変化を租税法規においてどのように反映させるべきかという点は課題となるのではないだろうか。



所得税法33条3項が、譲渡所得の総収入金額から当該所得の「因となった資産」の取得費を控除することができる旨定めていることから、譲渡した資産との同一性が認められない資産の取得に要した金額を当該譲渡所得の取得費として控除することはできないと解される。

以上のように、本件は、譲渡した資産と同一性を認められる資産であるのか否か遠い雨天が譲渡損失の計算上の取得費を算入する事ができるのかという点が、争点となっている。本件の事実関係では、当該ゴルフ場での使用権、利用券を巡って、ゴルフ会員権に対する発行会社の民事再生等を経ている事実関係を基礎として同一性が認められないとして判断を行っている。実物資産とは異なる資産であるゴルフ会員権であり、その同一性に関しては契約内容を具体的に評価して、旧と新を比較検討している。契約内容の評価は決定的な評価が困難であるともいえようが、同一性において、どのような契約部分を中心的に評価を行うべきであるのかという点は、今後の実務においても重要な課題となるのではないだろうか。この評価が本件のように資産の取得費に関わるものであり、通常資産とは、同一性が維持されていることが常であり、このような取得費において異なる資産であるという判断を行うことは少ないものともいえようが、譲渡所得は長期の保有を反映させる制度もあり、期間の経過に伴う内容の変更等の影響を加味する可能性があることは、単純に資産だから、取得費を計上できるというものではないという点は留意されるべきでしょう。

(譲渡所得)
第三十三条 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定そのいs人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得
3 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの
4 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
5 第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。

以上です。毎度のごとく備忘録として作成しているものですので完成度は低いですが参考までに。

0 件のコメント:

コメントを投稿